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27話-シノノメ-
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甘えるのが苦手な清水が最大限甘えられるように、愛おしい清水が離れていかないように、清水のペースに合わせて言葉にしながらちゃんと伝えてきたつもりだった。けれどやっとの思いで自分のものになった清水の態度がどこかぎこちなくなって、すぐにその日はやってきた。
徐々に減っていった触れ合いに疑問符を思い浮かべた時にはもう遅く、清水に何かあったのか聞いても『なんでもない』と答えるだけで具体的な何かは教えてくれない。恋人としての情事どころかキスすら求められなくなった時には寝る時でさえ拒否をするように背を向けられていた。それでも抱きしめると縮こまりながらも受け入れてくれる清水に胸をなでおろしまだ触れると安心していたのだ。
会社帰りに食事に行くこともなくなり、せめて声くらいは聞きたいと電話をしても早々に眠ると言う清水にもう少し付き合ってほしいとは言い出せなかった。触れ合うことは出来ずとも愛を伝えることは出来ると清水に好きだのなんだのとしつこく伝えてきたが返ってくる言葉は『ぼくもだよ』の一言のみ。好きという言葉さえ投げてくれなくなった清水に更に疑問が募っていく。全身から東雲に対する感情を放っているのに何故避けるのか、東雲には分からなかった。
「早く触りたいよ、清水」
小さくつぶやいた言葉は空気へと溶ける。それでも清水に誤解されたくなくて、距離の近い大和に再三近すぎると注意してきたが元からパーソナルスペースの狭い大和との距離は変わらなかった。おまけに人のものが好き、という特殊な性癖を持つ後輩は自分を狙っているようで、注意が清水に向かないようにするのも大変だった。大和の性癖に加えて清水の見た目は大和にドンピシャだったから。
だから会議室では恋人がいないと伝えた、自分への興味を失って別の人にいけば良いと。まさかとりとめのない一言が自分に返ってくるとは思わなかった。
些細な言葉も清水にとっては凶器になり得ることを理解していたはずなのに、清水から避けられている理由が大和にあるなら大和と距離をおけていない今は清水が近づいてくることがないだろう、ましてやこれだけ愛を毎日囁いているのだから清水が自分の愛を疑うはずはないとたかをくくっていた自分の甘さが招いたのだ。
大和との会議室での会話から間もなく、同僚の西村に手を引かれて俯く清水と目が合ったような気がした。……泣いている?まさか聞かれていたのかと清水のところに行こうとしたがいつもよりして仕事に集中してる清水に結局話かけられず、それでも気になったからメッセージだけ入れて業務に戻ったのだ。数時間後に返ってきた返信は『泣いてないよ』というメッセージ。
それなら西村となにかあったのだろうか?名前を呼んで手を握り、自分以上に恋人らしく振る舞う西村に適うものなど有るのだろうか。
清水への心配が募る矢先、大和が清水に話しかけているのを見つけてしまう。薄らとフェロモンを漂わせる清水に距離の近い大和、嫌悪感を示す清水の表情から焦って大和を引き剥がすと、清水が突然話し出した。
恋人は居ない、俺と付き合っているのは大和だと大粒の涙を流して突き放してくる清水に頭の中が真っ白になった。恋人面?滑稽?そんな事は思ったことすらなかった。会議室での言葉は弁明の余地もないまま清水が走り去る。愛しい人を泣かせた俺に追いかける権利などあるのだろうか。
「やっぱ先輩恋人いるじゃん今振られたっぽいですけど?」
「……あぁ、俺の大切な人だよ」
頭を抱えながら深くため息をつく。今行ってもきっと清水は話してくれない。なにより俺は清水の家すら知らないのだ。とりあえず明日しっかり話そう、清水を悩ませて泣かせてしまったことを謝りたい。
けれど朝になっても清水の姿は一向に見えなかった。連絡を入れても返信は来ない。何も知らない自分は清水のペースに合わせていると言いながら拒否されるのが怖かったのだと思い知る。こんなことになるなら嫌がられてでも自ら色んなことを聞いておくべきだった。
徐々に減っていった触れ合いに疑問符を思い浮かべた時にはもう遅く、清水に何かあったのか聞いても『なんでもない』と答えるだけで具体的な何かは教えてくれない。恋人としての情事どころかキスすら求められなくなった時には寝る時でさえ拒否をするように背を向けられていた。それでも抱きしめると縮こまりながらも受け入れてくれる清水に胸をなでおろしまだ触れると安心していたのだ。
会社帰りに食事に行くこともなくなり、せめて声くらいは聞きたいと電話をしても早々に眠ると言う清水にもう少し付き合ってほしいとは言い出せなかった。触れ合うことは出来ずとも愛を伝えることは出来ると清水に好きだのなんだのとしつこく伝えてきたが返ってくる言葉は『ぼくもだよ』の一言のみ。好きという言葉さえ投げてくれなくなった清水に更に疑問が募っていく。全身から東雲に対する感情を放っているのに何故避けるのか、東雲には分からなかった。
「早く触りたいよ、清水」
小さくつぶやいた言葉は空気へと溶ける。それでも清水に誤解されたくなくて、距離の近い大和に再三近すぎると注意してきたが元からパーソナルスペースの狭い大和との距離は変わらなかった。おまけに人のものが好き、という特殊な性癖を持つ後輩は自分を狙っているようで、注意が清水に向かないようにするのも大変だった。大和の性癖に加えて清水の見た目は大和にドンピシャだったから。
だから会議室では恋人がいないと伝えた、自分への興味を失って別の人にいけば良いと。まさかとりとめのない一言が自分に返ってくるとは思わなかった。
些細な言葉も清水にとっては凶器になり得ることを理解していたはずなのに、清水から避けられている理由が大和にあるなら大和と距離をおけていない今は清水が近づいてくることがないだろう、ましてやこれだけ愛を毎日囁いているのだから清水が自分の愛を疑うはずはないとたかをくくっていた自分の甘さが招いたのだ。
大和との会議室での会話から間もなく、同僚の西村に手を引かれて俯く清水と目が合ったような気がした。……泣いている?まさか聞かれていたのかと清水のところに行こうとしたがいつもよりして仕事に集中してる清水に結局話かけられず、それでも気になったからメッセージだけ入れて業務に戻ったのだ。数時間後に返ってきた返信は『泣いてないよ』というメッセージ。
それなら西村となにかあったのだろうか?名前を呼んで手を握り、自分以上に恋人らしく振る舞う西村に適うものなど有るのだろうか。
清水への心配が募る矢先、大和が清水に話しかけているのを見つけてしまう。薄らとフェロモンを漂わせる清水に距離の近い大和、嫌悪感を示す清水の表情から焦って大和を引き剥がすと、清水が突然話し出した。
恋人は居ない、俺と付き合っているのは大和だと大粒の涙を流して突き放してくる清水に頭の中が真っ白になった。恋人面?滑稽?そんな事は思ったことすらなかった。会議室での言葉は弁明の余地もないまま清水が走り去る。愛しい人を泣かせた俺に追いかける権利などあるのだろうか。
「やっぱ先輩恋人いるじゃん今振られたっぽいですけど?」
「……あぁ、俺の大切な人だよ」
頭を抱えながら深くため息をつく。今行ってもきっと清水は話してくれない。なにより俺は清水の家すら知らないのだ。とりあえず明日しっかり話そう、清水を悩ませて泣かせてしまったことを謝りたい。
けれど朝になっても清水の姿は一向に見えなかった。連絡を入れても返信は来ない。何も知らない自分は清水のペースに合わせていると言いながら拒否されるのが怖かったのだと思い知る。こんなことになるなら嫌がられてでも自ら色んなことを聞いておくべきだった。
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