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四章
オーク討伐依頼8/13(オークハイ戦)
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「オーク! 左から3匹! 右からゴブリン10匹!」
その後探索を再開する。度々オークを含めた魔物の襲撃を受けることになったが、大したことはなかった。
このチームメンバーとはこれまで一年近く一緒に冒険してきたから、連携も楽にこなせる。難なく対処できた。
オークとの戦闘にも慣れてきたので、俺はいつもの行動をとることにした。 オークを殺さずに手足の骨を折って戦闘不能状態にして、レイラたちに投げ渡し、止めを刺させることにした。
レイラたちの良いレベリングの機会になると思ったのだ。
「ほい。レイラ止め」
「はい」
「ほい。ノビル止め」
「おう」
「ほい。メリッサ止め」
「あいよ」
「ほい。パープル君止め」
「自分でやればいいじゃないですか! 何で僕たちに渡すんですか!」
工場の流れ作業みたいにオークを仕留めていると、以前旅した時みたいに、パープルが「ヨミトさんが仕留めたんですから自分で止め刺してくださいよ!」とか言ってくる。
そうは言うが、俺とエリザが殺してもレベリングにならなくて命が勿体ないんだよね。吸血鬼の俺たちは吸血行為以外でレベリングができないのだ。
「俺とエリザは今更オーク程度の敵を倒しても位階が高まらないんだよ。だから代わりにみんなに神の功徳を積ませて上げてるってわけさ。感謝してよね」
「まあ有難い話ですけど……」
パープルには適当なことを言ってはぐらかしておく。
その後、工場の流れ作業のように現れたオークを仕留め続けた。
それなりの数を蹴散らしたが、目当ての上位個体に出会うことはなかった。
「ここらで休憩しましょうか」
「そうだね」
お昼時になったので、見晴らしの良い場所で休憩をとることにした。大自然の山の中で食べるパープルお手製のスープは、まあまあ美味しかった。
「まあまあ美味しいね」
「だからまあまあは余計です!」
天然オーク肉はそこそこ美味かったものの、王都で流通してるオークを改良した人工魔物の豚肉よりは美味くなかった。
やっぱ食べるためだけに改良した家畜の肉と野生は違うね。ジビエ料理は難しいよ。
食事をとってエネルギーを回復した俺たちは、再び探索を再開することにした。
「――あれは……」
しばらく獣道のような山道を歩いていると、五十匹くらいのオークの群れを発見した。どうやら木の実の群生地で飯を食って休憩しているらしい。
その群れの中心には、オークの上位個体がいた。おそらくハイクラスだろう。俺たちが探している上位個体に間違いないはずだ。
「よーし、さっさと討ち取ろうぜ」
「ちょっと待ってくださいヨミトさん! あの数に策もなしに挑むなんて無謀ですよ! 上位個体もいるんですよ! 撤退すべきです!」
すぐに戦いを挑もうとするのだが、パープルが引き止めてくる。ゴブリンと大差ないんだから余裕だと思うんだが、心配性なパープルは不安らしい。
「大丈夫だって。まずはこうやって何匹か数を減らすからさ」
「あっ、ちょっと!」
グズグズして逃げられてはいけない。俺は近くにあった手ごろな石を手にすると、パープルの制止も聞かず、それを思いっきりぶん投げた。
「――グギャアア!」
見事クリーンヒット。スキル【投擲】を持ち、今までにそれなりに訓練を積んできた俺は、今ではプロ野球の投手顔負けのコントロールを見せることができる。
頭部を激しく損傷したオークハイは、そのままバタリと倒れる。
即死らしい。敵将、あっさり討ち取ったぜ。
「そりゃ、そりゃ!」
昔は石なんて投げてもまったく当たらなかったが、今は自由自在に命中させられる。一匹二匹三匹四匹――と、面白いようにオークを狩っていく。
「貴様、よくも仲間を!」
仲間が次々に死んで慌てるオークたちだが、俺がやったと認識すると、怒りの表情で突撃してくる。
「ぶひぃ、女だ! 女がいるぞ!」
「男を殺して女を犯せ!」
「仲間の仇だ!」
オークたちはレイラたち女性陣の姿を確認すると、激しく興奮しだした。
この戦いに敗れたら悲惨な運命が待っていそうだが、そんなことにはならない。なってたまるものか。
(俺の仲間に汚らわしい視線を浴びせたことを後悔させてやろう)
俺は適当な所で石を投げるのを止め、剣を構えてオークの集団を迎え撃つことにした。
「男は死ねいっ、ブヒャアア!」
オークの集団が大声を上げてこちらへと向かってくる。左右の集団に分かれて包囲するようにして突進してくる。
「うっ、うわああ!」
無数のオークの放つ気迫に負け、パープルが膝をついてガクガクと震えだす。どうやらオークの放った何かしらのスキルの影響みたいだね。
それに対して、他のメンバーたちは比較的落ち着いていた。オークの放つスキルなどどうってことないようだ。
「ノビルはアレ使って、それで左から来る群れの対処。レイラはそのサポートね。俺は右の集団を潰す。メリッサとエリザはパープル君の援護をお願い」
「おう!」
「わかったわ」
「あいよ」
「かしこまりましたわ」
指示を出した後、俺は右のオーク集団へと剣片手に突貫していく。一匹二匹三匹――と、それぞれ一振りの斬撃で仕留めていく。
「ばっちいなぁ」
返り血が半端なくて最悪だ。スキル【洗浄】で綺麗にできるとはいえ、早く帰って水浴びしたいところだ。
「これで終わりか」
俺の持ち分はあっという間に壊滅させることができたので、ノビルたちの様子を見学することにしよう。
「――うぉぉおおおおッ!」
ノビルが絶叫する。ノビルの髪が逆立ち、筋肉が盛り上がって全身の血管が浮き出てきた。
ノビルの持つスキル【狂化】によるものだ。スキル【狂化】は、一時的に身体能力を大幅に上げる効果がある。
「うらああああああッ!」
ノビルは言葉にならない雄叫びを上げながら、斧片手に敵へと突っ込んでいった。
一振りで敵を両断して屠っていく。スピードは若干遅いが、パワーは大したものだ。バーサーカーって感じだね。
ノビルはスキル込みの単純な腕力なら、レイラを凌いで今やダンジョンナンバーワンかもな。勿論、俺とエリザを除いたらの話しだけど。
「ぐおおおおお――があっ! はぁはぁ」
狂化したノビルは無双状態をしばらく続けるが、十五匹くらい屠ったところで、突如動きを止めた。スキルの効果が切れたらしい。膝に手をつきながら荒い息をして呼吸を整えている。
狂化スキルは効果が切れた後しばらくクーリングタイムが必要みたいなんだよね。スキル発動のデメリットらしい。仲間がいないと使い辛いスキルだね。
「ノビル、下がってな!」
そんなノビルの隙をカバーするようにレイラが飛び出していく。レイラはオークを両断する腕力などないが、手足を跳ね飛ばしたり、首を跳ね飛ばしたりすることぐらいはできる。
「はぁっ! せい!」
レイラは素早い動きで敵の攻撃をかわし、急所に一撃を加えて倒していった。
流石天才だ。無数のオークを相手にしても安定感ある戦いぶりを見せている。エリザを除いた眷属の中で、ナンバーワンの実力なだけある。その実力は伊達じゃない。
レイラはそのまま一匹二匹三匹――と面白いように敵を屠っていく。途中で復帰したノビルと一緒に連携してさらに敵を屠っていく。二人はいつも一緒に訓練してるから息がピッタリだね。
「ブヒィイイイ!」
レイラたちには勝てないと判断したのか、オークらはメリッサたちに標的を変えた。
「汚ねえもんおっ立ててんじゃねえよクソブタが。死ね」
「ブヒッ!? ブヒィギャアア――」
メリッサが火炎魔法を放つ。メリッサの放った火炎魔法をくらったオークは、炎に巻かれて丸焼きとなった。
メリッサも強くなっている。レベリングのおかげで魔力とかが上がっているようだね。朝から何度も魔法を放っているけど、まだMPにだいぶ余裕があるみたいだし。
「くたばりやがれ!」
メリッサは魔法を使い、前衛のノビルたちの隙をついて突破してきたオークたちを見事に狩っていった。
決め台詞は格好良いが、相変わらず知的な魔法使いとは思えぬ口の悪さである。どこのヤンキーだよ。
そうこうしているうちに戦闘は終了した。五十匹くらいいたオークのほぼ大半を狩ることができた。数匹は尻尾を巻いて逃げ出したようだね。
「よし、戦闘終了。ほら何の問題もなかったでしょ――って、パープル君、どうしたの?」
パープルが女の子座りをしてへたり込んだまま動かない。顔は真っ赤で、俯き加減となっている。
「こいつ、漏らしちまったみてえ。だっせえの」
「ちょっと、メリッサさん!」
メリッサが冷やかしたように言って、パープルが抗議の声を上げる。どうやらパープルは大量のオークに気圧されてお漏らししてしまったらしい。
「パープル君もまだまだだねぇ」
「だって、あんな大勢の魔物の殺気に中てられたら、足が竦んじゃいますよ!」
「お前以外誰も竦んじゃいねえけどな」
「うぅ……」
メリッサが厭らしく指摘するので、パープルは不甲斐なさに項垂れてしまった。あんまり苛めるのも可哀想だし、これくらいにしておこう。
「パープル君、綺麗にしてあげるよ」
「すみません……」
スキル【洗浄】を使ってお漏らししたパープルの汚れを取り除いておく。彼は恥ずかしそうにして洗浄魔法を受け入れていた。
スキル【洗浄】はめっちゃ便利だね。気軽に使っているので、たぶん【変化】と【吸血】を除けば、一番使用しているスキルかもしれない。
戦いが終わった後は、死体の後始末をする。
――スキル【吸血】発動。経験値獲得。
――初めての対象であるのでボーナスを獲得。
――最大HPが8、力が19、耐久が10、敏捷が3、体力が7、器用が2増えた。
――スキル【咆哮】を獲得。
――スキル【免疫】を獲得。
咆哮:獰猛な唸り声を上げ、敵を威嚇する。対象を恐慌状態に陥らせる。
免疫:毒などの状態異常や病気に対する耐性を上げ、復帰を早める。
討伐したオークたちの血をこっそり吸っていると、新しいスキルをラーニングできた。
スキル【咆哮】は、パープルをお漏らしさせたスキルみたいだね。MPを消費して発動するアクティブスキルみたいだ。
スキル【免疫】はパッシブスキルであり、持っているだけで効果があるもの。毒に対する耐性が上がるらしい。地味に嬉しいスキルだ。
五十匹ものオークの血を吸ったから大成長できた。誰も採択しなかった北ルートを選んで正解だったな。モンスターを独り占めできて、俺も眷属たちもかなりレベルアップできた。
「――それじゃ、そろそろいい時間だ。目当てらしきオークは狩れたし、帰還するとしようか」
皆で手分けして倒したオークの魔石を切り取り、オークハイに関しては首と肉も持っていく。
上位種の肉は下級種よりも美味しいらしいからね。まあそれでも人工魔物には劣るらしいが。
そうして、俺たちはオークハイの首を持って鼻高々に村へと帰還したのであった。
♦現在のヨミトのステータス♦
名前:ヨミト(lv.55) 種族:吸血鬼(ハイ)
HP:1032/1032 MP:942/942
【変化】【魅了】【吸血】【鬼語】【粗食】【獣の嗅覚】【獣の視覚】【獣の聴覚】【獣の味覚】
【剣術】【我慢】【起床】【睡眠】【威圧】【料理】【伐採】【裁縫】【農耕】【投擲】
【風刃】【天才】【火球】【洗脳】【狂化】【商人】【販売】【交渉】【売春】【性技】
【避妊】【癒光】【洗浄】【解体】【斧術】【槍術】【穴掘】【格闘】【毒牙】【硬化】
【舞踏】【鎚術】【怪力】【豚語】【咆哮】【免疫】
その後探索を再開する。度々オークを含めた魔物の襲撃を受けることになったが、大したことはなかった。
このチームメンバーとはこれまで一年近く一緒に冒険してきたから、連携も楽にこなせる。難なく対処できた。
オークとの戦闘にも慣れてきたので、俺はいつもの行動をとることにした。 オークを殺さずに手足の骨を折って戦闘不能状態にして、レイラたちに投げ渡し、止めを刺させることにした。
レイラたちの良いレベリングの機会になると思ったのだ。
「ほい。レイラ止め」
「はい」
「ほい。ノビル止め」
「おう」
「ほい。メリッサ止め」
「あいよ」
「ほい。パープル君止め」
「自分でやればいいじゃないですか! 何で僕たちに渡すんですか!」
工場の流れ作業みたいにオークを仕留めていると、以前旅した時みたいに、パープルが「ヨミトさんが仕留めたんですから自分で止め刺してくださいよ!」とか言ってくる。
そうは言うが、俺とエリザが殺してもレベリングにならなくて命が勿体ないんだよね。吸血鬼の俺たちは吸血行為以外でレベリングができないのだ。
「俺とエリザは今更オーク程度の敵を倒しても位階が高まらないんだよ。だから代わりにみんなに神の功徳を積ませて上げてるってわけさ。感謝してよね」
「まあ有難い話ですけど……」
パープルには適当なことを言ってはぐらかしておく。
その後、工場の流れ作業のように現れたオークを仕留め続けた。
それなりの数を蹴散らしたが、目当ての上位個体に出会うことはなかった。
「ここらで休憩しましょうか」
「そうだね」
お昼時になったので、見晴らしの良い場所で休憩をとることにした。大自然の山の中で食べるパープルお手製のスープは、まあまあ美味しかった。
「まあまあ美味しいね」
「だからまあまあは余計です!」
天然オーク肉はそこそこ美味かったものの、王都で流通してるオークを改良した人工魔物の豚肉よりは美味くなかった。
やっぱ食べるためだけに改良した家畜の肉と野生は違うね。ジビエ料理は難しいよ。
食事をとってエネルギーを回復した俺たちは、再び探索を再開することにした。
「――あれは……」
しばらく獣道のような山道を歩いていると、五十匹くらいのオークの群れを発見した。どうやら木の実の群生地で飯を食って休憩しているらしい。
その群れの中心には、オークの上位個体がいた。おそらくハイクラスだろう。俺たちが探している上位個体に間違いないはずだ。
「よーし、さっさと討ち取ろうぜ」
「ちょっと待ってくださいヨミトさん! あの数に策もなしに挑むなんて無謀ですよ! 上位個体もいるんですよ! 撤退すべきです!」
すぐに戦いを挑もうとするのだが、パープルが引き止めてくる。ゴブリンと大差ないんだから余裕だと思うんだが、心配性なパープルは不安らしい。
「大丈夫だって。まずはこうやって何匹か数を減らすからさ」
「あっ、ちょっと!」
グズグズして逃げられてはいけない。俺は近くにあった手ごろな石を手にすると、パープルの制止も聞かず、それを思いっきりぶん投げた。
「――グギャアア!」
見事クリーンヒット。スキル【投擲】を持ち、今までにそれなりに訓練を積んできた俺は、今ではプロ野球の投手顔負けのコントロールを見せることができる。
頭部を激しく損傷したオークハイは、そのままバタリと倒れる。
即死らしい。敵将、あっさり討ち取ったぜ。
「そりゃ、そりゃ!」
昔は石なんて投げてもまったく当たらなかったが、今は自由自在に命中させられる。一匹二匹三匹四匹――と、面白いようにオークを狩っていく。
「貴様、よくも仲間を!」
仲間が次々に死んで慌てるオークたちだが、俺がやったと認識すると、怒りの表情で突撃してくる。
「ぶひぃ、女だ! 女がいるぞ!」
「男を殺して女を犯せ!」
「仲間の仇だ!」
オークたちはレイラたち女性陣の姿を確認すると、激しく興奮しだした。
この戦いに敗れたら悲惨な運命が待っていそうだが、そんなことにはならない。なってたまるものか。
(俺の仲間に汚らわしい視線を浴びせたことを後悔させてやろう)
俺は適当な所で石を投げるのを止め、剣を構えてオークの集団を迎え撃つことにした。
「男は死ねいっ、ブヒャアア!」
オークの集団が大声を上げてこちらへと向かってくる。左右の集団に分かれて包囲するようにして突進してくる。
「うっ、うわああ!」
無数のオークの放つ気迫に負け、パープルが膝をついてガクガクと震えだす。どうやらオークの放った何かしらのスキルの影響みたいだね。
それに対して、他のメンバーたちは比較的落ち着いていた。オークの放つスキルなどどうってことないようだ。
「ノビルはアレ使って、それで左から来る群れの対処。レイラはそのサポートね。俺は右の集団を潰す。メリッサとエリザはパープル君の援護をお願い」
「おう!」
「わかったわ」
「あいよ」
「かしこまりましたわ」
指示を出した後、俺は右のオーク集団へと剣片手に突貫していく。一匹二匹三匹――と、それぞれ一振りの斬撃で仕留めていく。
「ばっちいなぁ」
返り血が半端なくて最悪だ。スキル【洗浄】で綺麗にできるとはいえ、早く帰って水浴びしたいところだ。
「これで終わりか」
俺の持ち分はあっという間に壊滅させることができたので、ノビルたちの様子を見学することにしよう。
「――うぉぉおおおおッ!」
ノビルが絶叫する。ノビルの髪が逆立ち、筋肉が盛り上がって全身の血管が浮き出てきた。
ノビルの持つスキル【狂化】によるものだ。スキル【狂化】は、一時的に身体能力を大幅に上げる効果がある。
「うらああああああッ!」
ノビルは言葉にならない雄叫びを上げながら、斧片手に敵へと突っ込んでいった。
一振りで敵を両断して屠っていく。スピードは若干遅いが、パワーは大したものだ。バーサーカーって感じだね。
ノビルはスキル込みの単純な腕力なら、レイラを凌いで今やダンジョンナンバーワンかもな。勿論、俺とエリザを除いたらの話しだけど。
「ぐおおおおお――があっ! はぁはぁ」
狂化したノビルは無双状態をしばらく続けるが、十五匹くらい屠ったところで、突如動きを止めた。スキルの効果が切れたらしい。膝に手をつきながら荒い息をして呼吸を整えている。
狂化スキルは効果が切れた後しばらくクーリングタイムが必要みたいなんだよね。スキル発動のデメリットらしい。仲間がいないと使い辛いスキルだね。
「ノビル、下がってな!」
そんなノビルの隙をカバーするようにレイラが飛び出していく。レイラはオークを両断する腕力などないが、手足を跳ね飛ばしたり、首を跳ね飛ばしたりすることぐらいはできる。
「はぁっ! せい!」
レイラは素早い動きで敵の攻撃をかわし、急所に一撃を加えて倒していった。
流石天才だ。無数のオークを相手にしても安定感ある戦いぶりを見せている。エリザを除いた眷属の中で、ナンバーワンの実力なだけある。その実力は伊達じゃない。
レイラはそのまま一匹二匹三匹――と面白いように敵を屠っていく。途中で復帰したノビルと一緒に連携してさらに敵を屠っていく。二人はいつも一緒に訓練してるから息がピッタリだね。
「ブヒィイイイ!」
レイラたちには勝てないと判断したのか、オークらはメリッサたちに標的を変えた。
「汚ねえもんおっ立ててんじゃねえよクソブタが。死ね」
「ブヒッ!? ブヒィギャアア――」
メリッサが火炎魔法を放つ。メリッサの放った火炎魔法をくらったオークは、炎に巻かれて丸焼きとなった。
メリッサも強くなっている。レベリングのおかげで魔力とかが上がっているようだね。朝から何度も魔法を放っているけど、まだMPにだいぶ余裕があるみたいだし。
「くたばりやがれ!」
メリッサは魔法を使い、前衛のノビルたちの隙をついて突破してきたオークたちを見事に狩っていった。
決め台詞は格好良いが、相変わらず知的な魔法使いとは思えぬ口の悪さである。どこのヤンキーだよ。
そうこうしているうちに戦闘は終了した。五十匹くらいいたオークのほぼ大半を狩ることができた。数匹は尻尾を巻いて逃げ出したようだね。
「よし、戦闘終了。ほら何の問題もなかったでしょ――って、パープル君、どうしたの?」
パープルが女の子座りをしてへたり込んだまま動かない。顔は真っ赤で、俯き加減となっている。
「こいつ、漏らしちまったみてえ。だっせえの」
「ちょっと、メリッサさん!」
メリッサが冷やかしたように言って、パープルが抗議の声を上げる。どうやらパープルは大量のオークに気圧されてお漏らししてしまったらしい。
「パープル君もまだまだだねぇ」
「だって、あんな大勢の魔物の殺気に中てられたら、足が竦んじゃいますよ!」
「お前以外誰も竦んじゃいねえけどな」
「うぅ……」
メリッサが厭らしく指摘するので、パープルは不甲斐なさに項垂れてしまった。あんまり苛めるのも可哀想だし、これくらいにしておこう。
「パープル君、綺麗にしてあげるよ」
「すみません……」
スキル【洗浄】を使ってお漏らししたパープルの汚れを取り除いておく。彼は恥ずかしそうにして洗浄魔法を受け入れていた。
スキル【洗浄】はめっちゃ便利だね。気軽に使っているので、たぶん【変化】と【吸血】を除けば、一番使用しているスキルかもしれない。
戦いが終わった後は、死体の後始末をする。
――スキル【吸血】発動。経験値獲得。
――初めての対象であるのでボーナスを獲得。
――最大HPが8、力が19、耐久が10、敏捷が3、体力が7、器用が2増えた。
――スキル【咆哮】を獲得。
――スキル【免疫】を獲得。
咆哮:獰猛な唸り声を上げ、敵を威嚇する。対象を恐慌状態に陥らせる。
免疫:毒などの状態異常や病気に対する耐性を上げ、復帰を早める。
討伐したオークたちの血をこっそり吸っていると、新しいスキルをラーニングできた。
スキル【咆哮】は、パープルをお漏らしさせたスキルみたいだね。MPを消費して発動するアクティブスキルみたいだ。
スキル【免疫】はパッシブスキルであり、持っているだけで効果があるもの。毒に対する耐性が上がるらしい。地味に嬉しいスキルだ。
五十匹ものオークの血を吸ったから大成長できた。誰も採択しなかった北ルートを選んで正解だったな。モンスターを独り占めできて、俺も眷属たちもかなりレベルアップできた。
「――それじゃ、そろそろいい時間だ。目当てらしきオークは狩れたし、帰還するとしようか」
皆で手分けして倒したオークの魔石を切り取り、オークハイに関しては首と肉も持っていく。
上位種の肉は下級種よりも美味しいらしいからね。まあそれでも人工魔物には劣るらしいが。
そうして、俺たちはオークハイの首を持って鼻高々に村へと帰還したのであった。
♦現在のヨミトのステータス♦
名前:ヨミト(lv.55) 種族:吸血鬼(ハイ)
HP:1032/1032 MP:942/942
【変化】【魅了】【吸血】【鬼語】【粗食】【獣の嗅覚】【獣の視覚】【獣の聴覚】【獣の味覚】
【剣術】【我慢】【起床】【睡眠】【威圧】【料理】【伐採】【裁縫】【農耕】【投擲】
【風刃】【天才】【火球】【洗脳】【狂化】【商人】【販売】【交渉】【売春】【性技】
【避妊】【癒光】【洗浄】【解体】【斧術】【槍術】【穴掘】【格闘】【毒牙】【硬化】
【舞踏】【鎚術】【怪力】【豚語】【咆哮】【免疫】
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