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赤の盗賊団
第28話 赤の盗賊団 『いざ盗賊団討伐へ』
しおりを挟む※ミトラ砦・挟撃作戦の図
翌日ー。
冒険者ギルドに、オレたちは集まった。
ギルド長アマイモンが討伐隊を二手に分けることを提案し、その通りにミトラ砦を攻めることになる。
この円柱都市イラムの北にリオ=グランデ=デ=ミトラ川が流れている。
ひとつは、ここをまっすぐ直進し、ミトラ砦の南側から正面切って進むルート。
もうひとつは、円柱都市イラムの西側からリオ=グランデ=デ=ミトラ川を渡河し、迂回するルートで北上し、ミトラ砦の西側から挟撃するルートだ。
実はあの討伐会議で、このミトラ砦・挟撃作戦を提案したのは、シバの女王の軍の兵長ギルガメシュだった。
ギルガメシュ兵長はその腹心の部下エンキドゥとともに『ラ・レーヌ・ドゥ・シバ』女王兵団の精鋭20名とともに、この危険な挟撃作戦の別動隊を買って出たのだ。
アマイモンはその別動隊に念の為の補強の兵として、ドッコイ兄弟をギルガメシュ兵長の配下へとつけた。
また、正面からの本隊へアマイモンの直属部隊『グースカ衆』から、副長マザー・グースカ、ツン・グースカ、マン・グースカの三名及びその配下衆30名を加えた。
隊長のグースカ・グースカやテン・グースカやその他の隊員は円柱都市イラムの防衛に務める。
さらに、川を渡河するためと、行軍スピードを早めるための乗り物として、竜馬(竜と馬の中間のような生物)を調達していた。
これは、チコメコアトルら商人の働きによるところが大きい。
竜馬の足だと1刻200ラケシスマイル走るとのこと。うーん、時速160kmってところか。
で、正面からの本隊は、ミトラ砦まで2刻かからないくらい(3時間~4時間)で着く目算だ。距離・約600kmってところか。
別動隊については2刻強(4時間強)かかるとのこと、正面の本隊が先に到着し、一戦交えているところに、挟撃する算段だ。
別動隊のミトラ砦への到着時間もちょうどその頃合いになる。
うまく作戦が決まれば、『赤の盗賊団』は挟撃を受け、壊滅へと追い込まれるだろう。
「頼んだぞ。このイラムの平穏のためにも!」
アマイモンがそう声を発した。
「ご武運をお祈りしますわ。魔神王に。」
フルーレティさんもそう口添える。
ん・・・? 魔神王・・・なんだそいつは・・・?
(マスター。おそらく神のいないこの世界、新しく祈りの対象になる存在かと推測されます。)
(あっそうか! 神様、見捨てていったんだっけ・・・? この世界を。)
(見捨てたというより選ばれなかったということでしょうね。)
(なるほど。複雑だなぁ。)
「まっかせてぇ! ジン様に!」
「そのとおりでございます。ジン様にとってこの程度のこと、造作もありませんわ。」
ヒルコもアイもハードルを上げてくれる。
「ジン様! 僕も頑張ります!!」
「カシム坊ちゃまの護衛はお任せでございやす!」
ジュニアくんが気合を入れるのと同時に、ジロキチもフォローしてくれるようだ。
ジュニアくんの身の心配はまあ、大丈夫そうだな。
「がっはっは。ウントコ様に任せておけい!」
「あんちゃん、すっごーい!」
「ウントコ兄貴に敵うものなんていやしねえ!」
「兄貴!おれもがんばるぞ!」
「・・・。」
ドッコイ兄弟も気合が入ってるなぁ。相変わらずみんなやかましい。・・・ん? 一人静かなのがいるなぁ。
えっと・・・次男のスットコかな?
昨日はみんな騒がしい連中だったんだけどな。酒でも飲みすぎたのかな。
「不死の化け物が出たなら・・・任せておけ。」
ヘルシングさんは相変わらずクールだ。その大きなボウガンを背負い、剣を携え、キラリとその眼光が光る。
「昨夜も言った通り、イラムの危機は我ら『ラ・レーヌ・ドゥ・シバ』女王兵団が防いで見せる!なあ? エンキドゥよ。」
「御意。ギルガメシュ様の言う通りだ。」
エンキドゥさん・・・めちゃくちゃ毛深いなぁ。オレは関係ないけど思ってしまった。サルみたいだと・・・。
「おーっほっほっほっほ! あなたたち別動隊の出番はありませんことよ!? 私たち『アドベンチャーズ』が妖精種族の恥晒し、サタン・クロースの首を討ち取ってあげるわ!」
「そうだな。ベッキー様のおっしゃるとおり。我が剣のサビにしてくれるわ。」
「いや、私の弓の餌食に!」
「いや、おいらの歌で!」
「いやいや、僕の回復魔法で!」
「いや、回復魔法、敵にかけちゃダメでしょ!!」
ベッキーのツッコミが入ったところでオチがついたっぽい・・・。
ジム・スナイパーが弓使い、狩人で、パック・フィンが歌ってことは吟遊詩人か。で、シド・サム、トム・サムの弟が僧侶だな。
リーダーのトム・サムが剣を使う戦士だな。ベッキー王女はまあ、見るからに魔法使いかな。
「では、別動隊の指揮はギルガメシュ兵長に任せたぞ。」
アマイモンがそう言い、ギルガメシュ兵長はうなづき、別動隊が出発した。
「こちらの指揮は副長の卿が執るのか?」
アテナさんがそう問いかけた相手はグースカ衆の副長マザー・グースカさんだ。
「はい。任せていただければありがたく。」
「アテナ様。この地の地理に明るいマザー殿で適任かと。」
知恵者然としたグラウコーピスさんがそうアテナさんに進言する。
「では、卿にお願いしたい。」
「は!お任せあれ!」
正面からの本隊を率いるのは、グースカ衆の副長マザー・グースカさんに決まった。
女性ながら副長を務めているのはその実力があるからだろう。
「では、我々も出発とする! いざ、参ろうぞ!!」
「おい。おまえらも遅れをとるなよ?」
マン・グースカさんがオレたちにそう声をかけた。
「まあ、遅れたら置いていけばいい。」
ツン・グースカさんがそう言い、オレたちのほうをチラリと見た。
「魔力のかけらも感じられんな。まあ、アマイモン様のご推挙だ。期待はしているぞ?」
そう付け加えた。
「あ・・・はい。」
オレは適当に返事をしておいた。
アイとヒルコがツン・グースカさんを殺さんばかりの勢いで見ているのをなだめながら、オレたちは竜馬の馬車に乗りこんだ。
ホッドミーミルの森の外側には死の平野と呼ばれる平野があり、そこを隔てるように流れているリオ=グランデ=デ=ミトラ川を越えるには竜馬が適していた。
なぜなら、船ではその川の中の魔物に襲われる危険があるからだ。
なんでも襲う獰猛な魔物、水虎(すいこ)や鯱(しゃち)などが棲んでいるという。
川を越えたホッドミーミルの森に入ってすぐ近くに『ミトラ砦』がある。
もともとは『エルフ国』の戦争の防衛線であったからだが、今や『赤の盗賊団』の拠点になっている。
オレは事前に超高度からのカメラをつけた、バード型ドローンを飛ばし、上空からその動きを監視していた。
ヤツラの動きは逐一わかるので、ヤツラがどう動こうとこちらが遅れを取ることはないだろう。
だから、ヤツラがこちらの動きをなぜか知っているかのように、待ち伏せ待機の様子を見せていたのは事前に把握していたのだ。
竜馬が川を飛ぶように渡り終えたときに、オレは音声をウィスパーモードで、マザーさんにだけ伝わるようにささやく。
「この先で『赤の盗賊団』のヤツラが隠れて待ち伏せしています・・・が、どうしますか?」
「なっ!? ジ・・・ジン殿か? それは本当か?」
「はい。オレの監視ドローン・・・あ、いや、監視魔法でこの先を偵察したところ、怪しい動きの集団を発見したんです。」
「みんなっ! いったん止まれ!」
マザーさんの指示でみんなはいったんその進行を止めた。
「この先でヤツラが待ち伏せしているらしい。戦闘準備を!」
「なに!? ヤツラ! こちらの動きに気がついていたのか!?」
「うむ。どうせ殺るんだ。どちらでも構わないだろう。」
こうして、ヤツラの待ち伏せ奇襲を事前に察知したオレたちは、万全の戦闘準備を整え、その戦闘の地になるであろう場所へ用心深く進んで行ったのだったー。
~続く~
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