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30.天啓
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俺が王立学院にいた頃、手慰みに彫った木彫りの小鳥――。
それが今、アレクシの手の中にある。
「南西部の漁村で出会った『ミエス・ランタ』は、僕に教えてくれたのだよ。
数年前にも、『ミエス・ランタ』を探して、その村を訪れた男がいた、とね。
その男は身分を隠しているようだったが、所作や物腰から、かなりの高位貴族であることは明らかだったらしい。
そして、その男はこの木彫りの小鳥を示して『これに見覚えはないか? 何でもいい、知っていることを教えてくれ』としつこく問いかけてきたというのさ」
息が詰まる。
――『ミエス・ランタ』を探しに漁村を訪れた高位貴族。それは間違いなく……。
「そして、この小鳥は、ヴェリオスが病に伏していた間も、ずっと枕元に大切に置かれていた。
目覚めた新しいヴェリオスは、その存在さえ忘れてしまっていたがね。
見てごらん、何度も撫でたのだろう。小鳥の頭の部分だけ色が変わっている。
ヴェリオスがこの小鳥に異常なほど執着していたのは、疑いようがない」
アレクシは木彫りの小鳥を、指先でやさしく撫でながら続けた。
「そうして、すべての証拠を照らし合わせた結果、僕はひとつの結論に至った。
――かつて、ヴェリオスが『下級課程』の生徒を探していたのは、この『ミエス・ランタ』という生徒の失踪に行きついたからに違いない。
ただし、その事実を示す記録は一切残されていなかった。つまり、王太子という身分を使わず、秘密裏に、誰にも知られぬよう、個人的に調査を進めていたのだろう」
アレクシは目を細めた。
「おそらく、ヴェリオスは『ミエス・ランタ』の寮の部屋で、この木彫りの小鳥を見つけた。そしてそれを大切に持ち帰り、肌身離さず持っていた。
つまりこれは、ヴェリオスの『番』につながる極めて重要な手がかりだったというわけだ」
確かに、俺はあの夜、木彫りの小鳥を寮に残したまま逃げた。
アレクシの手にある、色が変わるほど撫でられた小鳥をちらりと見る。
――ヴェリオスは、あの夜から、ずっと俺を探していたのか……?
「ただ、疑問もあった。
『ミエス・ランタ』は外見からして明らかにベータだったらしい。
それに、王立学院にはそもそもオメガは入学できない決まりになっている。
だから僕は、彼自身がヴェリオスの『番』なのではなく、その『番』と何かしらの関係がある人物――たとえば兄弟や親戚、あるいは親しい友人だと考えていた」
アレクシの声にわずかな苛立ちがにじむ。
「だが肝心の『ミエス・ランタ』本人がどこにも見つからない。
捜索は、そこで完全に行き詰まってしまったんだ」
アレクシは小さくため息をついた。
「だから、僕はやむを得ず国中からオメガを集め、後宮に招いてみることにした。
それでも、『番』は見つからなかった。ほとんどの地方はすでに探し尽くしたというのに、だ」
アレクシは俺をじっと見つめた。
「そんな時、君に出会った。
君の、あの一言――『オメガに変異できるベータ』という言葉。
あれは、僕にとってまさに天啓だったよ。
もし、本当にそんなベータが存在するのなら、
そしてもし、それが『ミエス・ランタ』本人だとしたら――、
僕が探し続けてきたヴェリオスの『番』は、まさしく彼なのかもしれない」
それが今、アレクシの手の中にある。
「南西部の漁村で出会った『ミエス・ランタ』は、僕に教えてくれたのだよ。
数年前にも、『ミエス・ランタ』を探して、その村を訪れた男がいた、とね。
その男は身分を隠しているようだったが、所作や物腰から、かなりの高位貴族であることは明らかだったらしい。
そして、その男はこの木彫りの小鳥を示して『これに見覚えはないか? 何でもいい、知っていることを教えてくれ』としつこく問いかけてきたというのさ」
息が詰まる。
――『ミエス・ランタ』を探しに漁村を訪れた高位貴族。それは間違いなく……。
「そして、この小鳥は、ヴェリオスが病に伏していた間も、ずっと枕元に大切に置かれていた。
目覚めた新しいヴェリオスは、その存在さえ忘れてしまっていたがね。
見てごらん、何度も撫でたのだろう。小鳥の頭の部分だけ色が変わっている。
ヴェリオスがこの小鳥に異常なほど執着していたのは、疑いようがない」
アレクシは木彫りの小鳥を、指先でやさしく撫でながら続けた。
「そうして、すべての証拠を照らし合わせた結果、僕はひとつの結論に至った。
――かつて、ヴェリオスが『下級課程』の生徒を探していたのは、この『ミエス・ランタ』という生徒の失踪に行きついたからに違いない。
ただし、その事実を示す記録は一切残されていなかった。つまり、王太子という身分を使わず、秘密裏に、誰にも知られぬよう、個人的に調査を進めていたのだろう」
アレクシは目を細めた。
「おそらく、ヴェリオスは『ミエス・ランタ』の寮の部屋で、この木彫りの小鳥を見つけた。そしてそれを大切に持ち帰り、肌身離さず持っていた。
つまりこれは、ヴェリオスの『番』につながる極めて重要な手がかりだったというわけだ」
確かに、俺はあの夜、木彫りの小鳥を寮に残したまま逃げた。
アレクシの手にある、色が変わるほど撫でられた小鳥をちらりと見る。
――ヴェリオスは、あの夜から、ずっと俺を探していたのか……?
「ただ、疑問もあった。
『ミエス・ランタ』は外見からして明らかにベータだったらしい。
それに、王立学院にはそもそもオメガは入学できない決まりになっている。
だから僕は、彼自身がヴェリオスの『番』なのではなく、その『番』と何かしらの関係がある人物――たとえば兄弟や親戚、あるいは親しい友人だと考えていた」
アレクシの声にわずかな苛立ちがにじむ。
「だが肝心の『ミエス・ランタ』本人がどこにも見つからない。
捜索は、そこで完全に行き詰まってしまったんだ」
アレクシは小さくため息をついた。
「だから、僕はやむを得ず国中からオメガを集め、後宮に招いてみることにした。
それでも、『番』は見つからなかった。ほとんどの地方はすでに探し尽くしたというのに、だ」
アレクシは俺をじっと見つめた。
「そんな時、君に出会った。
君の、あの一言――『オメガに変異できるベータ』という言葉。
あれは、僕にとってまさに天啓だったよ。
もし、本当にそんなベータが存在するのなら、
そしてもし、それが『ミエス・ランタ』本人だとしたら――、
僕が探し続けてきたヴェリオスの『番』は、まさしく彼なのかもしれない」
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