アイドルはナマモノですか!?

春花菜

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【番外編】シンさんは箱推し

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 マネージャーのシンsaid


 俺は国民的アイドルと言っても過言ではないSSRのマネージャーをしている。
社長の元で色々学び、あいつらのために毎日せっせと働いている。
一応単身寮に住んでいるが、半分くらいはミーティングルーム用に借りている部屋で寝泊まりしている。朝早く、夜中になることがしょっちゅうだからその方が便利だっていう理由もある。セレブマンションだから庶民の俺には落ち着かないが、快適は快適だ。


 そんな俺の一日はもちろんSSRではじまりSSRで終わる。
スケジュールの確認、現場へのつきそい、仕事はまあ色々あるが、そのへんは割愛する。
俺が言いたいのはそういうことじゃない。


 、ということだ。


 もちろん毎日お前らSSRのことは考えてるぜー!と、茶化しては言っているが俺がここまでグループのことを本気で好きだとか想っているとか言ったことはないし、これからも言うつもりはない。恥ずかしいからな!!!


 だが、俺はこいつらSSRのメンバー全員が集まって顔合わせをした時に思ったんだ…


 こいつらをずっと見守りたい、と。


 年甲斐もなく、胸がトゥクン…と高鳴った。



 全てはSSRの為に…と、プライベートも色々ファンの反応を検索調査したりしながら、どっぷりとSSRに浸かっていた。もちろん録画したものや、DVDをずっと部屋で流している。


 そして、5年の時が経ち…俺は腐男子というものになっていた。
正確には、男同士のあれこれに萌えるというよりもSSRのメンバーが本になっているということが重要で、SSRの薄い本を読み漁ることが趣味になっていた。
ちなみに、鬼畜、女装、オメガバース、リバ、モブ姦なんでもこいである。所謂地雷なし。
間違えないで欲しいが、ズリネタにするわけじゃないし、アイツらとどうこうなりたいとか言う願望はない。彼女はいないが、デリヘルのお姉さんのお世話になったりしている。
ただのSSRクラスタだ。


 そもそものきっかけは、SSRのファンは腐女子が多く、検索すると必ずといっていいほど引っかかった。直接事務所に送ってくるマナー違反をするようなファンは居なかったが…とにかく、メンバーで妄想するファンが多い。
そりゃそんだけ毎度毎度目にしたら、気になるものだ。
そうこうしているうちに、うっかり扉を開けてしまい、ハマってしまった。


 まあ、ファンの気持ちはわかる。
七瀬はメンバーにめちゃくちゃ甘やかされているというか、溺愛されているのに、鈍感で無防備で誰もが妄想したくなるTHE・受け!って感じだし、すばるなんて普段は誰にでもどんなときでも王子のようなスマイルを浮かべているけど、何考えてんのかわかんねえ上に、仕事はきっちりやるが、何にも興味がない。が、七瀬が絡むと全く態度が違う。


 ここまであからさまに七瀬贔屓だと正直笑えるほどだ。七瀬が関わることに関してはマジでうるさい。声に出さなくても圧がうるさい。
しかも、今も当たり前のように七瀬の横に座って、手をつないでいる。
それなのに、七瀬本人は安定の鈍感具合で好き勝手させている。
お前ら、いいのかそれで。と、内心ツッコミを入れることが多い。


 一見、ほのぼのと見えるこの光景だが、すばるは優しい表情で七瀬を見つめる一方で、その奥には獲物をとらえるような獣じみたものを感じる。それが見えさえしなければ平和そのものだ。でも、俺は鈍感ではない。気づく、普通に。
やっぱり攻めだな、すばるはどう考えても七瀬とカップリングで執着攻めだ。


 そんな日常だが、最近少し様子が変わってきている。


 渚はまあ、相変わらずだが…葵の様子がおかしい。


 葵は見た目こそ、SSRのワイルド担当だが真面目で丁寧、爽やか青年で時折ワンコキャラ…まあ、メンバーの前では常にワンコなちょっとおバカキャラではあるが、ファンにとってはそのギャップもたまらないのだろう。  


 そんな葵が、イライラしている。
ワンコキャラはほとんど出ず、爽やか青年をずっと
大河の現場にほとんど居て、メンバーに会うこともないからワンコになれないのかもしれないが、ずっと演じているのがわかる。


 メンバーに会えず、ずっと現場だからストレスが溜まっているのかもしれないが、絶対これはイライラしている。何故気づくかって?俺に丁寧に話しかけてくるからだ。普段ならないない。爽やか青年な葵なんて俺と二人でいる時の態度じゃない。


 こういう時は、殻に閉じこもっている。
たまに葵はこういう時がある。
でも、その時の葵の芝居は鳥肌が立つほどすごい。役が憑依しているんじゃないかと錯覚するほど。


 元々スイッチが入ったら、役に入る葵の芝居は天才的だが、それとは比べ物にならないほど…すべてを飲み込む怪物のようだ。


 今回は大河ということでできる限り現場について行っているが、本当に背中がゾクゾクするような演技で放送されるのが楽しみだ。
ただ、ストレスがずっと続くのはよくないから大河が落ち着いたらまとめて休みをやるか、メンバーとの時間を取るようにしてやらないとな…と、思っている。






 「ん?なんだこれ」



 久しぶりに自宅へ帰ると荷物が届いていた。薄い本お宝を注文した記憶もないので、一瞬頭にハテナが浮かぶ。


 あ、そういえば渚がなんか荷物届くって言っていたような…それか?


 時折メンバーは通販で買い物をする。
本人名義で買い物してもかまわないのだが、不用意に事務所や自宅に届くと悪いことを企む人間がいないとも限らないので、たまに俺の名義で買い物させてやっている。


 「んんー?下着メーカー?」


 渚のやつパンツでも買ったのか?
いつも服なんかはオフの時に自分で買い物してくる渚には珍しい。
一応中身を確認することを条件にしているので、早速ダンボールを開封した。


 「渚にしてはおとなしいパンツ…ん?んん?なんだコレ、女モノ??」



 派手な渚が選ぶとは思いにくいボクサーパンツと一緒に入っていたのは黒いフリルのついたパンツとすっけすけのセクシーランジェリー。


 「おいおい、彼女でもできたのか…?いや、これでも男用か…えっ、渚履くのか!?ええっ!?」


 確かに渚は可愛い。可愛いが、グループで一番男らしい性格で、私服はパリピ寄りの派手さだ。同人誌では、女装や男の娘にされることが結構多いが、プライベートではその気配はほぼない。たまにあざといバージョンとやらでわざと色々やっているが…まさか、その延長か?


 まあ、でもな。プライベートで履く分には問題ない。彼女ができたなら締め上げて吐かせないといけないが、自分が趣味で履く分には問題ない。趣味くらいないと、ストレス溜まるだろうしな!


 俺はそっとダンボールに片すと、日課のネットサーフィンをして穏やかに眠った。





 「わあ、ありがとう!シンさん!」

 翌日ダンボールを持って、渚の部屋に行くと待ってましたとばかりに喜ばれた。
俺はわざとらしく咳払いをして、視線を泳がせる。


 「あー、なんだ。だが、まさか彼女にプレゼントするわけじゃねえよな?」


 俺がそういうと、渚はきょとんとした顔をしてから「ああ!」と、思い当たることがあるようなアクションをすると、大爆笑した。


 「あははっ!まさか!確かにオレからサプライズプレゼントするつもりだけど、彼女じゃないよ!彼女なんていないし!男にあげるんだよ~面白いかなーって!」


 キラキラとした瞳で、まるでいたずらが見つかったように渚は笑った。


 「またなんか悪巧みか」


 「違う違う!!」


 「…まあ、いいけどよ。ほどほどにしとけよ」


 「もうっ、信用ないな~。ま、いっか。とにかくありがとう!」


 ニコッと笑う渚は、嬉しそうにダンボールを抱えてドアを閉めた。
…アイツ絶対なんか企んでるな。


 俺はため息をつきながら、その場を去った。






 それからまた数日が経ち、俺は浮かれていた。そう、夏の祭典同人誌即売会のお品書きラッシュがやってきたからだ。


 「あー、この新刊もいいなあ。やっぱりすばナナ新婚本多いな…お!この人もマイナーながらも推しカプ変わることなく頑張ってるなあ」


 あれも欲しい、これも欲しいとお品書きの告知を巡っていると、大手すばナナサークルの本に目がいった。


 「…このパンツ」


 似てる。前に見たフリフリのエロ可愛いパンツに似てる。この、イラストの七瀬の履いてるやつ…


 周りから見れば、まるで変態だと罵られても仕方がないほど食い入るように眺めた。


 「いや、まさかな…」


 きっと定番なデザインなんだろう。
俺はそう結論づけると、買い物リストに書き込んでまたお品書き巡りを再開した。
当日はかなり大変だけど、この時間はわくわくする。あー、楽しみだー!!


 そんなことを考えているうちに夜はふけた。


 そして、朝。また、俺のマネージャー生活ははじまる。
毎日をSSR推しに捧げる毎日は楽しい。これからも、人生すべてをかけて支えていこう。
俺は背筋を伸ばすと、車のエンジンをつけたのだった。
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