吸血鬼のお宿~異世界転生して吸血鬼のダンジョンマスターになった男が宿屋運営する話~

夜光虫

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四章

オーク討伐依頼9/13(凱旋?)

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 仕留めたオークハイの首を持ってジョーア村に帰還した。

「俺たちがオークの親玉の首をとったぞ! 悪いなみんな、ただ働きになっちまってさ!」

 村の広場に村人たちや帰還した冒険者たちが集まっていたので、俺はそこでオークハイの首をここぞとばかりに見せびらかした。

 ややハイテンションのドヤ顔で見せびらかしたのだが……。

「え?」
「アンタもそうなの?」

 村人たちにはさぞ英雄扱いされ、同業者には羨ましがられるかと思いきや、そうはならなかった。村人はおろか冒険者たちも、全員が困惑した表情を浮かべていた。

 ドヤ顔でオークハイの首をとったことを自慢したのに素っ気無い反応だなんて、ちょっと恥ずかしいではないか。

「あらぁん? ヨミトちゃんたちもオークハイの首級を挙げたのぉん?」
「『も』ってことは、ガンドリィさんたちもオークハイを倒したんですか?」
「ええ。ほらぁん。これよぉ」

 広場にいたガンドリィが、自分たちが挙げた首を見せてくる。
 首桶の中には、俺たちが狩ったのと似た首が納められていた。オークハイの首で間違いない。

「どういうことです? オークハイは複数体いたってこと?」
「ええ。アタシたちの他にも、東ルートを探索してたオルクスちゃんのチームがオークハイの首を挙げたらしいわぁん。つまり、オークハイは少なくとも三体は確認できたってわけね」
「これって報酬とかどうなるんです?」
「ギルド依頼だからそこらへんは問題ないわ。国が全部払ってくれるでしょう。それより、問題は別にあるわぁん」
「と言うと?」

 ガンドリィは神妙な顔つきになる。いつもふざけた顔をしているやつが急に真面目な顔つきになると、なんか緊張してしまうな。

「オークハイが複数体いて、それぞれが争うこともなく秩序立った動きを見せているということは……面倒なことになるわ」
「そいつらを取りまとめているヤツがいるってことですか?」
「ええその通りよぉん。オークハイより上の、オークナイト以上の個体がヒムの森のどこかにいるということになるわぁん。オークナイト率いる群れが相手となると、鉄等級じゃ荷が重くなるわねぇ。鋼等級以上の冒険者チームが複数いないと……。それより上の上位種となると、銅等級以上が必要ね……」
「なるほど」

 現在この村にいる冒険者チームは、ガンドリィたちのところを除けば、全部が鉄等級相当のチームだ。ガンドリィとしては少々荷が重いと判断しているみたい。オークナイトが相手ならまだしも、それ以上の上位種がいるかもしれないと考えると、不安で仕方がないみたいだ。

「明朝、村の者を王都へ使いに出します。それでギルドや軍が迅速に動いてくれればいいのですが……」
「そうねぇん。明日はこの村にいる冒険者全員、村に待機してもらいましょうか。オークナイト以上が群れを指揮しているとなると、いつこの村が襲われないとも限らないわぁん」
「そうして下さると助かります。よろしくお願いします」

 広場で村長と冒険者チームの各代表がそれぞれ話し合った結果、とりあえず明日は村で待機することになった。解散した後、村長の家に戻る。水浴びをしたりして就寝に備える。

「ガンドリィさん、今日は村長のところに交渉に行かないんですか?」

 夕飯を終え、小腹が空いてしまったエリザのために娼婦の斡旋を村長にお願いしようと考えていると、廊下でばったりとガンドリィに出くわした。それで尋ねてみると、呆れた声で返事が返ってくる。

「ヨミトちゃん、もしかしてアナタ、今日も遊ぶつもりなのかしらぁん?」
「え、ああ、まあね」
「“性豪”の名は伊達じゃないわねぇ……。わかったわよぉ、村長さんにお願いしてきてあげるわ。もうこのヤリチンさんめぇ」
「ああ悪いですね……」

 ガンドリィは呆れたような眼差しを送ってきた。お腹を空かせたエリザのためとはいえ、俺の風評がとんでもないことになりそうだ。

 まあ俺への風評被害を防ぐためにはこっそり村人たちの血を吸わせてもらえばいいだけなのだが、それはちょっと気が引けるのだ。

 ここは僻地の寒村のようだし、困窮している様子の村人たちから無料で吸わせてもらうのは何となしに気が引けるのだ。対価を払って吸えるならそれに越したことはない。

 俺は紳士な吸血鬼(自称)だからな。真っ当に生きている弱者から搾取するのは気が引けるのである。

 ガンドリィは今日のところは買春はやめておくらしい。オークナイト以上の個体に率いられた魔物の群れがいつ村を襲うかと思うと、気が気でなく、エッチしてるどころではないらしい。まあそりゃそうだな。

 村長の所に娼婦の斡旋をお願いしに行くと、村長は呆れた眼差しを送りつつも、淡々と斡旋作業をしてくれた。村人の収入になるから断ることはないみたい。

「それじゃ俺だけ行ってきますよ(本当はエリザも一緒だけど)」
「ええ。楽しんでらっしゃいな。このヤリチンヨミトちゃんめぇ」
「パープル君がワーワー言ってたら適当に誤魔化しといてください」
「了解よぉん」

 村長に仲介してくれたガンドリィと別れ、俺(と隠れているエリザ)は昨日と同じく作業小屋へと向かった。例の間に合わせで作った売春小屋である。

「こんばんは。よろしくね」
「はい。不束ものですがよろしくお願いします」
「そうだね。良い夢を見るといいよ」
「え――うっ」

 スキル【魅了】を使って娼婦を虜にする。それから、俺とエリザは昨日の三人とはまた違った娘たちの血液を堪能したのであった。

「まあまあ美味いな」
「ええ。昨日の娘たちほどではないですが、まあまあ美味しいですわね」

 田舎の素朴な娘たちの血液をちゅうちゅうと吸っていく。都会の娘のものとはまた違った味わいがあって素晴らしいな。

――カンカンカン!

「ん、何事だ?」

 娼婦の血を堪能していると、静かな闇夜を切り裂くかのような鐘の音が、突如として鳴り響いた。

 吸血行為中だというのに無粋な輩め。

「おそらく物見が警戒の鐘を打ち鳴らしているのだと思われますわ」
「ってことは村に何か起きてるってことか。エリザ、先に様子を見てきてくれ。俺はこの子たちを逃がすから」
「ええかしこまりました」

 俺はエリザに先に行かせると、眠っていた娼婦を叩き起こして逃がす。それからエリザの後を追って騒ぎの中心地へと向かったのであった。
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