どうやら私、動くみたいです

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第三章 お初と付喪神

第五話 心を紡ぐ宿

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 車は夕焼け空に別れを告げた、夜の空を彩る星々の下で停車しました。この暗い森の僅かな光源となっていた赤い木漏れ日も、既に薄暗い月明かりへと成り代わっている頃合いです。
 車が停車するや否や、天狐さんは後部座席の方へと振り向いて言いました。

「ここがワシらの滞在しておる宿、“心紡こころつむぎの宿”じゃ」

 ところが辺りを一通り車内から見回してみても、宿どころか建物すら周辺には一つとしてありません。更には建物以外でも、目に映る景色と言えばやけにうねった木々が生い茂っているだけです。いや、木しか無いと言うのも少し嘘になりますね。何故なら視線の先には一箇所だけ、木すらも生えていない更地の空間が存在していますから。
 とは言え一体この場所の何処に、私達が一夜を明かせるような旅館があるんでしょうか。

 もしかしてまた騙されちゃったのかなーー。そんな疑いの念を抱き始めていた頃合い、その疑いの念を一瞬にして吹き飛ばす事が起こりました。

「ええっ!? 何ですか、これ!」

 何が起こったのか説明すると、私達が車から降りた途端、さっきまで何も無いと思っていた場所に、柔らかい光を携えた建物が浮かび上がってきたのです。ええ、この状況を適切に述べるには「浮かび上がってきた」に勝る言葉は無いでしょう。
 初めは目の錯覚かとも思いました。何せこの木造の建物は、初めからそこには無かったわけですからね。けれども私の目には、そして轆轤首さんにもその光景は、ハッキリと映り込んでいました。それもテレビで観た事があるような、如何にも旅館と言った和の造りをした建物の姿が。

 天狐さんに散々な扱いを受けていた加胡川さんは、ようやく元気を取り戻した様子で、私達の前で起こった怪現象の説明をしてくれました。

「この宿は妖怪専用の宿でね、普段は人間が迷い込んでこないように建物自体を隠しているんだよ」

 話を聞いていて思った事が一つあります。それはそもそもこんな辺鄙へんぴな森へ、人間なんて迷い込んでくるのかって事です。けど万が一何も知らないまま人間がこの森へと迷い込んで来る事があるのなら、確かにこの仕様は必須と言えるのかも知れません。

「にしてもよ、結構しっかりとしたタテモンじゃねぇか」

 貴方には今の光景が見えていなかったんですか、とでも問い質したいくらいに轆轤首さんは冷静な反応を示していました。まぁ流石は妖怪、こんな事で驚いていては妖怪としても失格みたいな感じですね。ーーそろそろ私も皆さんみたいに落ち着かなきゃなぁ。

 扉を開けて中に入ると、そこには煌びやかな光を放つ豪勢な景観が広がっていました。玄関の中心にはそれはもう綺麗な生け花、そして壁にはこれまた見事な景色の絵が飾られていました。
 この景色の絵はおそらく、私達も既に目にしている大歩危の渓谷を描いているのでしょうか。繊細な筆使いは素人の私から見ても、凄いの一言では片付けられない程に美しかったです。

「お帰りなさいませ天狐様、地狐様」

 耳に残るような甲高かんだかい声と共に、玄関の曲がり角から一人の女性が現れました。お上品な雰囲気もさることながら、着物もよく似合われている女性です。
 しかしよく見ると、彼女の頭上には小さな動物の耳が付いていました。なのでこの方も、どうやら人間ではなく妖怪みたいです。もしイメージが思い浮かばないのであれば、加胡川さんに付いている狐の耳を丸くしたと思って下さい。

「此奴はこの宿の女将、お初はつじゃ。因みに此奴もれっきとした妖怪、それも化け狸じゃよ」
「お初と申します。以後お見知り置きを」

 化け狸って事は、やはり本質的に妖狐と似たような立ち位置なのでしょうか。言われてみれば確かに、妖怪屋敷でも山城町の妖怪として化け狸が紹介されていましたっけ。つまり彼女は天狐さん達と違って、元よりこの地域に暮らしていた妖怪って事になりますね。山城町に着いて結構な時間が経ちましたが、ようやくこの地域の妖怪に出会えましたよ。
 一度私達の方を振り向いてからお初さんは、床に正座して天狐さんに問い掛けました。

「ところで天狐様、この方達は?」

 まぁそんな反応をするのも無理はないと思います。だって天狐さんと加胡川さんが帰って来たと思っていたのに、よく見れば知らない人が居るんですから、当たり前ですよ。
 首を傾げたままクエスチョンマークを浮かべているお初さんに、天狐さんは少し照れ臭そうな顔で下を向きました。

「ワシのゆ、友人じゃよ。今日は一日泊まっていく」

 初老の老人の姿をしたあなたがそれをやりますかーー。まぁその姿も、天狐さんが他人との距離を取る為の姿ですので、ここではその発言も心に閉まっておきましょう。

 あ、そう言えば何故、天狐さんがこんな反応をしたのかをまだ話していませんでしたね。でもあんまり正確に話しちゃうと天狐さんが可哀想なので、ここは手短に話しましょう。
 私が天狐さんの友達になりたいと言う意思を示したすぐ後、彼女はこう言いました。

「よ、よいぞ。ならばお、お主の友達になってやる」

 口ではそう言っていましたが、あの時の天狐さんの動揺の仕方は尋常ではありませんでしたよ。そりゃあ今まで友達と言う友達が居なかった彼女でしたから、例え私みたいなちんちくりんに「友達になろう」と言われても嬉しかったんだと思います。
 これで私にも、轆轤首さん以外のしっかりとした友達が出来たって事ですね。何だか妖怪の友達ってだけで胸が踊りますよ。

 簡単に説明したところで話を戻しますね。
 少し嬉しそうな天狐さんの顔を見たお初さんは、何処か申し訳なさそうな表情で視線を下へと下ろしました。一体どうしたんだろう、そう思ったのも束の間、彼女はすぐに顔を上げて口を開きました。

「非常に申し上げ難いんですが、ただ今部屋の方がかなり埋まっていまして……。その為空き部屋の方も一部屋しかご用意出来ないんです」

 初めこそお初さんが何故そんな事を言うのかと疑問に思っていましたが、しばらくしてなるほどそう言う事かと、一人で頷きながら納得しました。
 予め予約していた天狐さん達の部屋の分を除いても、一部屋あると言うのに何故問題があるのかと思っていましたが、よくよく考えてみればお初さん、どうやら私の事も人数の一人としてカウントしていたらしいです。まさか私みたいな市松人形を一人として数えられるなんて、これまで経験した事が無かったので嬉しかったです。ーーやっぱり妖怪の宿はふところが広いなぁ。

 けれどそれでは向こうにも迷惑が掛かると言うもの。ここはワガママを言わず、現状を受け入れるとしましょう。
 互いに顔を見合わせる天狐さんと加胡川さんを他所に、私と轆轤首さんもまた、顔をしっかりと見てアイコンタクトを取りました。

「あ、大丈夫です。私この方とは一緒の部屋に泊まりますので」
「ああ。元々予約も無しに来てたんだ、部屋が空いてるってだけでもラッキーだぜ」

 それを聞いて安心したのか、お初さんはまた不安げな表情から出会った時の優しい表情へと戻しました。よっぽどこの人は些細な事を気に掛けていたのでしょう。ここまでお客に気を配る事が出来るなんて、流石は宿の女将をしているだけはあります。

「本当によろしいですか?」

「おうよ、だからあんま気にすんなよ」轆轤首さんは右親指を立てました。

「ありがとうございます。では、部屋の方へと案内させて頂きますね」

 そう言うとお初さんは、正座の姿勢から立ち上がって私達を、各部屋へと案内し始めました。

 ところでここの旅館はどうやら、靴を家と同じように玄関で脱いでスリッパへと履き替えるみたいです。各々スリッパへと履き替えてゆく皆さん。ですけど私はサイズの合うスリッパが無かった為に、裸足とまではいきませんけど白足袋《しろたび》のままでした。当然と言えば当然なんですが、ここでまたしてもお初さんは申し訳なさそうな表情を向けてきました。ーーこれに関しても私のせいですから、そんな顔はしないで下さい。

 廊下の内装は、私達が暮らしていた県営住宅のものとは随分違い、かなり古びた雰囲気となっていました。少し色褪せた木材の壁に、輝きを失った金具達。しかしそれらは汚れていると言った意味合いは持たず、しっかりと清潔さを保っています。それもこれも女将であるお初さんが、この心紡ぎの宿を大切にしている証拠なんでしょう。ーー旅館の切り盛りって色々と大変なんですね。

「ところでまだお二人の名前、聞いてなかったわね」

 階段を上がり長い廊下を歩いている途中、ふとお初さんは思い出したかのように、私達の方を見て微笑み掛けてきました。

「言われてみれば……確かに言った覚えがねぇわ」

 そう言えばそうでしたね。お初さんの事は天狐さんから紹介されていたので名前も知っていましたが、その逆はまだ話していませんでした。これから宿に泊まろうとしている人間がその女将に名前を言わないなんて、礼儀知らずにもいいところです。

「アタシの名は轆轤首だ。こう見えても、結構首が伸びる妖怪なんだぜ」
「私はツクモノって言います。見ての通り市松人形です」

 私は自分の存在がまだわかっていませんから、轆轤首さんみたいに自虐を交えた自己紹介は出来ませんでした。よって彼女とは違いつまらない自己紹介にはなってしまいましたが、ここは気にしないでおきます。

「轆轤首さんにツクモノちゃんね。しっかりと覚えておくわ」

 お初さんは満面の笑みでこちらに顔を向けました。
 そうこうしている内にお初さんの足は、何の前触れも無く止まりました。少し関係無い話をしますけど、急にその場で立ち止まられると困る時ってありませんか。お陰で私、前を歩いていた轆轤首さんの足に頭をぶつけちゃいました。ーー少し舌を噛んでしまったので痛かったです。

「ここが轆轤首さんとツクモノちゃんのお部屋ね。鍵の方は轆轤首さんに渡しておくわ」

 どうやらこの部屋が今日私達が泊まる事となる部屋らしいですね。このドアも建物と同じように木材で出来ており、ドアノブも少しばかり銀塗装が剥がれた、独特な金属光沢を放っています。
 そして何より驚いたのが部屋の番号です。なんと私達の部屋の番号は【六六《ろくろく》】、偶然にも轆轤首さんを彷彿とさせるような番号だったんです。これには轆轤首さんも、目を丸くして私の方を見てきました。内心喜んでいるのは見え見えでした。
 彼女、こう言う語呂合わせも好きそうですからね。とは言え私としても、正直覚えやすい数字でよかったです。

 するとまたしてもお初さんは、気まずそうな顔でこう言いました。

「予約の方が無かったから、実を言うと貴方方の夕食は用意出来てないの。本当に申し訳ない限りだわ」

 予約を取っていなかった分、私達の夕食が存在していないのは当たり前です。ーーだからお初さんも、あまり気にはしないで欲しいなぁ。第一私は妖怪として生まれ変わってから一度も、食事には口をつけていませんし。

「大丈夫だって。妖怪の食事なんてもんは単なる嗜みに過ぎねえから」

 轆轤首さんの方もそれは重々承知の上だったようです。妖怪は人間とは違い食事を摂らなくても生きていけます。故に彼女も、本意ではないにしてもその超自然的体質にあやかるつもりだったのでしょう。私達にとって食事なんてものは言わば娯楽、人間のそれと大差無いのですから。

 すると後ろにいた天狐さんはそんな私達を哀れんだのか、轆轤首さんがそう答えた後にすぐさま口を開きました。

「ならワシと地狐ちこの分を此奴らに回してやってくれ。ワシらは今日腹を空かしておらんからの」

 無論加胡川さんは何も言い返しませんでした、もう今日の天狐さんに反論するのは、無駄な労力を消費するだけだと悟ったんですかね。ーーご愁傷様です。

「わかりました。じゃあ轆轤首さん、ツクモノちゃん、お食事を持ってくるから、しばらくこの部屋で待っててね」
「おう、楽しみにしてるぜ」

 お初さんは轆轤首さんに部屋の鍵を渡すと、一礼してからその場を去っていきました。すると天狐さん、急に私に目線を合わせてきて言いました。

「ツクモノよ、飯の後で構わんから後でワシの部屋に来てくれんか? そこで大切な話がある」

 あら意外、天狐さんってば思ってた以上に積極的な方みたいなんですねら。勿論答えはオッケーですよ。断る理由もありませんし、彼女と話したい事も山程ありますからね。

「はい。では後で天狐さんのお部屋、伺いに行きますね」

 こうして一旦、私達は解散と言う形となりました。まだ私は食事を摂った事が無いので美味しいとかどうかはわかりませんけど、轆轤首さんが喜ぶものが出るといいですね。

 *

 まさか今日と言う日で本当に気が休まる時が来るとは、加胡川さんに私達がイジメられた時には想像も出来ませんでした。

「では、ごゆっくりどうぞ」

 ここ、心紡ぎの宿にある【六六】の部屋は床が全て畳が敷かれており、少し洋風な雰囲気を漂わせていた廊下とはまた違った空気をしています。少し大きめの長机に深緑の座布団、景色に関しては外が一面森なのであまり良いものとは言い難いですけど、それでも自然を楽しむ空間としてみればまた一興でした。

「うっひゃー! こりゃあまた豪華な食事だな」

 額の皺が目立つお婆さんが部屋を立ち去ると、同時に轆轤首さんは嬉しさのあまり大声で叫びました。
 机の上に並べられた料理の数々。これらはもう私は食べないにしても素晴らしいの一言に尽きます。特にまだ鮮度を保っているからか、光を反射させているお刺身は綺麗ですね。それに箸をさっと入れるだけでほろっと柔らかく切れそうな煮物なども、料理番組で見たものより一層美味しそうに見えました。

「んじゃあアタシはもう食うからな」
「ど、どうぞ」

 ゴクリーー。何故か私の口の中は、目の前のご馳走を見て唾を飲み込み過ぎて渇き切っていました。無論私はまだ食事を摂れるかもわかりませんから、これらの料理はただ眺める事しか出来ません。なのになんなんでしょうか、この諦めきれない感じは。
 ですがその理由はすぐにわかりました。私が意識せずとも体自体は、食事と言う行為自体を渇望していたのです。じっと眺めていても私の湧いてこない空腹感とは裏腹に、食欲は抑えられないぐらいに荒ぶっていました。いいえ、正確に言えば食欲ではなく食べてみたいと言う好奇心でしょうか。

 もはやこの場にはもう留まっていられないーー。そう考えると居ても立っても居られなくなり、未だ食事を眺めていた轆轤首に問い掛けました。

「あの轆轤首さん、私天狐さんのところに行ってきてもいいですか?」
「おう。今ドア開けるから待っとけ」

 するとまだ箸に手をつけていなかったからか、轆轤首さんは私の要望をすんなりと聞き入れてくれました。もしかすれば今のは、私が食事が出来ない事を気遣っての事なのかも知れません。ーー今そう言った気遣いは逆効果ですよぉ。

 しかし部屋のドアを開けて私を外へと出した時、轆轤首さんはとんでもない発言をしました。

「お前の分の飯も食べとくな」
「……はい」

 それは私が居ない間に、一人でポツリと言っておいて欲しかったですね。全く気遣いが出来ているのか出来ていないのか、これじゃあ他の人から見ればさっぱりわかりませんよ。勿論私も例外じゃありませんけど。
 とは言え彼女は、いつも外で買ってきた惣菜とお酒ばかりを食べていましたから、こんなに豪華な夕食は久しぶりだったのでしょう。なのでここは、えて大目に見る事にします。

 【六六】の部屋を後にした私でしたが、ドアが閉まり完全に外界へと放り出されて思った事がありました。それはとても重要な事であり、尚且つ知らなければ自分が進むべき道を見失ってしまう程の事でした。そう、私ってば天狐さんがいる部屋の番号を聞いてなかったんです。

「どうしよう……」

 私はすぐさまその場で立ち止まってしまいました。
 今更轆轤首さんに部屋を開けてもらうなんて、そんなみっともない事は絶対にしたくありません。とは言え天狐さんは私と轆轤首さんが部屋に入るまではついて来ていたので、彼らの部屋がここ、三階よりも上の階にある事ぐらいは推測できました。

「よし!」

 しかし何階建ての建物なのかも定かではないこの建物で、闇雲に階段を上がっても無駄に体力を消耗するだけです。であれば今の状態で私が出来る事と言えば一つ。この部屋へ来た道を一旦引き返して、下の階に居ると思われるお初さんに会う事だけでした。それだともしかしたら、お初さんに天狐さんの部屋まで連れて行ってもらえるかも知れないので尚更です。
 ただ、私達の部屋に来る時も階段以外は自分の足で歩いたのでわかります。三階であるここから一階の玄関まで行くのは、正直至難の業でした。けれどそれ以外に天狐さんの部屋を知る方法はありません。だから頑張るしかないんです。満室と聞かされていたにも関わらず何故か静か過ぎる廊下は、その長さを察するように訴えかけているかのようでした。

 溜息を吐きながらも私は、遠過ぎて現在地と階段までの距離感が掴めない廊下を歩き出しました。先が長いのは承知の上ですからね、ここは私も踏ん張って行かなきゃなりません。
 一歩、また一歩進んでいくにつれて迫り寄ってくる疲労感の連続。ただでさえ今日と言う日は驚きや恐怖の連続だったと言うのに、小さい足に無理をさせた事が祟ったのでしょうか。私の足は歩く事を拒んでいるようにも見えました。

 全然進んでないのにだらしないなぁーー。自己嫌悪に身を浸りながらも、苦しむ足に鞭を打ちつつ歩きます。ここまで来ると轆轤首さんにもついてきてもらえば良かったと、後悔の念すら抱き始めていました。

 そしていよいよ一旦の折り返し地点、あともう少しで階段だと思ったその時でした。私の目の前にとある方が現れたんです。

「おやぁ、見ねぇ顔だなぁ」

 前から歩いてきた妖怪を、私は知っていました。勿論会った事はありませんよ、けれど彼の有名さと言えば、もはや誰もが知っていると言っても過言ではない方です。
 あれですよ、あれ。見た感じちょっと体を覆っている毛の量は多いけど、その頭の上に乗ったお皿が何よりの大ヒントです。

「河童……さんですか?」
「ううん……河童っちゃあ河童だけんど、正確にはオラはエンコなんだ」

 少し苦笑いをした様子の彼は、頭を掻きながら視線を下に落としました。
 もしかして間違っちゃったかなーー。だとしたら私、彼に対して物凄く失礼な事を言ってしまったのかも知れません。すぐに謝罪しなければ、私は両手を上に挙げて彼の前で小刻みに振りました。

「ごめんなさいごめんなさい! 私ったらなんて失礼な事を……」
「いやいや、そこまで気にしねぇでいいよ! それにオメェの言ってる事も間違いでねぇから!」

 あまりの恥ずかしさについ蹲ってしまいましたが、そんな私をエンコさんは逆に励ます形で宥めてくれました。気を遣われるのは、やはり気持ちの良いものではないですね。とは言え失礼な事を言ったのは事実です。ーー本当にごめんなさい。

 そう言えば妖怪屋敷でも、彼の姿は私も見ていました。通称“ドロメキ淵のエンコ”、その名の通りドロメキ淵に足を踏み入れた人畜の尻子玉を引き抜くと言う、話を聞く限りでは恐ろしい妖怪だったような気がします。
 因みに人間が尻子玉を抜かれると腑抜ふぬけになるそうです。抜かれても死なないって所を見ると、結構良心的な方なのかも知れません。

「で、オメェ名前なめぇは?」

 彼は私の思っている以上に、妖怪としての私に興味があったようでした。付喪神として見れば何の変哲も無いただの市松人形なのに、この人も案外変わってます。まぁ妖怪自体変わった方が多いですから、そう思うのも不思議じゃないのかも知れませんね。第一轆轤首さんとか加胡川さんとか、思い浮かぶ知り合いだけでも変人まみれですし。
 とは言えこれも何かの縁です。向こうも名乗ってくれたので、こちらも名乗り返すのが礼儀でしょう。

「私、市松人形のツクモノって言います」

 取り敢えず隠すよう事もありませんから、お初さんに言った事とほぼ同じような事を言ってみました。するとエンコさん、私の正体を推測したのか腰を屈めて、私に視線を合わせて問い掛けました。

「市松人形だぁ? んじゃあ付喪神って事か」
「まだそれはわかんないですけど……似たような者だと思っていただいたら大丈夫です」
「そかそか」

 反応から察するに、どうやらエンコさんは私の正体に深い関心は無かったみたいです。わかってはいましたが、やっぱり他の人にどうでもいい存在として見られるのは、あまり気持ちの良いものではありませんね。ーー勝手に期待してしまった私が悪いのはわかってるんですけど。
 ここでお話は終わりなのかなーー。そう思って別れの挨拶を告げようとしたその時、エンコさんは少し馬鹿にした口調で問い掛けてきました。

「ところでオメェ、そんなみじけぇ足で何処さ行くつもりだ?」
「て、天狐さんって言う妖怪の部屋に用事がありまして……」

 短い足は余計なお世話です。彼の私に対する悪口に返答した私でしたが、遂に堪えていた笑いを露わにしたのか、エンコさんは大きな声で笑い始めました。それはもう、全ての階段に響き渡るぐらいで。

「ハッハッハ! 天狐さんの部屋なら確か五階ごけぇにある【一一二】だぞ」
「それ、本気で言ってますか?」

 もし彼の言葉が真実を指しているのであれば、すぐさまこの場で立ち止まりたい程でした。だって考えても見てください、五階って言ったら三階であるここよりも更に二階も上、私の体の三分の一はある段差をいくつも登らなければならないんですよ。一応今から行こうとしていた一階とは同じ階数ですが、上りと下りではわけが違いますし。

 ただでさえ廊下を歩くだけでも苦労したのにーー。絶望のあまり、私はその場にへたり込んでしまいました。家では階段を登る機会なんてありませんでしたから、正直言って階段の事を舐めてましたよ。
 しかしエンコさん、笑いながらもしれっとその親切心を垣間見せました。

「なんならオラが上まで運んでやろうか?」

 なんて親切な方なんでしょうかーー。私には疲れのせいからか彼が、ある種の仏に見える気がしました。轆轤首さんが私を拾った時はそれこそ比喩でしたが、今回のはその時のものとはまるで違う、実物であるかのような錯覚をしてしまったのです。ーー疲れとはやっぱり恐ろしい。
 でも見ず知らずの人に私を運ぶなんて事、本当にさせちゃっていいのでしょうか。大した礼も出来ない上に申し訳ない気もしてきましたので、再度私は訊ねました。

「本当にいいんですか」
「おうさ。人助けはオラの趣味なんでな」

 が、真偽を問い質してもエンコさんは意思を変えません。どうやら私を上まで運んでくれるって話は本当みたいです。
 それにしても人助けが趣味だなんて、余計にこの方が人畜の尻子玉を抜き取る妖怪とは思えなくなりました。それも、もしかして人間は彼を他の妖怪と間違えちゃってるんじゃないかって思うくらいです。やっぱり妖怪は見かけにやらない方が多いんですかね。

「ありがとうございます!」

 足腰の限界なんてとうの昔に来ていましたから、もう嬉しさのあまり元気過ぎる声を出してしまいました。他人に運んでもらえる味を知ってしまったら、それに甘えてしまうのは必然とも言える心理ですし。
 それはそうと身長差がある為に彼を見上げてばかりいたので、そろそろ首の方も痛くなってきました。関節痛と言いますか、妖怪なのに痛いと言う感覚があるってのは不思議で堪りません。

 そんな私を察したのか、エンコさんは首に手を添えていた私を抱き上げたかと思うと、そそくさ階段を登り始めました。いきなり私の体が離陸した時は、つい何事かと思っちゃいましたよ。
 少し生臭い匂いがした事は、黙っておいた方がいいでしょうね。人の親切心ってものは無駄にしてはいけませんから。ーー無論彼は人ではなく妖怪ですけど。

 階段を登りきって右へと曲がった所には、俗に言う談話室と呼べる程の小さな空間がありました。道中を早歩きで進んでいたエンコさんでしたが、その空間を通り過ぎる直前でそれは起こったんです。

「やあエンコ、今日はお人形なんか持って何処行くんだい?」

 真っ黒でとぐろを巻いた大きな蛇が、エンコさんを嘲笑うかのような言い草で話し掛けてきました。そう、誰も居ないだろうなと勝手に錯覚していた空間には、ちゃんと他に寝泊まりしている客が座っていたのです。更に感じの悪い蛇の隣にもまた、背丈の低いお爺さんが紅色のソファに腰掛けていました。ついでに言うとこのお爺さん、何処かで見た事がある気がします。ーー誰だったっけなぁ。

 考えてもみれば、自分の部屋までに他の妖怪とは出会わなかったからと言って、心紡ぎの宿に客が居ないと思う事自体が間違いでした。第一轆轤首さんと私の部屋が分けられなかったのも、宿がほぼ満室であるからだとお初さんは言っていましたしね。私ったら何を考えているのやら、また馬鹿を晒しちゃってる気分です。

「コイツぁ立派な付喪神だ! その辺の人形と一緒にすんでねぇ」

 すると立ち止まって振り返るや否や、何故かエンコさんは怒りを露わにして二人へと怒鳴り返しました。下から見る彼の顔の怖さと言ったらもう、恐ろしさのあまり空いた口が塞がらない程です。もし人間がこの顔を見て彼の生態を想像していたのなら、私も同じ考えてしまったかも知れません。

 ですがさっきのエンコさんの発言には嬉しいところももありました。それは私が不確かな存在であるにも関わらず、彼は私の事を「立派な付喪神」と言ってくれた事です。まだ私は自分が何者なのかわかってない為、自身が付喪神だとは誰にも言ってはいません。ですが改めてそのような事を言われると、少し嬉しい気持ちがありました。まるで自分の存在を認めてくれているような、そんな気がしました。

「ハッハ、何をムキになっておるんじゃエンコ。何もそこまで怒る事ないじゃろうて」

 そんな彼の怒りを物ともせず、背丈の低いお爺さんは更なる煽りを加えてきます。エンコさんのあの顔を見て尚馬鹿にしようとするなんて、お爺さんも中々に肝の座った方ですね。

「そりゃあエンコが市松人形抱いて歩いてる姿なんて見れば、誰でも笑っちまうに決まっているだろうさ」

 お爺さんに続ける形で、黒い大蛇も再び大きな声で笑い出しました。このままエンコさんがここに居る限りは、彼らの煽りも止む事はないでしょう。

「はぁ」

 とうとうエンコさんは呆れて物も言えなくなってしまったのか、終わりの見えない彼らの馬鹿話を無視して足を進めました。目を瞑ったまま後ろを向いた時の彼の顔は、吐いてもいないのに溜息を吐いているようにも見えました。大蛇達のエンコさんへの対応を見る限り初対面ではないようですが、見ての通り彼らの相手をするのは疲れるみたいです。
 言われてみれば河童が市松人形を抱いて歩く姿も、側から見るとかなり滑稽なものなのかも知れません。それ故に私の中の彼に対する罪悪感は、これまでにないぐらい込み上げていました。

 だって考えてみてください。もし私を抱いて歩いているのが小さな女の子であれば、あんな事誰も言いませんよね。ーーいや、そもそも私が生まれた時代が遅過ぎた節もあるから、そんな事はないか。

「ごめんなさいエンコさん。私のせいで嫌な思いさせちゃって……」
「気にすんでねぇ。アイツらいつもああだからよ」

 とは言いつつも、やはりエンコさんの声は疲れていました。私の為に怒っていただいて、本当にありがとうございました。ーーそして、ごめんなさい。

 未だ後ろの方から私達を指す笑い声が聞こえてくる中、ふと疑問に思った事を問い掛けてみました。山城町の妖怪の事は割と調べていたつもりでいたんですが、いざ自分の目で見るとなると、意外にわからないものなんですよ。

「あ、あのお二人ってどんな妖怪なんですか?」
児啼爺こなきじじい大蛇だいじゃだ。児啼爺ぐらいならオメェも聞いた事があるんでねぇか?」
「えっ! 児啼爺って実在してたんですか!?」

 一瞬エンコさんの顔に、明らかなクエスチョンマークが浮かび上がりました。おそらく彼ら山城町の妖怪からすれば、児啼爺の存在なんてものは当たり前なんでしょうから当然です。ですが私は違います。だってインターネットで調べた限りでは、児啼爺の伝説は無いに等しいと書かれてましたからね。
 児啼爺はオギャナキと間違えられて生まれた妖怪ーー。そう言った予備知識が、私の頭に更なる混乱を招き入れていました。

 気が付くとエンコさんは、その場で立ち止まったまま何か考え事をしているようでした。おそらく私の質問が悪過ぎて、意図を理解出来ていないんですね。
 ちゃんと意味合いを付け足した方がいいのかなーー。そんな事を考えていると、エンコさんは何か答えを導き出したのか口を開きました。彼の頭の回転は、私の思っていたよりもずっと早かったようです。

「ああ、そう言う事か。人は妖怪の存在がどうこう言ってっけどな、妖怪ってのは案外元から居たりするもんなんだ」
「えっ、そうなんですか?」

 つまりは妖怪の存在は人間の私事に左右されないって事なのでしょうか。よくはわかりませんが浅いようで深い、そんな妖怪の片鱗を垣間見たような気がしました。

「着いたぞ、ここが天狐さんの部屋だ」

 ようやくとも言えましょうか。私達はやっとの思いで当初の目的地であった、天狐さんの部屋に到着しました。距離としてはあまり長くもない距離でしたけど、やっぱりあのお二人がうるさかった事もあってか、かなり遠く感じていましたね。

「ありがとうございました。おかげさまで助かりました」
「気にすんなって。オラだってオメェの役に立てて嬉しいぞ」

 この方は発言からして聖人だなーー。私は彼の手から降ろされる途中で深く感銘しました。そしてエンコさんの事は、また轆轤首さんにもしっかりと言っておかなきゃなぁとも思います。とても紳士で優しい方だったってね。

「じゃあな、小さな付喪神」

 そう言って彼は来た道を走って戻っていきました。ペタペタペタ、少し湿った水掻きの音が聴こえなくなるまで、私は彼の背中を見ていました。ああやって自分の損得を考えず、ただ他人の力になれる妖怪を目指したいなーー。そんな事を思った私が何処かにいました。

彼奴あやつも中々良い性格をしておるじゃろう」

 妙に安心感のある声が聴こえて振り向くと、そこには私をこの部屋へと呼び寄せた張本人が、薄っすらとしていたほうれい線を深くして笑っていました。

「て、て、天狐さん!? いつからそこに居たんですか!?」

 いつの間にこの人は私の背後に居たんだろうーー。多分私がエンコさんの背中を眺めていた時にはもう、天狐さんは私の後ろに回っていたんだと思います。

「ついさっきじゃよ。それにお前達のやり取りはワシのセンリガンで一通り見ておったわい」

 あのですね、センリガンが何なのかは知りませんけど私の事をずっと見ていたのであれば、部屋を出た時点で迎えに来てくれても良かったんじゃないですか。廊下で運んでもらうのは確かに甘えかも知れないですけど、せめて階段の所では待機していて欲しかったです。やはり腐っても妖狐。幾ら彼女が清き天狐と言えども、人を茶化す事は好きな方なんでしょうか。

「まぁそんな顔をするな。それにもう、中には先客がおるからの。早《はよ》う入れ」

 そう言って天狐さんは、私を監視していた事を有耶無耶うやむやにして、目的地である【一一二】の扉を開きました。

 *

「コイツが天狐さんが言ってた市松人形か?」

 私が部屋に入ると真っ先に彼は、私の姿を見るや否やそう言ってきました。にしても部屋に先客が居るとは聞かされていたんですが、まさか先客が「物」だったなんて驚きです。
 しかし天狐さんはその「物」に対して平然と、あたかもそれが常識であるかのように返答をしています。その異様な光景ときたらもう何と言うか、道具に話し掛けているお婆さんそのものでした。

「うむ。名はツクモノと言う」
「こ、こんばんはぁ……」

 天狐さんが私の自己紹介をしてくれたので、取り敢えず挨拶はしてみました。が、彼はそれを無視。挨拶が返ってこないのは少しばかり腹が立ちました。寧ろ「物」に対して返事を求めるのも、おかしな話なのかも知れないです。ーーとか言っている私も、結局は「物」に過ぎないんですが。

 彼の姿は簡単に言うと鎌です。刃の部分に目のようなものこそ見えますが、それ以外は何ら普通の鎌と変わりはありませんでした。
 故にどうやって移動しているのか、どうやって喋っているのかは全くもって不明ですが、一つだけ私にもわかる事があります。それは彼が、間違いなく本物の付喪神である事でした。

此奴こやつがお前を付喪神か霊なのかを判別する者、付喪神のノガマじゃ。因みに野原の野に鎌と書いて野鎌《のがま》と言う」

 大方察しがついていた私に、天狐さんはわざわざ解説を挟んでくれました。私達の目の前にある鎌こそが、天狐さんの言っていた私の正体を判別出来る者。本物だと言う事はわかっていると言え、何処か彼の力を疑ってしまう自分もいました。

 いきなり事が運んでいったので、私は少し戸惑っていました。何せ天狐さんは私だけを部屋に呼んだものですから、てっきりお友達らしい話をするのかとばかり思ってましたし。そんな大切な話をするのなら、最初から轆轤首さんも呼んだ方が良かったです。

「確かに付喪神ってのは世間的に、道具に自我が芽生えて生まれる妖怪の事を言うんだぜ。まぁ俺からすりゃあ霊が取り憑いた道具ってのも、付喪神って括《くく》りにおいては大差ねぇと思うんだけどな」

 急に野鎌さんは、ギョロリとした目を私に向けて言いました。他人を馬鹿にしたような話し方には苛立ちを隠せませんが、やはり付喪神は道具に自我が自然発生した妖怪の事を言うんですね。となるともし私が道具に取り憑いた霊の妖怪だったなら、一体何と呼ばれるのでしょうか。
 すると天狐さんは、まるで私の心の中を覗き込んだかのように、私が抱いていた素朴な疑問を野鎌さんにぶつけました。

「であれば野鎌よ。道具に取り憑いた霊は、お主らからすれば何と言うのじゃ」

 その質問に対して、体を曲げて考え込む仕草を見せる野鎌さん。付喪神の体って総じて思うんですが、一体絶対どう言った原理で動いているんですかね。一応私も体は動かせますが、彼を見て改めて妖怪の不思議に直面したような気もします。
 しかしそこから出た彼の答えは、非常に安直なものでした。

「わかんねぇな。どうしても名前を付けたいって言うなら、普通に付喪神でもいいんじゃねぇか」

 なるほど、それを付喪神である彼が言うと説得力がありますね。おそらく彼らからすれば自我が自然発生した道具も、霊が取り憑いた道具も全部まとめて付喪神として見えるのかも知れないです。
 だとすれば本当に野鎌さんは、私を前者後者のどちらなのか判別する事が出来るのかなーー。だんだん私の中で拭いきれない不安が、雲が立ち込めるが如く湧き上がってきました。

「んじゃあ天狐さん。後はコイツを自然に自我が発生した付喪神か、はたまた市松人形に霊が取り憑いた付喪神なのかってのを、判別すりゃあいいんだな」
「うむ、そう言う事じゃ」
「はぁ……しゃあねぇやるか」

 溜息をきながら悪態を吐く様は、何とも見ていて気分の悪いものです。それ故彼が如何にこれからやる作業を面倒に思っているのかを、雰囲気からでも察する事は容易でした。ーーちょっとは感心、持って欲しいかな。

 すっかり二人の話を聞いてるだけの傍観者に成り下がった私に、突然野鎌さんはこちらを向いて話し掛けてきました。

「ツクモノだっけか」
「は、はい!?」
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