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28話-シノノメ-
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入口から清水の香りがして振り向くと、西村がギリギリの時間で出社している所だった。……なんで西村から清水の匂いが?べっとりと清水の匂いを纏う西村は清水がいなくてもさも当然と仕事をしていて、清水に何かあったのかと心配が募っていく。
おそらくベータの西村には清水の匂いが付いていることなんて気付かないだろう、もはやマーキングに近い匂いの付き方は私たちは恋人ですとアピールしているようにも見えるが、清水に限ってそんなことはあるわけない。いやそう思わないと嫉妬でどうにかなりそうだった。
「西村、ちょっといい?」
「へっ?おれ?珍しいやん東雲から話しかけてくんの」
隙を見つけて西村に話しかける。誰かに匂いが付くほどフェロモンが出ている、ということはおそらく本ヒートが来たのだろう。アルファの居ないヒートは辛いと聞く、もしかしたら清水が苦しんでいるかもしれないと思うといてもたってもいられなかった。
「清水は休み?」
「まぁそんなとこ」
「大丈夫…なんだよね?」
「うーん」と唸りながら顔を見た西村は「教えたらん」とそっぽを向く。今の東雲には西村しか頼る人がいないというのに、彼にまで拒否をされるともうとうとう為す術ない。
「璃暖泣かしといて今更心配するん?」
「……ごめん、フェロモン流れてる清水に大和が近くて焦った」
「あーたぶんそれちゃうな、会議室とか、それ以外にも泣いとったもん」
……は?あれ以外で泣かしていた?清水を?
清水が何で悩んでいるかわからない以上、その事実だけが胸を締め付ける。
「まぁとりあえず上着貸して、のんちゃんにそれ持っていくから」
上着だけを持って行くくらいなら自分も連れて行ってほしいと頼んでも、西村には「それは嫌、のんのために持っていくだけやもん」と断られる。とても親しげな西村にまたモヤ、と胸に陰りが出来ても今の自分にそんな資格はない。
どれほど好きを伝えてもちゃんと話さず大和を拒否しなかった自分のせいだ、この状況になって清水が心配で堪らない。
とりあえず服を西村に貸して清水に持って行ってもらう日が2日ほど続いた。今日は金曜日で土日は西村に会えない。つまりは清水の体調を聞くことも出来なくなるのだ。心配で仕方ないのに何も出来ない自分に腹が立つ。けれどそんなことをしている暇はない。
「西村、清水の家教えて欲しい」
もう何度目かの交渉に、西村がじっと顔を見つめてくる。西村と清水がもしかした良い関係なのかもしれないとか、大和が清水を狙うかもしれないとか、もはやそんなことはどうでも良かった。日に日に増す西村に付いた清水のフェロモンに、苦しまないで欲しいと願うだけ。
「……ええよ、もう傷付けんといて」
「約束する」
そう話していると西村が清水の家の住所を教えてくれる。会いたい、その感情に突き動かされてすぐに会社を飛び出した。着いた住所は外からでもわかるほど清水のフェロモンが漂っていて、ここに居るのだと安堵する。
扉の前でインターフォンを鳴らそうとした時、がちゃっと鍵の開く音ともに誰かが倒れる音がした。思わず扉を開けた先には意識を失った清水がいる。部屋の中に一歩入ればそこは甘くて魅惑的な清水の匂いで充満していた。ラットを起こしてもおかしくはない状況で、それよりも倒れた清水への心配が勝って抱きかかえる。
久しぶりに抱きしめた清水は痩せたのか小さくなっていて、まともに食事も取れていないのだろうと推測する。汗ばんだ体に……よく見ると東雲の服一枚だけの清水。匂いだけでもくらくらする程官能的なのに、こんなことをされたら期待してしまう。
苦しげに唸る清水に申し訳なさを感じつつも部屋の中へと入っていくと、寝室はより濃い匂いでいっぱいだった。シーツやベッド周りには苦しんだであろう自慰の痕跡と、今まで貸してきた服たちがぐしゃぐしゃになって置かれている。
ヒートのオメガの世話などしたことはない。けれど少しでも休ませたいと体を拭いていると、清水の体は全てを快楽へと変えて「ぅぅ、うーーっ」と眠りながらも辛そうに射精する、苦しまないように、しんどくならないように細心の注意を払って体を拭き、持ってきた材料でお粥を作る。キッチンから戻る頃には薄らと意識を取り戻した清水が力なく股に手を伸ばし自慰をしていた。
きっと見られたくないだろう、けれど食べなければこのまま死んでしまうのではないかと思うほどふらふらな清水にゆっくりと声をかけた。
「……清水」
「うぁ、しののめ……?しののめだぁ」
うつろな瞳と視線が合う。ふにゃりと笑いながら手が伸ばされ、ぎゅっと握った途端体をびくびくと震わせてまた果てる清水に、頭がおかしくなりそうだった。
「みな、いで……」
徐々に覚醒してきた意識で嫌だ嫌だと首を振る清水に無理やり冷ました粥を食べさせる。
「飲み込んで、大丈夫…ご飯を食べるのも満たされて気持ちいいね」
そんな声をかけてあげれば快楽に支配された脳は素直に口を開けてぱく、ぱく、とゆっくりお粥を飲み込んでいく。少しの時間をかけて食べ終わった清水は睡眠欲も食欲も満たされたのか、また体温があがりだして、
「やだ、やだ、東雲に見られたくない」
とぽろぽろと涙を流しだす。
性欲に流されそうになる可愛い清水を静かに抱き締めた。
「大丈夫だから……早く楽になろう?清水も辛いでしょ?」
嫌かもしれないけど、清水が苦しいのはもっと嫌だから。そう話してあげると清水の瞳はまたとろんと蕩けて東雲を受け入れていく。抵抗なくベッドに沈む清水にいつぶりかのキスをして、久しぶりの素肌に触れていく。
おそらくベータの西村には清水の匂いが付いていることなんて気付かないだろう、もはやマーキングに近い匂いの付き方は私たちは恋人ですとアピールしているようにも見えるが、清水に限ってそんなことはあるわけない。いやそう思わないと嫉妬でどうにかなりそうだった。
「西村、ちょっといい?」
「へっ?おれ?珍しいやん東雲から話しかけてくんの」
隙を見つけて西村に話しかける。誰かに匂いが付くほどフェロモンが出ている、ということはおそらく本ヒートが来たのだろう。アルファの居ないヒートは辛いと聞く、もしかしたら清水が苦しんでいるかもしれないと思うといてもたってもいられなかった。
「清水は休み?」
「まぁそんなとこ」
「大丈夫…なんだよね?」
「うーん」と唸りながら顔を見た西村は「教えたらん」とそっぽを向く。今の東雲には西村しか頼る人がいないというのに、彼にまで拒否をされるともうとうとう為す術ない。
「璃暖泣かしといて今更心配するん?」
「……ごめん、フェロモン流れてる清水に大和が近くて焦った」
「あーたぶんそれちゃうな、会議室とか、それ以外にも泣いとったもん」
……は?あれ以外で泣かしていた?清水を?
清水が何で悩んでいるかわからない以上、その事実だけが胸を締め付ける。
「まぁとりあえず上着貸して、のんちゃんにそれ持っていくから」
上着だけを持って行くくらいなら自分も連れて行ってほしいと頼んでも、西村には「それは嫌、のんのために持っていくだけやもん」と断られる。とても親しげな西村にまたモヤ、と胸に陰りが出来ても今の自分にそんな資格はない。
どれほど好きを伝えてもちゃんと話さず大和を拒否しなかった自分のせいだ、この状況になって清水が心配で堪らない。
とりあえず服を西村に貸して清水に持って行ってもらう日が2日ほど続いた。今日は金曜日で土日は西村に会えない。つまりは清水の体調を聞くことも出来なくなるのだ。心配で仕方ないのに何も出来ない自分に腹が立つ。けれどそんなことをしている暇はない。
「西村、清水の家教えて欲しい」
もう何度目かの交渉に、西村がじっと顔を見つめてくる。西村と清水がもしかした良い関係なのかもしれないとか、大和が清水を狙うかもしれないとか、もはやそんなことはどうでも良かった。日に日に増す西村に付いた清水のフェロモンに、苦しまないで欲しいと願うだけ。
「……ええよ、もう傷付けんといて」
「約束する」
そう話していると西村が清水の家の住所を教えてくれる。会いたい、その感情に突き動かされてすぐに会社を飛び出した。着いた住所は外からでもわかるほど清水のフェロモンが漂っていて、ここに居るのだと安堵する。
扉の前でインターフォンを鳴らそうとした時、がちゃっと鍵の開く音ともに誰かが倒れる音がした。思わず扉を開けた先には意識を失った清水がいる。部屋の中に一歩入ればそこは甘くて魅惑的な清水の匂いで充満していた。ラットを起こしてもおかしくはない状況で、それよりも倒れた清水への心配が勝って抱きかかえる。
久しぶりに抱きしめた清水は痩せたのか小さくなっていて、まともに食事も取れていないのだろうと推測する。汗ばんだ体に……よく見ると東雲の服一枚だけの清水。匂いだけでもくらくらする程官能的なのに、こんなことをされたら期待してしまう。
苦しげに唸る清水に申し訳なさを感じつつも部屋の中へと入っていくと、寝室はより濃い匂いでいっぱいだった。シーツやベッド周りには苦しんだであろう自慰の痕跡と、今まで貸してきた服たちがぐしゃぐしゃになって置かれている。
ヒートのオメガの世話などしたことはない。けれど少しでも休ませたいと体を拭いていると、清水の体は全てを快楽へと変えて「ぅぅ、うーーっ」と眠りながらも辛そうに射精する、苦しまないように、しんどくならないように細心の注意を払って体を拭き、持ってきた材料でお粥を作る。キッチンから戻る頃には薄らと意識を取り戻した清水が力なく股に手を伸ばし自慰をしていた。
きっと見られたくないだろう、けれど食べなければこのまま死んでしまうのではないかと思うほどふらふらな清水にゆっくりと声をかけた。
「……清水」
「うぁ、しののめ……?しののめだぁ」
うつろな瞳と視線が合う。ふにゃりと笑いながら手が伸ばされ、ぎゅっと握った途端体をびくびくと震わせてまた果てる清水に、頭がおかしくなりそうだった。
「みな、いで……」
徐々に覚醒してきた意識で嫌だ嫌だと首を振る清水に無理やり冷ました粥を食べさせる。
「飲み込んで、大丈夫…ご飯を食べるのも満たされて気持ちいいね」
そんな声をかけてあげれば快楽に支配された脳は素直に口を開けてぱく、ぱく、とゆっくりお粥を飲み込んでいく。少しの時間をかけて食べ終わった清水は睡眠欲も食欲も満たされたのか、また体温があがりだして、
「やだ、やだ、東雲に見られたくない」
とぽろぽろと涙を流しだす。
性欲に流されそうになる可愛い清水を静かに抱き締めた。
「大丈夫だから……早く楽になろう?清水も辛いでしょ?」
嫌かもしれないけど、清水が苦しいのはもっと嫌だから。そう話してあげると清水の瞳はまたとろんと蕩けて東雲を受け入れていく。抵抗なくベッドに沈む清水にいつぶりかのキスをして、久しぶりの素肌に触れていく。
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