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気を取り直しての出発前にこの馬車ってやっぱり目立つかと訊いたら、目立ちすぎると言われたので亜空間収納に収納出来るか試した所問題なく収納出来た。
「魔力に限界が無いからこそだな」
「そうなんだ?」
亜空間収納魔法は適性があって使える者はそこそこいるが、収納量及び維持は魔力量によるらしくこの大きさの物一つを収納・維持するのはかなりの魔力を要するだろうと教えられた。
収納魔法が使える場合それを活かしてポーターとして専業で働いている人が多いそうだ。魔力量によって報酬ランクが決まっているらしいが上位ランクの人でもこの馬車一つと中身分の物で手一杯かもしれないという話。
「途中まで馬車で行って町に近付いたら徒歩に変えるか」
「これ馬単独でも使えるのかな?」
収納していた馬車を取り出して、馬を撫でる。これは魔道具なので生きてはいないけど手触りは本物っぽい。
「それならその方がいいが……リヒトは馬に乗れるのか?」
「乗った事ないよ」
当然だと言わんばかりに言ってみれば、それならなぜ言い出したみたいな顔された。いや、ただ単に気になっただけなんだけど。動物苦手だし……こうやって触れるのはこれが生きていない道具だから。
「もし乗るなら一緒に乗るしかないな」
「それは……うーん、歩き疲れたら考える」
仕留められそうになっていた俺の心の平穏の為に密着する二人乗りは避けたいなという所。
「二人乗りが嫌か?」
「そういう訳じゃないけど……」
「まあ……それよりも、そもそも使えるのか?」
「どうなんだろう?使えないんじゃない?」
なんて、馬の前で二人でぶつぶつ言っていたら、その馬のすぐそばにいきなり光が集まりだし何かを形作ろうとし始めた。俺が気付くより先に気付いたソランツェにさっと体を引き寄せられ、それから距離を取る。
「え? 何、何?!」
「静かに」
ソランツェに隠す様に抱き締められたままそれを観察していれば、光を取り囲む様に見覚えのある例の花と花びらが現れ舞い出したのが判って力が抜ける。
「アシュマルナが何かやってるみたい」
「一体何を……」
ソランツェも警戒を解き、そのまましばらく待っていれば、目の前に現れたのはアシュマルナや俺と同じ色であるホワイトブロンドの鬣を持つ一頭の大きく立派な白馬だった。メリーゴーランドの馬みたいに煌びやかに装飾され、二人で乗れる様な大きさの鞍と鐙が付いている。
「あれも魔道具?」
「いや、生きている……様な気もするが」
「え?」
窺う様に二人でジッと見ていたら、白馬がこちらへ歩いて来た。口に何か咥えている様だ。よく見てみるとそれは小さな袋で、こちらに渡そうとする様に顔を俺に近付けてきた。
「っひ!」
動物は苦手なのと、当たり前な話白馬には良い思い出が無くて、慌ててソランツェにしがみついて顔を背ける。
「大丈夫だ」
「……うん」
白馬からの敵意は勿論感じられないのでソランツェはなおも俺に近付く白馬の行動をただ見守りつつ、手は落ち着かせる様にしがみつく俺の頭を撫でていてくれる。
しばし待って、少しだけ浅くなっていた呼吸も戻り、白馬に顔を向け恐る恐る手の平を出すとそこにポトッと袋を落としてくれた。中に何か入っている。
何だろう?と取り出して見ると額飾りやピアスと同じ石が付いた指輪だった。
「これを着けろって事だよな?」
「多分な」
念の為、ソランツェに渡して確認してもらう。
隅々見ているが何も問題無さそうなのでそのまま指に嵌めてくれた。ちょっと大きくて親指が丁度良さそうなので利き手じゃない左手の親指に。
「なんの意味があるんだろう、これ」
そう言いながらアメジストみたいな石の部分を指で撫でると、石と白馬が同時に光り出し、パッと白馬が指輪に吸い込まれる様に消えてしまった。
「え?」
「は?」
どういう事だと指輪を見てみると石の中に馬のマークが描かれていた。
試しにもう一度撫でてみると、またも石が光り出し今度はそこから出てくる様にしてさっきの白馬が現れた。
「使いたい時に呼び出して使えって事?」
ソランツェに言ったつもりだったが、目の前の白馬が頷く様に首を上下させる。
「え?」
もしやと思い、君に乗っていいのかなと聞けば、またも頷く様に首を上下させた。
「この子言葉が判るみたいだ」
「そうみたいだな」
「すごい!」
君すごい子だねと褒めてあげたら、嬉しそうに目を細め顔を近付けて来た。
あの思い出分まだちょっと怖いが、意思疎通が図れるなら仲良くなれそうな気がするので、そっと手を伸ばすと近付けて来ていた顔を手に擦り付けて来る。すごく喜んでくれているのが何となく伝わった。
「名前は付けてやるのか?」
「どうしよう……」
思い浮かぶ馬の名前ってどれも有名な競走馬しかないので非常に困る。
色から連想しようとしても、……シロじゃ可哀想だし、日本語以外で何か無いかなと考えるけど英語も……フランス語では白はブランって言うんだっけ?
「えーと、じゃあ、ブランでいいかな?」
白馬に言ってみると、頷いてくれた。もう少し凝った名前が良かったかな?と思うも歴代有名競走馬の名前が思考の邪魔をするのでしょうがない。
「決まりだな。折角だし、もうここから乗って行ってしまおうか」
あ、二人乗り決定かー……。
「魔力に限界が無いからこそだな」
「そうなんだ?」
亜空間収納魔法は適性があって使える者はそこそこいるが、収納量及び維持は魔力量によるらしくこの大きさの物一つを収納・維持するのはかなりの魔力を要するだろうと教えられた。
収納魔法が使える場合それを活かしてポーターとして専業で働いている人が多いそうだ。魔力量によって報酬ランクが決まっているらしいが上位ランクの人でもこの馬車一つと中身分の物で手一杯かもしれないという話。
「途中まで馬車で行って町に近付いたら徒歩に変えるか」
「これ馬単独でも使えるのかな?」
収納していた馬車を取り出して、馬を撫でる。これは魔道具なので生きてはいないけど手触りは本物っぽい。
「それならその方がいいが……リヒトは馬に乗れるのか?」
「乗った事ないよ」
当然だと言わんばかりに言ってみれば、それならなぜ言い出したみたいな顔された。いや、ただ単に気になっただけなんだけど。動物苦手だし……こうやって触れるのはこれが生きていない道具だから。
「もし乗るなら一緒に乗るしかないな」
「それは……うーん、歩き疲れたら考える」
仕留められそうになっていた俺の心の平穏の為に密着する二人乗りは避けたいなという所。
「二人乗りが嫌か?」
「そういう訳じゃないけど……」
「まあ……それよりも、そもそも使えるのか?」
「どうなんだろう?使えないんじゃない?」
なんて、馬の前で二人でぶつぶつ言っていたら、その馬のすぐそばにいきなり光が集まりだし何かを形作ろうとし始めた。俺が気付くより先に気付いたソランツェにさっと体を引き寄せられ、それから距離を取る。
「え? 何、何?!」
「静かに」
ソランツェに隠す様に抱き締められたままそれを観察していれば、光を取り囲む様に見覚えのある例の花と花びらが現れ舞い出したのが判って力が抜ける。
「アシュマルナが何かやってるみたい」
「一体何を……」
ソランツェも警戒を解き、そのまましばらく待っていれば、目の前に現れたのはアシュマルナや俺と同じ色であるホワイトブロンドの鬣を持つ一頭の大きく立派な白馬だった。メリーゴーランドの馬みたいに煌びやかに装飾され、二人で乗れる様な大きさの鞍と鐙が付いている。
「あれも魔道具?」
「いや、生きている……様な気もするが」
「え?」
窺う様に二人でジッと見ていたら、白馬がこちらへ歩いて来た。口に何か咥えている様だ。よく見てみるとそれは小さな袋で、こちらに渡そうとする様に顔を俺に近付けてきた。
「っひ!」
動物は苦手なのと、当たり前な話白馬には良い思い出が無くて、慌ててソランツェにしがみついて顔を背ける。
「大丈夫だ」
「……うん」
白馬からの敵意は勿論感じられないのでソランツェはなおも俺に近付く白馬の行動をただ見守りつつ、手は落ち着かせる様にしがみつく俺の頭を撫でていてくれる。
しばし待って、少しだけ浅くなっていた呼吸も戻り、白馬に顔を向け恐る恐る手の平を出すとそこにポトッと袋を落としてくれた。中に何か入っている。
何だろう?と取り出して見ると額飾りやピアスと同じ石が付いた指輪だった。
「これを着けろって事だよな?」
「多分な」
念の為、ソランツェに渡して確認してもらう。
隅々見ているが何も問題無さそうなのでそのまま指に嵌めてくれた。ちょっと大きくて親指が丁度良さそうなので利き手じゃない左手の親指に。
「なんの意味があるんだろう、これ」
そう言いながらアメジストみたいな石の部分を指で撫でると、石と白馬が同時に光り出し、パッと白馬が指輪に吸い込まれる様に消えてしまった。
「え?」
「は?」
どういう事だと指輪を見てみると石の中に馬のマークが描かれていた。
試しにもう一度撫でてみると、またも石が光り出し今度はそこから出てくる様にしてさっきの白馬が現れた。
「使いたい時に呼び出して使えって事?」
ソランツェに言ったつもりだったが、目の前の白馬が頷く様に首を上下させる。
「え?」
もしやと思い、君に乗っていいのかなと聞けば、またも頷く様に首を上下させた。
「この子言葉が判るみたいだ」
「そうみたいだな」
「すごい!」
君すごい子だねと褒めてあげたら、嬉しそうに目を細め顔を近付けて来た。
あの思い出分まだちょっと怖いが、意思疎通が図れるなら仲良くなれそうな気がするので、そっと手を伸ばすと近付けて来ていた顔を手に擦り付けて来る。すごく喜んでくれているのが何となく伝わった。
「名前は付けてやるのか?」
「どうしよう……」
思い浮かぶ馬の名前ってどれも有名な競走馬しかないので非常に困る。
色から連想しようとしても、……シロじゃ可哀想だし、日本語以外で何か無いかなと考えるけど英語も……フランス語では白はブランって言うんだっけ?
「えーと、じゃあ、ブランでいいかな?」
白馬に言ってみると、頷いてくれた。もう少し凝った名前が良かったかな?と思うも歴代有名競走馬の名前が思考の邪魔をするのでしょうがない。
「決まりだな。折角だし、もうここから乗って行ってしまおうか」
あ、二人乗り決定かー……。
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