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「ぅ、うーん、……ん?んん?」


 意識が戻ったと認識出来た途端、パチッと目が開いた。
 すぐさま出た言葉は――

「あンのクソ野郎っっ!!」

 だった……。



++++++


 さてさて、しっかり転移されてるっぽい。
 なんで判るかっつーと何もない草原のど真ん中に居るのに気付いたからな。異世界こんにちわ。
 まだあのクソ野郎に言いたい事があったけど、それはそれは丁寧に延ばされた金箔よりも薄いペラッペラな上っ面の謝罪も頂きましたし、もうどうしようもないので状況把握といこうかね。人間気持ちの切り替えが大事。クソが。
 


「とはいえ、これからどうすりゃいいんだよって……何だこれ」

 ぐるっと辺りを見回していたら、何かが真後ろにある。振り返ってしっかり見てみればそこにあったのは――

「どう見ても馬車」

 二頭立てのデカく白い箱馬車っぽいのがそこに鎮座している。例のキャンピングカーと同じくらいの大きさだろうか?え?これ二頭でいける?

「これ、俺のなのかな?」 

 とか言いつつ、どう考えてもそうだろうなと思いながら、周りを一周し左側面と後方にドアを確認。そこそこ大きな窓も前方と両側面にあるが中が全く見えない仕様らしい。

「マジックミラー……」

 些か、脳裏を過るものがあるも今は中を確認しないと仕方ないので、恐る恐る開けて中に入ってみるとそこに広がる思いがけないその光景に吃驚する。
 だって、そこにあったのは見覚えのある光景だったからだ。

「中、そのままだ」

 あのキャンピングカーの内装がそのままだし、準備していた家電だとかキャンプ道具、生活用品一通りに、道の駅とかで買ったものまでがそっくりそのままそこにある。
 食品棚の中身もそのままあって、冷蔵庫には今日から始めるぜ!と景気付けに夕飯用で買っていたA5ランクステーキ肉とかも、さらにはビールまでもあって、無駄にならなくてよかった~!アシュマルナ、マジ神!と喜びそうになるも、いやいやそもそも俺は死ぬ前に日本で食いたかったわい!と踏み止まる。

「危ない危ない。まずは一杯飲んで落ち着かなきゃな、うん」

 ……うん?
 うん、まあいい。ビールに罪はないのだ。落ち着かないと今後の計画立てられないしな。落ち着かなさ過ぎてさっきから独り言ばっかりだし。うん。
 一体、誰に言い訳してるんだ俺はと思いつつ、ビールの缶を躊躇なく開けぐぃ~っと一口。

「くぅ~~~っ!美味い!」

 う~ん、生き返る~!なんて心の中でブラックジョークを飛ばしていた所、テーブルの上に手紙と袋が置いてあるのに気付いた。


 差し出し人は予想つくから後回しにしようかと思うも、右も左も判らない今はそんな訳にはいかないので渋々手紙を開くと予想とちょっと違った。


 【リヒト・ソメヤ様へ】と書かれている手紙は、名前は明記されていないもののアシュマルナの上司(?)であり伴侶でもあるらしい方からもので、あの後あいつマジ〆ておいたからごめんねって感じの事が書いてあった。ぷぷぷ、ざまぁ。

 自分そっくりの子供を異常な程溺愛していて、何回注意しても離れたくないと例の場所へ連れて行くのを止めず、子供を連れ戻しても隙を見て連れて行くので困っていた所、とうとう今回の事が起こったそうな。

 しっかりとした謝罪と説明を尽くし償って来いと命令した結果あれだったらしい。アイツ……なんつーか、すげぇな。


 もう一枚にはアシュマルナの用意した『償い』の内容の説明が書かれていた。

 俺の存在を今までの世界から消す前に俺の持ち物全てコピーし保存、ここに送ったらしい。
 キャンピングカーは外観そのままには使えないので今の仕様との事。馬は実は生物でなく動力供給以外メンテナンスフリーの魔道具となっている。

 その動力は中の家電も含めて魔力で、キッチンやトイレ・簡易シャワーの水は水魔法で解決し、排水やゴミは闇魔法で消滅させるという仕組みになっていて、キャンピングカー改め馬車の中では何も心配いらない。

 キャンピングカーに載せていなかった物は亜空間収納にあって取り出したいと念じれば出てくるし入れられる。ウェブ通信は勿論出来ないけれどスマホもあって亜空間収納に入っているものの一覧表が見れるアプリ入り。

 また、驚く事に食材や消耗品類はいくら使っても今ある数から減らない様になっているらしく、本当に至れり尽くせりな内容。

 ちなみに、袋の中身はお金で、日本のお金はコピーしても使えないって事で代わりに金貨五百枚が入れてあった。
 

 いや~……、ここまでしてやったんだから文句言うなよっていうアイツの顔が目に浮かぶわ。
 俺が文句を言う要素を徹底的に潰そうとしているのが手に取る様に判って、内容は有り難いのに物凄く腹立たしいという状態。

 クソ~!と思う気持ちは消えないが、有り難くビールを飲みながら残りの内容に目を通したところ、ここはまんまゲームの世界、この世界ではステータスパネルで自分の状態が確認出来る様だ。
 
 ゲームは子供の頃にやっていただけでさほど詳しくはないけどちょっとワクワクして来た。
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