吸血鬼のお宿~異世界転生して吸血鬼のダンジョンマスターになった男が宿屋運営する話~

夜光虫

文字の大きさ
226 / 291
六章

港町イティーバ7/19(海運会社ヴェッセル)

しおりを挟む
「ここも駄目みたいです。ノビル、そっちはどうだった?」
「俺のとこも駄目だ。やっぱり武装船を持っているところじゃないと引き受けてくれそうにない」
「そっか。困ったね」

 周辺の船会社や漁師の家を巡ることしばらく。昼過ぎまでそんなことをしていたが、九頭竜島まで船を出してくれる相手は見つからなかった。

 海賊騒ぎ(という名の神隠し)事件のせいで、武装船を持ってない所は沖まで船を出すことに躊躇しているらしい。

「武装船を持ってるとこってどんなところなの?」
「この港で武装船を保有しているのは、民間では“ヴェッセル”という海運会社だけみたいですね。近隣の国々と貿易してる会社です。この港のドンとも言うべき大きな会社です」

 俺の問いに、レイラが答えてくれる。

「そっか。じゃあ昼飯食ったらそこへ顔出してみようか」
「そうですね」
「おう」

 こうして俺とレイラとノビルの三人は、近場の飲食店で昼飯を食った後、ヴェッセルという会社に向かった。

 大通りの中心にその会社はあった。一見すると王都の貴族街にでもありそうな立派な建物だ。大きな会社だけあって儲かっているのだろう。

「なんだお前たちは?」
「実はかくかくしかじかで」

 当然ノーパスで入ることなどできず、門番に事情を話し、許可を取って中へと入れてもらった。

「そういうことなら是非とも我が社の船を使ってくださいませ。不死鳥の皆様、どうかこの港を救ってくだされ」
「助かります」

 冒険者としてそれなりに実績を積んでいるおかげか、いきなり社長に会わせてもらうことができた。恰幅の良い社長が応対してくれ、俺たちの求めに二つ返事で応じてくれた。

「毎朝武装船に護衛されて漁船団が沖へと出て行きます。その船に同乗していただき、近場からは小船で島へと向かわれるとよいでしょう」

 いつもの漁のついでに運んでくれるそうなので、料金とかは払わなくていいそうだ。儲かったぜ。

「帰りはどうすればいいですか?」
「お帰りの際は、この狼煙をお使い下さい。時化などを除き、ほぼ毎朝漁に出ておりますので、合図をしていただければ船が座礁しないギリギリまで島に寄せます」

 社長はそう言って発炎筒みたいな魔道具を寄こしてくれる。

「では明日の朝、よろしくお願いします」
「ええ」

 社長と話をつけて、明朝出る船に乗せてもらえることになった。話が早く済んでよかった。

「そんじゃ、二週間の無人島生活に向けて入用なものを追加で買い込んでおこうか」
「はい」

 船会社を出た後はイティーバの市場へと赴き食料品などを買い込んでいく。それら買い込んだ品々を、以前、損害賠償として盗賊から分捕った魔法の鞄に詰め込んでいく。

「便利な魔道具持ってますねヨミトさん」
「前に損害賠償としてもらったんだ」
「損害賠償?」

 損害賠償と言うと、レイラがきょとんとした顔をしていた。

 そんなこんなで島に向かう準備が整った。

「さて、これで準備は完了だね。あとは宿屋に帰って明日に備えるだけだけど……まだまだ日は高いね」
「それじゃメリッサたちの仕事を手伝いに行きますか?」
「うーんそうだね。その前に……」

 俺たちの班の今日の仕事は終わりだ。船を融通してくれる人がわりとすぐに見つかったので思ったよりも早く終わった。

 メリッサたちの班の仕事を手伝ってもいいが、その前にやりたいことがある。

「ねえレイラとノビル。どっか人気のないところで吸血させてくれない?」
「え、今からですか?」
「ヨミトお前、昨日の夜に出かけて散々吸ってただろうがよ!」
「昨日は昨日、今日は今日だよ。ぼったくり価格の食事のせいで朝も昼も小食だったからね。お腹がペコペコで夕飯まで持ちそうにないんだよ。エリザもきっとパープル君とメリッサの血をつまみ食いしているよ」

 情けないことに小腹が減って仕方ないので、二人に献血をお願いすることにした。

「まあいいですけど……」
「仕方ねえな……」

 レイラとノビルは呆れたような様子を見せるものの、俺の求めに応じてくれた。

「お、ちょうどいいボロ小屋があるじゃん。あそこにしよう」

 人目のある場所で吸血するわけにはいかないので、俺たちは海岸通りから外れにある林の中に入った。そこに廃屋みたいな小屋があったので、そこで吸血させてもらうことにした。

「お邪魔しまーす」
「にゃあ」

 先客の野良猫たちに挨拶してから小屋に入る。野良猫たちはおしっこしてたようだね。邪魔して悪いね。

「それじゃまずはノビルから――んん! 相変わらず童貞で最高の血だよ!」

 まずはノビルの血を頂く。首と肩の付け根をがぶっといく。

 ノビルは欠かさず鍛錬に励み日に日に強くなっており、以前よりも遥かに美味しい血になっている。童貞だし最高だ。栄養満点の素晴らしいおやつである。

「うまうま。ノビルの童貞エキス美味いぞ」
「うぅ、くそ、とんだ辱めだ……」

 ノビルは嫌そうにしながらも、吸血に伴う快楽のせいで恍惚とした表情で吸血されていた。散々吸われた後、若干気落ちした様子で上着を整えていた。

「さてお次はレイラかな」

 吸い終わったノビルを見張りに立たせ、今度はレイラを呼び寄せる。

「はいどうぞ」

 レイラは上着を脱ぎ、吸血しやすい姿になる。美女のたわわな乳房がぽろんと零れるが、何の感慨も湧かないな。

(おっぱいなんてどうでもいい。やっぱ血液だよな)

 性欲を超越した究極生物(ヴァンパイア)になった俺は、もう血液にしか興味ない。さあ楽しませてもらおう。

「んんっ、んあ♡」

 レイラは恍惚とした表情で血を吸われていく。

(んん、相変わらず濃厚だね。才能と経験に溢れてるよ)

 レイラは我がダンジョンにおいて、人間族ナンバーワンを争う強者である。強く気高い血を持っている。

 過去のあれこれ(二章参照)のせいで処女でないのが残念だが、それを加味しても美味しい血だ。経験という風味が加わってまた独特の味を醸し出している。

「んんっ、ああんっ♡」
「いいぞレイラ。ますます美味しい血に熟成されてるね」
「んあっ、んふっ♡」
「このままさらに美味しい血に成長してくれ」

 レイラの血を思う存分堪能する。

「あー、美味しかった。ありがとうレイラ」
「はぁはぁ、ご満足いただけたようでよかったですよ」

 吸血が終わり、荒い息を漏らすレイラ。脱いだ上着を着直し、外したサロペットの肩紐を元に戻そうとする――そんな時のことだった。

「――あんた、何してるだ?」
「いやこれはだな……」

 小屋の外から言い争う声が聞こえてきた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

美醜逆転世界の学園に戻ったおっさんは気付かない

仙道
ファンタジー
柴田宏(しばたひろし)は学生時代から不細工といじめられ、ニートになった。 トラックにはねられ転移した先は美醜が逆転した現実世界。 しかも体は学生に戻っていたため、仕方なく学校に行くことに。 先輩、同級生、後輩でハーレムを作ってしまう。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺

マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。 その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。 彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。 そして....彼の身体は大丈夫なのか!?

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。 スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。 ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。 驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。 ※カクヨムで先行配信をしています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~

津ヶ谷
ファンタジー
 綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。 ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。  目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。 その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。  その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。  そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。  これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。

処理中です...