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五章
宿泊者名簿No.16 盗賊頭ゾォーク4/6(勇者狩り)
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村長や女将ユマを通した情報収集のおかげで、冒険者や騎士団側の斥候だと思われる人物の動きはこちらに筒抜けとなった。村近辺で少し強引な盗みを働いた後でも、温泉宿に上手く逃げ込んでそこにあるポーターを使って拠点に帰れば、無事に盗みを終えることができた。
女将ユマを始めとしたハザマ村の上層部と誼を通じたおかげで、安定的かつ莫大な収益を上げることができた。
村から搾り取るだけじゃすぐに村が干上がっちまって長くは続かねえが、余所から冒険者を多数誘き寄せ、そいつらから金を搾り上げて共に利益を上げれば長続きする。我ながら上手くやったと思うぜ。
冒険者共に宿に金を落とさせた後は、機会があればその身柄を頂く。森にのこのこと探索にきた奴らを仕留めて骨の髄までしゃぶり尽す。
女将ユマからの情報があるおかげで、俺たちは冒険者との戦いを優位に進めることができた。ただでさえ勝手知ったる森という地の利がある上に、こちらは相手の情報を完全に掴んでいるんだからな。負けるはずがねえ。
「さて、あとはお前さんだけだな。楽しませてもらうぜ。ハヤとやら!」
「やめてこないで! ひっ、いやあああ!」
ある時なんて、足自慢の“韋駄天”とかいう冒険者チームを楽々と壊滅させることができ、チームの副リーダーで紅一点だった“ハヤ”とかいう女を捕虜にすることができた。無論、たっぷり楽しませてもらったぜ。
「王都に潜り込ませていたズークたちが帰ってくるだと? 何故だ? カミラたちみたくしくじったのか?」
足自慢のチームを壊滅させる少し前のことだっただろうか。団の連絡係がある情報を伝えてきた。王都で情報収集させていた者が帰ってくるのだとか。
「しくじったわけではないみたいです。なんでも、仲間だった奴が急に足を洗うとか言い始めたらしく、それで王都での活動が困難になったらしいです。本拠地から見込みある人員を呼び寄せたいってことで、それで一旦帰ってくるそうです。帰るついでにお土産を持って帰るそうですよ」
ズークたちには複数の冒険者チームを渡り歩かせてたりしていた。所謂スパイって奴だな。奴らとは、俺が王都近郊に根を張っていた頃からの付き合いだ。
「おみやげだと?」
「へい、それなりに有名な冒険者だとか」
合流する時にも抜け目なく獲物を見つけて来るとは、相変わらず優秀な奴らだぜ。
奴らが持参してきた獲物――それはライトとセインという若い男女の冒険者だった。
「そうか。しっかりやれと伝えろ」
「へい」
聞いたことない奴らなので大したことないだろうが、周到に準備することにした。獅子は一匹の兎を狩るのにも全力を出すというからな。
「ゾォークさん、お久しぶりっす」
「おう久しいな。ズーク、ミーゴ、チリィ、ティン。元気してたか?」
「元気っすよ。すみません急に帰ってきちまって。トラッシュの奴らが昇級試験終わったら、急に裏稼業辞めるとか言い出しやがって、こっちとしては大迷惑ですわ。アイツらのスキル頼みだったっていうのに」
ユマの宿を利用して、ハザマ村に立ち寄ったズークたちと密かに会う。その際、愚痴を散々聞かされることになった。
「トラッシュのやつは何故急に豹変したんだ?」
「さあ。怯えるような感じで何も言えないとしか言わなくて。言ったらあの御方に殺される、言おうとしても言えないとか抜かしてました」
「騎士団とかにタマ掴まれて泳がされてでもいるのか?」
「そうだったら不味いですね。王都に戻ったら隙を見て消しときます」
「おう気をつけてな」
王都での情報収集班だった者の一部が離反したそうだが、理由はよくわからなかった。
まあ裏切りが常の俺たちの稼業じゃ珍しいことじゃねえがな。
「それで、今回の獲物のライトとセインってのはどんな奴らなんだ?」
「へへ、それなんですがね、極上の獲物ですぜ。ゾォークさん」
ズークたちから情報を仕入れる。すると、とんでもないことが判明しやがった。
セインとかいう女はそれなりに優秀な回復スキル持ちであるというだけだったが、ライトはそうじゃなかった。
ライトはあの有名なスキル【勇者】持ちだった。ワタリーの奴と一緒だった。
「そうか。それじゃ酔狂で戦うのは駄目だな。効率重視でいこう」
「それがいいと思いますぜ」
勇者スキル持ちといっても、まだ鋼等級らしいので大したことないのかもしれないが、特別なスキル持ちは急成長を遂げたりしやがるから油断できない。念には念を入れ、搦め手で倒すことにした。
ズークたちを使い、勇者様に指定地点で昼食をとってもらい、昼食の中に強力な睡眠薬を仕込ませて眠らせることにした。
幸い、勇者様らのおつむはそこまで冴えてる方じゃなく、まんまと罠に引っかかってくれた。間抜けな勇者様だぜ。
「よおズーク。首尾はいいみたいだな」
「ゾォークさん、バッチリっすよ。二人とも間抜けな面して眠ってやがります」
「くく、そうかそうか。確かに上玉だな。でかしたぞ。では縛り上げてアジトへと運ぶぞ」
「へい」
こうして、俺たちは無傷で冒険者チーム“救世”を壊滅させ、ライトとセインの二人を捕虜として捕らえることができた。
まさか信頼できる仲間だと思っていた四人全員が盗賊だったなんて、勇者様たちは夢にも思うまい。
「ズーク!? ミーゴ!? チリィ!? ティン!? 君たち、俺たちを裏切ったのか?」
「裏切るというより、最初から仲間のつもりなんてなかったぜ。お前らに近づいたのは、お前らを狩るためだったからな」
「そ、そんな……」
勇者様はズークたちに裏切られたことを知り、酷く衝撃を受けているようであった。勇者様は本当の仲間だと思ってたらしいな。
おめでたい話だぜ。こんな胡散臭い面した奴らを仲間と思うなんてな。人がいいにも程があるぜ。
「ズークたちよ、お前らが一番手柄だ。そのセインとかいう女の一番槍、くれてやるぜ」
「そいつはありがてえ。遠慮なくやらせてもらうっす!」
一番槍をくれてやると、ズークたちは下品な笑みを浮かべてセインとかいうお嬢ちゃんに近づいていった。
「いやっ、何をなさるんですか!?」
「うひひ、セインちゃん楽しもうぜ」
「いやぁあああッ!」
その後は言うまでもねえ。盗賊共の野蛮な宴の始まりだぜ。
「セイィイインッ! お前ら、許さない! 殺してやるぅうッ!」
捕らえられながらも凛とした雰囲気を保っていた勇者様であるが、相棒の女の貞操が汚されるのを眼前で見せられ、ようやく取り乱し始めた。
「くく、女がやられてようやく本性見せたな、勇者様よぉ。捕らえられてなお気丈に気品を保つ。その好青年みたいな態度にはイライラしてたところだ」
極上の美人の初槍をあげちまうのは勿体無いとも思ったが俺にはこいつがいる。ワタリーと同じ勇者スキル持ちの、このクソ生意気な面してやがるこいつがな。
(いい表情するじゃねえか、こいつぅ)
イケメンが苦痛に顔を歪ませている姿は最高だ。イケメンが自分の命よりも大事な人を汚されて、地獄のような苦しみを味わい、嘆き絶叫する様は最高の酒の肴である。
ワタリーみたいなイケメンが苦しんでいると思うと、最高に興奮する。俺はホモじゃねえんだが、イケメンが苦しんでいる姿を見るとすげえ興奮するぜ。もっと甚振ってやろうって思える。
「おら、よく見とけよ勇者様! 美人の幼馴染の相棒が、しょうもない裏切り屑男に汚されている姿をな!」
「お前っ、くそがっ、この下衆共がぁああ! 絶対に許さない! 許さない許さない許さない! 殺す殺す殺すぅう!」
「へへ、その憎しみに満ちた面ァ、最高だぜぇ勇者様よぉ!」
やはり似ている。この勇者様は、俺よりも先に出世して王国を出ていきやがったワタリーの野郎にどことなく似ている。表じゃ好青年を気取ってやがるが、内にはかなり大きな野望を秘めてるって面だ。
そうだ。あの憎きワタリーの野郎に似ているんだ。せっかく俺が娼婦を奢ってやるって言ったのに、「仕事の前日に女を抱くのは意識が低いですよゾォークさん」とか、俺に説教垂れやがったあのクソ生意気な野郎にな。
顔貌はまったく違うが、そういうことじゃねえ。魂の性質が似ているんだ。才能があるくせに慢心せずに努力ばかり重ねやがって。そんなことしたら才能がない奴は太刀打ちできねえじゃねえか。
帝国に渡ったワタリーは今じゃ順調に出世を重ね、金等級らしい。下級種とはいえドラゴンの単独討伐も成し遂げ、その名声は帝国はおろか王国の隅々にまで轟いてやがる。英雄の領域に足を突っ込んでいる。
俺がどれだけ修練を重ねても無理だとしか思えなかったあの領域に。純粋な腕っ節だけでも、今や俺よりも遥かに上だろう。見た目どころか実力すらも決して敵わない。
あんな若造が、いけ好かないイケメン野郎が、俺が幼い頃から恋焦がれて止まなかったあの英雄の域にいる。俺は今や堅気の誰からも嫌われる社会のゴミである盗賊団の頭だが、アイツは堅気の誰からも持て囃される英雄様だ。
信頼できる良い仲間に囲まれ、御伽噺に出てくるような冒険を繰り返していることだろう。そのうち、歴史書にも名を残すかもしれねえ。いや、金等級なら既に歴史書に名が残ること確定か。
くそっ、アイツを思い出すとムカムカするぜ。ムカムカしてムラムラしてくる。ピーがイライラして我慢できねえ。
「そんじゃ、俺はこっちの初物を頂こうか。勇者様のアレをな」
「な、何だ、お前ッ!? 何を考えて!?」
「せいぜい泣き叫べよ勇者様ぁああッ! 俺様の聖剣が火を噴くぜぇええッ!」
「やめ、やめろぉおおお!?」
その後、俺は勇者様をたっぷりと嬲った。
勇者様の泣き顔は最高だったぜ。まるでワタリーの野郎をぶちのめしているみたいで最高だ。
「ヒャハハハハ! 俺様は強ぇえ! 最強だ! 勇者様ですら俺様には適わねえんだ!」
「よっ、ゾォークの旦那! 大陸一の豪傑よ!」
最高だ。憎きワタリーの奴とその恋人を滅茶苦茶にしてるみたいで、最高の気分だぜ。
女将ユマを始めとしたハザマ村の上層部と誼を通じたおかげで、安定的かつ莫大な収益を上げることができた。
村から搾り取るだけじゃすぐに村が干上がっちまって長くは続かねえが、余所から冒険者を多数誘き寄せ、そいつらから金を搾り上げて共に利益を上げれば長続きする。我ながら上手くやったと思うぜ。
冒険者共に宿に金を落とさせた後は、機会があればその身柄を頂く。森にのこのこと探索にきた奴らを仕留めて骨の髄までしゃぶり尽す。
女将ユマからの情報があるおかげで、俺たちは冒険者との戦いを優位に進めることができた。ただでさえ勝手知ったる森という地の利がある上に、こちらは相手の情報を完全に掴んでいるんだからな。負けるはずがねえ。
「さて、あとはお前さんだけだな。楽しませてもらうぜ。ハヤとやら!」
「やめてこないで! ひっ、いやあああ!」
ある時なんて、足自慢の“韋駄天”とかいう冒険者チームを楽々と壊滅させることができ、チームの副リーダーで紅一点だった“ハヤ”とかいう女を捕虜にすることができた。無論、たっぷり楽しませてもらったぜ。
「王都に潜り込ませていたズークたちが帰ってくるだと? 何故だ? カミラたちみたくしくじったのか?」
足自慢のチームを壊滅させる少し前のことだっただろうか。団の連絡係がある情報を伝えてきた。王都で情報収集させていた者が帰ってくるのだとか。
「しくじったわけではないみたいです。なんでも、仲間だった奴が急に足を洗うとか言い始めたらしく、それで王都での活動が困難になったらしいです。本拠地から見込みある人員を呼び寄せたいってことで、それで一旦帰ってくるそうです。帰るついでにお土産を持って帰るそうですよ」
ズークたちには複数の冒険者チームを渡り歩かせてたりしていた。所謂スパイって奴だな。奴らとは、俺が王都近郊に根を張っていた頃からの付き合いだ。
「おみやげだと?」
「へい、それなりに有名な冒険者だとか」
合流する時にも抜け目なく獲物を見つけて来るとは、相変わらず優秀な奴らだぜ。
奴らが持参してきた獲物――それはライトとセインという若い男女の冒険者だった。
「そうか。しっかりやれと伝えろ」
「へい」
聞いたことない奴らなので大したことないだろうが、周到に準備することにした。獅子は一匹の兎を狩るのにも全力を出すというからな。
「ゾォークさん、お久しぶりっす」
「おう久しいな。ズーク、ミーゴ、チリィ、ティン。元気してたか?」
「元気っすよ。すみません急に帰ってきちまって。トラッシュの奴らが昇級試験終わったら、急に裏稼業辞めるとか言い出しやがって、こっちとしては大迷惑ですわ。アイツらのスキル頼みだったっていうのに」
ユマの宿を利用して、ハザマ村に立ち寄ったズークたちと密かに会う。その際、愚痴を散々聞かされることになった。
「トラッシュのやつは何故急に豹変したんだ?」
「さあ。怯えるような感じで何も言えないとしか言わなくて。言ったらあの御方に殺される、言おうとしても言えないとか抜かしてました」
「騎士団とかにタマ掴まれて泳がされてでもいるのか?」
「そうだったら不味いですね。王都に戻ったら隙を見て消しときます」
「おう気をつけてな」
王都での情報収集班だった者の一部が離反したそうだが、理由はよくわからなかった。
まあ裏切りが常の俺たちの稼業じゃ珍しいことじゃねえがな。
「それで、今回の獲物のライトとセインってのはどんな奴らなんだ?」
「へへ、それなんですがね、極上の獲物ですぜ。ゾォークさん」
ズークたちから情報を仕入れる。すると、とんでもないことが判明しやがった。
セインとかいう女はそれなりに優秀な回復スキル持ちであるというだけだったが、ライトはそうじゃなかった。
ライトはあの有名なスキル【勇者】持ちだった。ワタリーの奴と一緒だった。
「そうか。それじゃ酔狂で戦うのは駄目だな。効率重視でいこう」
「それがいいと思いますぜ」
勇者スキル持ちといっても、まだ鋼等級らしいので大したことないのかもしれないが、特別なスキル持ちは急成長を遂げたりしやがるから油断できない。念には念を入れ、搦め手で倒すことにした。
ズークたちを使い、勇者様に指定地点で昼食をとってもらい、昼食の中に強力な睡眠薬を仕込ませて眠らせることにした。
幸い、勇者様らのおつむはそこまで冴えてる方じゃなく、まんまと罠に引っかかってくれた。間抜けな勇者様だぜ。
「よおズーク。首尾はいいみたいだな」
「ゾォークさん、バッチリっすよ。二人とも間抜けな面して眠ってやがります」
「くく、そうかそうか。確かに上玉だな。でかしたぞ。では縛り上げてアジトへと運ぶぞ」
「へい」
こうして、俺たちは無傷で冒険者チーム“救世”を壊滅させ、ライトとセインの二人を捕虜として捕らえることができた。
まさか信頼できる仲間だと思っていた四人全員が盗賊だったなんて、勇者様たちは夢にも思うまい。
「ズーク!? ミーゴ!? チリィ!? ティン!? 君たち、俺たちを裏切ったのか?」
「裏切るというより、最初から仲間のつもりなんてなかったぜ。お前らに近づいたのは、お前らを狩るためだったからな」
「そ、そんな……」
勇者様はズークたちに裏切られたことを知り、酷く衝撃を受けているようであった。勇者様は本当の仲間だと思ってたらしいな。
おめでたい話だぜ。こんな胡散臭い面した奴らを仲間と思うなんてな。人がいいにも程があるぜ。
「ズークたちよ、お前らが一番手柄だ。そのセインとかいう女の一番槍、くれてやるぜ」
「そいつはありがてえ。遠慮なくやらせてもらうっす!」
一番槍をくれてやると、ズークたちは下品な笑みを浮かべてセインとかいうお嬢ちゃんに近づいていった。
「いやっ、何をなさるんですか!?」
「うひひ、セインちゃん楽しもうぜ」
「いやぁあああッ!」
その後は言うまでもねえ。盗賊共の野蛮な宴の始まりだぜ。
「セイィイインッ! お前ら、許さない! 殺してやるぅうッ!」
捕らえられながらも凛とした雰囲気を保っていた勇者様であるが、相棒の女の貞操が汚されるのを眼前で見せられ、ようやく取り乱し始めた。
「くく、女がやられてようやく本性見せたな、勇者様よぉ。捕らえられてなお気丈に気品を保つ。その好青年みたいな態度にはイライラしてたところだ」
極上の美人の初槍をあげちまうのは勿体無いとも思ったが俺にはこいつがいる。ワタリーと同じ勇者スキル持ちの、このクソ生意気な面してやがるこいつがな。
(いい表情するじゃねえか、こいつぅ)
イケメンが苦痛に顔を歪ませている姿は最高だ。イケメンが自分の命よりも大事な人を汚されて、地獄のような苦しみを味わい、嘆き絶叫する様は最高の酒の肴である。
ワタリーみたいなイケメンが苦しんでいると思うと、最高に興奮する。俺はホモじゃねえんだが、イケメンが苦しんでいる姿を見るとすげえ興奮するぜ。もっと甚振ってやろうって思える。
「おら、よく見とけよ勇者様! 美人の幼馴染の相棒が、しょうもない裏切り屑男に汚されている姿をな!」
「お前っ、くそがっ、この下衆共がぁああ! 絶対に許さない! 許さない許さない許さない! 殺す殺す殺すぅう!」
「へへ、その憎しみに満ちた面ァ、最高だぜぇ勇者様よぉ!」
やはり似ている。この勇者様は、俺よりも先に出世して王国を出ていきやがったワタリーの野郎にどことなく似ている。表じゃ好青年を気取ってやがるが、内にはかなり大きな野望を秘めてるって面だ。
そうだ。あの憎きワタリーの野郎に似ているんだ。せっかく俺が娼婦を奢ってやるって言ったのに、「仕事の前日に女を抱くのは意識が低いですよゾォークさん」とか、俺に説教垂れやがったあのクソ生意気な野郎にな。
顔貌はまったく違うが、そういうことじゃねえ。魂の性質が似ているんだ。才能があるくせに慢心せずに努力ばかり重ねやがって。そんなことしたら才能がない奴は太刀打ちできねえじゃねえか。
帝国に渡ったワタリーは今じゃ順調に出世を重ね、金等級らしい。下級種とはいえドラゴンの単独討伐も成し遂げ、その名声は帝国はおろか王国の隅々にまで轟いてやがる。英雄の領域に足を突っ込んでいる。
俺がどれだけ修練を重ねても無理だとしか思えなかったあの領域に。純粋な腕っ節だけでも、今や俺よりも遥かに上だろう。見た目どころか実力すらも決して敵わない。
あんな若造が、いけ好かないイケメン野郎が、俺が幼い頃から恋焦がれて止まなかったあの英雄の域にいる。俺は今や堅気の誰からも嫌われる社会のゴミである盗賊団の頭だが、アイツは堅気の誰からも持て囃される英雄様だ。
信頼できる良い仲間に囲まれ、御伽噺に出てくるような冒険を繰り返していることだろう。そのうち、歴史書にも名を残すかもしれねえ。いや、金等級なら既に歴史書に名が残ること確定か。
くそっ、アイツを思い出すとムカムカするぜ。ムカムカしてムラムラしてくる。ピーがイライラして我慢できねえ。
「そんじゃ、俺はこっちの初物を頂こうか。勇者様のアレをな」
「な、何だ、お前ッ!? 何を考えて!?」
「せいぜい泣き叫べよ勇者様ぁああッ! 俺様の聖剣が火を噴くぜぇええッ!」
「やめ、やめろぉおおお!?」
その後、俺は勇者様をたっぷりと嬲った。
勇者様の泣き顔は最高だったぜ。まるでワタリーの野郎をぶちのめしているみたいで最高だ。
「ヒャハハハハ! 俺様は強ぇえ! 最強だ! 勇者様ですら俺様には適わねえんだ!」
「よっ、ゾォークの旦那! 大陸一の豪傑よ!」
最高だ。憎きワタリーの奴とその恋人を滅茶苦茶にしてるみたいで、最高の気分だぜ。
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