吸血鬼のお宿~異世界転生して吸血鬼のダンジョンマスターになった男が宿屋運営する話~

夜光虫

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一章

捕食者の夜は続く

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 エレーナを眷属化させて、彼女の宿を俺の宿屋の二号店として再オープンした。それからいくらか月日が経った。

 森の中の一号店は相変わらず閑古鳥が鳴き続けているが、エレーナの宿は連日大盛況である
 宿泊客はそうでもないが、朝昼晩に食事に来る村人たちで連日賑わっている。飲食店としては大成功を収めている。

 スキル【料理】を持つエレーナは料理上手である。おまけに愛嬌があって美人。エレーナの店に嫌がらせをしていたゴルドがいなくなれば、客が入るのは当然だった。

 でもまさか連日大盛況とはな。嬉しい悲鳴だ。俺も影で毎日おもてなしできて嬉しい限りだ。

「ヨミト様、新しい人を雇ってもよろしいでしょうか? 嬉しいことに、私とアリアだけではとても回せなくなってしまいました。毎回変化したヨミト様たちに手伝ってもらうのは申し訳ないですし……」
「そうだね。そうしようか。俺とエリザも毎日ヘルプに入れるわけじゃないしね。他にやることもあるし、客が来ないとはいえ、一号店の準備も欠かせないしさ」

 二号店は忙しすぎるので、新たに人員を雇うことにした。
 新たに雇ったのは、俺が最初にエデン村を訪れた時に血を吸うために買った娼婦の三人(ヒイ、フウ、ミイ)だ。

 フウはチュウの奥さんだったので、後にチュウの方から眷属にしてくれと要望があったので眷属にした。

 どうせならと、残る二人にも上手く話を持ちかけて眷族化させることにした。宿の裏の顔を知った従業員の方が色々と使いやすいしね。

「君たち、俺の眷属になりな?」
「「はい喜んで」」

 ヒイとミイは元々親と上手くいっていなかったらしく、付け入る隙は十分にあった。俺とエリザで上手いこと口で転がして人心を掌握して勧誘したら靡いてくれた。ろくでなしの家族の代わりに後ろ盾になってくれるなら、と喜んで眷属になってくれたよ。

 信頼できる従業員(眷属)が増えて有難い限りだな。

 そのヒイとミイの二人は、ダンジョンに住み込みで働いてくれるようになった。エレーナの宿には、転移陣を通じて通って働いている。

 エレーナの宿が儲かって向かいの宿の顰蹙を買ったり面倒なことが起きるかなと思ったが、今の所そういったことはない。
 向かいの宿の店主の親父の気が良いということもあるが、一番の理由は宿として差別化が図られているからだろう。

 向かいの宿は飯マズで最悪だが娼婦の派遣サービスをやっている。エレーナの宿は飯ウマで最高だが娼婦の派遣サービスはやっていない。

 普通に宿泊する分にはエレーナの宿の方が楽しめるが、大人のサービスを楽しみたい連中は向かいの宿に行く。そういうわけで、上手く差別化が図られて共存できているようである。

「ヨミト様、今日は冒険者が泊まっています。いつもの部屋に誘導しておきました。水差しに睡眠ポーションを仕込んだのでよくお眠りですよ」
「そっか。報告ありがとうヒイ」

 とある日の夜。客が誰もいない寂しい一号店の客室でエリザとワインを飲んで楽しんでいると、二号店で働くヒイが報告に来てくれた。
 エレーナの宿に珍しくも、外からのお客さん(しかも冒険者)が泊まっているらしい。

 冒険者は貴重なスキルを持っている可能性が高いし、これは何としても血を頂かないとね。

「それじゃエリザ、いこっか」
「ええ。今日の獲物はどんな味がするのか楽しみですわ」

 俺とエリザは転移陣を通じて二号店へと移動する。

「目当てのお客様は四号室にお泊りです」
「そっか。ありがとう」

 夜の二号店は閑散としている。数少ない宿泊客たちは部屋で休み、従業員たちも奥に引っ込んでいるからだ。

 そんな店内を、俺たちはヒイの案内によって移動していく。やがて目当ての客室に辿り着く。

「さて。今日も行くか」
「ええ」
「いってらっしゃいませ」

――スキル【変化】発動。

 スキル【変化】の力を使い、小動物に変身する。そして小動物しか通れないような小さな空気穴を通じて、客室の中へと侵入していく。

 ちなみに空気穴の中にはスライムを待機させてあるのでいつも清潔に保たれている。向こうの部屋に辿りつくまでに、埃塗れになるということはない。

「ほう。女の子の冒険者か」
「うふふ、ぐっすり寝ていますね」
「そうだな。ヒイが水差しに睡眠ポーションを混ぜ込んだって言ってたもんな。飲んでぐっすりのようだな」

 部屋に降り立ち、寝ている女冒険者の横顔を拝見する。美人というよりかは可愛い系の歳若い冒険者であった。

 ヒイなどの眷属たちが上手くやってくれたので、件の女冒険者は熟睡中である。ちょっとやそっとでは起きそうもない。これならわざわざ起こしてスキル【魅了】をかけて意識を奪う必要もなく、そのまま吸血しても大丈夫だろう。

「どっちからいく?」
「今日はご主人様に先をお譲りいたしますわ」
「そっか、それじゃ俺からいこう。いただきまーす」

 エリザが先を譲ってくれたので、遠慮なく頂こう。女冒険者の上に跨り、その首筋に優しくかぶりつく。

「あ、この子処女だな」

 うむ。中々美味しい血だね。血気盛んな冒険者の女の子にしては珍しく純潔を保っているようだ。
 色々な欲を振り払って真面目に仕事に打ち込んでいるのだろう。処女の血は最高だな。

――スキル【吸血】発動。経験値獲得。
――初めての対象であるのでボーナスを獲得。
――力が5増えた。

 残念ながらスキルは手に入らなかったようだが、ステータス値が結構増えたな。
 普段の時よりも成長率が良い。冒険者でそれなりに強い上に、処女の血だからかもしれない。

「うふふ可愛らしい。確かに処女ですわねこの娘」
「みたいだね。美味しい血だよ」

 俺の後にエリザも吸血する。エリザは血を吸った後に妖艶に笑い、そんな感想を漏らした。

「さてもうちょっと頂くか」
「ぅぁん……♡」

 女冒険者は火照った顔で少し呻く。吸血行為に中てられて変な夢でも見ているらしい。

「ふぅ。ごちでした」
「ご馳走様でしたわ」

 身体に害がない程度に血を吸う。散々堪能した後で、部屋を出る。

 ぐっすり眠っていた女冒険者は、俺たちの吸血行為に最後まで気づくことはなかった。可愛らしい顔でされるがまま呻くだけだった。

「中々美味しい血だったよ。彼女には明日の朝ごはんに何か栄養のつくものを一品サービスしてあげてね。血肉になるものがいいな」
「はい。わかりました。エレーナさんに伝えておきますね」
「よろしく」

 部屋の外で待機していたヒイにそう告げてから、俺たちはダンジョンに戻っていく。

「美味しい処女の血を飲んだから、少し興奮して血が騒いでしまったな。もっと吸血したくなっちゃったぞ」

 先ほどの女冒険者の血はそれなりに美味しかったが、身体に害が出ない程度しか吸ってないので、なんとも物足りない。

「うふふ。ではご主人様、私と楽しみますか?」
「ああそうしようか」

 エリザが提案してきたので、俺たちは互いに吸血し合って遊ぶことにした。ベッドの上で激しく吸血し合う。

「やっぱエリザの血は美味しいなぁ」
「あぁんっ、ご主人様っ、ミイラになってしまいますわぁ♡」

 血を吸われながら嬌声を上げるエリザ。

 エリザの血は、先ほどの女の子の血とは比べ物にならないくらい美味しい。ついつい吸いすぎてしまうぜ。

「次はこっちの番ですわ」
「やめろエリザっ、そんなに強く吸ってはダメ――おほっ、んほぉぉおおおおおおッ♡」

 やったらやり返される。エリザに強く吸われ、俺は吸血鬼のご主人様にあるまじき変な声を上げてしまう。

「おほぉおおお♡ おほぉおおお♡」

 エリザ以外、周りに誰もいなくてよかったぜ。いたら主の威厳がまるでなくなってしまうからな。

 そんな感じで、エリザとは夜遅くまで吸血し合って遊んだのであった。

 平和な夜が過ぎていく。願わくば、こんな平和な夜が永久に続かんことを。

<一章完結>



♦現在のヨミトのステータス♦
名前:ヨミト(lv.45)
種族:吸血鬼(ノーマル)
HP:266/266 MP:271/271
【変化】【魅了】【吸血】【鬼語】【粗食】【獣の嗅覚】【獣の視覚】【獣の聴覚】【獣の味覚】
【剣術】【我慢】【起床】【睡眠】【威圧】【料理】
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