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四章
オーク討伐依頼6/13(捜索開始)
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翌日の早朝、俺たちは朝食を食べながら、今日はヒムの森のどこのエリアを探索するかなどについて話し合っていた。その席でパープルが尋ねてくる。
「ヨミトさん、昨日は夜遅くまでどこに行ってらしたんですか?」
「え?」
「まさか。来たばかりの村で変なことしてないでしょうね? エリザさんというものがありながら変なことしてないでしょうね?」
「そ、そんなことはないよ!(エリザと一緒に変なことしてたよ!)」
「本当ですか? 怪しい……」
昨晩は娼婦の血を吸ったりガンドリィたちの血を吸ったりしていて、寝床に戻るのが日付が変わるくらいになってしまった。それで就寝が遅かったので、パープルが不審に思っているようだった。ジト目で睨んでくる。
「ヨミト殿は私との飲みに付き合ってくれたのですよ。盛り上がって遅くまで付き合わせてしまい、申し訳ない」
「そうでしたか。それならいいですけど……。でも、今日から命がけの任務なんですから深酒は慎んでくださいね」
「わかってるよパープル君」
村長がフォローしてくれたことで、パープルは一応納得してくれたようだ。村長、ナイスフォローだぜ。
「あぁ、何か血が足りない気がするわぁ。アタシも年かしらねぇん。そんな夜更かしはしてないんだけどねぇん」
昨日血を抜きすぎたせいか、ガンドリィは少し調子悪そうにしていた。申し訳なく思った俺は、飯を分けることにした。
「ガンドリィさん、良かったら俺の分の魚をどうぞ。血肉つけてくださいよ」
「いやいやヨミトちゃんの分まで貰うなんて悪いわよぉん」
「ガンドリィさんは普通の人より体が大きいんですから普通の人より食べないと。俺は今日は軽めの朝食にしようと思ってたんで大丈夫ですよ」
「そう? 悪いわねぇんヨミトちゃん。持つべきものは友達ねぇん」
「あはは、そうですね」
俺が朝食用の魚を分けてやると、ガンドリィはやたら感謝してきた。調子悪い原因が俺とエリザの吸血のせいだというのにな。知らぬが仏だな。
「それじゃ、森に入ったらアタシたちはライバルよぉん。万が一の際は助け合うけど、それ以外では基本中立を保ちましょう。ご飯は恵んで貰ったけども、それとこれは別よぉん」
「ええ勿論ですよ」
朝飯を食い終わったら早速仕事だ。ヒムの森の入り口でガンドリィのチームと一時別れることになった。
ここジョーアの村からヒムの森に入っていく場合、三つのルートがある。
延々と続く野山を分け入り、果てはアルゼリア山脈の奥深くに入っていくことになる北ルート。
森と湿原を越え、果てはロキリア王国に従属的な立場にある小国アルゼリア王国へと繋がる東ルート。
トロの森の最東端部へと繋がっていると言われる西ルート。
――以上の三つだ。
ヒムの森はトロの森と同じく広大で広いから、全てのルートをしらみつぶしに探すことは不可能だ。時間も金銭も有限だからな。普通の冒険者はそんなことできない。
まあダンジョンマスターである俺は、近くにダンジョンの拠点を構えれば長期間探索することも可能だけどね。
ただ、眷属でないパープルがチームにいる現状ではそんな手段はとれないので、普通の冒険者と同じ手法しか採用することはできない。ジョーア村に滞在しつつ、ちまちま探索するしかない。
ガンドリィは以前にここらの森を探索したことがあり道を知っているので、他の冒険者からの情報などを基に、毎日探る場所を変えていくつもりのようだ。流石熟練冒険者といったところか。
ガンドリィたちは今日は西ルートをメインに探るようだ。
西ルートはオークの目撃情報が一番多い場所だ。テンの父親とイレーヌの旦那さんがオークに殺されたという採掘場も、西ルートにあるらしい。
普通に考えれば、一番オークと出くわす確率が高いのは西ルートだろう。だからオーク討伐依頼をこなそうとジョーア村に滞在している冒険者の多くが、西ルートを探っているようだ。
残りの冒険者は、東ルートを探っているようだ。東ルートは二番目にオークの目撃例が多いらしい。
東ルートにある採集場は、昨日のメカクレ娼婦トエルが二年前にオークに襲われた場所である。だから東ルートにオークの巣がある可能性も高いだろう。
北ルートは魔境だ。進むほどマナが濃くなり、危険な魔物に出くわす可能性が高くなる。村の人間もまず近寄らないので、オークの目撃情報すらよくわかってないルートらしい。
未知ゆえに北ルートにオークの巣がある可能性もある。情報がない分、ここが一番怪しいとも言える。
ガンドリィは北ルートを探索した経験もあるようだが、今回は団の新人三人をいきなり連れて歩くのは少々危険と判断したのか、ひとまずは西を探るつもりらしい。
俺たちが採る進路はというと……。
「ねえ、ヨミトさん。やっぱり北ルートはやめておきましょうよ」
「えー、今更何言ってんの。朝に多数決で北にするって決めたでしょ」
「そうですけど……やっぱり危険ですよ」
「大丈夫だよ大丈夫」
心配性なパープルが、ガンドリィや他の人がいるルートにしようとせがんでくる。
他の冒険者たちがいるルートならいざという時に助け合えると思っているようだ。今日北ルートを選んだのは俺たちしかいないようだから、それで凄い心配してるらしい。
「いざという時は俺とエリザが守ってあげるからさ」
「もう、わかりましたよ」
パープルは不満げだったものの、俺が自信を持って大丈夫だと言うと、渋々納得してくれたようだ。
「ヨミトさん、昨日は夜遅くまでどこに行ってらしたんですか?」
「え?」
「まさか。来たばかりの村で変なことしてないでしょうね? エリザさんというものがありながら変なことしてないでしょうね?」
「そ、そんなことはないよ!(エリザと一緒に変なことしてたよ!)」
「本当ですか? 怪しい……」
昨晩は娼婦の血を吸ったりガンドリィたちの血を吸ったりしていて、寝床に戻るのが日付が変わるくらいになってしまった。それで就寝が遅かったので、パープルが不審に思っているようだった。ジト目で睨んでくる。
「ヨミト殿は私との飲みに付き合ってくれたのですよ。盛り上がって遅くまで付き合わせてしまい、申し訳ない」
「そうでしたか。それならいいですけど……。でも、今日から命がけの任務なんですから深酒は慎んでくださいね」
「わかってるよパープル君」
村長がフォローしてくれたことで、パープルは一応納得してくれたようだ。村長、ナイスフォローだぜ。
「あぁ、何か血が足りない気がするわぁ。アタシも年かしらねぇん。そんな夜更かしはしてないんだけどねぇん」
昨日血を抜きすぎたせいか、ガンドリィは少し調子悪そうにしていた。申し訳なく思った俺は、飯を分けることにした。
「ガンドリィさん、良かったら俺の分の魚をどうぞ。血肉つけてくださいよ」
「いやいやヨミトちゃんの分まで貰うなんて悪いわよぉん」
「ガンドリィさんは普通の人より体が大きいんですから普通の人より食べないと。俺は今日は軽めの朝食にしようと思ってたんで大丈夫ですよ」
「そう? 悪いわねぇんヨミトちゃん。持つべきものは友達ねぇん」
「あはは、そうですね」
俺が朝食用の魚を分けてやると、ガンドリィはやたら感謝してきた。調子悪い原因が俺とエリザの吸血のせいだというのにな。知らぬが仏だな。
「それじゃ、森に入ったらアタシたちはライバルよぉん。万が一の際は助け合うけど、それ以外では基本中立を保ちましょう。ご飯は恵んで貰ったけども、それとこれは別よぉん」
「ええ勿論ですよ」
朝飯を食い終わったら早速仕事だ。ヒムの森の入り口でガンドリィのチームと一時別れることになった。
ここジョーアの村からヒムの森に入っていく場合、三つのルートがある。
延々と続く野山を分け入り、果てはアルゼリア山脈の奥深くに入っていくことになる北ルート。
森と湿原を越え、果てはロキリア王国に従属的な立場にある小国アルゼリア王国へと繋がる東ルート。
トロの森の最東端部へと繋がっていると言われる西ルート。
――以上の三つだ。
ヒムの森はトロの森と同じく広大で広いから、全てのルートをしらみつぶしに探すことは不可能だ。時間も金銭も有限だからな。普通の冒険者はそんなことできない。
まあダンジョンマスターである俺は、近くにダンジョンの拠点を構えれば長期間探索することも可能だけどね。
ただ、眷属でないパープルがチームにいる現状ではそんな手段はとれないので、普通の冒険者と同じ手法しか採用することはできない。ジョーア村に滞在しつつ、ちまちま探索するしかない。
ガンドリィは以前にここらの森を探索したことがあり道を知っているので、他の冒険者からの情報などを基に、毎日探る場所を変えていくつもりのようだ。流石熟練冒険者といったところか。
ガンドリィたちは今日は西ルートをメインに探るようだ。
西ルートはオークの目撃情報が一番多い場所だ。テンの父親とイレーヌの旦那さんがオークに殺されたという採掘場も、西ルートにあるらしい。
普通に考えれば、一番オークと出くわす確率が高いのは西ルートだろう。だからオーク討伐依頼をこなそうとジョーア村に滞在している冒険者の多くが、西ルートを探っているようだ。
残りの冒険者は、東ルートを探っているようだ。東ルートは二番目にオークの目撃例が多いらしい。
東ルートにある採集場は、昨日のメカクレ娼婦トエルが二年前にオークに襲われた場所である。だから東ルートにオークの巣がある可能性も高いだろう。
北ルートは魔境だ。進むほどマナが濃くなり、危険な魔物に出くわす可能性が高くなる。村の人間もまず近寄らないので、オークの目撃情報すらよくわかってないルートらしい。
未知ゆえに北ルートにオークの巣がある可能性もある。情報がない分、ここが一番怪しいとも言える。
ガンドリィは北ルートを探索した経験もあるようだが、今回は団の新人三人をいきなり連れて歩くのは少々危険と判断したのか、ひとまずは西を探るつもりらしい。
俺たちが採る進路はというと……。
「ねえ、ヨミトさん。やっぱり北ルートはやめておきましょうよ」
「えー、今更何言ってんの。朝に多数決で北にするって決めたでしょ」
「そうですけど……やっぱり危険ですよ」
「大丈夫だよ大丈夫」
心配性なパープルが、ガンドリィや他の人がいるルートにしようとせがんでくる。
他の冒険者たちがいるルートならいざという時に助け合えると思っているようだ。今日北ルートを選んだのは俺たちしかいないようだから、それで凄い心配してるらしい。
「いざという時は俺とエリザが守ってあげるからさ」
「もう、わかりましたよ」
パープルは不満げだったものの、俺が自信を持って大丈夫だと言うと、渋々納得してくれたようだ。
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