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「嫌な気持ちは食って忘れるしかないな」
「「は?」」
騎士団長を飛ばした後、防音結界を解いて出て来た俺の第一声にソランツェとライアスの重なった声が聞こえる。ソランツェは純粋に不思議そうな感じだけど、ライアスは言葉にしないが『いきなり何言ってんだこの人』と顔に出てる。隠さなくなってきたのが良い。
「心の疲労は食べて癒すんだよ、多分」
「……はあ、そうですか。で、その疲労原因と思われる方々は?」
「王宮にぶっ飛ばした。着地地点は知らん」
「中で何を話していたんだ?」
「うーん、子供のお砂場遊びの邪魔はしない方がいいと思うよっていう話?」
「「??」」
「俺にも判んねぇんだよなあどうしてこうなったっていう」
++++++
「まずは関東のやり方で行こうかな」
あの後、夕方も近くなって来たので泊めてくれるという領主さんの言葉を丁重にお断りし教会に戻った俺は、教会の裏庭で海蛇を調理しようとしている。なぜ裏庭かというと、本焼きの工程だけ手作業でやってみたいなと思って火が使える広いスペースは無いか訊いたら裏庭に案内されたというだけの話。
「よし、出て来い」
ウキウキで鼻歌を歌いながら用意しておいたテーブルに、うな重やうな丼みたいな一般的なサイズに(脳内で)切り分けた海蛇を出す。聖騎士達の分も含めた量なので結構いっぱい。
で、出したものは鰻を思い浮かべ串打ちして素焼き後蒸した状態まで魔法で脳内調理したものなんだけど、見てみると蒸されて白くなった身はパッと見た感じ鰻っていうよりはんぺんみたい……。味が鰻なだけであって身の感じはまた違うのかな?まあ、いいや。たれも作って準備したしご飯も用意したので後は焼くだけ。
「何か焼くというので準備をしたが、これはそのまま食べられそうだが?」
「これでも食べられるだろうけど、これに蒲焼きのたれ……ソース?つけてまた焼く事で完成なんだよ」
火の準備をしてくれていたソランツェから訊かれてそう説明しているが、実はまだ肝心の食材の正体は俺以外知らない。知らせずに食べさせるのはやっぱりダメだろうから一応今から説明しようかなと思っていたら
「リヒト様、これはもしかして先程の……?」
その前に、ライアスが蒸されたものを見ながら恐る恐る俺に訊ねてきた。勘がいい。
「そうだよ。さっきの海蛇」
俺がそのものの正体を明かした途端、俺の行動を見守っていた聖騎士の面々の顔が急に引き攣りだした。
「……食べられるんですか?」
「美味しいらしいよ」
「……だから食べてみようと?」
「うん」
「そうですか……」
「無理強いはしないからさ。駄目なら普通のお肉とか用意するよ?」
「いえ……問題ありません」
皆もどうやら食べてくれるみたいだが、元は見た事も無い魔物なので少々忌避感が出ているっぽい。まあ、その気持ちは判らないでもない。俺だって絶対に食えない物はあるから。
「リヒトの作る料理はどれも美味いぞ」
「うーん、料理という料理を作ってない様な気もするけど……ありがとう」
肉さえあれば良いソランツェの評価はガバガバなので少々微妙な気もするし、そもそも問題は食材なんだけど褒めてくれてるので一応礼を言っておこう。尻尾振ってるソランツェかわいいし。
まあ、下手ではないくらいだとは自負しているので味付けに関しては一応安心して欲しい。
「とりあえず、仕上げよっと」
たれに浸けたものを網の上に並べ焼いていくと、たちまち辺りに良い匂いが漂ってくる。たれの焦げる匂いって食欲を刺激するよな。
「あー……早く食べたい……」
一人ブツブツ呟きながらたれが乾けばまた浸けてと黙々と二、三回繰り返せば、そろそろ第一陣が仕上がりそう。
「美味そうだな」
「そうですね、嗅ぎ慣れない匂いですが……はい」
気が付けば、ソランツェとライアスが俺を挟んで立っていて網の上をガン見しているし、遠巻きに見ていた聖騎士の面々も近寄って来て興味津津な様子。
「こんなもんかな」
重箱はないのでお皿に準備したご飯に少しだけたれをかけてその上に焼いた海蛇をのせる。よし、完成。う、美味そう……。
「いただきまーす」
味見というか言い出しっぺなので、まずは俺から食べてみる事にした。
お先に頂きます、と箸を入れると抵抗もなく身が切れるのがいい感じだ。そして、皆にガン見されながらも気にせずパクっと一口食べると、まさしく鰻……!ふわっと柔らかくてとけそうで、でも歯ごたえがない訳じゃない食感とたれの香ばしさと全部は落ちきってはいない脂と……鰻、俺鰻食べてる……!
「え、待って。涙出そう。想像以上に美味くて」
トリラウーユありが……いや、トリラウーユお父様ありがとうございます。リヒトは嬉しいです。でも、ついでに山椒も欲しかったです。
「「は?」」
騎士団長を飛ばした後、防音結界を解いて出て来た俺の第一声にソランツェとライアスの重なった声が聞こえる。ソランツェは純粋に不思議そうな感じだけど、ライアスは言葉にしないが『いきなり何言ってんだこの人』と顔に出てる。隠さなくなってきたのが良い。
「心の疲労は食べて癒すんだよ、多分」
「……はあ、そうですか。で、その疲労原因と思われる方々は?」
「王宮にぶっ飛ばした。着地地点は知らん」
「中で何を話していたんだ?」
「うーん、子供のお砂場遊びの邪魔はしない方がいいと思うよっていう話?」
「「??」」
「俺にも判んねぇんだよなあどうしてこうなったっていう」
++++++
「まずは関東のやり方で行こうかな」
あの後、夕方も近くなって来たので泊めてくれるという領主さんの言葉を丁重にお断りし教会に戻った俺は、教会の裏庭で海蛇を調理しようとしている。なぜ裏庭かというと、本焼きの工程だけ手作業でやってみたいなと思って火が使える広いスペースは無いか訊いたら裏庭に案内されたというだけの話。
「よし、出て来い」
ウキウキで鼻歌を歌いながら用意しておいたテーブルに、うな重やうな丼みたいな一般的なサイズに(脳内で)切り分けた海蛇を出す。聖騎士達の分も含めた量なので結構いっぱい。
で、出したものは鰻を思い浮かべ串打ちして素焼き後蒸した状態まで魔法で脳内調理したものなんだけど、見てみると蒸されて白くなった身はパッと見た感じ鰻っていうよりはんぺんみたい……。味が鰻なだけであって身の感じはまた違うのかな?まあ、いいや。たれも作って準備したしご飯も用意したので後は焼くだけ。
「何か焼くというので準備をしたが、これはそのまま食べられそうだが?」
「これでも食べられるだろうけど、これに蒲焼きのたれ……ソース?つけてまた焼く事で完成なんだよ」
火の準備をしてくれていたソランツェから訊かれてそう説明しているが、実はまだ肝心の食材の正体は俺以外知らない。知らせずに食べさせるのはやっぱりダメだろうから一応今から説明しようかなと思っていたら
「リヒト様、これはもしかして先程の……?」
その前に、ライアスが蒸されたものを見ながら恐る恐る俺に訊ねてきた。勘がいい。
「そうだよ。さっきの海蛇」
俺がそのものの正体を明かした途端、俺の行動を見守っていた聖騎士の面々の顔が急に引き攣りだした。
「……食べられるんですか?」
「美味しいらしいよ」
「……だから食べてみようと?」
「うん」
「そうですか……」
「無理強いはしないからさ。駄目なら普通のお肉とか用意するよ?」
「いえ……問題ありません」
皆もどうやら食べてくれるみたいだが、元は見た事も無い魔物なので少々忌避感が出ているっぽい。まあ、その気持ちは判らないでもない。俺だって絶対に食えない物はあるから。
「リヒトの作る料理はどれも美味いぞ」
「うーん、料理という料理を作ってない様な気もするけど……ありがとう」
肉さえあれば良いソランツェの評価はガバガバなので少々微妙な気もするし、そもそも問題は食材なんだけど褒めてくれてるので一応礼を言っておこう。尻尾振ってるソランツェかわいいし。
まあ、下手ではないくらいだとは自負しているので味付けに関しては一応安心して欲しい。
「とりあえず、仕上げよっと」
たれに浸けたものを網の上に並べ焼いていくと、たちまち辺りに良い匂いが漂ってくる。たれの焦げる匂いって食欲を刺激するよな。
「あー……早く食べたい……」
一人ブツブツ呟きながらたれが乾けばまた浸けてと黙々と二、三回繰り返せば、そろそろ第一陣が仕上がりそう。
「美味そうだな」
「そうですね、嗅ぎ慣れない匂いですが……はい」
気が付けば、ソランツェとライアスが俺を挟んで立っていて網の上をガン見しているし、遠巻きに見ていた聖騎士の面々も近寄って来て興味津津な様子。
「こんなもんかな」
重箱はないのでお皿に準備したご飯に少しだけたれをかけてその上に焼いた海蛇をのせる。よし、完成。う、美味そう……。
「いただきまーす」
味見というか言い出しっぺなので、まずは俺から食べてみる事にした。
お先に頂きます、と箸を入れると抵抗もなく身が切れるのがいい感じだ。そして、皆にガン見されながらも気にせずパクっと一口食べると、まさしく鰻……!ふわっと柔らかくてとけそうで、でも歯ごたえがない訳じゃない食感とたれの香ばしさと全部は落ちきってはいない脂と……鰻、俺鰻食べてる……!
「え、待って。涙出そう。想像以上に美味くて」
トリラウーユありが……いや、トリラウーユお父様ありがとうございます。リヒトは嬉しいです。でも、ついでに山椒も欲しかったです。
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