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一章
魔法の鞄ゲット
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「くそっ、とんでもない客だったな……」
ミイラとなっている女の死体を前にして、俺はそうぼやく。
今度こそまともなお客様が来たと思ったら、全然まともじゃなかった。宿の備品を片っ端から盗んでいく泥棒だった。油断してたら家の中がスッカラカンになった。
いや、もう泥棒ってレベルじゃないな。略奪である。略奪者だ。とにかく最低最悪の客だった。
「うぅ、今度こそまともなお客様が来てくれたと思ったのに……」
またもや俺たちのおもてなしの気持ちが無下にされてしまった。異世界の野蛮人に土足で踏みにじられてしまった。悲しすぎるぜ。
初めての女性客だったからお高めの石鹸をサービスして、さらにはタオルも新調して出してあげたのに。脱衣場の仕切りも大きいものに交換して、籠もお洒落なものに変えたのに。部屋のインテリアとかもこだわって花瓶とかも設置したのに。カーテンの色とかもこだわったのに。トイレにも芳香剤を設置したのに。夕食も野菜多め辛さ控え目のヘルシーなチキンカレーにしたのに。美味しいサラダも付けたのに――。
そうやって一生懸命おもてなししたのに……。感謝の言葉ではなくて、宿の備品を大量にパクるという極悪な犯罪行為で返されてしまった……。
吸血鬼の鋼メンタルとはいえ、結構応えるぞ。報われないおもてなしの心……悲しすぎる。
「うぅ……」
「お労しやご主人様……。私がまた食料調達のついでに、川原で見所のある石でも発見してご主人様に献上して差し上げますわ。だからお元気をお出しになって下さいまし」
「ありがとうエリザ。慰めてくれて。そうだな、こんなクズ人間共に心を惑わされていてはいけないよな」
「その通りですわ」
地面に手をつき項垂れてしょ気ていると、エリザが寄り添って励ましてくれた。
なんて優しい子なんだエリザ。最高の眷属だぜ。エリザの優しさのおかげで、わりとすぐに元気を取り戻すことができた。
「しかし凄いなこの鞄。いっぱい入るんだな」
「下郎には勿体ないアイテムですわね。私たちが有効活用して差し上げましょう」
「ああそうだな。このアイテムは便利だ」
俺は男の近くに落ちていた魔法の鞄を拾い上げる。
元の世界の物理の常識を無視した収納アイテム。ファンタジー世界ならではといったところか。この魔法の鞄は何かと使えそうだ。
この鞄があれば、森で採集する時とか便利だろう。収納されたものには保存魔法がかかっているようなので、ダンジョンの畑で収穫した作物の一時保管倉庫として使ってもいい。
有難く有効利用させてもらおう。
「なるほど。こうやって取り出すんだな。ふむふむ」
早速魔法の鞄の使い心地を試してみる。
魔法の鞄の中に手を突っ込むと、中に入っているもののイメージが浮かぶ。取り出したいものをイメージして引っ張ると、取り出せるといった感じだ。四次元ポ○ットみたいで面白いな。
「エリザ。あいつらが盗んだもの、元の位置に直すの手伝ってよ」
「かしこまりましてよご主人様」
魔法の鞄から盗まれた荷物を取り出して、エリザと協力して元の場所に戻していく。まずは物置の中の品物からだな。
「あ、スライムたち、そいつらの死体は好きにしていいぞ」
死体を見つめて物欲しそうに待機していたスライムたちにそう声をかけると、スライムたちは死体にワッと群がって消化していった。
グロテスクで見せられない光景だね。まあ吸血鬼メンタルになった今の俺なら、見ながらでも普通に飯食ったりできるけどさ。
「まったくこんなに盗んで何に使うつもりだったんだ? 鎌なんて盗んでもしょうがないだろ」
「売ってお金に換えるつもりだったのではないかと」
「そうか。でも大した金にならないと思うけどな」
「ええ。さした金額にはならないでしょうが、それでもやるんでしょう。さもしい下郎の考えそうなことですわ」
「やれやれ、まったく勘弁して欲しいね」
エリザと愚痴を言い合いながら、盗まれた品を元の位置に戻していく。
あいつら、鍬とか肥料とかの園芸用品まで盗みやがって。蝙蝠の餌なんて何に使うつもりだったんだ。本当にとんでもない奴らだなまったく。
そういえば、元の世界でもホテルの備品をパクりまくる奴とかいたな。持ち帰り自由のアメニティグッズとかならいいけど、普通の備品を持ち帰るのはやめて欲しいよね。どこの世界にも迷惑な奴はいるもんだ。
そんなことを考えながら、盗品を元の位置に戻す作業をやっていく。お気に入りの庭石も元の位置に戻して復元作業完了だ。その頃にはすっかり日が昇っていた。
「今日はアイツらのせいで早起きしちゃったし、朝飯食って畑の様子を見たら、ちょっと仮眠でもとるか」
「ええそうしましょう。お昼寝しましょうご主人様」
エリザと二人で、いつものように朝食を作る。今日は焼き魚とご飯と味噌汁。定番の和食だ。
パンもいいが米も最高だ。異世界でも和食が楽しめるのは嬉しいね。
全てはダンジョンマスターの力“ショップ”のおかげだ。この機能が使えるおかげでたいていのものは手に入る。
ダンジョンマスターの力とは、便利なものである。マナさえ稼げれば一生安泰だな。
「完成だ!」
「いただきますですわ」
程なくして朝食が完成し、俺たちは食卓につく。
「うん、美味しい」
「良い出汁が出ていますわ」
不愉快だった客が来たことも忘れ、俺たちは美味しい食事に舌鼓を打つのであった。
ミイラとなっている女の死体を前にして、俺はそうぼやく。
今度こそまともなお客様が来たと思ったら、全然まともじゃなかった。宿の備品を片っ端から盗んでいく泥棒だった。油断してたら家の中がスッカラカンになった。
いや、もう泥棒ってレベルじゃないな。略奪である。略奪者だ。とにかく最低最悪の客だった。
「うぅ、今度こそまともなお客様が来てくれたと思ったのに……」
またもや俺たちのおもてなしの気持ちが無下にされてしまった。異世界の野蛮人に土足で踏みにじられてしまった。悲しすぎるぜ。
初めての女性客だったからお高めの石鹸をサービスして、さらにはタオルも新調して出してあげたのに。脱衣場の仕切りも大きいものに交換して、籠もお洒落なものに変えたのに。部屋のインテリアとかもこだわって花瓶とかも設置したのに。カーテンの色とかもこだわったのに。トイレにも芳香剤を設置したのに。夕食も野菜多め辛さ控え目のヘルシーなチキンカレーにしたのに。美味しいサラダも付けたのに――。
そうやって一生懸命おもてなししたのに……。感謝の言葉ではなくて、宿の備品を大量にパクるという極悪な犯罪行為で返されてしまった……。
吸血鬼の鋼メンタルとはいえ、結構応えるぞ。報われないおもてなしの心……悲しすぎる。
「うぅ……」
「お労しやご主人様……。私がまた食料調達のついでに、川原で見所のある石でも発見してご主人様に献上して差し上げますわ。だからお元気をお出しになって下さいまし」
「ありがとうエリザ。慰めてくれて。そうだな、こんなクズ人間共に心を惑わされていてはいけないよな」
「その通りですわ」
地面に手をつき項垂れてしょ気ていると、エリザが寄り添って励ましてくれた。
なんて優しい子なんだエリザ。最高の眷属だぜ。エリザの優しさのおかげで、わりとすぐに元気を取り戻すことができた。
「しかし凄いなこの鞄。いっぱい入るんだな」
「下郎には勿体ないアイテムですわね。私たちが有効活用して差し上げましょう」
「ああそうだな。このアイテムは便利だ」
俺は男の近くに落ちていた魔法の鞄を拾い上げる。
元の世界の物理の常識を無視した収納アイテム。ファンタジー世界ならではといったところか。この魔法の鞄は何かと使えそうだ。
この鞄があれば、森で採集する時とか便利だろう。収納されたものには保存魔法がかかっているようなので、ダンジョンの畑で収穫した作物の一時保管倉庫として使ってもいい。
有難く有効利用させてもらおう。
「なるほど。こうやって取り出すんだな。ふむふむ」
早速魔法の鞄の使い心地を試してみる。
魔法の鞄の中に手を突っ込むと、中に入っているもののイメージが浮かぶ。取り出したいものをイメージして引っ張ると、取り出せるといった感じだ。四次元ポ○ットみたいで面白いな。
「エリザ。あいつらが盗んだもの、元の位置に直すの手伝ってよ」
「かしこまりましてよご主人様」
魔法の鞄から盗まれた荷物を取り出して、エリザと協力して元の場所に戻していく。まずは物置の中の品物からだな。
「あ、スライムたち、そいつらの死体は好きにしていいぞ」
死体を見つめて物欲しそうに待機していたスライムたちにそう声をかけると、スライムたちは死体にワッと群がって消化していった。
グロテスクで見せられない光景だね。まあ吸血鬼メンタルになった今の俺なら、見ながらでも普通に飯食ったりできるけどさ。
「まったくこんなに盗んで何に使うつもりだったんだ? 鎌なんて盗んでもしょうがないだろ」
「売ってお金に換えるつもりだったのではないかと」
「そうか。でも大した金にならないと思うけどな」
「ええ。さした金額にはならないでしょうが、それでもやるんでしょう。さもしい下郎の考えそうなことですわ」
「やれやれ、まったく勘弁して欲しいね」
エリザと愚痴を言い合いながら、盗まれた品を元の位置に戻していく。
あいつら、鍬とか肥料とかの園芸用品まで盗みやがって。蝙蝠の餌なんて何に使うつもりだったんだ。本当にとんでもない奴らだなまったく。
そういえば、元の世界でもホテルの備品をパクりまくる奴とかいたな。持ち帰り自由のアメニティグッズとかならいいけど、普通の備品を持ち帰るのはやめて欲しいよね。どこの世界にも迷惑な奴はいるもんだ。
そんなことを考えながら、盗品を元の位置に戻す作業をやっていく。お気に入りの庭石も元の位置に戻して復元作業完了だ。その頃にはすっかり日が昇っていた。
「今日はアイツらのせいで早起きしちゃったし、朝飯食って畑の様子を見たら、ちょっと仮眠でもとるか」
「ええそうしましょう。お昼寝しましょうご主人様」
エリザと二人で、いつものように朝食を作る。今日は焼き魚とご飯と味噌汁。定番の和食だ。
パンもいいが米も最高だ。異世界でも和食が楽しめるのは嬉しいね。
全てはダンジョンマスターの力“ショップ”のおかげだ。この機能が使えるおかげでたいていのものは手に入る。
ダンジョンマスターの力とは、便利なものである。マナさえ稼げれば一生安泰だな。
「完成だ!」
「いただきますですわ」
程なくして朝食が完成し、俺たちは食卓につく。
「うん、美味しい」
「良い出汁が出ていますわ」
不愉快だった客が来たことも忘れ、俺たちは美味しい食事に舌鼓を打つのであった。
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