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31.ヴェリオスの『番』
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俺の中に何かを探るように、じっとのぞき込んでくるアレクシの青い瞳。
俺は目をそらさず、その視線を受け止めた。
「――これが、僕のたぐいまれなる頭脳と行動力が導き出した、ヴェリオスの『番』に関する考察さ。
さて、ソル。君はこの話を聞いてどう思った? ぜひ君の率直な意見を聞かせてほしい」
俺は小さく息を吐き、呼吸を整えてから口を開いた。
「アレクシ様。繰り返しになりますが、『オメガに変異できるベータ』というのは、俺の口から出た戯れ言です。
そんな、この世の理に反した荒唐無稽なことが起こるはずがない――。
この国随一の明晰な頭脳をお持ちのアレクシ様なら、当然そのくらいのことはご理解いただいていると思っておりましたが」
見え透いたお世辞とたっぷりの嫌味にもかかわらず、アレクシは気を悪くするどころか、愉快そうに口元を緩めた。
「まあ、常識的に考えればね。そういうことになる。
でも、ここまで来てしまった以上、僕としてはどんな可能性も無視するわけにはいかないのさ。
それに――」
そう言って、アレクシは片目をつぶって見せた。
「このオメガ探しで一番厄介なのはね、ヴェリオスの『番』かどうかは、ヴェリオス本人にしか判断できないという点なんだ。
そして、今のヴェリオスが置かれているとても困った状況も、余計に問題を複雑にしていてね」
「困った状況……?」
「そう。だからこそ、僕はわざわざオメガたちを王宮まで連れて行って、直接ヴェリオスに会わせていたのさ。
……結果的に『人喰い竜』なんて不名誉な噂が立ってしまったのは、本当に不本意だがね」
「ヴェリオス様は、今までどのオメガに会っても『番』ではないと判断されたのですか?
たとえそれが完全な一致でなかったとしても、多少でも惹かれる相手はいなかったのですか?」
成人したアルファとして、一人や二人、気に入るオメガがいたとしてもおかしくはないはずだ。
たとえそれが『運命の番』ではなくとも――。
後宮でヴェリオスを取り巻く美しいオメガたち……。そのことを考えると、俺の心は小さな痛みを訴える。
「そうだよ。たぶんね。たぶん……、どのオメガも違ったんだろう。
見ただけではわからなくても、ヴェリオスだけには絶対にわかる『感覚』とも言うべきものものがあるはずだから。
それに、僕の勘も言っている。どのオメガも違っていた……。だが、問題はそこじゃない。つまりは……」
アレクシは、めずらしく語尾を言いよどんだ。
「なにか……ヴェリオス様に、問題でも?」
「ああ、大ありさ! 正直に言えば、この僕ですら、今はお手上げ状態なんだ。
だけどね、僕の勘ははっきりこう告げている。――ソル、君を今のヴェリオスは、きっと気に入るはずだ、と」
「……最後は、勘ですか」
俺は思わず眉をひそめる。
このアレクシという竜人の血を引く王族は、ヴェリオスが持っていたという木彫りの小鳥から、『ミエス・ランタ』という名を割り出し、さらにヴェリオスが『番』と出会ったのが王立学院時代であるという真相にまで到達した。
そして今――。
その『ミエス・ランタ』こそが、ヴェリオスの『番』である可能性に、たどり着こうとしている。
あれだけの限られた手がかりから、ここまで結論を導いた洞察力と推理力は、まさに見事としか言いようがない。
おそらく本人が言うように、たぐいまれなる頭脳と観察眼を持っているのだろう。
だが、それでも――。
アレクシは、一つだけ重大な間違いをしている。
それは、『ミエス・ランタ』というベータの男……。
つまりは俺が、ヴェリオスの番であるはずがない、ということだ。
俺は目をそらさず、その視線を受け止めた。
「――これが、僕のたぐいまれなる頭脳と行動力が導き出した、ヴェリオスの『番』に関する考察さ。
さて、ソル。君はこの話を聞いてどう思った? ぜひ君の率直な意見を聞かせてほしい」
俺は小さく息を吐き、呼吸を整えてから口を開いた。
「アレクシ様。繰り返しになりますが、『オメガに変異できるベータ』というのは、俺の口から出た戯れ言です。
そんな、この世の理に反した荒唐無稽なことが起こるはずがない――。
この国随一の明晰な頭脳をお持ちのアレクシ様なら、当然そのくらいのことはご理解いただいていると思っておりましたが」
見え透いたお世辞とたっぷりの嫌味にもかかわらず、アレクシは気を悪くするどころか、愉快そうに口元を緩めた。
「まあ、常識的に考えればね。そういうことになる。
でも、ここまで来てしまった以上、僕としてはどんな可能性も無視するわけにはいかないのさ。
それに――」
そう言って、アレクシは片目をつぶって見せた。
「このオメガ探しで一番厄介なのはね、ヴェリオスの『番』かどうかは、ヴェリオス本人にしか判断できないという点なんだ。
そして、今のヴェリオスが置かれているとても困った状況も、余計に問題を複雑にしていてね」
「困った状況……?」
「そう。だからこそ、僕はわざわざオメガたちを王宮まで連れて行って、直接ヴェリオスに会わせていたのさ。
……結果的に『人喰い竜』なんて不名誉な噂が立ってしまったのは、本当に不本意だがね」
「ヴェリオス様は、今までどのオメガに会っても『番』ではないと判断されたのですか?
たとえそれが完全な一致でなかったとしても、多少でも惹かれる相手はいなかったのですか?」
成人したアルファとして、一人や二人、気に入るオメガがいたとしてもおかしくはないはずだ。
たとえそれが『運命の番』ではなくとも――。
後宮でヴェリオスを取り巻く美しいオメガたち……。そのことを考えると、俺の心は小さな痛みを訴える。
「そうだよ。たぶんね。たぶん……、どのオメガも違ったんだろう。
見ただけではわからなくても、ヴェリオスだけには絶対にわかる『感覚』とも言うべきものものがあるはずだから。
それに、僕の勘も言っている。どのオメガも違っていた……。だが、問題はそこじゃない。つまりは……」
アレクシは、めずらしく語尾を言いよどんだ。
「なにか……ヴェリオス様に、問題でも?」
「ああ、大ありさ! 正直に言えば、この僕ですら、今はお手上げ状態なんだ。
だけどね、僕の勘ははっきりこう告げている。――ソル、君を今のヴェリオスは、きっと気に入るはずだ、と」
「……最後は、勘ですか」
俺は思わず眉をひそめる。
このアレクシという竜人の血を引く王族は、ヴェリオスが持っていたという木彫りの小鳥から、『ミエス・ランタ』という名を割り出し、さらにヴェリオスが『番』と出会ったのが王立学院時代であるという真相にまで到達した。
そして今――。
その『ミエス・ランタ』こそが、ヴェリオスの『番』である可能性に、たどり着こうとしている。
あれだけの限られた手がかりから、ここまで結論を導いた洞察力と推理力は、まさに見事としか言いようがない。
おそらく本人が言うように、たぐいまれなる頭脳と観察眼を持っているのだろう。
だが、それでも――。
アレクシは、一つだけ重大な間違いをしている。
それは、『ミエス・ランタ』というベータの男……。
つまりは俺が、ヴェリオスの番であるはずがない、ということだ。
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