100回目のピーカブー

朋藤チルヲ

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 あっけに取られた、が正しい。そして、次の瞬間、不覚にも、わたしは噴き出してしまった。

 だって、それは、赤ちゃんとか、幼い子供に向かってやるしぐさ。それを、こんないい歳をした女性に、いい歳をした男性が恥ずかしげもなくやってのけるとは、まったく夢にも思わなかったのだ。

 不意を突かれた、と言うか、なんだかこちらのほうが気恥ずかしくなってしまった。

 そして、それから、不可思議な気持ちに胸が満たされた。

 以前にも、同じことが、あったような気がする。

 わたしは彼を見た。優しげに微笑むその顔は、今日初めて見たもののはずなのに、どうしてか懐かしさを感じる。安心感が込み上げる。

 とたんに、わたしには知らないものがある、と思い出した。頭の中で、風船が破裂したような衝撃に近い。唐突なことだった。だけど、怖いとは思わない。そうじゃない。ただ、ただ、胸が詰まる。

 知らないものの正体を、探りに行くように、わたしは指先を静かに伸ばした。彼の頬に触れる。知っている、この感覚。初めて、彼が表情を失くしていた。

 眉間に光が走る。それに向かって手を伸ばす。掴む。




「――――征、ちゃん……?」




 崩れるように、目の前で、征嗣が泣き出した。









(fin)
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感想 1

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みんなの感想(1件)

景綱
2019.12.08 景綱

いい雰囲気から一変、どうなっちゃうのという場面に。
この先どうなるか気になるところですね。

2019.12.08 朋藤チルヲ

あー景綱さん!
また読みにきてくださったのですね!
ありがとうございます(;´Д⊂)
短編なのですぐに終わりますが、少しの間お付き合いください♪

解除

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