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四章
宿泊者名簿No.13 元毒蜘蛛構成員オージン2/5
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「――ということで、メグミンちゃんたちの後見人になったオージンだ。昔会ったことあるんだけど、覚えてるかな?」
「はい。少しだけですけど……。オージン叔父さん、今日からよろしくお願いします」
「うんうんよろしく」
メグミンは汚れなど知らぬという純真な目で俺を見てきた。
今までほとんど会ったことないから、俺の悪行について耳にする機会はなかったのだろう。死にかけの祖父に甲斐甲斐しく世話を焼く親切な叔父さんという認識でいるようだった。
「アキ君だっけ? 君もよろしく」
「はい」
親父はどこぞの馬の骨とも知らんガキを養子にしてやがった。実の息子を差し置いて拾ったガキを可愛がるなんてな。何を考えてやがったんだ。
「ごほごほ」
「大丈夫かい?」
「はい。昔から身体が弱くて……」
「そいつは大変だね」
そのガキは極度の病弱であるようだった。病弱ならそこまで長生きしねえだろ。死ぬまでこき使ってやるだけだ。そう思った。
「こっちは息子のバカンだ」
「よろじぐぅ。メグミンだん、アギぐん」
息子を引き合わせると、メグミンとアキは表情を引きつらせていた。
まあ仕方ないだろう。我が息子ながらこいつはどうかと思うからな。そこまでブサイクじゃない俺と美人だった妻の子とは思えないほどの激烈ブサイクだ。まるでオークだ。
まあそんなブサイクでも我が子だと思えば可愛くも見えるがな。
バカンは生まれつき、バッドスキル【豚化】を持った哀れな子なんだ。許してやってくれ。
「今日からこいつもここで働く。不肖の息子だが仲良くしてやってくれ」
「は、はい……」
息子は頭悪すぎて部屋に引き篭もるばかりで、妻が死んだ後はずっと厄介払いしたいと思ってたんだがな。なんだかんだで自分の息子だから、これまで育てて来ちまった。出来の悪い子ほど可愛がっちまうって言うからな。
まあ今までは頭悪くて役立たずの息子だったが、牧場での力仕事なら多少役に立つだろう。【豚化】は知能が極端に下がる代わりに、肉体面での力が上がるバッドスキルらしいしな。
ということで、バカンもこの家に連れてきた次第だ。
「そうだ。そこに血を垂らしてくれ」
「雇用契約書に血を垂らすんですか? そんなの聞いたことないですけど……」
「ウチのやり方ではそうなってるんだ。本人証明になるんだよ」
「そうですか……わかりました」
適当なことを言って、メグミンとアキの血を採取する。
呑気な親父と共に長閑な牧場で育ったためか、人を疑うということを知らないなこいつらは。楽に血を採取することができたぜ。
ちなみに本人証明云々というのは全部嘘っぱちだ。本当の理由はスキル【血盟】で契約を結ぶためである。対象の血さえあれば、一方的に契約を結ぶことが出来るからな。
強力なスキルに思えるが、実はそうでもない。相手の意思は関係なく一方的に支配下に置けるが、色々面倒な制約がある。
まず新鮮な血じゃないと契約は失敗し、なおかつ対象の目の前で血を取り込み、長ったらしい詠唱に成功しなければいけない。そもそも自分よりも強者とは契約が結べず失敗する。また一度契約に失敗したらその対象とは二度と契約できないという制約もある。
ぶっちゃけ、使いどころが難しいスキルだ。まあ使い勝手が悪いスキルだが、目の前で血を入手して詠唱に成功さえすれば、格下なら一方的に支配下に置ける強いスキルだともいえるがな。
親父をそのスキルで操れば牧場の譲渡も簡単な話だったんだが、そうできなかったのには理由がある。
理由は単純で、昔契約に失敗したからだ。血を採って詠唱成功するまではいけたんだが、親父が俺よりも生物として強かった(格上の存在だった)ので、契約は失敗となった。
死に際の親父はよぼよぼの爺だったが、昔は戦争で腕をならしてたりしたからな。俺も毒蜘蛛の構成員としてそれなりに修羅場を潜ってきたつもりだったんだが、当時の俺では親父に勝つことはできなかった。
(くくっ、親父では失敗したが、こんなガキ共相手に失敗するわけないよな!)
ただの牧場娘のメグミンと、このアキとかいう病弱なガキが俺の支配に抗えるはずはない。血を採取できた時点で、勝負は決まったようなもんだな。
「血の盟約に従い、我は乞う――」
「……?」
俺が突如詠唱を始めると、メグミンとアキはポカンとした表情で俺のことを見ていた。
勘付いて詠唱を邪魔してくるかもしれないが、その時は傍に仕えさせている犬三匹とバカンに止めてもらう予定だった。その予定だったんだがな。
「叔父さん? 大丈夫ですか?」
「どうしたんです? 急に変なことをぶつぶつと……」
あいつ等はポカンとした表情のまま、俺の詠唱を見守っていやがった。まったく、呑気な奴らだぜ。
だがおかげで無事に契約は済んだ。今この瞬間から、二人は俺の奴隷だ。
「とりあえず、この牧場の権利書は俺が保管しておこうと思う。メグミンちゃん、権利書を持って来てくれるかい?」
「それはダメで――はいわかりました」
「メグミン!?」
メグミンは嫌がる素振りを見せるものの、その態度とは裏腹にどこかへと歩いていった。向かう場所には権利書があるのだろう。
「何で身体が勝手に!? 嘘!?」
「どうなってるんだ?」
メグミンたちはワーワー騒ぎながら、権利書を持ってきてくれた。これでこの牧場は俺のもんだな。
「騒がしいのは嫌いなのでね。君たちはこれから一切騒ぎ立ててはいけない。俺に不都合なことは喋ってはいけない。いいね?」
「そんなこと――――はい」
「ふざけんな――――はい」
俺がそう命じると、メグミンとアキは頷かざるを得なかった。頷いた後、二人は絶望したような表情でこちらを見ていた。
流石にここまでやれば、疑う心を知らない奴らでも察するようになるか。自分たちが目の前にいる男の奴隷になったことを悟ったようだな。
「メグミンちゃんは今夜、湯浴みしたら俺の部屋に来るようにね。今後の牧場について、二人でゆっくり話そうじゃないか」
「なんでそんな――はい」
俺はメグミンにだけ聞こえる声でそう言って、彼女の肩をポンと優しく叩いた。絶望したようなその表情が最高にそそるな。
「はい。少しだけですけど……。オージン叔父さん、今日からよろしくお願いします」
「うんうんよろしく」
メグミンは汚れなど知らぬという純真な目で俺を見てきた。
今までほとんど会ったことないから、俺の悪行について耳にする機会はなかったのだろう。死にかけの祖父に甲斐甲斐しく世話を焼く親切な叔父さんという認識でいるようだった。
「アキ君だっけ? 君もよろしく」
「はい」
親父はどこぞの馬の骨とも知らんガキを養子にしてやがった。実の息子を差し置いて拾ったガキを可愛がるなんてな。何を考えてやがったんだ。
「ごほごほ」
「大丈夫かい?」
「はい。昔から身体が弱くて……」
「そいつは大変だね」
そのガキは極度の病弱であるようだった。病弱ならそこまで長生きしねえだろ。死ぬまでこき使ってやるだけだ。そう思った。
「こっちは息子のバカンだ」
「よろじぐぅ。メグミンだん、アギぐん」
息子を引き合わせると、メグミンとアキは表情を引きつらせていた。
まあ仕方ないだろう。我が息子ながらこいつはどうかと思うからな。そこまでブサイクじゃない俺と美人だった妻の子とは思えないほどの激烈ブサイクだ。まるでオークだ。
まあそんなブサイクでも我が子だと思えば可愛くも見えるがな。
バカンは生まれつき、バッドスキル【豚化】を持った哀れな子なんだ。許してやってくれ。
「今日からこいつもここで働く。不肖の息子だが仲良くしてやってくれ」
「は、はい……」
息子は頭悪すぎて部屋に引き篭もるばかりで、妻が死んだ後はずっと厄介払いしたいと思ってたんだがな。なんだかんだで自分の息子だから、これまで育てて来ちまった。出来の悪い子ほど可愛がっちまうって言うからな。
まあ今までは頭悪くて役立たずの息子だったが、牧場での力仕事なら多少役に立つだろう。【豚化】は知能が極端に下がる代わりに、肉体面での力が上がるバッドスキルらしいしな。
ということで、バカンもこの家に連れてきた次第だ。
「そうだ。そこに血を垂らしてくれ」
「雇用契約書に血を垂らすんですか? そんなの聞いたことないですけど……」
「ウチのやり方ではそうなってるんだ。本人証明になるんだよ」
「そうですか……わかりました」
適当なことを言って、メグミンとアキの血を採取する。
呑気な親父と共に長閑な牧場で育ったためか、人を疑うということを知らないなこいつらは。楽に血を採取することができたぜ。
ちなみに本人証明云々というのは全部嘘っぱちだ。本当の理由はスキル【血盟】で契約を結ぶためである。対象の血さえあれば、一方的に契約を結ぶことが出来るからな。
強力なスキルに思えるが、実はそうでもない。相手の意思は関係なく一方的に支配下に置けるが、色々面倒な制約がある。
まず新鮮な血じゃないと契約は失敗し、なおかつ対象の目の前で血を取り込み、長ったらしい詠唱に成功しなければいけない。そもそも自分よりも強者とは契約が結べず失敗する。また一度契約に失敗したらその対象とは二度と契約できないという制約もある。
ぶっちゃけ、使いどころが難しいスキルだ。まあ使い勝手が悪いスキルだが、目の前で血を入手して詠唱に成功さえすれば、格下なら一方的に支配下に置ける強いスキルだともいえるがな。
親父をそのスキルで操れば牧場の譲渡も簡単な話だったんだが、そうできなかったのには理由がある。
理由は単純で、昔契約に失敗したからだ。血を採って詠唱成功するまではいけたんだが、親父が俺よりも生物として強かった(格上の存在だった)ので、契約は失敗となった。
死に際の親父はよぼよぼの爺だったが、昔は戦争で腕をならしてたりしたからな。俺も毒蜘蛛の構成員としてそれなりに修羅場を潜ってきたつもりだったんだが、当時の俺では親父に勝つことはできなかった。
(くくっ、親父では失敗したが、こんなガキ共相手に失敗するわけないよな!)
ただの牧場娘のメグミンと、このアキとかいう病弱なガキが俺の支配に抗えるはずはない。血を採取できた時点で、勝負は決まったようなもんだな。
「血の盟約に従い、我は乞う――」
「……?」
俺が突如詠唱を始めると、メグミンとアキはポカンとした表情で俺のことを見ていた。
勘付いて詠唱を邪魔してくるかもしれないが、その時は傍に仕えさせている犬三匹とバカンに止めてもらう予定だった。その予定だったんだがな。
「叔父さん? 大丈夫ですか?」
「どうしたんです? 急に変なことをぶつぶつと……」
あいつ等はポカンとした表情のまま、俺の詠唱を見守っていやがった。まったく、呑気な奴らだぜ。
だがおかげで無事に契約は済んだ。今この瞬間から、二人は俺の奴隷だ。
「とりあえず、この牧場の権利書は俺が保管しておこうと思う。メグミンちゃん、権利書を持って来てくれるかい?」
「それはダメで――はいわかりました」
「メグミン!?」
メグミンは嫌がる素振りを見せるものの、その態度とは裏腹にどこかへと歩いていった。向かう場所には権利書があるのだろう。
「何で身体が勝手に!? 嘘!?」
「どうなってるんだ?」
メグミンたちはワーワー騒ぎながら、権利書を持ってきてくれた。これでこの牧場は俺のもんだな。
「騒がしいのは嫌いなのでね。君たちはこれから一切騒ぎ立ててはいけない。俺に不都合なことは喋ってはいけない。いいね?」
「そんなこと――――はい」
「ふざけんな――――はい」
俺がそう命じると、メグミンとアキは頷かざるを得なかった。頷いた後、二人は絶望したような表情でこちらを見ていた。
流石にここまでやれば、疑う心を知らない奴らでも察するようになるか。自分たちが目の前にいる男の奴隷になったことを悟ったようだな。
「メグミンちゃんは今夜、湯浴みしたら俺の部屋に来るようにね。今後の牧場について、二人でゆっくり話そうじゃないか」
「なんでそんな――はい」
俺はメグミンにだけ聞こえる声でそう言って、彼女の肩をポンと優しく叩いた。絶望したようなその表情が最高にそそるな。
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