史上最強の料理人(物理)~役立たずと言われパーティを追放されましたが、元帝国最強騎士なのは内緒です~

枯井戸

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アルバイターガレイト

元最強騎士と竜の死体

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「──ただいま戻りました」


 ガレイトとグラトニー、そしてブリギットの三人が、オステリカ・オスタリカ・フランチェスカの正面扉から、ホール内へと入ってくる。
 三人は各々が背負った肉を、それぞれの部位ごとにテーブルの上へと置いていった。
 それを見たモニカは、目を丸くさせながらガレイトに尋ねる。


「ど、どうしたの!? この大量のお肉……! 鴨の群を全部狩ったの?」

「いえ、それが、巨大なグランティ・ダックを見つけまして……」

「巨大な? ……って、どれくらい? 大きめのカボチャくらい?」

「いえ、俺よりも大きかったです」

「へぇ、ガレイトさんよりも……ええ!? いやいや、ガレイトさんよりも大きなグランティ・ダックって……」

「本当だよ。おっきなグランティ・ダックがいたの。私も食べられかけて……」

「ちょ、ブリ!? あんた大丈夫? なんか草とか砂とか……汚くなってるよ? それに、食べられて・・・・・って……」

「うん。鴨さんに食べられかけたんだ」

「そんな平然と……でも、だから一日かかったんだ……心配してたんだよ?」

「うん、ありがとう。でも、大丈夫」

「怪我してない?」

「うん」

「気持ち悪いところとか、しんどかったり、痛かったり──」

「いや、過保護か」


 グラトニーがツッコミをいれる。


「つか、そんなに心配なら、狩りに同行させんほうがよかったじゃろ」

「まあ、それはそれ、これはこれだから」

「うーむ。妾、いまいちその感覚について行けん」


 そう言って、肩を竦めるグラトニー。


「……でも、本当によかった。どこも怪我してないんだね?」

「うん、ガレイトさんが守ってくれたの」

「ありがとう、ガレイトさん。ちゃんとブリを守てくれて」

「いえいえ、俺は、俺が出来る事をしたまでですので」

「でも……ブリを捕食するくらい鴨かぁ……たしかに雑食の鴨もいるけどさ……」

「食べるためかどうかはわからんが……あの大きさは、間違いなく、竜の血を受けて変異した種じゃろな」

「てことは、このお肉全部、その一羽から取れたってことなの……?」

「そうだよ、私も手伝ったの」


 ブリギットがそう言うと、モニカは「えらいえらい」と言い、頭を優しく撫でた。


「はぇ~、竜の血、やっぱすごいんだね……って、ちょっと待って!?」


 モニカがブリギットの両肩を掴み、じぃっと目を見る。


「な、なに? モニモニ……」

「ブリも手伝ったって事は……あんた、もしかして、肉、大丈夫になったの?」

「うん、もうバッチリお肉食べられるの」

「おぉ……! やったじゃ~ん!」


 ひしっと、ブリギットを抱きしめるモニカ。
 モニカはまるで自分の事のように、嬉しそうにしている。


「で、どうやって治ったの?」

「それは……」


 ブリギットが言いかけて、ガレイトのほうをちらちらと見る。
 昨日と同じように──とまでいかないものの、ブリギットもかなりガレイトに慣れてきたようだった。
 モニカはその様子をただニコニコと笑いながら見ていたが、ブリギットの話を聞いた途端、次第にその表情を強張らせていった。


「生のお肉を見せられて気絶して、起き上がってきたところにまたお肉を見せられて、それで気絶して……」

「え?」

「だんだん慣れてきたら、今度は無理やりガレイトさんに手を掴まれて、包丁で肉を切ったの」

「わーぉぅ……」


 モニカの口から、液体のようにびちゃびちゃと、水分を含んだ感嘆詞が漏れ出る。
 一方、ガレイトも直立不動で、大量の汗を垂れ流していた。
 モニカは半分放心状態で、ブリギットとガレイトを交互に見た。


「どうかした? モニモニ?」

「〝どうかした〟って……え? もしかして、あたしがずれてるの?」

「問題ない。ずれとるのはパパと、そこの娘っ子のほうじゃ」


 優しく語り掛けるグラトニー。


「……ま、まあ、手段はともかく、ブリの中の肉の苦手イメージがなくなってよかったよ。うん」

「モニモニ、今日から私、がんばるね」


 両手で握りこぶしを作り、鼻息を荒くするブリギット。
 そんなブリギットに対し、モニカはもう一度、さっと優しく頭を撫でた。


「……うん、助かるよ、ブリ」

「──ところで、娘よ」


 思い出したようにグラトニーが声を出すが、誰も返事をしない。


「……いや、いい加減、妾も傷つくぞ」

「いやいや、そうじゃなくて、グラトニーちゃんって、あたしのこともブリの事も、モーセの事も、〝娘〟だったり、〝小娘〟とかって呼ぶじゃん。だから、誰を呼んでるのかいまいちわかりづらくってさ」

「そうか? 妾はわかるぞ?」

「そりゃ言ってる本人なんだから当たり前じゃん。……だからさ、この際名前で呼んだら?」

「えぇ……」


 グラトニーがあからさまにイヤそうな表情を浮かべる。


「逆に面倒くさいでしょ、いちいち『誰呼んだの?』って聞かれるの」

「うーん、つか、そもそも吸血鬼ヴァンパイアに名前を言う概念はないからの。しかも名前ってその者を縛り付ける側面もあるし。妾は好かん」

「いや、でもあんたグラトニーって名前じゃん」

「むぅ……」

「あのさ、面倒くさいからって、適当な理由でっち上げないでくれる?」

「……っち、バレたか」

「あの、じゃあグラトニーちゃん、試しに私の事〝お姉ちゃん〟って呼んでみて」


 ブリギットがそう言ってみせると──


「なんでやねん!」


 故意か反射か、グラトニーは貫き手を作ると、それをビシッとブリギットの胸に当てた。


「……これまた、オーソドックスな……」


 モニカがグラトニーのツッコミの鋭さに感心する。


「──お姉ちゃん」


 後ろで控えていたガレイトが、グラトニーの代わりに言う。


「いや、おまえが言うんかい!」


 オステリカ・オスタリカ・フランチェスカに、金髪吸血鬼の虚しいツッコミがこだまする。


「……それで、グラトニーちゃんは結局何が訊きたかったの?」


 これ以上放っておくと収集が付かなくなると思ったのか、モニカが素早く全員を本題へと引きずり込む。


「おお、そうじゃった。パパの元部下という変態について訊きたかったんじゃ」

「変態、変態……ああ、イルザードさん? イルザードさんがどうかした?」

「いや、おらんじゃろ。今、ここに」

「ふむ、そういえば……モニカさん、イルザードのやつはもう帰ったのですか?」

「ううん? ……朝、お店に来た時、『ガレイトさんは?』って開口一番聞かれたの。なんかこの街からガレイトさんの匂いがしないって」

「に、におい……?」


 グラトニーが首を傾げる。


「だから、まだガレイトさんは帰って来てないよって言ったら、探しに行くって」

「なるほど。そうでしたか」

「ごめんガレイトさん、やっぱり、止めたほうがよかった?」

「いえ、あいつならたぶん、飽きたら帰ってくると思います」

「……そ、そうなの?」

「はい。……ですので、あいつが帰ってきたら、また出かけてくると伝えておいてくれますか? それと、すぐに帰るとも」


 ガレイトはそう言うと、グラトニーと一緒に店から出ていこうとした。


「あれ、二人ともどっか行くの?」

「はい。帰り道でグラトニーさんと話している折、すこし気になったことがありまして……」

「気になったこと?」

「パパが狩ったという竜じゃよ」

「それがどう気になるの?」

「ほれ、今回、竜の血の影響を受けた鴨を狩ったじゃろ? どのようにその成分を摂取したかはわからんが、鴨ごときがあそこまで大きくなったということは、それを妾が食せば、復活も早まるということ」

「うん」

「じゃから、そこへ行って、まだ残っておるかどうか見に行くんじゃよ」

「いや、でも、ガレイトさんが倒したのってかなり前だよね? もう何も残ってないんじゃ……」

「それを確かめに行くのじゃ。ひょっとすると、その周りの魔物や動物たちも、それを喰って変異してるかもしれんしの」

「なるほどね」

「それに、まあ、パパから聞く限りじゃと、そこまで遠い所ではないと言っておったし」

「あ、そうなんだ?」

「はい、ですので、なるべくすぐ帰るようにします。イルザードのやつにも、いちおうその旨をお伝えていただければ……」

「……ん、了解。ちゃんと伝えとく。気を付けてね、ふたりとも」

「はい、いってきます」
「おう、行ってくるぞ」


 ガレイトとグラトニーがそう返事をすると、二人はそのままレストランを出ていった。
 モニカはそれを見送ると、パン、と手を叩き、ブリギットと向かい合う。


「さて、じゃああたしらは、皆が帰ってくるまでに、この鴨肉をどう処理するか考えないと!」

「あ……! グランティ・ダックフェア……だね……!」

「また忙しくなるよ、ブリ」
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