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第3章 学園に通おう
95話 計画失敗
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おかしい。
朝の計画が崩れて以来、完全に計画が狂っている。
本来なら、僕から一時も離れなかったほどの甘えん坊のバナくんに見本になってもらうことで、『どれだけ甘えても良いんだ』ってエミールくんに思ってもらう予定だった。
その為にバナくんには予め『好きなだけ甘えて来ていいからね』と伝えてあったんだけど……。
「はい、おにいちゃん、スープです」
バナくんが僕の前にヴィンターさんが作った、コーンスープみたいなスープを置いてくれる。
「あ、ありがとうね、バナ」
お礼を言うとバナくんは嬉しそうに笑った後、『んーっ』と目を閉じて僕の方を向く。
その可愛らしい頬にチュッと軽くキスをすると、また嬉しそうに笑ってから離れていく。
はじめは人目もあるのでキスをためらっていたんだけど、キスするまで離れてくれなかった。
ここらへんはしっかりと甘えん坊のバナくんなんだけど……なんか、やたらと甲斐甲斐しく働いてくれる。
さっきのスープの配膳はもちろん、朝の着替えからお風呂――さすがに今日は身体洗うのは1人でやった――まで手伝ってくれた。
本来の計画では、エミールくんとバナくんのお世話を僕1人でやる予定だったから、家臣4人衆はみんなそれぞれの仕事に行っちゃってるし、ヴィンターさんもクラウスさんもカミラさんも裏方に徹してくれていてこの部屋にはいない。
今日は身の回りのことは自分でやるしかない……はずなのに、なんかバナくんが殆どやってくれてた。
ヴィンターさんのお手伝い程度は今までもやってくれてたけど、まさかここまで世話焼きになるとは。
本当ならバナくんにはちょっと我慢してもらって、計画の方を優先したいところなんだけど……。
「はいっ、じゃ、つぎはエミくんねっ!」
「は、はい……」
バナくんに促されたエミールくんが戸惑いながらもパンが入ったバスケットを持ってきてくれる。
なんかエミールくんまでバナくんの『お手伝い』に参加させられてしまっていて、止めるに止められない。
「す、すみません。
……パ、パンをお持ちしました。
……慣れぬことで不調法で申し訳ありません……このようなことも満足にできずに申し訳ありません……」
「ううん、エミールくん、ありがとう」
なにも言っていないのに謝り続けるエミールくんに、ただ笑顔でお礼をいう。
…………そして、チラッとバナくんの方を見るんだけど、お礼をいうだけの僕を見てぷくーって頬を膨らませている。
「ええっと……あの……それじゃ、またお礼を……」
「あの……はい、本当に申し訳ありません」
エミールくんもバナくんの方をチラッと見た後、自分のおでこを袖で磨くように拭ってる。
「えっと、いや、何度も言うけど感謝の気持だからそんな深刻に受け止めないでね?」
「い、いえ、こちらこそ汚くてすみません……」
「ううんっ!全然汚くなんて無いから大丈夫っ!」
これだけははっきり否定しておかないと、僕が嫌がってるなんて思われたら心外だ。
「むしろ僕としては嬉しいくらいだから、こっちこそごめんねっ!」
「あのっ、そのっ、すみません……ごめんなさい……」
赤くなって謝っているエミールくんだけど、もう自分でもなにに謝っているのか分かってないかもしれない。
僕も自分がなにを言っているのか、どうしてこうなったのか分からない。
「あの、えっと、バナくんが破裂しそうだから、するね?」
チラッと見たバナくんの頬がパンパンになってた。
「あ、はい、申し訳ありません……」
最後に小さく謝ると、かがんで目をつぶって顔を上に……僕の方に向けてくれる。
完全にキス待ちだけどそういう訳にはいかない。
ちょっとエミールくんの前髪をかきあげて、チュッと音を立ててエミールくんのおでこにキスをする。
恥ずかしいけど、音が立たないくらいそっとキスをしたら、バナくんに疑われてやり直しを食らったので仕方ない。
お手伝い終了の儀式が終わって、立ち上がったエミールくんも恥ずかしそうに顔を赤くしている。
バナくんは頬もしぼんで、満足そうに頷いている。
どうしてこうなった。
エミールくんを甘やかしに来たはずなのに、バナくんとエミールくんにお世話をされて朝ごはんを食べている。
部屋に備え付けられたテーブルセットに僕1人が座ってご飯食べているし、エミールくんの部屋なのにまるで僕が部屋の主人みたいだ。
「お、お兄様、す、すみません。
ス、スープのおかわりです」
『お兄様』とは僕のことだ。バナくんの指示でこうなった。
はじめは『おにいちゃん』と呼ばされかけていたので、まだましなところだと思う。
「ありがとう、エミールくん」
スープを置いてくれたエミールくんにお礼を言って、おでこにキスをする。
「い、いえっ、申し訳ありませんっ!」
このルーチンにも僕としては慣れてきたどころか、エミールくんイケメンだし嬉しいくらいだけど、エミールくん自身はまだ真っ赤になってオロオロしてしまう。
こちらこそ本当に申し訳ない……。
これも何もかも全ては……。
チラッと視線を移すと、満足そうにうなずくバナくんが目に入った。
この独裁者のせいだ。
僕たちが少しでも仲良くない――バナくん基準で――ところを見せるとすぐプクーっと膨れるので僕もエミールくんも気が気でない。
バナくんとしては仲良くしてほしいと思っているだけだから叱るわけにもいかないし、『仲良くてもキスするものじゃない』っていう当たり前の説得も『なんで?』と言われて答えられずに失敗した。
はじめは唇にしないと機嫌悪そうだったのを考えれば、だいぶ譲歩してくれたんだろう……バナくん的には……。
しかし、これではエミールくんを甘やかす計画が台無しだ……。
ユニさんたちも『全力でやっていい』って言ってたから、僕がいないとなにもできなくなるレベルで甘やかすつもりだったのに、逆にエミールくんを働かせてしまっている。
どうしたものだろう……。
朝の計画が崩れて以来、完全に計画が狂っている。
本来なら、僕から一時も離れなかったほどの甘えん坊のバナくんに見本になってもらうことで、『どれだけ甘えても良いんだ』ってエミールくんに思ってもらう予定だった。
その為にバナくんには予め『好きなだけ甘えて来ていいからね』と伝えてあったんだけど……。
「はい、おにいちゃん、スープです」
バナくんが僕の前にヴィンターさんが作った、コーンスープみたいなスープを置いてくれる。
「あ、ありがとうね、バナ」
お礼を言うとバナくんは嬉しそうに笑った後、『んーっ』と目を閉じて僕の方を向く。
その可愛らしい頬にチュッと軽くキスをすると、また嬉しそうに笑ってから離れていく。
はじめは人目もあるのでキスをためらっていたんだけど、キスするまで離れてくれなかった。
ここらへんはしっかりと甘えん坊のバナくんなんだけど……なんか、やたらと甲斐甲斐しく働いてくれる。
さっきのスープの配膳はもちろん、朝の着替えからお風呂――さすがに今日は身体洗うのは1人でやった――まで手伝ってくれた。
本来の計画では、エミールくんとバナくんのお世話を僕1人でやる予定だったから、家臣4人衆はみんなそれぞれの仕事に行っちゃってるし、ヴィンターさんもクラウスさんもカミラさんも裏方に徹してくれていてこの部屋にはいない。
今日は身の回りのことは自分でやるしかない……はずなのに、なんかバナくんが殆どやってくれてた。
ヴィンターさんのお手伝い程度は今までもやってくれてたけど、まさかここまで世話焼きになるとは。
本当ならバナくんにはちょっと我慢してもらって、計画の方を優先したいところなんだけど……。
「はいっ、じゃ、つぎはエミくんねっ!」
「は、はい……」
バナくんに促されたエミールくんが戸惑いながらもパンが入ったバスケットを持ってきてくれる。
なんかエミールくんまでバナくんの『お手伝い』に参加させられてしまっていて、止めるに止められない。
「す、すみません。
……パ、パンをお持ちしました。
……慣れぬことで不調法で申し訳ありません……このようなことも満足にできずに申し訳ありません……」
「ううん、エミールくん、ありがとう」
なにも言っていないのに謝り続けるエミールくんに、ただ笑顔でお礼をいう。
…………そして、チラッとバナくんの方を見るんだけど、お礼をいうだけの僕を見てぷくーって頬を膨らませている。
「ええっと……あの……それじゃ、またお礼を……」
「あの……はい、本当に申し訳ありません」
エミールくんもバナくんの方をチラッと見た後、自分のおでこを袖で磨くように拭ってる。
「えっと、いや、何度も言うけど感謝の気持だからそんな深刻に受け止めないでね?」
「い、いえ、こちらこそ汚くてすみません……」
「ううんっ!全然汚くなんて無いから大丈夫っ!」
これだけははっきり否定しておかないと、僕が嫌がってるなんて思われたら心外だ。
「むしろ僕としては嬉しいくらいだから、こっちこそごめんねっ!」
「あのっ、そのっ、すみません……ごめんなさい……」
赤くなって謝っているエミールくんだけど、もう自分でもなにに謝っているのか分かってないかもしれない。
僕も自分がなにを言っているのか、どうしてこうなったのか分からない。
「あの、えっと、バナくんが破裂しそうだから、するね?」
チラッと見たバナくんの頬がパンパンになってた。
「あ、はい、申し訳ありません……」
最後に小さく謝ると、かがんで目をつぶって顔を上に……僕の方に向けてくれる。
完全にキス待ちだけどそういう訳にはいかない。
ちょっとエミールくんの前髪をかきあげて、チュッと音を立ててエミールくんのおでこにキスをする。
恥ずかしいけど、音が立たないくらいそっとキスをしたら、バナくんに疑われてやり直しを食らったので仕方ない。
お手伝い終了の儀式が終わって、立ち上がったエミールくんも恥ずかしそうに顔を赤くしている。
バナくんは頬もしぼんで、満足そうに頷いている。
どうしてこうなった。
エミールくんを甘やかしに来たはずなのに、バナくんとエミールくんにお世話をされて朝ごはんを食べている。
部屋に備え付けられたテーブルセットに僕1人が座ってご飯食べているし、エミールくんの部屋なのにまるで僕が部屋の主人みたいだ。
「お、お兄様、す、すみません。
ス、スープのおかわりです」
『お兄様』とは僕のことだ。バナくんの指示でこうなった。
はじめは『おにいちゃん』と呼ばされかけていたので、まだましなところだと思う。
「ありがとう、エミールくん」
スープを置いてくれたエミールくんにお礼を言って、おでこにキスをする。
「い、いえっ、申し訳ありませんっ!」
このルーチンにも僕としては慣れてきたどころか、エミールくんイケメンだし嬉しいくらいだけど、エミールくん自身はまだ真っ赤になってオロオロしてしまう。
こちらこそ本当に申し訳ない……。
これも何もかも全ては……。
チラッと視線を移すと、満足そうにうなずくバナくんが目に入った。
この独裁者のせいだ。
僕たちが少しでも仲良くない――バナくん基準で――ところを見せるとすぐプクーっと膨れるので僕もエミールくんも気が気でない。
バナくんとしては仲良くしてほしいと思っているだけだから叱るわけにもいかないし、『仲良くてもキスするものじゃない』っていう当たり前の説得も『なんで?』と言われて答えられずに失敗した。
はじめは唇にしないと機嫌悪そうだったのを考えれば、だいぶ譲歩してくれたんだろう……バナくん的には……。
しかし、これではエミールくんを甘やかす計画が台無しだ……。
ユニさんたちも『全力でやっていい』って言ってたから、僕がいないとなにもできなくなるレベルで甘やかすつもりだったのに、逆にエミールくんを働かせてしまっている。
どうしたものだろう……。
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