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3章。魔王の領地奪還作戦
28話。エルザ、カイの罠に嵌る
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【魔法剣士エルザ視点】
「クッソォオオオオ! 物見櫓が崩れている。やってくれたじゃないか!?」
私は怒りのままに飛ぶように馬を走らせる。
ミスリル鉱山が奪われたのに、ひとりも報告に来なかったことからすると、手下どもは全滅させられたのに違いない。
だとすると、敵はかなりの規模だと思うけど……
「陽気な声と太鼓が聞こえてくる……宴会の真っ最中だってか!?」
ミスリル鉱山に近づくにつれて、ドンチャン騒ぎが聞こえてきた。
奴らは勝利して浮かれているらしい。おそらく、酒も入っているだろう。
「アハハハハッ! チャンスだ。油断したね」
こちらは私を先頭にした少数の部隊。これなら、ギリギリまで敵に気づかれることなく奇襲を仕掛けられる。
私はバフ魔法を重ねがけして身体能力を強化。さらに、剣に炎の魔法をまとわせて、攻撃力を極限までアップさせた。
「突撃だ! 奴らを皆殺しにしろ!」
そのまま堅く閉ざされた門に向かって突っ込む。
なんと、門には見張りも立っていなかった。
バカなヤツ。油断するにも程があるだろう。何が魔王だ。
私は魔法剣を門に叩きつける。門は破城槌を喰らったかのように爆散した。
「ヒャッハー! さすがはエルザの姉御だぁああ!」
「オラァアアア! 略奪しろぉおおお!」
手下どもには、敵を殺して好きなだけ金品を奪って良いと言ってあった。
中には、鉱山で働かせていた奴隷魔族もいるだろうが、見せしめに3割は間引いてやろう。魔族はまた捕まえてくれば補充が効く。
魔族なんてのは、使い捨ての労働力。使えなくなったら奴隷商人に売るか、殺して経験値と金(ゴールド)に変えれば良い。
かわいい猫耳娘たちは、その前に拷問してやろうかな。
「ぐぉおおおおおッ!」
おぞましい雄叫びと共に、敵が弓矢を撃ってきた。
その動きは、どことなく緩慢って……まさか、こいつらアンデッドか。
「ふんッ! アンデッドごときに、この私が止められると思うか!?」
私は炎の魔法剣で、アンデッドどもをまとめて火葬しようとする。
その時、地面に巨大な赤い魔法陣が浮かび上がった。魔法陣より、血のような真紅の閃光が放たれる。
「ぶッ!? なにぃいいい!?」
馬が急に足をもつれさせて、前のめりに倒れた。
落馬した私は、地面が紫色の毒沼に変わっているのに気づく。
泥に濡れた全身に痛みと痺れが走った。
「ぺっぺっ! まさか地形を変える魔法だって!? こんなことが有り得るのか!?」
毒沼は城柵の内側のほぼ全域に広がっていた。
こんなデタラメな現象は、私の知ってる魔法の知識ではあり得ない。
もし可能だとしたら……相手は常識を超えたレベルの魔法使いだ。
「ひゃああああッ、エルザの姉御ぉ!」
アチコチから悲鳴が上がった。
毒沼に足を取られた手下たちに、アンデッドが群がっている。
生物ではないアンデッドに毒は通用しない。こちらだけが、圧倒的に不利な状況だ。
クソッ、まさか、このエルザ様ともあろう者が、罠にハメられた?
「って、おい、まさかアッシュじゃねぇか!?」
「こ、こっちはノエルだぞ!?」
しかもこのアンデッドどもは、ミスリル鉱山を任せていた元手下たちだった。
「ま、魔王のヤツ! 死んだ私達たちと仲良くなりたいって、こういう意味だったのか!?」
悪辣極まりない嫌がらせだ。
死んだら自分もアンデッドにされるという恐怖が一気にまん延した。
「蹴散らせ! たかがアンデッドだぞ!」
私は汚い手を伸ばしてくる元手下を、炎の魔法剣で焼き尽くした。
アンデッドどもは毒の沼地から、あとからあとから湧いてくる。伏兵として、地面に潜らせていたらしい。
包囲された私たちは、袋叩きだ。
「舐めるな! こんな罠なんて、喰い破ってやる!」
私は広範囲攻撃用の魔法の詠唱を始めた。あたり一帯を火の海にする凶悪な魔法だ。
手下どもも巻き込んでしまうが、構うものか。
「くぅ……ッ!?」
だけど、突然、身体が重くなって、構築中の魔法が霧散する。
こ、これは……魔力不足だ。私の魔力量が気づいたら3分の1以下になっていた。
「まさか【MPドレイン】? どこかで、魔力を奪われたのか!?」
愕然とする。
【MPドレイン】の怖いところは、痛みを感じないため、いつ攻撃を受けたかわからないことだ。
しかも、こんなにゴッソリ魔力を奪われるなんて……
敵に相当な使い手がいるぞ。
「ちくしょおおお! いったん退却だぁ!」
たまらずに、退却を命じる。
悔しいが、このままじゃ全滅だ。
「はぃいいい! てめぇら、ずらかるぞぉ!」
だけど、足をズブズブの毒沼に取られて、みんな思うように身動きできない。
私も毒のせいで身体が痺れて、満足に剣が振れなくなってきていた。
「ひぐぁあっ!? お、お前、何を……!?」
「ロイド、やめろぉ!」
混乱と恐怖の叫びが、あちこちで上がった。
敵に殺された者が起き上がり、新たなアンデッドと化して、味方に襲いかかってきたのだ。
元仲間を攻撃することをためらった男が、凶刃に倒れる。その男も、生ける屍となって起き上がった。
これは、マズイ……ッ! 敵がドンドン増えていく。
「ひゃあああッ!?」
もはや士気が保てず、私の軍勢が総崩れになっていく。
「クッソォオオオオ! 姿を見せろ、魔王カイ!」
私は破れかぶれで絶叫した。
一騎討ちに持ち込みさえすれば、この私が負けるハズがないんだ。
私は最強。神に選ばれたレアクラス【魔法剣士】なんだぞ。
この私は勝ち組となることが約束されているんだ。
「お前ら、助かりたいか?」
その時、城柵の上から私たちを見下ろす声がした。
その声は、魔王カイか?
「助かりたいなら、エルザを攻撃しろ。今、エルザを裏切ったヤツは、魔王軍の幹部に取り立ててやるぞ」
冷笑と共にヤツは宣言した。
「クッソォオオオオ! 物見櫓が崩れている。やってくれたじゃないか!?」
私は怒りのままに飛ぶように馬を走らせる。
ミスリル鉱山が奪われたのに、ひとりも報告に来なかったことからすると、手下どもは全滅させられたのに違いない。
だとすると、敵はかなりの規模だと思うけど……
「陽気な声と太鼓が聞こえてくる……宴会の真っ最中だってか!?」
ミスリル鉱山に近づくにつれて、ドンチャン騒ぎが聞こえてきた。
奴らは勝利して浮かれているらしい。おそらく、酒も入っているだろう。
「アハハハハッ! チャンスだ。油断したね」
こちらは私を先頭にした少数の部隊。これなら、ギリギリまで敵に気づかれることなく奇襲を仕掛けられる。
私はバフ魔法を重ねがけして身体能力を強化。さらに、剣に炎の魔法をまとわせて、攻撃力を極限までアップさせた。
「突撃だ! 奴らを皆殺しにしろ!」
そのまま堅く閉ざされた門に向かって突っ込む。
なんと、門には見張りも立っていなかった。
バカなヤツ。油断するにも程があるだろう。何が魔王だ。
私は魔法剣を門に叩きつける。門は破城槌を喰らったかのように爆散した。
「ヒャッハー! さすがはエルザの姉御だぁああ!」
「オラァアアア! 略奪しろぉおおお!」
手下どもには、敵を殺して好きなだけ金品を奪って良いと言ってあった。
中には、鉱山で働かせていた奴隷魔族もいるだろうが、見せしめに3割は間引いてやろう。魔族はまた捕まえてくれば補充が効く。
魔族なんてのは、使い捨ての労働力。使えなくなったら奴隷商人に売るか、殺して経験値と金(ゴールド)に変えれば良い。
かわいい猫耳娘たちは、その前に拷問してやろうかな。
「ぐぉおおおおおッ!」
おぞましい雄叫びと共に、敵が弓矢を撃ってきた。
その動きは、どことなく緩慢って……まさか、こいつらアンデッドか。
「ふんッ! アンデッドごときに、この私が止められると思うか!?」
私は炎の魔法剣で、アンデッドどもをまとめて火葬しようとする。
その時、地面に巨大な赤い魔法陣が浮かび上がった。魔法陣より、血のような真紅の閃光が放たれる。
「ぶッ!? なにぃいいい!?」
馬が急に足をもつれさせて、前のめりに倒れた。
落馬した私は、地面が紫色の毒沼に変わっているのに気づく。
泥に濡れた全身に痛みと痺れが走った。
「ぺっぺっ! まさか地形を変える魔法だって!? こんなことが有り得るのか!?」
毒沼は城柵の内側のほぼ全域に広がっていた。
こんなデタラメな現象は、私の知ってる魔法の知識ではあり得ない。
もし可能だとしたら……相手は常識を超えたレベルの魔法使いだ。
「ひゃああああッ、エルザの姉御ぉ!」
アチコチから悲鳴が上がった。
毒沼に足を取られた手下たちに、アンデッドが群がっている。
生物ではないアンデッドに毒は通用しない。こちらだけが、圧倒的に不利な状況だ。
クソッ、まさか、このエルザ様ともあろう者が、罠にハメられた?
「って、おい、まさかアッシュじゃねぇか!?」
「こ、こっちはノエルだぞ!?」
しかもこのアンデッドどもは、ミスリル鉱山を任せていた元手下たちだった。
「ま、魔王のヤツ! 死んだ私達たちと仲良くなりたいって、こういう意味だったのか!?」
悪辣極まりない嫌がらせだ。
死んだら自分もアンデッドにされるという恐怖が一気にまん延した。
「蹴散らせ! たかがアンデッドだぞ!」
私は汚い手を伸ばしてくる元手下を、炎の魔法剣で焼き尽くした。
アンデッドどもは毒の沼地から、あとからあとから湧いてくる。伏兵として、地面に潜らせていたらしい。
包囲された私たちは、袋叩きだ。
「舐めるな! こんな罠なんて、喰い破ってやる!」
私は広範囲攻撃用の魔法の詠唱を始めた。あたり一帯を火の海にする凶悪な魔法だ。
手下どもも巻き込んでしまうが、構うものか。
「くぅ……ッ!?」
だけど、突然、身体が重くなって、構築中の魔法が霧散する。
こ、これは……魔力不足だ。私の魔力量が気づいたら3分の1以下になっていた。
「まさか【MPドレイン】? どこかで、魔力を奪われたのか!?」
愕然とする。
【MPドレイン】の怖いところは、痛みを感じないため、いつ攻撃を受けたかわからないことだ。
しかも、こんなにゴッソリ魔力を奪われるなんて……
敵に相当な使い手がいるぞ。
「ちくしょおおお! いったん退却だぁ!」
たまらずに、退却を命じる。
悔しいが、このままじゃ全滅だ。
「はぃいいい! てめぇら、ずらかるぞぉ!」
だけど、足をズブズブの毒沼に取られて、みんな思うように身動きできない。
私も毒のせいで身体が痺れて、満足に剣が振れなくなってきていた。
「ひぐぁあっ!? お、お前、何を……!?」
「ロイド、やめろぉ!」
混乱と恐怖の叫びが、あちこちで上がった。
敵に殺された者が起き上がり、新たなアンデッドと化して、味方に襲いかかってきたのだ。
元仲間を攻撃することをためらった男が、凶刃に倒れる。その男も、生ける屍となって起き上がった。
これは、マズイ……ッ! 敵がドンドン増えていく。
「ひゃあああッ!?」
もはや士気が保てず、私の軍勢が総崩れになっていく。
「クッソォオオオオ! 姿を見せろ、魔王カイ!」
私は破れかぶれで絶叫した。
一騎討ちに持ち込みさえすれば、この私が負けるハズがないんだ。
私は最強。神に選ばれたレアクラス【魔法剣士】なんだぞ。
この私は勝ち組となることが約束されているんだ。
「お前ら、助かりたいか?」
その時、城柵の上から私たちを見下ろす声がした。
その声は、魔王カイか?
「助かりたいなら、エルザを攻撃しろ。今、エルザを裏切ったヤツは、魔王軍の幹部に取り立ててやるぞ」
冷笑と共にヤツは宣言した。
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