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◇式前30日の記録
26.アドバイス
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リリアの今日の授業は一般常識である。彼女はとても優秀だ、と絶賛されていた。何故なら.........
挨拶から始まり、立ち振る舞いは言わずもがな、パーティーでの服装、身だしなみ、男性への対応、お茶会訪問時の事前準備から迎え方、歓談中のマナー、伝言の受け方、伝え方、手紙の種類から書き方まで.........人間であれば生きて来た中で少しずつ日常の生活の中で学ぶ事細かいルールを一気に頭に詰め込んでいたのだ。中々出来る事では無い。
鳥から生を変えると言う事は生半可では無かった。
次期公爵家当主に嫁ぐ事も決まっている。勿論女神からの御神託があってこその言わば特例だ。本来なら爵位を賜っている貴族子女でなければ高位貴族となど婚姻出来る筈も無い。
リリアは今現実を叩き込まれているのだ。
授業自体は負担の無い様にと昼までにしてあるのだが、リリアは自主学習を止めなかった。追い詰められている訳ではない。自分で追い込んでいたのだ.........寂しくて。
疲れてしまっていた。食事が喉を通らない程.........
「(でも今日は..................テオルドが居る!)」
柱時計の鐘がポーンポーンと優しげに昼の12時を告げる。
「では本日はここまでに致しましょうか。リリア様、また来週お目に掛かります」
「はい、ミネルヴァ夫人。ありがとうございました。また来週」
ニコリと微笑みゆっくり優雅に立席をするリリア。そっと椅子に添えられた白い指先がなんとも楚々としていて見惚れてしまう。可憐でありながら高貴な中に清純な佇まい。高明な画家が描いた1枚の絵を見ている様なそんな気にさせる。
「やはりリリア様はお美しいですわ.........そのお姿に相応しい聡いお方でございますし.........流石は女神様が遣わされたお方。しかも今日は顔色が宜しゅうございますね?何か良い事がごさいましたか?」
「ふふ。褒め過ぎですわ。でも今日はテオルド....様が一緒に昼食をと言って下さって.........とてもウキウキしてます」
「まあ!それはようございした。楽しんで下さいましね?」
「はい。一緒に昼食を頂くのは.........あら?いつ振りかしら。兎に角久しぶりです。しかも今日は果樹林の小川に連れて行ってくれるそうなので」
「ふふふ。ピクニックですね、一杯甘えて来てくださいな。今の時期、お相手のテオルド様も気分が高まっているでしょうし.........あら余計な事でしたわね」
「.........だと、良いのですけれど.........」
「あら?相思相愛だと伺ってますわよ?違うのですか?」
「え?いえ、はい.........ちゃ、ちゃんと.........好意はあります.................よ?」
リリアはピンクにさせた顔を手で抑える。
(好意.........と言うか死ぬ程好きなんだけど)
「まあ、素敵。政略結婚じゃない高位貴族の御結婚は久しぶりでございます。まあ、皆様済んでしまえばそれぞれそれなりに楽しんでいらっしゃいますけど.........わたくしも政略結婚でございましたしね」
「そうなんですね?仲はよろしいのですか?あ.........ワタシったら.........!」
「大丈夫ですよ。夫はとてもおっとりした人で、幼馴染なんですの。わたくしはあの人で良かったと思っておりますから。少々頼りない処も有りますが、わたくしが補えば宜しいので、問題有りません。ふふっ」
「良いですね.........。そんなお互いを必要とする夫婦になれるかしら?卵を産むだけじゃなく番で交互に温めるような、常に連れ添う様なそんな関係.........私に出来るかしら.........」
「勿論ですよ、リリア様。でも、一つだけアドバイスがございます。」
「アドバイス?はい、何でしょう?」
「女は度胸と愛嬌ですわ。決して受け身だけではいけませんし、更に可愛く無ければいけません。ふふ。引いたり押したりが大事でございます。例え夫婦であったとしても、夫に恋をしても良いのです。これから先何年も一緒に居るのですから.........死ぬまで惚れて頂きましょう?恋愛小説など読まれても良いですね。今王都でも挿絵付きの物が流行っているらしいですわよ?」
「はー.........ふふっそうですね。勉強ばかりではいけませんね。本、探してみます。末永く可愛がって頂ける様頑張りますわ。ありがとうございます、ミネルヴァ夫人。何だか先が楽しみになりました」
そう言ってリリアと夫人はふふふっと笑い合った。
挨拶から始まり、立ち振る舞いは言わずもがな、パーティーでの服装、身だしなみ、男性への対応、お茶会訪問時の事前準備から迎え方、歓談中のマナー、伝言の受け方、伝え方、手紙の種類から書き方まで.........人間であれば生きて来た中で少しずつ日常の生活の中で学ぶ事細かいルールを一気に頭に詰め込んでいたのだ。中々出来る事では無い。
鳥から生を変えると言う事は生半可では無かった。
次期公爵家当主に嫁ぐ事も決まっている。勿論女神からの御神託があってこその言わば特例だ。本来なら爵位を賜っている貴族子女でなければ高位貴族となど婚姻出来る筈も無い。
リリアは今現実を叩き込まれているのだ。
授業自体は負担の無い様にと昼までにしてあるのだが、リリアは自主学習を止めなかった。追い詰められている訳ではない。自分で追い込んでいたのだ.........寂しくて。
疲れてしまっていた。食事が喉を通らない程.........
「(でも今日は..................テオルドが居る!)」
柱時計の鐘がポーンポーンと優しげに昼の12時を告げる。
「では本日はここまでに致しましょうか。リリア様、また来週お目に掛かります」
「はい、ミネルヴァ夫人。ありがとうございました。また来週」
ニコリと微笑みゆっくり優雅に立席をするリリア。そっと椅子に添えられた白い指先がなんとも楚々としていて見惚れてしまう。可憐でありながら高貴な中に清純な佇まい。高明な画家が描いた1枚の絵を見ている様なそんな気にさせる。
「やはりリリア様はお美しいですわ.........そのお姿に相応しい聡いお方でございますし.........流石は女神様が遣わされたお方。しかも今日は顔色が宜しゅうございますね?何か良い事がごさいましたか?」
「ふふ。褒め過ぎですわ。でも今日はテオルド....様が一緒に昼食をと言って下さって.........とてもウキウキしてます」
「まあ!それはようございした。楽しんで下さいましね?」
「はい。一緒に昼食を頂くのは.........あら?いつ振りかしら。兎に角久しぶりです。しかも今日は果樹林の小川に連れて行ってくれるそうなので」
「ふふふ。ピクニックですね、一杯甘えて来てくださいな。今の時期、お相手のテオルド様も気分が高まっているでしょうし.........あら余計な事でしたわね」
「.........だと、良いのですけれど.........」
「あら?相思相愛だと伺ってますわよ?違うのですか?」
「え?いえ、はい.........ちゃ、ちゃんと.........好意はあります.................よ?」
リリアはピンクにさせた顔を手で抑える。
(好意.........と言うか死ぬ程好きなんだけど)
「まあ、素敵。政略結婚じゃない高位貴族の御結婚は久しぶりでございます。まあ、皆様済んでしまえばそれぞれそれなりに楽しんでいらっしゃいますけど.........わたくしも政略結婚でございましたしね」
「そうなんですね?仲はよろしいのですか?あ.........ワタシったら.........!」
「大丈夫ですよ。夫はとてもおっとりした人で、幼馴染なんですの。わたくしはあの人で良かったと思っておりますから。少々頼りない処も有りますが、わたくしが補えば宜しいので、問題有りません。ふふっ」
「良いですね.........。そんなお互いを必要とする夫婦になれるかしら?卵を産むだけじゃなく番で交互に温めるような、常に連れ添う様なそんな関係.........私に出来るかしら.........」
「勿論ですよ、リリア様。でも、一つだけアドバイスがございます。」
「アドバイス?はい、何でしょう?」
「女は度胸と愛嬌ですわ。決して受け身だけではいけませんし、更に可愛く無ければいけません。ふふ。引いたり押したりが大事でございます。例え夫婦であったとしても、夫に恋をしても良いのです。これから先何年も一緒に居るのですから.........死ぬまで惚れて頂きましょう?恋愛小説など読まれても良いですね。今王都でも挿絵付きの物が流行っているらしいですわよ?」
「はー.........ふふっそうですね。勉強ばかりではいけませんね。本、探してみます。末永く可愛がって頂ける様頑張りますわ。ありがとうございます、ミネルヴァ夫人。何だか先が楽しみになりました」
そう言ってリリアと夫人はふふふっと笑い合った。
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