ラフィリアード家の恐るべき子供たち

秋吉美寿

文字の大きさ
56 / 113
リミィの恋の話

55.道筋

しおりを挟む
 二人の美しい舞のような立ち合いを皆が、うっとりと見ていた。
 担任のルーチェ先生もこの二人の実力に正直、驚いた。

 そんな中、ティムン先生が二人の間にサッと割って入った。

 皆が「「「わぁっ!」」」と歓声をあげる。

「さぁ、パリュムの双子達、私から一本、取ってみなさい!皆も彼らやわたしの動きをよく観察してくださいね」
 そう言ってティムン先生が、二人を相手に立ち合いを始めた。

 カンカンと木刀のかちあう音が響き、周りは息を飲んでそれを見ている。

 ジルもリミィも先日のテストのズルの名誉挽回とばかりに、全力を出した。

 流れるような動きの中、すばしこくティムン先生を追い詰めて二人がかりで交互に強く連打で打ち込む二人に一見、ティムン先生が押されているようにも見えたが、先生は息一つ上がっていなかった。

 周りの生徒たちは、その美しい三人の立ち合いに興奮せざる負えなかった。

「「「す!すごい!」」」

「なんで、あんな動きが出来るの?」

「「「かっこいい!」」」

「二人がかりなら、もしかして一本とれちゃうんじゃない?」

「「「先生!負けないで!」」」

「「「双子もがんばれっ!」」」

 そんな応援が飛び交った。

 そして五分ほど打ち合った時に、リミィが、片膝をついた。
 体力の限界だった。

 それに気をとられたジルはティムン先生に寸止めで一本取られ、リミィも降参して終わった。

 ゼイゼイと息を切らして、リミィはへたりこみジルもリミィほどではないにしても肩で息をしている有様だった。

 それでも周りの皆は大いに双子達の凄さを感じたようだった。
 大きな拍手と温かい言葉が二人に振ってきたのだ!
 皆が一斉に近寄り二人を取り囲む!

「「「すごいや(わ)!」」

「とても恰好よかったわよ!」

「うん!綺麗だった!」

「「「最高!」」」

 そんな声に二人は驚いて、そして照れた。
 歳の近い者達にこれほど屈託なく近づかれるなど二人に初めてで、しかも容姿や身分などではなく自分達の剣術に感動してくれた事が更に嬉しく感じられた。

 それは、双子達が、と思える瞬間だった。

 そしてティムン先生が極上の笑みを浮かべながら二人の頭を撫でた。
 そして皆に声をかけた。

「皆、わかったかな?無駄のない動きは綺麗なんだよ。それこそ美しい舞のようにね。皆も美しい姿勢や形を心がけながら、まず素振りから、やってみてくれ」

「「「「はいっ!」」」」

 そう言うと皆は目をキラキラさせながら、素振りを始めた。

「うん、カルム君といい双子君たちといい、有望な子がいるね?双子君たちは、これだけ剣術が使えるなら座学も、もっと来年は特別クラスになれるかもしれないね?」

 そんなティムン先生の言葉に周りの生徒たちも双子達の凄さを再認識させられた。

「「「わぁっ!すごいな!」」」皆からそんな素直な賞賛の声があがる。

 なんとなくクラスに凄い子がいるというのは嬉しいものである。
 しかも、それが超絶かわいい年下の双子達だなんてワクワクしない筈も無い!
 同じクラスになれた事も誇らしく嬉しくなってくる。

「もちろん、今年いっぱい頑張って得意分野で抜きんでた者には皆に可能性があるからね?二年生になったら特別クラスの枠も増えるから、竜や魔獣の授業に興味のある者は頑張るといいよ」

 そんなティムン先生の励ましに皆の顔は益々、輝いた。

「「「「僕たちもがんばろうっ!」」」」

 優しくてカッコいいティムン先生に双子やカラムたちが褒められるのをみて皆も、やる気満々である。

 そしてジルとリミィは、頑張れば来年は特別クラスに行けるかもしれない実力があるんだという印象が、クラスの皆や担任のルーチェ先生にのだった。

 それは、双子達がいきなり二年で特別クラスに選ばれたとしても不審に思われないようにというティムンのとょっとした心遣い…ティムンが、双子達に示した特別クラスへの道筋だった。
しおりを挟む
感想 93

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく

タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。 最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です

しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

処理中です...