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16巻
16-1
しおりを挟む第一章 海で遊ぼう。
僕は茅野巧。元日本人。
何故、元かと言うと、エーテルディアという世界の神様の一人、風神シルフィリール――シルが起こしたうっかり事故で一度死んでしまったからだ。そして、責任を感じたシルが、僕を自分の眷属としてエーテルディアに転生させてくれた。
そうしてやって来たエーテルディアでは、水神様の子供――アレンとエレナを見つけたり、王様や貴族などの偉い人と知り合いになったりと、普通ではありえない生活をしている。
とは言っても、冒険者という職で、自分の弟妹として育てることにしたアレンとエレナと一緒に好きに旅をしたりしながら、気ままに過ごしている。つい先日までだって、迷宮に行って冒険の日々を楽しんでいた。
そんなこんなで、あっという間にこの世界に来てから丸二年。三年目に突入した。
《タクミー? 聞こえるかー?》
「あ、カイザーか?」
「「カイザー!」」
『灼熱の迷宮』の攻略を終了させてギスタの街で休息していると、僕と仮契約しているリヴァイアサンのカイザーからの【念話】が届いた。
僕の呟きでカイザーから連絡が来たとわかり、アレンとエレナはわくわくした様子を見せる。
《カイザー、聞こえているよ。もしかして、合流できそう?》
カイザーは先日、【人化】のスキルを使用して僕達のところまで会いに来たのだが、人化していられる時間の都合で、一度住処である海に戻っていたのだ。
《うむ。とりあえずの用事は済んだのでな、是非とも合流したい》
《そうか、わかった。だけど、僕達は今、街の宿屋なんだよね~。ここに召喚したら……光ったりするのかな?》
《あ~……どうであろう?》
影から契約獣を出すのとは違い、召喚すると光を発生させそうな予感が何となくするのだ。
「……さて、どうするかな?」
「「うみ、いくー!」」
「ん? 海に行くの?」
「「うん、いきたい! あとね、ラジアンにもみせたいの!」」
「なるほど」
どうしたものか考えていると、アレンとエレナが海に行きたいと言い出した。
久しぶりに自分達も海で遊びたいが、最近契約して家族となったばかりの子グリフォンのラジアンに海を見せてあげたいようだ。
《カイザー、明日の午前中まで待てる? 朝には街を出るから、それから合流でもいいかい?》
《うむ、そのくらいなら待てるぞ。準備して待っておるので、声を掛けてくれ》
《うん。じゃあ、明日ね》
というわけで、翌朝、僕達はギスタの街を出ると、フェンリルのジュールと飛天虎のフィートの背に乗り、サンダーホークのボルト、スカーレットキングレオのベクトル、フォレストラットのマイル、そしてラジアンと共に、海に向かって真っ直ぐ南下することにした。
そして、人目がないところまで行くと、カイザーに声を掛け、召喚を試みた。
「おぉ~、タクミ、成功だな」
無事に人型のカイザーを呼び出すことができたのだが――
「……昨日、街の中でやってみなくて正解だったな」
《結構派手に光ったね~》
ジュールの言う通り、かなり光った。しかも明るい昼間でもわかるくらいだから、夕方の宿の部屋とかで試していたら……きっと酷いことになっただろう。
「今、それがわかって良かったよ~」
これから海に行く予定だったので、海に行ってからカイザーと合流しようかと思ったが、召喚がどんな風にされるのか知りたくて試しに実行してみたのだ。本当にやってみて良かったよ。
「子らよ、約束通りしっかりと土産を用意しておいたぞ」
「「ドラゴン!?」」
「えっ!?」
「うむ、残念ながら、中位のウォータードラゴンでなく、下位のブルードラゴンだがな。昨日、調達したばかりなので、鮮度は問題ないと思うぞ」
僕が絶句していると、カイザーはどこからかブルードラゴンの死骸を取り出した。
十数メートルから二十メートルくらいありそうな、青い鱗のヘビ型のドラゴンだ。ん~、前に倒したイビルバイパーと同等か少し大きいくらいかな?
「「《《《《《 《わぁ~~~》 》》》》》」」
それにしても……下位であってもドラゴンなのだ。本当にお土産としてドラゴンを狩ってくると思わなかったけどな。
「「カイザー、ありがとう!」」
「うむうむ、このくらいお安い御用だ」
子供達に感謝され、カイザーは胸を張りつつも少し照れくさそうにしている。
「それにしても……かなり新鮮だな。倒したばかりって感じがする」
「うむ。きっとこれのお蔭だな」
「それ! カイザー、それはもしかしなくてもマジックリングだよね?」
カイザーが見せてきたのは、マジックリング――マジックバッグと同じ機能を持つ魔道具の腕輪だった。
「うむ。巣穴を漁ってみたら、出てきたのだ。これが一番、性能が良いみたいで、中で経過する時間もかなりゆっくりになるらしい。これがあれば、帰る時はタクミの料理もそれなりに持って帰れるぞ!」
巣穴の財産の中にマジックリングが眠っているとか……凄いことだよな~。
そして、僕の料理を持ち帰れることに大喜びとか、僕は喜ぶべきなのか呆れるべきなのか悩むところだ。
「他にもいろいろ良さそうなものがあったので、それらも持ってきたぞ」
カイザーはマジックリングから装飾品や宝石を取り出し、ゴロゴロと地面に転がした。
「うわ~、これ、装飾品のほうは魔道具ばかりか?」
「一応、機能が良さげなのを選んできたので、使ってくれ」
「は?」
「タクミへの土産だ」
「ん?」
「ドラゴンは子らへの、こっちはタクミへの土産だ」
「っ!?」
カイザーの言葉に、僕は今度こそ絶句した。
「いやいやいや! これ、かなり良いものばかりだよ?」
「巣穴で眠っていたものだ。気にするでない」
「気にするよ!」
なるほど、僕にお土産を渡された相手の気持ちはこんな感じなのか!
《お兄ちゃん、この中にマジックリングもあるんじゃない?》
「うむ、あるな。我が使っているものよりは劣るが、確か……二つほどあったはずだ。えっと……これとこれだったな」
《やっぱり! さっき機能が一番良いのを使っているって言っていたから、あると思ったんだよ! ねぇ、カイザー、それはボク達が使ってもいいんだよね?》
「もちろんだとも」
カイザーとジュールとの間で、話が進んでいく。
というか! カイザーは三つもマジックリングを所持していたってことか! 凄いな!
《ちなみに、機能はどんな感じなの?》
「こっちはかなりの容量が入るが、時間がゆっくりになるのは少しだけであったな。こちらは我のと同じくらい時間がゆっくりになるが、容量が少々少ない感じだな」
《おぉ、それでもなかなかの機能だね。――お兄ちゃん、これをフィートとベクトルに持たせてもいい?》
「……いいけど。ジュールはいいのか?」
《ボクはこれから見つけるやつでいいよ。容量が大きいのはベクトルで、時間がゆっくりになるのはフィートがいいかな?》
ジュールの提案に、ベクトルは大喜びして、フィートも控えめだが嬉しそうにしていた。
そして、やっぱり話が勝手に進んでいく。
《あ、でも、ベクトルは常にマジックリングの中身は空にするようにするんだよ。魔物とか果実とか、手に入れたものはすぐにお兄ちゃんに渡すようにね》
《うん! 約束する! これでいっぱいお土産を手に入れても持って帰ってこられる!》
《一回でも腐ったものがマジックリングから出てきたら…………没収だからね?》
《わ、わかった!》
ジュールがひと際低い声を出して、ベクトルにしっかりと約束を守らせるように忠告していた。
ベクトルにマジックリングを持たせるのを躊躇っていたが、これならとりあえずは問題ないと思った。
「えっと……カイザー、マジックリングはありがたく使わせてもらうね」
「マジックリングだけじゃなく、他のものもタクミが良いように使ってくれ。タクミが回収してくれないなら、ここにそのまま置いてゆくことになるぞ」
「……ありがたく受け取らせてもらうよ」
……微妙に脅された。
ルーウェン伯爵家の次男で騎士のグランヴァルトさん――ヴァルトさんもこんな気持ちだったのかな~。ヴァルトさん、本当にごめんなさい。
でも、たぶん、これからも僕は変わらないと思うから、諦めてくれるといいな~。
「あ、そうだ。カイザー、この子は新しく家族になったラジアンだ。――ラジアン、彼はカイザー。家族の一員だよ。今は人の形をしているけど、リヴァイアサンっていうドラゴンだ」
「おぉ、グリフォンの子か! タクミはまた面白い者を迎え入れたのだな~。我はカイザーだ。何かあったら頼ると良い」
《カイザーおにーちゃん? おじーちゃん?」
「むむ? これは難しい質問が来たぞ! 今の見た目的にはタクミの少し上くらいだから、〝お兄ちゃん〟でも良いと思うが、年齢的には〝お爺ちゃん〟か? ――タクミ、どちらがいいのだ?」
「いやいやいや! お爺ちゃんは駄目でしょう! ――ラジアン、〝お兄ちゃん〟にしておこう!」
《ん? わかった~》
原因はわかっている! ルーウェン伯爵の当主であるマティアスさんが「お爺ちゃんだよ~」とラジアンに自己紹介していたからだ! しかも、同様にルーウェン伯爵夫人のレベッカさんも「お婆ちゃんですよ~」と話し掛けていた。
……あの世代の女性とラジアンが直接話す機会はそうないと思うが、ラジアンがうっかり《おばあちゃん》と話し掛けてしまわないように気をつけよう。
「……ちょっと疲れた」
今日はまだ始まったばかりだというのに、僕は少々疲れていた。
「「おにぃちゃん!」」
そんな僕に、アレンとエレナが声を掛けてくる。
「ん?」
「ドラゴンのおにく」
「いつたべるー?」
「え? ん~……」
子供達はすぐにでもお土産に貰ったドラゴンを食べてみたいようだ。だが、食べるには解体しなくてはならない。
ん~、ブルードラゴンの解体は……冒険者ギルドにお願いすると、騒ぎになるよな~。ということは、自分で解体しなくてはならないのか?
「解体……できるかな?」
「「できない?」」
「綺麗に無駄なく……は無理かもな。ぶつ切りした一部分の鱗と皮を剥いで、骨を取るんだったらできるかな?」
「「じゃあ、それで!」」
「わかった、わかった。とりあえず、すぐに解体できるように、食べる部分を手頃な大きさに切り分けておこうか」
解体する時に巨大な死骸を出すのには場所を選ぶので、抱えられる程度の大きさの部位を切り取り、《無限収納》に収める。
「今はここまで。あとは食べる時に解体しよう」
「「うん」」
「さてと、カイザー。カイザーには戻ってもらう形になっちゃうけど、僕達はこれから海に行こうと思っているんだ」
僕はこれからの予定をカイザーに伝えた。
「我はタクミ達と一緒に行動できるのであればどこでも構わないぞ。海に行くというのであれば、蒼海宮に行ってはどうだ? あそこの者達が、タクミ達に会いたがっておったぞ」
蒼海宮というのは、ガディア国のベイリーの街に比較的近い海の中にある、人魚族の集落だ。カイザーともその近くで出会ったんだよな。
「巫女姫様達が? そういえば、ベイリーの街を離れて以来会っていないか~。ジュール達のことを紹介していないし、行ってみるか?」
「「いく~」」
とりあえず海に行く……という予定しか決まっていなかったが、やることが決まった。
「それじゃあ、行くぞ~」
僕はジュールに乗り、アレンとエレナはフィートに、そしてカイザーは人型のままベクトルに乗った。
《行くよ~》
「おぉ、とても良い脚力だ」
初めて背に人を乗せたベクトルが張り切り、〝爆走〟という言葉が似合う走りをしていた。しかも、カイザーはそれに怯むことなく見事に乗りこなしていた。
そして、海に着いてからは遠泳だ。ジュール達は浅瀬や湖で遊びながら泳いだことはあるが、本格的な遠泳はしたことがない。だが、ラジアンも含めて全員、すぐに泳ぎを習得した。
「こんにちは、お久しぶりです」
「「こんにちは~」」
「まあ! ようこそいらっしゃいましたわ!」
人魚族の集落――蒼海宮に到着すると、巫女姫様、長のガルドさん、人魚族で初めて知り合いになったミレーナさんが快く迎えてくれた。
「先日は人魚の腕輪をありがとうございました。そのお蔭で今日は僕の契約獣達も一緒に来られました」
以前来た際に、水中でも呼吸できるようになる人魚の腕輪を譲ってもらっていたのだ。
「立派な契約獣と可愛い契約獣達ですわね~。人魚の腕輪が役に立って良かったですわ~。数は足りていますか? またいつでも渡せるようにと作り置きしていましたから、あとでお渡ししますね」
「いやいやいや! まだ残っていますから、充分ですよ」
「いえ、タクミ様はもっと契約獣を増やす気がしますので、貰っておいてください!」
「えぇ~……」
「それに、タクミ様のお知り合いにでしたら、お譲りしていただいても構いませんわよ?」
「それはありがたいですが……」
契約獣が増える気がするって……凄い予想だよな~。あ、でも、飛竜は予定が入っていると言っても過言じゃないのか?
まあ、僕としては、家族が増えるのは嬉しいんだがな。
「巫女姫様、あれもお渡しするのを忘れませんように」
「ああ、そうだったわね!」
「あれ?」
「民族衣装……と言って良いのかしら? タクミ様と子供達に人魚族が好んで着る衣装を用意しておきましたの」
人魚族の人達は、人魚のイメージ通りな水着っぽい格好をしている人以外にも、和装の狩衣っぽい衣装を着ている人達もいる。ここで言う民族衣装は、狩衣のほうだろう。
「こちらです」
ミレーヌさんが早速、衣装を持ってきてくれたようだ。
やはり狩衣っぽいほうの衣装だった。だが、甚平っぽい衣装もある。
「こちらは寛ぐ時に着るものです」
甚平は部屋着ってことだな。
「我もいろいろと作ってもらったぞ。というか、今着ている衣装も人魚族の者が作ってくれたのだ」
「え、そうだったの?」
「ふふっ、わたくし達の衣装では人の街では目立つと思い、タクミ様が着ていたものを参考にして作らせてもらいましたわ」
「どうりで似ていると思ったよ!」
偶然だと思っていたが、僕が着ていた服を参考にしていたようだ。
「「これ、きてみたい!」」
すると、アレンとエレナは興味を引かれたようで、服を指差した。
「もちろんですわ。着替えを手伝いますね。どちらを着られますか?」
「「りょうほう!」」
ミレーナさんがアレンとエレナの着替えを手伝ってくれることになり、まずは狩衣を着てみることになった。作りは難しそうに見えるが、すぽっと被れば着ることができるようだ。
「「どう?」」
「おぉ、似合っているよ~」
《うん、うん、似合っている~》
《いつもと雰囲気は違うけど、とても良いと思うわ~》
僕はもちろん、ジュールやフィート達契約獣からも好評だ。
「「やった~」」
子供達は和風顔というわけではないが、和装も意外といけるんだな~。
「だけど、それを着て街を歩くのはやめたほうがいいかな?」
「「どうして~?」」
「珍しくて目立つからな」
とても注目されることだろう。
「「パーティは?」」
「パーティ? ああ、誕生日パーティとかならいいんじゃないか? でも、レベッカさんに相談する必要はあるかな。もう少し煌びやかにするとか……いろいろありそうだしな」
「「わかった~」」
「あら、それでしたら式典用の衣装を用意させますわ! キラキラひらひらが五割増しです!」
「「つくってくれるの!?」」
「ええ、お任せください」
「「ありがとう!」」
式典用の豪華な作りの衣装もあるようで、巫女姫様が微笑みながら提案すると、アレンとエレナがあっという間に作ってもらう約束をしていた。
「タクミ、どうだ?」
「「どう?」」
「三人とも似合っているよ。とても涼しそうだ」
子供達は続いて甚平を着てみていたが、何故かカイザーも一緒に着替えてはしゃいでいた。
「何か……貰ってばかりだな~」
「気にする必要は一切ありませんわ。逆にわたくし達のほうがお世話になっているのですから」
海に来ること自体が急に決まったので、お土産とかも用意していなかったんだよな~。
「でも、それじゃあ、僕の気が治まらないな~。あ、果実とかは食べますか?」
僕が《無限収納》からいろんな種類の果実を取り出して並べてみれば、巫女姫様とミレーナさんは嬉しそうな顔をした。
「まあ! これは美味しそうです」
「見たこともない果実もありますわね~」
果実はあまり手に入れられないということなので、多めに提供した。
「巫女姫様、大事なことを忘れていらっしゃらないですか?」
話が落ち着いたところで、ガルドさんが巫女姫様に耳打ちする。すると、巫女姫様がはっとした様子を見せ、少々慌てている。
「あらあら、すっかり忘れていました!」
「どうかしましたか?」
「タクミ様にお願いがございましたの!」
「お願い? 何ですか?」
どうやら、僕にお願い事があったようだ。
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