(完結)ヤンデルフタリ

Ringo

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6・ヤンデルフタリ

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「……またなのか」

「えぇ、またです」


新旧の側近達と共に嘆息を漏らす相手はこの国の国王夫妻であり、ジョシュア・カーデシアンとアドリアーナ・カーデシアン…僕の両親である。


「昨夜の事が原因?」

「昨夜の夜会で他国から嫁いできたご夫人が、酔いに任せて陛下の手を取ったそうで」

「……あ~…それは……」


嫉妬深い両親は、互いに自分以外の異性が近づくことをよしとせず、挨拶でも必ず家名でしか呼ばないし、どんな相手であろうとも決して踊ることはしない。

そんなふたりなのだから、身体的接触があったとなれば烈火のごとく怒り数日は寝室から出てこなくなる。


「……四日くらいか?」

「一週間は見ておいたほうが宜しいかと。なにせ不意を突かれたことで、ご夫人の胸元に手を差し込まれてしまったそうですから」

「……父上がご無事だといいな」


父上の側近ハロルドと再度嘆息し、最低限の書類だけ回すように手際よく手配していく。

世間では父上の方が嫉妬深いと言われているが、家族や側近からすればしつこさは母上のほうだ。

親切な人達が教えてくれたふたりの過去…特に父上が母上にした愚行を思えば、それも仕方ないと言える…が。


「僕、まだ十六なんだけどなぁ」

「ご立派です」

「嬉しくないやい」


事あるごとに寝室へと籠ってしまうふたりの穴埋めに奔走するハロルドの苦労を慮り、いつからか執務を手伝うようになって…今では早々の譲位すら噂されるようになってしまっている。

そんなことしたら、これ幸いとふたりは遠い離宮に籠って二度と出ては来ないだろう。

ただでさえ、父上は嫉妬から母上を表舞台に立たせることをいやがる。

まだ三十代のふたりは、五人の子供がいるとは思えないほどの熱愛ぶりで…まだ増えそうな気がしているし、あながち間違ってもいないと思う。

実際、五人目はまだ二歳になったばかりだ。

巷では、次はいつ生まれることかと賭けの対象にすらなっていると聞く。


「……来年辺りか?」

「私は再来年辺りかと」

「そのうち孫と子供が同年代で生まれそうだよ」


僕の結婚式は婚約者が十六歳の成人を迎える二年後に控えているが、その頃もまだまだラブラブなのであろう両親の姿が容易に思い浮かぶ。

かくいう僕も、両親の血をしっかり受け継いでいるせいか些か嫉妬深い。

決して体を繋げるようなことはしていないが、その手前までは既に進んでいるし…そのせいで婚約者が着るドレスは母上仕様とされるデザインのものばかりで、使用人達には呆れたような視線を向けられることもしょっちゅう。


「……殿下、くれぐれもお子様は婚姻後でお願い致しますよ。いくら婚姻前のおめでたが増えてきたと言っても、王族としてはなりません」

「分かってるよ」


いくらなんでも未成人の女性を孕ませようとは思わないし、まだまだふたりで過ごしたい。

僕以外の人間が愛する人の腕に抱かれ、あまつさえ僕だけのはずの乳房を口に含むなど。


「……暫く子供はいいかな」

「それもなりません」

「…分かってるよ」


そうだな。

僕も早々に子供を作って両親のように一刻も早くふたりの時間に戻れるようにしよう。






******
(ヤンデルフタリの様子)






「はっ…あ、ダメ…だッ……アディ…ッ…」


上に乗るアドリアーナの腰を強く押さえ、思い切り突き上げると同時に何度目かも分からない白濁を勢いよく吐き出した。

主導権は一切与えてもらえていない。

きっかけは昨夜の夜会。

久し振りに夜会用のドレスに身を包むアドリアーナに夢中でいたら、途中挨拶に来た伯爵が他国から嫁いできた妻を紹介したいと申し出てきた。

伯爵と握手を交わし、離した途端にその手を夫人に取られ…そのまま大きく開いた胸元へと手を差し込まされてしまった。

勿論すぐに抜き取ったし、即刻退場を命じたが…隣にいるアドリアーナから伝わってくる怒りと悲しみの念が強く、結局は俺達もそのまま会場をあとにして今に至る。

部屋に入るや否や衣服を剥ぎ取られ、女に触れた手が穢らわしいと言われながら共に湯に浸かってこれでもかと洗い、そのままその場でアドリアーナの口擊に陥落させられ…寝台に移ってからは身体中に隙間なく痕付けを受け、早く繋がりたいと強請ってダラダラと垂れるモノを手慣れた様子で焦らされて、入りそうで入らない状況が続き…そこからはもうアドリアーナの独壇場だ。

そして念願だったアドリアーナの中へ数度の吐精を遂げた今、くたりと全体重をかけて凭れかかってきている柔らかな体を抱き締めている。

決してわざとではなかったし、あの女の肌や胸に触れたところで何も感じない。

稀に過度な露出をしたデザインのドレスを纏って近付いてくる女もいるが、一切の露出をしないアドリアーナの方が魅力的だとも思う。

さらに言えば、アドリアーナが露出をしない理由が俺のせいなのだから余計に。

けれど他の女の肌…ましてや胸元に手を添えたなど、逆だったらと思えば頭に血がのぼる。

もしアドリアーナの胸元に手を差し込まれたら?

もしアドリアーナの手が男の股間に運ばれたら?

もし…アドリアーナの秘所に他の男のモノが我が物顔で出入りしたら?

そして……俺以外を知らないここに、俺以外の男が精を放ったら?


「……えっ、ジョシュ……ッ…」


あり得ないことを思い浮かべてしまい、嫉妬に駆られぐるりと体制を変えて組み敷くと、当の本人は戸惑いながらもどこか嬉しそうにはにかむ。

中に埋めたままのモノは芯を保ったまま。

既にどちらのものか判別不能なほどに溢れている体液を掻き出すようにして抽挿すれば、先ほどまでの苛烈さはどこへやら、とろんと蕩けて甘い吐息を漏らしている。


「アディ…は誰の場所?」

「ん…ぁ……ジョ、シュ…の……っ…」

は誰のモノ?」

「わた…っ、しの…」

「その通りだ」


決して忘れてくれるなと言ってガツンと勢いよく突けば、アドリアーナはビクンと体を跳ねさせ中を収縮させた。


「俺はアドリアーナのものだし、アドリアーナは俺のものだ。ここに出入りするのも、ここに好きなだけ注げるのも俺だけ」


アドリアーナの薄い腹がぽっこりと膨らんで、俺のモノの形が分かるそこを指で撫でると、それを視界に入れたせいか膣内が歓喜している。


「アドリアーナ…アディ…俺だけの愛しい人…」


初めて繋がったあの夜から、互いの愛称を改め呼び合うようになった。

それは互いのみに許したもので、たとえ家族であろうと許可はしない。

稀に自信過剰な女が名前呼びをしてくることもあるが、そんな女は二度と王家主催の宴には現れることはなく、そもそもはかつて愚かな行いをした俺だから舐められているのだろうとは分かるが、そんな気などもう二度と起こすつもりもないし起きない。

今では常にアドリアーナの腰を抱いている俺に声をかける者も減ってはきたが、当時のことを知らない若年の令嬢や他国の者が隙を突こうとしてくることが煩わしいとさえ思う。

俺にはアドリアーナさえいてくれればいい。

アドリアーナの中にだけ入れればいい。


「アディ…アディ……ッ…」


形勢逆転で激しく穿ち続ける俺の下で、決して手放すことなど出来ない最愛が、何度も達しては涙を流しながら身を震わせ啼いている。


「やっ、も……ッ…ぁ……ジョ、シュ…ッ…」


普段なら絶対に泣かせるようなことはしないし、涙を見ようものなら動揺しかしないが、寝台の上で流す涙はどこまでも俺の独占欲を満たす。

卑猥な水音と甘い啼き声が響く室内で、存在するのはふたりだけ。

いつまでもこうしていたい。

もう外に出したくもない。

ずっと俺だけに捕らわれていてほしい。


「…くっ……出る…っ……アディ…ッ、、」


腰を掴んで思い切り打ち付け、より奥へと届くように捩じ込んで解き放つ。

激しい嫉妬と独占欲に駆られていたせいか、その勢いと吐き出される量に自分でも驚いた。

既に限界のアドリアーナはピクピクと痙攣しているが、ぐりぐりと押し付けながら更に吐き出している俺も快感から腰が震えてしまう。

夫人会で夫婦の営みについて話題があがった際、どうやら俺は人並み以上に回数と量が多いのだと指摘されたらしい。

だからどうした。

何度だってしたいし、愛しいアドリアーナに注げると思えば幾らでも充填されるんだ。

いつだかの茶会で、夫人と愛人が同席する事態があったとの報告を受けた時、アドリアーナはひどく落ち込んでいた。


『ジョシュも…他で試したいとか……若い方がいいとか…思ったりする?』


言わずもがな、結婚してからの事。

過去の愚行をなかったことにはしないし、出来るはずもなく、けれどアドリアーナはこうしてを見て話してくれる。

その健気さが愛しくて、同時にまだまだ愛し足りていないなのだと脳内変換され欲情へと繋がってしまい……


『愛しているのも抱きたいと思うのもアドリアーナだけだ』


そう言って組み敷けば、恥ずかしそうに…それでいて嬉しそうに受け入れてくれる。


『決して他を見ないで…そうでないと、あなたを殺してしまう…そのくらい愛してるの』


君がそう言うたび、俺が歓喜に打ち震えているなど気付いていないのだろう。

殺したいほどに愛してるなどと言われ、喜ばないわけがなく、そんな俺達の愛し方を異常だと…主にハロルドを筆頭に揶揄する者もいるが、他人にどうこう言われようと構わない。

俺も、アドリアーナを殺したいほどに愛してる。




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