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幕間2

第68話 幕間その2 『コタンコロの冒険』

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 巨大フクロウ・コタンコロは悠然と大空を飛んでいたー。

 そして、コタンコロのはるか上空に人工衛星『ヴァスコ・ダ・ガマ』が飛び、その真下に位置するようにコタンコロを捕捉していた。



 「我がご主人様に一刻も早く結果を持って帰らねば……。」

 コタンコロは非常に義理堅く、決して受けた仕事を放置して道草などしたりしないのだ。

 一直線に、先の人工衛星『コロンブス』が何者かに撃墜された地点へ急ぐ。



 『エルフ国』の支配地域の大森林を抜ける。

 さすがに上空400kmの『ヴァスコ・ダ・ガマ』はもちろん、高度1万mの上空を飛行しているコタンコロについても、『エルフ国』からは特に何も接触はなかった。

 大森林を抜けると、大海原が広がっていた。

 コタンコロの行く手の右方、東方にはその山頂が見えないほど高い超巨大火山が見えた。

 火山に近づくのは危険だと判断し、海原を進むことにする。



 「もうすぐ、『コロンブス』が墜落させられた地点だな。ふむ。この高度には何も見えないが……。」

 その時、『ヴァスコ・ダ・ガマ』から送信されてきた衛星の映像を受け取ったコタンコロは驚いた。

 なんと、『ヴァスコ・ダ・ガマ』の高度のあたり、雲のはるか上空に、陸地が見えたのだ。

 空の大陸……!!



 「なるほど。では、我も上空に飛翔するとしよう!」

 コタンコロは急速転回し、上空に向かってぐんぐん飛翔する。

 その速度は、秒速7.9km以上、第1宇宙速度にまで達した。

 これは時速にすると28,440kmにもなり、マッハ2(2,450km)以上の速度だ。

 ロケットが静止衛星軌道に乗る際に必要な速度で、遠心力と重力がつりあうためロケットが地球へ落下してこない速度である。



 速度による熱の壁はマッハ3付近であり、第2宇宙速度はその熱の壁をはるかに超える速度である。

 第2宇宙速度にも耐えうるコタンコロは、超進化による生体戦闘機と化しており、この超高温の世界に余裕で耐えられた。

 コタンコロが『ヴァスコ・ダ・ガマ』の前に現れた。



 「むぅ……? 何だこれは?」

 コタンコロは首をかしげた。

 前方のその大陸から大量の円盤型の飛行物体が超高速で迫ってきていたのだ。



 「未確認飛行物体……確認! U・F・Oだ! 防衛体制に入る!」

 コタンコロはいつでも対応できるように臨戦態勢に入った。



 その銀の円盤から、無数の光線が発せられた。


 「敵対的攻撃と確認! ただちに迎撃体制に移る!」


 コタンコロは一瞬の判断で、敵の殲滅に入った。


 コタンコロがその口を開き、迎え撃つために、エネルギーを一点に集中させる……。


 「超・電磁砲ぉーーーーっ!!!」


 ―チュィンッ!!




 次の瞬間には、周囲の銀の円盤U・F・Oはすべて消滅していた……。



 コタンコロが、しばらく様子を伺っていると、前方から何者かが数体またしても迫ってきた。

 だが、すぐに攻撃しては来なかった。


 コタンコロはひとまず、攻撃を停止し様子を伺うことにした。



 「貴様は何者か!? ここから先は『龍自由連盟』が領空であるぞ? 貴様は領空侵犯をしている!」

 近づいてきたのがドラゴンたちで、その身長はおよそ50mはあろう。龍たちは人型で燃えるようなエネルギーを発している。
 
 コタンコロは龍たちの言葉を聞き、翻訳モードですぐにその意味を理解し、返答をした。



 「それは申し訳ない。我はコタンコロ。この地で墜落した我ら所有の人工衛星の調査に来た。そなたらは『龍国』のものであるか!?」

 「そうだ! 私は『龍国警備隊』のゾフィエルである。後ろの二人も同警備隊員のセブネルとジャッケルである。」


 さきほどの銀の円盤はおそらく無人のドローンで、領空を警備していたものであったと思われた。



 「さきほどの円盤への迎撃は、やむを得なかったとはいえ、申し訳なかった。
我はこの地のはるか南方の地より来たため、この空域が『龍国』の領空とは知らなかったのだ。許してほしい。」

 「ふむ。南方というと『エルフ国』の者か?」

 「いや。我はどこにも属さぬ。ただ一人の我が主(あるじ)マスター・ジン様に仕えし者である。」

 「マスター・ジン? 聞いたことのない名であるな……。」



 「我が主は先ごろ目覚めたばかりなのだ。それまではずっと冬眠されていたゆえ、知らぬのも無理はない。」

 「なるほど。なにか病気であったか……。それなら世情に疎いのも仕方ないか。まあ、事情はわかった。その後ろのゴーレムは何のゴーレムなのだ?」

 「これの名は『バスコ・ダ・ガマ』。上空より地形などを確認し、我らにその情報を届けるものだ。」

 「ふむ。なるほど。案内役のようなものか? 危険なものではないのだな?」

 「それは保証しよう。」



 「しばし待たれよ!」

 ゾフィエルがそう言い、後ろの2人……いや、2頭、いや2尾?……らと話し合う様子を見せた。

 どうやら、この龍族たちは凶悪な者たちではなく、平和的なようだとコタンコロは感じた。



 「ゾフィエル兄さん! このフクロウはなにか信じられると感じます。」

 「ほう。セブネルはそう思うか?」

 「私もそう思います。ここは、あのコタンコロ殿を我らが龍王に取り次ぎ、話を伺うのが得策かと思います。」

 「ジャッケルの意見はもっともだな。」



 くるりと振り返り、コタンコロのほうを向いた三人。

 ゾフィエルがまた口を開く。



 「ふむ。今の間に後ろから攻撃してくる様子もなく、私たちの話し合いをじっと待つとはなかなかに紳士的な者である!
できれば、貴殿にはこのまま、我が主人・龍王アヌ様にお会いいただき、話を伺いたいがいかがかな?」

 「なるほどですな。たしかに、このまま、はい、さようならとはお主らも行かぬであろうな……。」

 コタンコロがそう考えていると、思念通信でアイから連絡が来た。


 (コタンコロ。チャネルを常に開いておきなさい。万が一の事態にはワタクシが対処します。安心なさい!)

 (は! 了解しました!)



 コタンコロはその連絡を受け、返答をする。

 「あい、わかった。まいろうではないか。」

 「よかった。貴殿のその戦闘力……。敵には回したくないのでな」

 「ふむ。何を言うか。そなたらこそ、チカラをひけらかさずにその態度……。このコタンコロ。感服いたした。」





 コタンコロがそう言ったのもあながち間違いではなく、このゾフィエルは『龍国』の防衛の要『龍国警備隊』の隊長でもあり、龍王アヌに忠実なる『星の戦士団』の戦士長その人であったのだ。

 決して彼らは遠い宇宙からやってきた光の戦士ではなく、あくまでも『星の戦士』である。




 コタンコロは、人工衛星『ヴァスコ・ダ・ガマ』を空の大陸・マゴニア大陸沿岸に着陸させ、三人の警備隊員とともに、アヌの住まう『天空都市ニビル・シティ』へ向かった。

 といっても、彼らは全員第1宇宙速度で移動することが可能だったため、その数分後には到着していたのだが……。



 レムリア大陸のはるか上空にある浮遊大陸『マゴニア大陸』、その首都ニビル・シティの雲海湾の真ん中にある『天空城ラピュタリチス』。

 そこに住まうのが八大龍王が一龍でもあり、『龍国』の元首アヌなのだ。

 他の八大龍王は東方の海上を支配している冥龍王ネルガル・メスラムタエアを除いて、地上のレムリア大陸に散らばってそれぞれ領地を持ち、独立して自由に支配しているのだ。

 よって天空を支配しているのはアヌだけであったため、他の八大龍王よりもアヌは格上の存在とみなされていた。




 ーこうして、コタンコロと『ヴァスコ・ダ・ガマ』は『龍自由連盟』との航路を開くことになるのだった。

 後にこの航路は、東インドラ航路と呼ばれ、ルネサンスの繁栄に大いに貢献することになるのだ。

 インドラとは雷神のことで、コタンコロが雷撃一発で道を開いたことから、名付けられたという……。


~続く~


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