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ユキと千夜 気に食わないけど実力は認めてるケンカップル

おにぎりを持ってピクニックに行くまで出れない部屋

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「次は何の部屋?」
「野原がひろがってるね」

 部屋に入ると一面に野原が広がっている。
 所々にタンポポやシロツメグサなども咲いていてのどかだ。

「あ、看板があった。えっとおにぎりを持ってピクニックに行けってさ」
「おにぎり? さっき僕たちが作ったのかな」

 看板の横にはバスケットが置いてある。
 中にはさっき作ったおにぎりが並んでいる。
 ご丁寧に具材を書いたシールが貼ってある。
 気がきくじゃないか。

「これを持っていくのか」
「僕が持つよ。というか多分ユキには持ち上げられない」
「そこまでじゃないよ」

 ユキは私がいくら運動不足で不摂生だとしてもこれぐらいは、と言いながらバスケットを上は引っ張る。だがビクともしない。一切動かない。

「わ、私は脳が本体で体はおまけだから」
「冗談で言ったつもりだったけど本当に持てないとは驚いた。これを機に不摂生を治すのがいいと思うよ」
「それは無理だね」

 なぜか自慢げに言われた。
 こだわりでもあるのだろうか。
 研究者たるもの不摂生であるべき、的な何かがあるのだろうか。
 体が本体な僕にはわからない。

「よっこいしょ。どこで食べる?」
「あそこの丘がいい」

 ユキが指差した丘はシロツメグサの群生地の近くで景色も良さそうだ。
 それに近いのでユキも歩いていける。はず。

「アレくらいの距離なら歩けるからね!」

 そう言ってユキは意気揚々と丘に向かって歩き出した。
 三歩で息が切れている。
 ひどい。

「疲れた」
「だろうね。はい、おにぎり」

 疲れて地面に寝転ぶユキへおにぎりを渡す。

「ありがと。運動の後のご飯は美味しいね」
「大して運動してないくせによく言う」
「相対的には運動してる」

 相対的の意味はわからないが、美味しそうにオニギリを食べるユキの顔をみるとどうでも良くなった。
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