139 / 291
四章
オーク討伐依頼9/13(凱旋?)
しおりを挟む
仕留めたオークハイの首を持ってジョーア村に帰還した。
「俺たちがオークの親玉の首をとったぞ! 悪いなみんな、ただ働きになっちまってさ!」
村の広場に村人たちや帰還した冒険者たちが集まっていたので、俺はそこでオークハイの首をここぞとばかりに見せびらかした。
ややハイテンションのドヤ顔で見せびらかしたのだが……。
「え?」
「アンタもそうなの?」
村人たちにはさぞ英雄扱いされ、同業者には羨ましがられるかと思いきや、そうはならなかった。村人はおろか冒険者たちも、全員が困惑した表情を浮かべていた。
ドヤ顔でオークハイの首をとったことを自慢したのに素っ気無い反応だなんて、ちょっと恥ずかしいではないか。
「あらぁん? ヨミトちゃんたちもオークハイの首級を挙げたのぉん?」
「『も』ってことは、ガンドリィさんたちもオークハイを倒したんですか?」
「ええ。ほらぁん。これよぉ」
広場にいたガンドリィが、自分たちが挙げた首を見せてくる。
首桶の中には、俺たちが狩ったのと似た首が納められていた。オークハイの首で間違いない。
「どういうことです? オークハイは複数体いたってこと?」
「ええ。アタシたちの他にも、東ルートを探索してたオルクスちゃんのチームがオークハイの首を挙げたらしいわぁん。つまり、オークハイは少なくとも三体は確認できたってわけね」
「これって報酬とかどうなるんです?」
「ギルド依頼だからそこらへんは問題ないわ。国が全部払ってくれるでしょう。それより、問題は別にあるわぁん」
「と言うと?」
ガンドリィは神妙な顔つきになる。いつもふざけた顔をしているやつが急に真面目な顔つきになると、なんか緊張してしまうな。
「オークハイが複数体いて、それぞれが争うこともなく秩序立った動きを見せているということは……面倒なことになるわ」
「そいつらを取りまとめているヤツがいるってことですか?」
「ええその通りよぉん。オークハイより上の、オークナイト以上の個体がヒムの森のどこかにいるということになるわぁん。オークナイト率いる群れが相手となると、鉄等級じゃ荷が重くなるわねぇ。鋼等級以上の冒険者チームが複数いないと……。それより上の上位種となると、銅等級以上が必要ね……」
「なるほど」
現在この村にいる冒険者チームは、ガンドリィたちのところを除けば、全部が鉄等級相当のチームだ。ガンドリィとしては少々荷が重いと判断しているみたい。オークナイトが相手ならまだしも、それ以上の上位種がいるかもしれないと考えると、不安で仕方がないみたいだ。
「明朝、村の者を王都へ使いに出します。それでギルドや軍が迅速に動いてくれればいいのですが……」
「そうねぇん。明日はこの村にいる冒険者全員、村に待機してもらいましょうか。オークナイト以上が群れを指揮しているとなると、いつこの村が襲われないとも限らないわぁん」
「そうして下さると助かります。よろしくお願いします」
広場で村長と冒険者チームの各代表がそれぞれ話し合った結果、とりあえず明日は村で待機することになった。解散した後、村長の家に戻る。水浴びをしたりして就寝に備える。
「ガンドリィさん、今日は村長のところに交渉に行かないんですか?」
夕飯を終え、小腹が空いてしまったエリザのために娼婦の斡旋を村長にお願いしようと考えていると、廊下でばったりとガンドリィに出くわした。それで尋ねてみると、呆れた声で返事が返ってくる。
「ヨミトちゃん、もしかしてアナタ、今日も遊ぶつもりなのかしらぁん?」
「え、ああ、まあね」
「“性豪”の名は伊達じゃないわねぇ……。わかったわよぉ、村長さんにお願いしてきてあげるわ。もうこのヤリチンさんめぇ」
「ああ悪いですね……」
ガンドリィは呆れたような眼差しを送ってきた。お腹を空かせたエリザのためとはいえ、俺の風評がとんでもないことになりそうだ。
まあ俺への風評被害を防ぐためにはこっそり村人たちの血を吸わせてもらえばいいだけなのだが、それはちょっと気が引けるのだ。
ここは僻地の寒村のようだし、困窮している様子の村人たちから無料で吸わせてもらうのは何となしに気が引けるのだ。対価を払って吸えるならそれに越したことはない。
俺は紳士な吸血鬼(自称)だからな。真っ当に生きている弱者から搾取するのは気が引けるのである。
ガンドリィは今日のところは買春はやめておくらしい。オークナイト以上の個体に率いられた魔物の群れがいつ村を襲うかと思うと、気が気でなく、エッチしてるどころではないらしい。まあそりゃそうだな。
村長の所に娼婦の斡旋をお願いしに行くと、村長は呆れた眼差しを送りつつも、淡々と斡旋作業をしてくれた。村人の収入になるから断ることはないみたい。
「それじゃ俺だけ行ってきますよ(本当はエリザも一緒だけど)」
「ええ。楽しんでらっしゃいな。このヤリチンヨミトちゃんめぇ」
「パープル君がワーワー言ってたら適当に誤魔化しといてください」
「了解よぉん」
村長に仲介してくれたガンドリィと別れ、俺(と隠れているエリザ)は昨日と同じく作業小屋へと向かった。例の間に合わせで作った売春小屋である。
「こんばんは。よろしくね」
「はい。不束ものですがよろしくお願いします」
「そうだね。良い夢を見るといいよ」
「え――うっ」
スキル【魅了】を使って娼婦を虜にする。それから、俺とエリザは昨日の三人とはまた違った娘たちの血液を堪能したのであった。
「まあまあ美味いな」
「ええ。昨日の娘たちほどではないですが、まあまあ美味しいですわね」
田舎の素朴な娘たちの血液をちゅうちゅうと吸っていく。都会の娘のものとはまた違った味わいがあって素晴らしいな。
――カンカンカン!
「ん、何事だ?」
娼婦の血を堪能していると、静かな闇夜を切り裂くかのような鐘の音が、突如として鳴り響いた。
吸血行為中だというのに無粋な輩め。
「おそらく物見が警戒の鐘を打ち鳴らしているのだと思われますわ」
「ってことは村に何か起きてるってことか。エリザ、先に様子を見てきてくれ。俺はこの子たちを逃がすから」
「ええかしこまりました」
俺はエリザに先に行かせると、眠っていた娼婦を叩き起こして逃がす。それからエリザの後を追って騒ぎの中心地へと向かったのであった。
「俺たちがオークの親玉の首をとったぞ! 悪いなみんな、ただ働きになっちまってさ!」
村の広場に村人たちや帰還した冒険者たちが集まっていたので、俺はそこでオークハイの首をここぞとばかりに見せびらかした。
ややハイテンションのドヤ顔で見せびらかしたのだが……。
「え?」
「アンタもそうなの?」
村人たちにはさぞ英雄扱いされ、同業者には羨ましがられるかと思いきや、そうはならなかった。村人はおろか冒険者たちも、全員が困惑した表情を浮かべていた。
ドヤ顔でオークハイの首をとったことを自慢したのに素っ気無い反応だなんて、ちょっと恥ずかしいではないか。
「あらぁん? ヨミトちゃんたちもオークハイの首級を挙げたのぉん?」
「『も』ってことは、ガンドリィさんたちもオークハイを倒したんですか?」
「ええ。ほらぁん。これよぉ」
広場にいたガンドリィが、自分たちが挙げた首を見せてくる。
首桶の中には、俺たちが狩ったのと似た首が納められていた。オークハイの首で間違いない。
「どういうことです? オークハイは複数体いたってこと?」
「ええ。アタシたちの他にも、東ルートを探索してたオルクスちゃんのチームがオークハイの首を挙げたらしいわぁん。つまり、オークハイは少なくとも三体は確認できたってわけね」
「これって報酬とかどうなるんです?」
「ギルド依頼だからそこらへんは問題ないわ。国が全部払ってくれるでしょう。それより、問題は別にあるわぁん」
「と言うと?」
ガンドリィは神妙な顔つきになる。いつもふざけた顔をしているやつが急に真面目な顔つきになると、なんか緊張してしまうな。
「オークハイが複数体いて、それぞれが争うこともなく秩序立った動きを見せているということは……面倒なことになるわ」
「そいつらを取りまとめているヤツがいるってことですか?」
「ええその通りよぉん。オークハイより上の、オークナイト以上の個体がヒムの森のどこかにいるということになるわぁん。オークナイト率いる群れが相手となると、鉄等級じゃ荷が重くなるわねぇ。鋼等級以上の冒険者チームが複数いないと……。それより上の上位種となると、銅等級以上が必要ね……」
「なるほど」
現在この村にいる冒険者チームは、ガンドリィたちのところを除けば、全部が鉄等級相当のチームだ。ガンドリィとしては少々荷が重いと判断しているみたい。オークナイトが相手ならまだしも、それ以上の上位種がいるかもしれないと考えると、不安で仕方がないみたいだ。
「明朝、村の者を王都へ使いに出します。それでギルドや軍が迅速に動いてくれればいいのですが……」
「そうねぇん。明日はこの村にいる冒険者全員、村に待機してもらいましょうか。オークナイト以上が群れを指揮しているとなると、いつこの村が襲われないとも限らないわぁん」
「そうして下さると助かります。よろしくお願いします」
広場で村長と冒険者チームの各代表がそれぞれ話し合った結果、とりあえず明日は村で待機することになった。解散した後、村長の家に戻る。水浴びをしたりして就寝に備える。
「ガンドリィさん、今日は村長のところに交渉に行かないんですか?」
夕飯を終え、小腹が空いてしまったエリザのために娼婦の斡旋を村長にお願いしようと考えていると、廊下でばったりとガンドリィに出くわした。それで尋ねてみると、呆れた声で返事が返ってくる。
「ヨミトちゃん、もしかしてアナタ、今日も遊ぶつもりなのかしらぁん?」
「え、ああ、まあね」
「“性豪”の名は伊達じゃないわねぇ……。わかったわよぉ、村長さんにお願いしてきてあげるわ。もうこのヤリチンさんめぇ」
「ああ悪いですね……」
ガンドリィは呆れたような眼差しを送ってきた。お腹を空かせたエリザのためとはいえ、俺の風評がとんでもないことになりそうだ。
まあ俺への風評被害を防ぐためにはこっそり村人たちの血を吸わせてもらえばいいだけなのだが、それはちょっと気が引けるのだ。
ここは僻地の寒村のようだし、困窮している様子の村人たちから無料で吸わせてもらうのは何となしに気が引けるのだ。対価を払って吸えるならそれに越したことはない。
俺は紳士な吸血鬼(自称)だからな。真っ当に生きている弱者から搾取するのは気が引けるのである。
ガンドリィは今日のところは買春はやめておくらしい。オークナイト以上の個体に率いられた魔物の群れがいつ村を襲うかと思うと、気が気でなく、エッチしてるどころではないらしい。まあそりゃそうだな。
村長の所に娼婦の斡旋をお願いしに行くと、村長は呆れた眼差しを送りつつも、淡々と斡旋作業をしてくれた。村人の収入になるから断ることはないみたい。
「それじゃ俺だけ行ってきますよ(本当はエリザも一緒だけど)」
「ええ。楽しんでらっしゃいな。このヤリチンヨミトちゃんめぇ」
「パープル君がワーワー言ってたら適当に誤魔化しといてください」
「了解よぉん」
村長に仲介してくれたガンドリィと別れ、俺(と隠れているエリザ)は昨日と同じく作業小屋へと向かった。例の間に合わせで作った売春小屋である。
「こんばんは。よろしくね」
「はい。不束ものですがよろしくお願いします」
「そうだね。良い夢を見るといいよ」
「え――うっ」
スキル【魅了】を使って娼婦を虜にする。それから、俺とエリザは昨日の三人とはまた違った娘たちの血液を堪能したのであった。
「まあまあ美味いな」
「ええ。昨日の娘たちほどではないですが、まあまあ美味しいですわね」
田舎の素朴な娘たちの血液をちゅうちゅうと吸っていく。都会の娘のものとはまた違った味わいがあって素晴らしいな。
――カンカンカン!
「ん、何事だ?」
娼婦の血を堪能していると、静かな闇夜を切り裂くかのような鐘の音が、突如として鳴り響いた。
吸血行為中だというのに無粋な輩め。
「おそらく物見が警戒の鐘を打ち鳴らしているのだと思われますわ」
「ってことは村に何か起きてるってことか。エリザ、先に様子を見てきてくれ。俺はこの子たちを逃がすから」
「ええかしこまりました」
俺はエリザに先に行かせると、眠っていた娼婦を叩き起こして逃がす。それからエリザの後を追って騒ぎの中心地へと向かったのであった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
美醜逆転世界の学園に戻ったおっさんは気付かない
仙道
ファンタジー
柴田宏(しばたひろし)は学生時代から不細工といじめられ、ニートになった。
トラックにはねられ転移した先は美醜が逆転した現実世界。
しかも体は学生に戻っていたため、仕方なく学校に行くことに。
先輩、同級生、後輩でハーレムを作ってしまう。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺
マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。
その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。
彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。
そして....彼の身体は大丈夫なのか!?
荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました
夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。
スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。
ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。
驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。
※カクヨムで先行配信をしています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…
アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。
そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!
最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~
津ヶ谷
ファンタジー
綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。
ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。
目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。
その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。
その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。
そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。
これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる