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吸血鬼の陰謀
第131話 吸血鬼の陰謀『選手交代』
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「そうらっ!! 溶けてしまえい! 『アシッド・デフュージョン』っ!」
ジュワジュワジュワアアワワワーーーッ!
またしても、ヘイグが恐ろしい強酸が大量にオレたちのほうへ降り注いできた。
「マスター! 最大熱放射防御態勢、継続します!」
アイは、超ナノテクマシンのひとつひとつで生み出されたその膨大な熱エネルギーで酸を一瞬にして気化させてしまう……。
しかし、超人工頭脳のアイが防御ばかりで攻撃に移れないほどとは……。
(マスター! 選手交代とします。)
(む……!? なにか策があるのか!?)
(イエス! マスター! お任せください。)
(アイ! 頼んだぞ!?)
「イシカ! ホノリ! 選手交代です! こちらへ戻りなさい!」
「ラジャーである!」
「ラジャーなのだ!」
イシカとホノリはすぐさまオレたちのもとへ戻ってくる。
それと同時にヤツラもいったん引いた。
標的を見失ったキュルテンと、攻勢だが決め手にかけるヘイグ、また古着の人形を操りジョナサンさんたちとやり合ってるハールマンも埒が明かないと見たのだろう。
周囲の地面から黒煙が生じている……。
濃硫酸は不揮発性の性質を持った酸だ。さきほどのアイの熱防御で蒸発せず濃縮されたものが黒色化しているのだ。
硫酸は強い脱水作用があり、有機物を分解し、皮膚をおかす。水と混ぜると多量の熱を出す。強い酸化力があるのだ。
「マスター。硫酸を加熱してゆけば、漸次水分を失って濃縮され、98.3%になった時、338.8度に達して、全部が硫酸蒸気となって蒸発してしまいます。この硫酸蒸気は冷却された際に凝縮し液滴となりますが、その液滴の硫酸濃度は98.3%に相当し、濃硫酸ミストとなって空気中に浮遊しています。お気をつけを。」
たしかに、周囲の樹木が溶けている……。
濃硫酸ミストが散開しているようだ。
「おっと……! 風魔法『みどりのそよ風』だ!」
『みどりのそよ風 いい日だね。蝶蝶(ちょうちょ)もひらひら 豆のはな。七色畑に 妹のつまみ菜摘む手が かわいいな!!』
ハールマンが呪文を唱え、濃硫酸ミストを防御した。
なるほど……。風で濃硫酸ミストを吹き飛ばそうというのか……。
「イシカ! 行きまぁーーっっす!!」
「ホノリも! 行くのだぁーーっ!!」
イシカとホノリが前へずずいと進み出た。
アイがそのイシカに話しかける。
「イシカ。アレを頼むわ。」
「任せろであるゾ! アイ様!」
「ホノリは……。わかってるわね?」
「了解なのだーっ!」
「ほぉ……? 俺様に向かってくるのか? 溶けて消滅する危険を冒してでも、近づいてくるのか……。面白いっ!」
ジョン・ヘイグがその両手に瓶を構えた。
大丈夫か……。いくらイシカとホノリの身体がライブメタル(特殊生体金属)製とはいえ、濃硫酸の攻撃にどのくらいの時間を耐えられるのか?
(アイ。ライブメタルって熱にはすごく強いのはわかってるけど、酸に対しての耐性はどうなんだ?)
(イエス。マスター。熱耐性はこの世に存在する物質の中で最高クラスです。酸に対しては、金や白金よりは劣りますが、撥液性(はつえきせい)は非常に高いのです。短い時間であれば活動可能でございます。)
(撥液性(はつえきせい)……? 撥水性(はっすいせい)みたいなもの?)
(ええ。撥水性は水を弾く性質のことですが、撥液性というのはあらゆる液体を弾く性質のことです。)
(つ……つまり?)
(マスターのご存知のもので言うと、フッ素化合のフライパンのようなものです。)
(なるほど。油も水も弾くってことだね?)
(イエス。マスター。)
いずれにしても、危険であることには変わりない。
「イシカ! ホノリ! 気をつけて行くんだぞ!」
「ジン様! 任せるのであるゾ!」
「ジン様! 任せろなのだ!」
青色のロングの髪をたなびかせながら、青の制服姿のホノリが悠然と立つ。
そして、片膝をつき、片膝を立てて両こぶしを両脇の地面につける……。
そして、腰をあげる……。
あれ? これって、陸上の選手がスタートする時の構えじゃないか? さっきの選手交代ってそういう意味だったの!?
その後ろに赤の髪をはらい、赤の制服姿のイシカがホノリの後ろの足を足で押さえている。
あ……! 陸上競技の短距離走でクラウチングスタートを行う際に使用されるスポーツ器具の代わり??
(マスター。スターティングブロック(Starting blocks)と言います。通常、スタブロと略されます。)
(お……。おぅ……。)
「ホノリ! レディーーーーーーーーッ……。」
「GOォオオオーーッツ!!」
ホノリがスタートの合図とともに、弾丸のように超高速でスタートダッシュをした!
シュヴァッ……
速いっ!
「な……!? なんだと!?」
ヘイグが慌てて、その両手の瓶から濃硫酸を周囲にばらまく。
「そうらっ!! 溶けてしまえい! 『アシッド・デフュージョン』っ!」
ジュワジュワジュワアアワワワーーーッ!
「ロケット・ナックル・パァーーーーンッチィイイーーーッ!!」
イシカがその腕を小型ロケットのようにスパイラル状に発射した。
イシカのアームが螺旋を描き、ホノリの周囲を渦状に飛ぶ。
「イシカっ! 今です! 散開・強アルカリシャワーッ!!」
アイがその手をかざして、周囲の超ナノテクマシンに強アルカリの液体を一斉に大量生成するよう指示を出した!
シュワワジュゥシュワワシュシュシュウウウゥウウーーッツ!!
イシカのロケット・ナックルパンチから大量にいきなり空中に生成された強アルカリの液体がスパイラル状に噴射される。
「そうか! 酸とアルカリ! 中和したのか!?」
「イエス! マスター!」
化学の成績が2だったオレでもわかるぞ。酸とアルカリはお互い性質を打ち消し合い、中和してそれぞれの特性を失うんだ!
その渦の中を、世界陸上の選手のように俊足でホノリが駆けていく!
あっという間にヘイグのもとへ距離を詰めたホノリの身体が……。
消えた……?
「な……? どこへ行った!? 魔物の動きかっ!? ちくしょおおお! これでも喰らえぇ! どうだぁっ!!」
ヘイグが自分の周りにさらに強酸をふりまく!
「口を……。閉じるのだっ!」
ホノリはヘイグの真上にいた!
そして高く上に掲げたその右足を、かかとから一直線に降ろした!
「かかと落としっ!!」
グシャワワッ……!!
ジョン・ヘイグの頭部は砕け、スイカが破裂したかのように飛び散った……。
ホノリは、ヘイグの身体の胸元まで食い込んだホノリの足を円を描くかのように回し、引き抜くと、くるりとこちらに向き直った。
「ジン様! やったのだ!」
「ホノリーーっ! よくやった!」
「へへへ……。ジン様に褒められると嬉しいのだ。」
そう言って照れてるホノリは可愛い。
手強い敵を倒した功績も大きい。
だが、そのホノリの背後で、頭部を失ったヘイグの身体が、動いた。
なんと頭を失っても、まだその手にした瓶から濃硫酸攻撃をホノリに行おうとしているのだ……。
「ホノリ! 危ないっ!」
オレがそう叫んだ瞬間ー。
ヒュゥウウーー……
グワシュッ!
なんと空中を舞っていたイシカのロケットナックルが、まだ動いていたヘイグの身体の背後から、その心臓部を貫き、心臓(?)を掴み取ったのだ。
そして、ホノリの隣でその掴んだ心臓を、グシャリと握りつぶした……。
「ジン様。やったであるゾ!」
イシカもこちらを振り返りながら、その目をオレにじっと向けている。
「ああ。イシカも! よくやったよ!」
「ふふふ……。ジン様に褒められると嬉しいのである。」
そう言って照れてるイシカも可愛かったのだ。
~続く~
ジュワジュワジュワアアワワワーーーッ!
またしても、ヘイグが恐ろしい強酸が大量にオレたちのほうへ降り注いできた。
「マスター! 最大熱放射防御態勢、継続します!」
アイは、超ナノテクマシンのひとつひとつで生み出されたその膨大な熱エネルギーで酸を一瞬にして気化させてしまう……。
しかし、超人工頭脳のアイが防御ばかりで攻撃に移れないほどとは……。
(マスター! 選手交代とします。)
(む……!? なにか策があるのか!?)
(イエス! マスター! お任せください。)
(アイ! 頼んだぞ!?)
「イシカ! ホノリ! 選手交代です! こちらへ戻りなさい!」
「ラジャーである!」
「ラジャーなのだ!」
イシカとホノリはすぐさまオレたちのもとへ戻ってくる。
それと同時にヤツラもいったん引いた。
標的を見失ったキュルテンと、攻勢だが決め手にかけるヘイグ、また古着の人形を操りジョナサンさんたちとやり合ってるハールマンも埒が明かないと見たのだろう。
周囲の地面から黒煙が生じている……。
濃硫酸は不揮発性の性質を持った酸だ。さきほどのアイの熱防御で蒸発せず濃縮されたものが黒色化しているのだ。
硫酸は強い脱水作用があり、有機物を分解し、皮膚をおかす。水と混ぜると多量の熱を出す。強い酸化力があるのだ。
「マスター。硫酸を加熱してゆけば、漸次水分を失って濃縮され、98.3%になった時、338.8度に達して、全部が硫酸蒸気となって蒸発してしまいます。この硫酸蒸気は冷却された際に凝縮し液滴となりますが、その液滴の硫酸濃度は98.3%に相当し、濃硫酸ミストとなって空気中に浮遊しています。お気をつけを。」
たしかに、周囲の樹木が溶けている……。
濃硫酸ミストが散開しているようだ。
「おっと……! 風魔法『みどりのそよ風』だ!」
『みどりのそよ風 いい日だね。蝶蝶(ちょうちょ)もひらひら 豆のはな。七色畑に 妹のつまみ菜摘む手が かわいいな!!』
ハールマンが呪文を唱え、濃硫酸ミストを防御した。
なるほど……。風で濃硫酸ミストを吹き飛ばそうというのか……。
「イシカ! 行きまぁーーっっす!!」
「ホノリも! 行くのだぁーーっ!!」
イシカとホノリが前へずずいと進み出た。
アイがそのイシカに話しかける。
「イシカ。アレを頼むわ。」
「任せろであるゾ! アイ様!」
「ホノリは……。わかってるわね?」
「了解なのだーっ!」
「ほぉ……? 俺様に向かってくるのか? 溶けて消滅する危険を冒してでも、近づいてくるのか……。面白いっ!」
ジョン・ヘイグがその両手に瓶を構えた。
大丈夫か……。いくらイシカとホノリの身体がライブメタル(特殊生体金属)製とはいえ、濃硫酸の攻撃にどのくらいの時間を耐えられるのか?
(アイ。ライブメタルって熱にはすごく強いのはわかってるけど、酸に対しての耐性はどうなんだ?)
(イエス。マスター。熱耐性はこの世に存在する物質の中で最高クラスです。酸に対しては、金や白金よりは劣りますが、撥液性(はつえきせい)は非常に高いのです。短い時間であれば活動可能でございます。)
(撥液性(はつえきせい)……? 撥水性(はっすいせい)みたいなもの?)
(ええ。撥水性は水を弾く性質のことですが、撥液性というのはあらゆる液体を弾く性質のことです。)
(つ……つまり?)
(マスターのご存知のもので言うと、フッ素化合のフライパンのようなものです。)
(なるほど。油も水も弾くってことだね?)
(イエス。マスター。)
いずれにしても、危険であることには変わりない。
「イシカ! ホノリ! 気をつけて行くんだぞ!」
「ジン様! 任せるのであるゾ!」
「ジン様! 任せろなのだ!」
青色のロングの髪をたなびかせながら、青の制服姿のホノリが悠然と立つ。
そして、片膝をつき、片膝を立てて両こぶしを両脇の地面につける……。
そして、腰をあげる……。
あれ? これって、陸上の選手がスタートする時の構えじゃないか? さっきの選手交代ってそういう意味だったの!?
その後ろに赤の髪をはらい、赤の制服姿のイシカがホノリの後ろの足を足で押さえている。
あ……! 陸上競技の短距離走でクラウチングスタートを行う際に使用されるスポーツ器具の代わり??
(マスター。スターティングブロック(Starting blocks)と言います。通常、スタブロと略されます。)
(お……。おぅ……。)
「ホノリ! レディーーーーーーーーッ……。」
「GOォオオオーーッツ!!」
ホノリがスタートの合図とともに、弾丸のように超高速でスタートダッシュをした!
シュヴァッ……
速いっ!
「な……!? なんだと!?」
ヘイグが慌てて、その両手の瓶から濃硫酸を周囲にばらまく。
「そうらっ!! 溶けてしまえい! 『アシッド・デフュージョン』っ!」
ジュワジュワジュワアアワワワーーーッ!
「ロケット・ナックル・パァーーーーンッチィイイーーーッ!!」
イシカがその腕を小型ロケットのようにスパイラル状に発射した。
イシカのアームが螺旋を描き、ホノリの周囲を渦状に飛ぶ。
「イシカっ! 今です! 散開・強アルカリシャワーッ!!」
アイがその手をかざして、周囲の超ナノテクマシンに強アルカリの液体を一斉に大量生成するよう指示を出した!
シュワワジュゥシュワワシュシュシュウウウゥウウーーッツ!!
イシカのロケット・ナックルパンチから大量にいきなり空中に生成された強アルカリの液体がスパイラル状に噴射される。
「そうか! 酸とアルカリ! 中和したのか!?」
「イエス! マスター!」
化学の成績が2だったオレでもわかるぞ。酸とアルカリはお互い性質を打ち消し合い、中和してそれぞれの特性を失うんだ!
その渦の中を、世界陸上の選手のように俊足でホノリが駆けていく!
あっという間にヘイグのもとへ距離を詰めたホノリの身体が……。
消えた……?
「な……? どこへ行った!? 魔物の動きかっ!? ちくしょおおお! これでも喰らえぇ! どうだぁっ!!」
ヘイグが自分の周りにさらに強酸をふりまく!
「口を……。閉じるのだっ!」
ホノリはヘイグの真上にいた!
そして高く上に掲げたその右足を、かかとから一直線に降ろした!
「かかと落としっ!!」
グシャワワッ……!!
ジョン・ヘイグの頭部は砕け、スイカが破裂したかのように飛び散った……。
ホノリは、ヘイグの身体の胸元まで食い込んだホノリの足を円を描くかのように回し、引き抜くと、くるりとこちらに向き直った。
「ジン様! やったのだ!」
「ホノリーーっ! よくやった!」
「へへへ……。ジン様に褒められると嬉しいのだ。」
そう言って照れてるホノリは可愛い。
手強い敵を倒した功績も大きい。
だが、そのホノリの背後で、頭部を失ったヘイグの身体が、動いた。
なんと頭を失っても、まだその手にした瓶から濃硫酸攻撃をホノリに行おうとしているのだ……。
「ホノリ! 危ないっ!」
オレがそう叫んだ瞬間ー。
ヒュゥウウーー……
グワシュッ!
なんと空中を舞っていたイシカのロケットナックルが、まだ動いていたヘイグの身体の背後から、その心臓部を貫き、心臓(?)を掴み取ったのだ。
そして、ホノリの隣でその掴んだ心臓を、グシャリと握りつぶした……。
「ジン様。やったであるゾ!」
イシカもこちらを振り返りながら、その目をオレにじっと向けている。
「ああ。イシカも! よくやったよ!」
「ふふふ……。ジン様に褒められると嬉しいのである。」
そう言って照れてるイシカも可愛かったのだ。
~続く~
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