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 道から逸れ森の中をしばらく行けば、先の方に少しだけ開けた場所があるのが判って、そこに何かいるのを見つける。

「(もしかしてアレ?)」
「(そうだ)」

 ウサギって言うから普通の小さいウサギを想像してたけど、鋭い角と大きな耳の生えたカピバラみたいな大きさのやつだった。それが十二匹。無理。

「(デカすぎでしょ)」
「(森の中だ。火属性以外でやってみろ。少しは逃がしてもいい)」
「(えぇぇ……)」

 いきなりやってみろと言われても、この世界の攻撃魔法というものがどんなものなのか知らないんだよなあ。逆に俺の知っているどんなものでも使って良いんだろうか?

 火以外、攻撃出来るもので思い浮かぶのは雷とか、でも雷も火事になったりするし一応却下。水も却下しておいて、風?ハリケーンみたいなので切り刻む感じだろうけど、飛び散る血とか見たくないしなあ。食肉として使えるというなら闇魔法で消滅もやめよう。あとは……土魔法ってどんなのがあるのかな、土を棘みたいに変化させて地中から心臓一刺し、とか出来るかな?
 想像してみるとどれも怖い。土魔法で逃がさない様にする、とかなら俺でも出来そうな気がするんだけどな。

「(捕まえるとかだけじゃダメ?)」
「(出来る事をやってみろ)」
「(わかった)」
 
 とりあえず、逃がさない様にやってみようと角ウサギ達に意識を集中させて、自分の思う様に魔法を発動させる。
 すると、瞬時に角ウサギ達の足元に大きな穴が開き、全ての角ウサギ達が落ちていく。底に叩きつけられる音と角ウサギのくぐもった鳴き声が小さく聴こえる。どのくらい飛ぶか判らないから二十メートルくらい掘り下げてみたけど飛んで出て来ない?大丈夫?

「ははっ。そう来たか」
「どうなったかな?」
「行ってみよう」

 穴を覗いてみると気絶しているのか死んでいるのか動かない奴やダメージのせいで動きが鈍い奴と半々といった感じ。あんまり見たくない。

「あの子たちどのくらい飛ぶ?」
「自分の体長の四倍くらいだな」

 見た所、一五〇センチあるかどうかって大きさだからここまで深く無くてもいいみたいだ。

「深すぎたかも」
「容赦しなくていい。それより早く止めを刺せ」
「えぇ……」
「頑張れ」

 諦めろと背中をポンポン叩いて俺を促す。

「じゃあ、先に訊けば良かったけど、肉は必要?」
「そこまで美味い肉でもない。でも、討伐証明部位の角と小さいが魔石は取っておいた方がいいぞ」
「そっか。穴の中なら火使っても大丈夫だよね?角とか燃える?」
「燃えないから大丈夫だ」

 そういう事ならと、出来る限り中を見ない様にして穴の中に高温を意識した大きめの火球を何発か打ち込む。

「それにしてもデカい火球だな」

 判ってはいた事だがとソランツェは笑っている。こういう感じでいいから少しずつ慣れていってくれと言われた。
 穴の中で燃えている角ウサギ達を見て、角と魔石はどうするんだと訊いてくる。

「取り出せないかな?」

 ダメ元で、死んでるなら角と魔石だけ出ておいでと念じてみたら、穴の中から角ウサギの数だけ飛び出してきて足元に転がった。成功したっぽい。

「おぉ」
「あ、出来たっつーかこれが出来るって事は……」
「なんだ?」
「俺が思った事は何でも出来る?」
「そうだな、加護の力らしいぞ」
「え?」
「昨日、食べ物が出来立てに戻ったろう?それもそうなんだと神より教えられた」
「……いつ?」

 朝、日課の素振り練習の前に、これもまた日課にしている祈りの時間にアシュマルナと会話が出来たんだって。へえ。
 いつもの祈りとは別に、無かった事にしたアレについて一応訊いてみたら、アシュマルナから返答があり、実は俺は属性なんか関係なく思った事を魔法だという事にして大抵が実行出来ると教えられた、と。生きている者の生の時を戻す事や死んだ者を生き返らせるなどは駄目だそうだが。
 そして、アシュマルナから改めて、俺にここで生きていくという事のを理解させろ、と言われたらしい。
 多分、物騒な世界に来たのに平和ボケしてるうちの子よろしくお願いします的にって事だよなあ……恥ずかし……。


「ここではリヒトも生きる為に戦って金を稼ぐ、その為の素晴らしい力が自分にあるという事は理解したな?」
「うん」
「理解したならいい。練習だ、慣れていけとは言ったが基本は俺が先行するし傍にいる。怖い思いはさせない」
「あ、ありがと……」

 スッと肩を抱かれ微笑まれる。

「今後それ以外の事もちゃんと理解させてやるからな」
「ん?それ以外?」
「神からは許しをもらっている様なものだ」
「どういう事?」

 意味がいまいち判らず首を傾げソランツェを見ていると、ニコッと見惚れるような笑顔を返してくれた。
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