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熱視線
2−2
しおりを挟む「真音ちゃん、そっちを持ってくれる?」
「うん。でも響也くんのほうが重そうよ? いいの?」
「いいから、俺に任せなさいな」
先生から、ウォーキングラリー用に渡された救急用品や緊急用の飲料やタオル類。見るからに重そうな大きなバッグを肩に掛けて、涼しげに微笑んでくる。
「こっちも、ちょっと持つよ」
しかも、私の担当のタオル類も上からザックリと、空いたほうの手で掴み上げて持っていっちゃう。
「あっ、それは私の役割っ!」
「いいから、いいから。それよりも早よ行かないと」
にこっと笑って、荷物のところまで歩き出す響也くんの左手には、無造作に掴まれたタオルの束が。
ふふ、水球のボールを掴むみたいに持ってる。
ほんまに大きな手やわ。指も長いし。何度も水球部の練習をこっそり覗きに行ったけど、片手でボールを掴んで力強く投げる姿に、いつもクラクラしてしまう。
綺麗に切り揃えられた爪と、節くれだった指で力強く握られたタオルの束に、少ーし、いやだいぶ嫉妬してしまう。
響也くんにこんなに力強く握られちゃって! タオルのくせにっ!
「ねえ、真音ちゃん?」
「ふえ? うわっ!」
わわっ、びっくり。
響也くんが大きな背中を丸めるように、覗きこんできてる。
「な、何でしょうかっ!」
「ものすごい顰めっ面やけど、大丈夫? 気分悪いの?」
見られてた!
顔全体がカッと赤くなったのがわかる。いややー。最悪ーっ。
「だ、大丈夫。心配いらんよ!」
「そう? なら、ええけど」
にこっと甘く微笑んでから離れていく響也くんの笑顔に、胸がきゅうっと締めつけられる。
あぁ、その笑顔。核兵器よりも破壊力バツグンです。
心臓が爆発して、意識が大気圏の外まで塵になって飛ばされていく幻想が見えるぅ。
しかも、授業中でもないのに何故か眼鏡着用のままやし! 日直の仕事があるから、何かあった時のためにかけてるんかな?
なんにしても、これはお得よ。だって、授業中にしか見られへんあの貴重な眼鏡姿が、こんなに至近距離で見られるんよ! いったい何のご褒美ですかぁ?
神様、ありがとう! 帰りにお賽銭入れに行きます!
ご先祖様、ありがとう! 仏壇にお団子お供えします!
はあぁ、朝イチでこんなに幸せで、今日一日もつのかしら? 私。ちょい不安。
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