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25話
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気まずい気持ちを抱えながらも離れたくなくて東雲には話せずにいる。普通に接しているようで、少しぎこちない態度に東雲も何か勘づいているのか何度かどうかした?と聞かれたけれどその度に当たり障りなくなんでもないと返していた。泊まりの予定も都合がつかないと断ったのは初めてで、久しぶりの一人の休みは結局東雲のことを考えるだけで終わってしまった。
仕事でもわざと忙しさを作りだして会わなくても不自然じゃないように避けていたけれど、清水との時間がなくなった分大和との時間は増えたようで今までより更に二人で居る所を見るようになってしまった。
「のんちゃん泣くくらいなら東雲とお話し~よ」
「うぐ……そうだけど、話したら終わる」
「でも避けてる時点で終わりちゃう?」
もっともな西村の話に何も言い返せないでいる。今日も今日とて挨拶はしたがお昼も一緒じゃなかったし帰りのご飯も仕事が忙しくて、と断った。いざ帰りの今になって寂しさが募り、東雲の顔が見たくなる。
「ちゃあんと仲直りしいやぁ」
「ん……心配ありがとう、じゃあね」
「いえいえ、ほな気を付けてなぁ」
手を振って帰っていく西村の背中を見ながら帰ろうと振り返る。
「うわっ」
「清水先輩ですよね?」
振り返った先に至近距離の大和がいて悲鳴をあげてしまう。にこにこと人懐っこそうに笑う大和に後退りをして距離をとる。
「2課の大和です!」
「え、あ、うん……1課の清水です…?」
「東雲先輩ってご存知ですか?」
「そりゃあ同期だし……?」
「ですよねですよね」と笑う大和に怪訝な顔を向けていると、緩やかに弧を描いた瞳が挑発的な視線に変わっていく。
「ちなみに西村先輩とは付き合ってますか?」
「は……?いや付き合ってないけど」
「なぁんだ…じゃあ恋人はいますか?」
何がしたいのかわからない。挨拶や業務のこと以外ではほとんど話すことの無い大和のプライベートな質問に困惑する。東雲を狙ってるんじゃないのか?もしかして東雲とぼくが付き合ってると思って牽制しに来たのか?…そんなことないのに。
「なにがしたいんだ……?」
「礼乃!なにしてんの!清水も近付かないで」
慣れた声が聞こえて大和と引き離される。大和の肩を掴んで自分の近くへと引き寄せたのは東雲で、その顔には焦りが伺える。それだけで疑念は確信へと変わっていった。もう、もう既に二人は付き合っているのか。
だから2人の間にぼくは邪魔だって?ぼくのことは名前で呼ばないくせに大和の名前は呼ぶのも、肩を抱いて引き寄せるのも……ぼくにはもう触ってすらくれないのも、全部ぼくに近付かせたくないほど大和は大事で…本命にセフレが近付かれるのが嫌だからか。
今まで見て見ぬふりしてきた思考が大和の肩を抱く東雲を見た途端一瞬で頭の中を支配していく。もう愛おしい人の一番は自分じゃないという現実に胸が苦しくなってまた嫌気がさす。もともと1番じゃなかったなんて考えたくなかった、自分以外に焦った態度をとる東雲にやっぱりぼくはワガママに付き合わせていたんだと押しつぶされそうになる。
「……いない、恋人なんていない!」
「清水?どうし、」
「大和も変なことを聞かないでくれ、東雲と付き合ってるんだからぼくの恋人事情なんていらないだろ!?」
東雲の言葉を遮って叫んだ。もうぼくのことなど忘れて欲しい、東雲の言葉に一喜一憂して舞い上がるぼくはさぞ滑稽で面白かっただろう。
「東雲も、もうぼくに付き合って連絡したり甘えさせなくていいよ、ぼくは1人で大丈夫だ、甘えられるの苦手なんだろ?」
今にも泣き出しそうな声音では大丈夫ではないと言っているようだった。「……もしかして前の聞こえて、」と東雲の方が驚いたような顔で話してくるからなに東雲の方が驚いているんだ、とつい頭に血が上る。
「聞こえてた、勝手に舞い上がって恋人面してごめん、滑稽で面白かっただろ。でももうやめるから、東雲は優しいからぼくに合わせてくれてたんだよな」
堪らず溢れた涙が頬を伝った。もう止められない涙がぼたぼたと落ちていくのを見た東雲が手を伸ばしてきたがそれも振り払って逃げるように走り去る。これで終わり、終わったんだ、東雲と仲良くなる前に戻るだけ。
走れるとこは走って、家に着く頃にははあはあと息が上がっていた。とめどない涙は拭っても出てくるし、引きちぎれそうなほど痛む胸はなにをしても苦しい。走ったからか失恋したからか、体から発せられる熱に足元がふらふらとする。
あぁ、ちがうこれは
「なんでこんな時にヒートなんてくるんだ」
周期の乱れた軽いヒートじゃない、三ヶ月に一度くる、オメガの本能としてのヒートが来た。
着替える余裕もなく服を脱いでベッドの中へと倒れ込む。西村にヒートが来たから一週間ほど休むとだけ連絡を入れてベッドの中で沈みこんだ。
仕事でもわざと忙しさを作りだして会わなくても不自然じゃないように避けていたけれど、清水との時間がなくなった分大和との時間は増えたようで今までより更に二人で居る所を見るようになってしまった。
「のんちゃん泣くくらいなら東雲とお話し~よ」
「うぐ……そうだけど、話したら終わる」
「でも避けてる時点で終わりちゃう?」
もっともな西村の話に何も言い返せないでいる。今日も今日とて挨拶はしたがお昼も一緒じゃなかったし帰りのご飯も仕事が忙しくて、と断った。いざ帰りの今になって寂しさが募り、東雲の顔が見たくなる。
「ちゃあんと仲直りしいやぁ」
「ん……心配ありがとう、じゃあね」
「いえいえ、ほな気を付けてなぁ」
手を振って帰っていく西村の背中を見ながら帰ろうと振り返る。
「うわっ」
「清水先輩ですよね?」
振り返った先に至近距離の大和がいて悲鳴をあげてしまう。にこにこと人懐っこそうに笑う大和に後退りをして距離をとる。
「2課の大和です!」
「え、あ、うん……1課の清水です…?」
「東雲先輩ってご存知ですか?」
「そりゃあ同期だし……?」
「ですよねですよね」と笑う大和に怪訝な顔を向けていると、緩やかに弧を描いた瞳が挑発的な視線に変わっていく。
「ちなみに西村先輩とは付き合ってますか?」
「は……?いや付き合ってないけど」
「なぁんだ…じゃあ恋人はいますか?」
何がしたいのかわからない。挨拶や業務のこと以外ではほとんど話すことの無い大和のプライベートな質問に困惑する。東雲を狙ってるんじゃないのか?もしかして東雲とぼくが付き合ってると思って牽制しに来たのか?…そんなことないのに。
「なにがしたいんだ……?」
「礼乃!なにしてんの!清水も近付かないで」
慣れた声が聞こえて大和と引き離される。大和の肩を掴んで自分の近くへと引き寄せたのは東雲で、その顔には焦りが伺える。それだけで疑念は確信へと変わっていった。もう、もう既に二人は付き合っているのか。
だから2人の間にぼくは邪魔だって?ぼくのことは名前で呼ばないくせに大和の名前は呼ぶのも、肩を抱いて引き寄せるのも……ぼくにはもう触ってすらくれないのも、全部ぼくに近付かせたくないほど大和は大事で…本命にセフレが近付かれるのが嫌だからか。
今まで見て見ぬふりしてきた思考が大和の肩を抱く東雲を見た途端一瞬で頭の中を支配していく。もう愛おしい人の一番は自分じゃないという現実に胸が苦しくなってまた嫌気がさす。もともと1番じゃなかったなんて考えたくなかった、自分以外に焦った態度をとる東雲にやっぱりぼくはワガママに付き合わせていたんだと押しつぶされそうになる。
「……いない、恋人なんていない!」
「清水?どうし、」
「大和も変なことを聞かないでくれ、東雲と付き合ってるんだからぼくの恋人事情なんていらないだろ!?」
東雲の言葉を遮って叫んだ。もうぼくのことなど忘れて欲しい、東雲の言葉に一喜一憂して舞い上がるぼくはさぞ滑稽で面白かっただろう。
「東雲も、もうぼくに付き合って連絡したり甘えさせなくていいよ、ぼくは1人で大丈夫だ、甘えられるの苦手なんだろ?」
今にも泣き出しそうな声音では大丈夫ではないと言っているようだった。「……もしかして前の聞こえて、」と東雲の方が驚いたような顔で話してくるからなに東雲の方が驚いているんだ、とつい頭に血が上る。
「聞こえてた、勝手に舞い上がって恋人面してごめん、滑稽で面白かっただろ。でももうやめるから、東雲は優しいからぼくに合わせてくれてたんだよな」
堪らず溢れた涙が頬を伝った。もう止められない涙がぼたぼたと落ちていくのを見た東雲が手を伸ばしてきたがそれも振り払って逃げるように走り去る。これで終わり、終わったんだ、東雲と仲良くなる前に戻るだけ。
走れるとこは走って、家に着く頃にははあはあと息が上がっていた。とめどない涙は拭っても出てくるし、引きちぎれそうなほど痛む胸はなにをしても苦しい。走ったからか失恋したからか、体から発せられる熱に足元がふらふらとする。
あぁ、ちがうこれは
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周期の乱れた軽いヒートじゃない、三ヶ月に一度くる、オメガの本能としてのヒートが来た。
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