ノケモノ黒魔術師のやり直し。勇者に裏切られ、命と愛する者を奪われた俺、過去に戻ってすべてを取り戻します!

こはるんるん

文字の大きさ
28 / 46
3章。魔王の領地奪還作戦

28話。エルザ、カイの罠に嵌る

しおりを挟む
【魔法剣士エルザ視点】

「クッソォオオオオ! 物見櫓が崩れている。やってくれたじゃないか!?」
 
 私は怒りのままに飛ぶように馬を走らせる。
 ミスリル鉱山が奪われたのに、ひとりも報告に来なかったことからすると、手下どもは全滅させられたのに違いない。
 だとすると、敵はかなりの規模だと思うけど……

「陽気な声と太鼓が聞こえてくる……宴会の真っ最中だってか!?」

 ミスリル鉱山に近づくにつれて、ドンチャン騒ぎが聞こえてきた。
 奴らは勝利して浮かれているらしい。おそらく、酒も入っているだろう。

「アハハハハッ! チャンスだ。油断したね」

 こちらは私を先頭にした少数の部隊。これなら、ギリギリまで敵に気づかれることなく奇襲を仕掛けられる。
 私はバフ魔法を重ねがけして身体能力を強化。さらに、剣に炎の魔法をまとわせて、攻撃力を極限までアップさせた。

「突撃だ! 奴らを皆殺しにしろ!」

 そのまま堅く閉ざされた門に向かって突っ込む。
 なんと、門には見張りも立っていなかった。
 バカなヤツ。油断するにも程があるだろう。何が魔王だ。

 私は魔法剣を門に叩きつける。門は破城槌を喰らったかのように爆散した。

「ヒャッハー! さすがはエルザの姉御だぁああ!」
「オラァアアア! 略奪しろぉおおお!」

 手下どもには、敵を殺して好きなだけ金品を奪って良いと言ってあった。

 中には、鉱山で働かせていた奴隷魔族もいるだろうが、見せしめに3割は間引いてやろう。魔族はまた捕まえてくれば補充が効く。

 魔族なんてのは、使い捨ての労働力。使えなくなったら奴隷商人に売るか、殺して経験値と金(ゴールド)に変えれば良い。
 かわいい猫耳娘たちは、その前に拷問してやろうかな。

「ぐぉおおおおおッ!」

 おぞましい雄叫びと共に、敵が弓矢を撃ってきた。
 その動きは、どことなく緩慢って……まさか、こいつらアンデッドか。

「ふんッ! アンデッドごときに、この私が止められると思うか!?」

 私は炎の魔法剣で、アンデッドどもをまとめて火葬しようとする。
 その時、地面に巨大な赤い魔法陣が浮かび上がった。魔法陣より、血のような真紅の閃光が放たれる。

「ぶッ!? なにぃいいい!?」

 馬が急に足をもつれさせて、前のめりに倒れた。
 落馬した私は、地面が紫色の毒沼に変わっているのに気づく。
 泥に濡れた全身に痛みと痺れが走った。

「ぺっぺっ! まさか地形を変える魔法だって!? こんなことが有り得るのか!?」

 毒沼は城柵の内側のほぼ全域に広がっていた。
 こんなデタラメな現象は、私の知ってる魔法の知識ではあり得ない。
 もし可能だとしたら……相手は常識を超えたレベルの魔法使いだ。

「ひゃああああッ、エルザの姉御ぉ!」

 アチコチから悲鳴が上がった。
 毒沼に足を取られた手下たちに、アンデッドが群がっている。

 生物ではないアンデッドに毒は通用しない。こちらだけが、圧倒的に不利な状況だ。
 
 クソッ、まさか、このエルザ様ともあろう者が、罠にハメられた?

「って、おい、まさかアッシュじゃねぇか!?」
「こ、こっちはノエルだぞ!?」

 しかもこのアンデッドどもは、ミスリル鉱山を任せていた元手下たちだった。

「ま、魔王のヤツ! 死んだ私達たちと仲良くなりたいって、こういう意味だったのか!?」

 悪辣極まりない嫌がらせだ。
 死んだら自分もアンデッドにされるという恐怖が一気にまん延した。

「蹴散らせ! たかがアンデッドだぞ!」
 
 私は汚い手を伸ばしてくる元手下を、炎の魔法剣で焼き尽くした。
 アンデッドどもは毒の沼地から、あとからあとから湧いてくる。伏兵として、地面に潜らせていたらしい。
 包囲された私たちは、袋叩きだ。

「舐めるな! こんな罠なんて、喰い破ってやる!」

 私は広範囲攻撃用の魔法の詠唱を始めた。あたり一帯を火の海にする凶悪な魔法だ。
 手下どもも巻き込んでしまうが、構うものか。

「くぅ……ッ!?」

 だけど、突然、身体が重くなって、構築中の魔法が霧散する。
 こ、これは……魔力不足だ。私の魔力量が気づいたら3分の1以下になっていた。

「まさか【MPドレイン】? どこかで、魔力を奪われたのか!?」

 愕然とする。
 【MPドレイン】の怖いところは、痛みを感じないため、いつ攻撃を受けたかわからないことだ。
 しかも、こんなにゴッソリ魔力を奪われるなんて……
 敵に相当な使い手がいるぞ。

「ちくしょおおお! いったん退却だぁ!」

 たまらずに、退却を命じる。
 悔しいが、このままじゃ全滅だ。
 
「はぃいいい! てめぇら、ずらかるぞぉ!」

 だけど、足をズブズブの毒沼に取られて、みんな思うように身動きできない。
 私も毒のせいで身体が痺れて、満足に剣が振れなくなってきていた。

「ひぐぁあっ!? お、お前、何を……!?」
「ロイド、やめろぉ!」

 混乱と恐怖の叫びが、あちこちで上がった。
 敵に殺された者が起き上がり、新たなアンデッドと化して、味方に襲いかかってきたのだ。

 元仲間を攻撃することをためらった男が、凶刃に倒れる。その男も、生ける屍となって起き上がった。
 これは、マズイ……ッ! 敵がドンドン増えていく。
 
「ひゃあああッ!?」

 もはや士気が保てず、私の軍勢が総崩れになっていく。

「クッソォオオオオ! 姿を見せろ、魔王カイ!」

 私は破れかぶれで絶叫した。
 一騎討ちに持ち込みさえすれば、この私が負けるハズがないんだ。
 私は最強。神に選ばれたレアクラス【魔法剣士】なんだぞ。
 この私は勝ち組となることが約束されているんだ。

「お前ら、助かりたいか?」

 その時、城柵の上から私たちを見下ろす声がした。
 その声は、魔王カイか?

「助かりたいなら、エルザを攻撃しろ。今、エルザを裏切ったヤツは、魔王軍の幹部に取り立ててやるぞ」

 冷笑と共にヤツは宣言した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

酔っぱらったせいで、勇者パーティーを洗脳してしまった

透けてるブランディシュカ
ファンタジー
悪友のせいで酔ったら。(※重複投稿しています)仲仁へび

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

野生児少女の生存日記

花見酒
ファンタジー
とある村に住んでいた少女、とある鑑定式にて自身の適性が無属性だった事で危険な森に置き去りにされ、その森で生き延びた少女の物語

魔力ゼロの俺だけが、呪いの装備を『代償なし』で使い放題 ~命を削る魔剣も、俺が持てば『ただのよく切れる剣』~

仙道
ファンタジー
現代日本で天才研究者だった相模登(さがみ のぼる)は、ある日突然、異世界へ転移した。  そこは『スキル』と『魔力』が全てを決める世界。   しかし登には、ステータス画面もなければ、魔力も、スキルも一切存在しなかった。   ただの一般人として迷宮に放り出された彼は、瀕死の女騎士と出会う。彼女の前には、使う者の命を瞬時に吸い尽くす『呪いの魔剣』が落ちていた。   武器はそれしかない。女騎士は絶望していたが、登は平然と魔剣を握りしめる。 「なぜ……生きていられるの?」  登には、剣が対価として要求する魔力は存在しない。故に、魔剣はデメリットなしの『ただのよく切れる剣』として機能した。   これは、世界で唯一「対価」を支払う必要がない登が、呪われた武具を次々と使いこなし、その副作用に苦しむ女騎士やエルフ、聖女を救い出し、無自覚に溺愛されていく物語。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

処理中です...