120 / 179
第120話
しおりを挟む
エリスがダンジョンの地面で息をあげる。
「はあ、はあ、もう、もうもう、無理だよぉ」
エリスがカエルのような態勢で地面に倒れる。
「はあ、はあ、体を流そう」
俺は無言で川に入り、体を洗う。
その後エリスの体を流した。
「でも、これがバレたら、ダンジョンでレベル上げをしていると思われるな」
「そうなったら、シテいた事を、はあ、はあ、僕が、言うんだ」
「……恥ずかしくないか?」
「でも、良いんだ。所でハヤト」
「ん?午後は、温泉に行かないかい」
「行こう」
◇
俺は温泉から帰ると、一人ですぐに眠った。
【王国歴1000年春の月31日】
俺は食堂でヒメに話しかける。
「ヒメ、おはよう」
「お、おはよぅ」
ヒメはパクパクとパンを詰め込み、逃げるように去って行った。
みんなと話をするのも難しいな。
学園では順調に講義が進んだ。
今日から納品数・筆記試験の成績・レベルのランキングが掲示されることになり、アサヒは狙い通り食いついただけでなくいつも美女と一緒にいるカムイに喧嘩を売って停学になった。
それにスティンガーの息子、ドリルも女性に乱暴をしようとして停学になった。
厄介な奴がいなくて平和だ。
俺は穏やかな気持ちで講義を受ける。
だが、突然ファルナが入ってくる。
「邪魔をして申し訳ありません。ですが緊急で共有したい事件が発生しましたわ。結論から言いますと、今ダンジョンで『ダークフィールド』の発生が確認されましたわ。この名称は仮のものですが、ダークフィールドは黒い霧の事ですのよ。黒い霧がある場所に近づくのは危険ですわ。そこには大量の魔物が発生し、襲い掛かってきますのよ。もう一度言いますわ。黒い霧には近づかないようお願いしますわ」
全員がファルナに注目して話を聞いた。
「それともう1件。セーフゾーンの存在も確認されましたわ。各階のダンジョン内にある神殿のような神聖な空間には魔物が寄ってこれませんのよ。セーフゾーンは女神がダークフィールドに対抗して作ったのですわ。しつこい様ですが、ダークフィールドには近づかないようお願いしますわ」
こういう大事な部分はファルナが直接言って回る事で重要さを強調しているんだろう。
細かい連絡は伝令の者に任せて、要点だけはファルナが直接伝えるのだ。
俺は学園が終わるとすぐにダンジョンの2階に向かった。
【ダンジョン2階】
「セーフゾーンに行ってみよう」
セーフゾーンに入ると、パルテノン神殿のような建物と石造りの物体から水が流れ出していた。
給水機のようだ。
口に含むと新鮮な水が体にしみこむようだ。
「美味い」
屋根と給水機があって魔物が入ってこれない空間か。
「次は、ダークフィールドだな」
俺はセーフゾーンから見える黒い霧に近づいた。
近づくなとは言われたけど、何メートル以内に入ったらダメとかは言われていない。
くっくっく、何か言われたら『え?距離を取って見に行っただけで近づいてないんですけど?』と言って乗り切る。
俺には計画があった。
①ダークフィールドに近づく
②魔物が襲い掛かって来る
③倒す
④魔物を探さずに倒せて簡単&急速レベルアップ!
危なくなったらセーフゾーンに逃げればいい。
数日分の物資は一応揃えた。
ポーションも揃えたが、値段が倍近くに高騰していたが買えるだけ買った。
高騰していようが必要なら買うのだ。
安全を確保した上でセーフゾーンを背にしてダークフィールドに近づく。
13体ほどの魔物が襲い掛かって来る。
「マジックブルはすぐ倒す!」
パンパンパンパンパンパンパン!
これで残った魔物は近接戦しか出来ない。
速度の速いスピードラビットを刀で倒す。
ザンザンザン斬!
そして遅れてくるテクニカルチキンとアタックボアを落ち着いて倒す。
レベルアップしてもどれを上げるかは決まっている。
その事で、俺はプレイヤースキルに重きを置くようになっていた。
転生前の俺は焦っていた。
でも、焦って走るとすぐにスタミナ切れを起こす。
今は敏捷の値が足りないのだ。
向かって来る敵は待つ。
前も多少はやっていた事だけど、徹底して必要のないタイミングでは走らない。
無駄を削ぎ落す。
俺はテクニカルチキンに刀を突きさす。
俺は無駄な動きが多かった。
魔物が怖かった。怖い魔物と対峙した瞬間やられる前に駆け出し、走って突撃して倒す事で安心したかった。
でも、それは違うんじゃないかと思い始めている。
追い詰められたように急いで倒すのは違う。
真に強い者は、戦い続けられる者だ。
『俺はどんなに長く戦ってもいい』
そう思っている奴は強い。
そう思った。
アタックボアに袈裟斬りを食らわせ、刃の向きを反転させて返すように斬る!
『レベルが13から14に上がりました』
俺は無駄を削ぎ落す。
セイコウコウボウは言った。
『ハイブリッドの能力はまるでバトルセンスの土台を鍛える為にあるようだね』
一理あると思った。
ハイブリッドはアーツを使えない。
強力なスキルを使えない。
基本が出来ていなければハイブリッドでまともに戦うことは出来ない。
どんどん魔物が来る。
恐怖はある、あっていい。
でも、恐怖を乗りこなすように待つ。
そして、向かってきた魔物を確実に倒していく。
俺は、没頭していた。
【カムイ視点】
俺は2階のダークフィールドを見に来た。
ハヤトが魔物と闘っている?
少し見ないうちに能力値が上がったのか?
強くなったように見える。
いや、能力値だけではない。
動きが変わった。
進化している。
今も進化しようとしている。
まるで、恐怖を克服して乗りこなそうとしているような、不思議な感覚を覚えた。
ステータスには見えない部分が、魂が強くなっている!
女神が今回は一人じゃないと言っていた。
ハヤトか?ハヤトがいるから一人じゃない、そういう事なのか?
俺は、不思議とハヤトの動きに見入っていた。
あとがき
カクヨムの方では151話まで投稿済みです。
続きが気になる方はカクヨムの方もよろしくお願いします。
ではまた!
「はあ、はあ、もう、もうもう、無理だよぉ」
エリスがカエルのような態勢で地面に倒れる。
「はあ、はあ、体を流そう」
俺は無言で川に入り、体を洗う。
その後エリスの体を流した。
「でも、これがバレたら、ダンジョンでレベル上げをしていると思われるな」
「そうなったら、シテいた事を、はあ、はあ、僕が、言うんだ」
「……恥ずかしくないか?」
「でも、良いんだ。所でハヤト」
「ん?午後は、温泉に行かないかい」
「行こう」
◇
俺は温泉から帰ると、一人ですぐに眠った。
【王国歴1000年春の月31日】
俺は食堂でヒメに話しかける。
「ヒメ、おはよう」
「お、おはよぅ」
ヒメはパクパクとパンを詰め込み、逃げるように去って行った。
みんなと話をするのも難しいな。
学園では順調に講義が進んだ。
今日から納品数・筆記試験の成績・レベルのランキングが掲示されることになり、アサヒは狙い通り食いついただけでなくいつも美女と一緒にいるカムイに喧嘩を売って停学になった。
それにスティンガーの息子、ドリルも女性に乱暴をしようとして停学になった。
厄介な奴がいなくて平和だ。
俺は穏やかな気持ちで講義を受ける。
だが、突然ファルナが入ってくる。
「邪魔をして申し訳ありません。ですが緊急で共有したい事件が発生しましたわ。結論から言いますと、今ダンジョンで『ダークフィールド』の発生が確認されましたわ。この名称は仮のものですが、ダークフィールドは黒い霧の事ですのよ。黒い霧がある場所に近づくのは危険ですわ。そこには大量の魔物が発生し、襲い掛かってきますのよ。もう一度言いますわ。黒い霧には近づかないようお願いしますわ」
全員がファルナに注目して話を聞いた。
「それともう1件。セーフゾーンの存在も確認されましたわ。各階のダンジョン内にある神殿のような神聖な空間には魔物が寄ってこれませんのよ。セーフゾーンは女神がダークフィールドに対抗して作ったのですわ。しつこい様ですが、ダークフィールドには近づかないようお願いしますわ」
こういう大事な部分はファルナが直接言って回る事で重要さを強調しているんだろう。
細かい連絡は伝令の者に任せて、要点だけはファルナが直接伝えるのだ。
俺は学園が終わるとすぐにダンジョンの2階に向かった。
【ダンジョン2階】
「セーフゾーンに行ってみよう」
セーフゾーンに入ると、パルテノン神殿のような建物と石造りの物体から水が流れ出していた。
給水機のようだ。
口に含むと新鮮な水が体にしみこむようだ。
「美味い」
屋根と給水機があって魔物が入ってこれない空間か。
「次は、ダークフィールドだな」
俺はセーフゾーンから見える黒い霧に近づいた。
近づくなとは言われたけど、何メートル以内に入ったらダメとかは言われていない。
くっくっく、何か言われたら『え?距離を取って見に行っただけで近づいてないんですけど?』と言って乗り切る。
俺には計画があった。
①ダークフィールドに近づく
②魔物が襲い掛かって来る
③倒す
④魔物を探さずに倒せて簡単&急速レベルアップ!
危なくなったらセーフゾーンに逃げればいい。
数日分の物資は一応揃えた。
ポーションも揃えたが、値段が倍近くに高騰していたが買えるだけ買った。
高騰していようが必要なら買うのだ。
安全を確保した上でセーフゾーンを背にしてダークフィールドに近づく。
13体ほどの魔物が襲い掛かって来る。
「マジックブルはすぐ倒す!」
パンパンパンパンパンパンパン!
これで残った魔物は近接戦しか出来ない。
速度の速いスピードラビットを刀で倒す。
ザンザンザン斬!
そして遅れてくるテクニカルチキンとアタックボアを落ち着いて倒す。
レベルアップしてもどれを上げるかは決まっている。
その事で、俺はプレイヤースキルに重きを置くようになっていた。
転生前の俺は焦っていた。
でも、焦って走るとすぐにスタミナ切れを起こす。
今は敏捷の値が足りないのだ。
向かって来る敵は待つ。
前も多少はやっていた事だけど、徹底して必要のないタイミングでは走らない。
無駄を削ぎ落す。
俺はテクニカルチキンに刀を突きさす。
俺は無駄な動きが多かった。
魔物が怖かった。怖い魔物と対峙した瞬間やられる前に駆け出し、走って突撃して倒す事で安心したかった。
でも、それは違うんじゃないかと思い始めている。
追い詰められたように急いで倒すのは違う。
真に強い者は、戦い続けられる者だ。
『俺はどんなに長く戦ってもいい』
そう思っている奴は強い。
そう思った。
アタックボアに袈裟斬りを食らわせ、刃の向きを反転させて返すように斬る!
『レベルが13から14に上がりました』
俺は無駄を削ぎ落す。
セイコウコウボウは言った。
『ハイブリッドの能力はまるでバトルセンスの土台を鍛える為にあるようだね』
一理あると思った。
ハイブリッドはアーツを使えない。
強力なスキルを使えない。
基本が出来ていなければハイブリッドでまともに戦うことは出来ない。
どんどん魔物が来る。
恐怖はある、あっていい。
でも、恐怖を乗りこなすように待つ。
そして、向かってきた魔物を確実に倒していく。
俺は、没頭していた。
【カムイ視点】
俺は2階のダークフィールドを見に来た。
ハヤトが魔物と闘っている?
少し見ないうちに能力値が上がったのか?
強くなったように見える。
いや、能力値だけではない。
動きが変わった。
進化している。
今も進化しようとしている。
まるで、恐怖を克服して乗りこなそうとしているような、不思議な感覚を覚えた。
ステータスには見えない部分が、魂が強くなっている!
女神が今回は一人じゃないと言っていた。
ハヤトか?ハヤトがいるから一人じゃない、そういう事なのか?
俺は、不思議とハヤトの動きに見入っていた。
あとがき
カクヨムの方では151話まで投稿済みです。
続きが気になる方はカクヨムの方もよろしくお願いします。
ではまた!
21
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…
美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。
※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。
※イラストはAI生成です
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる