【完結】雪女と炎王子の恋愛攻防戦

雪村

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3章 炎王子と不可思議現象

8話 不可解な依頼

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「ヘックチ!」

「可愛らしいくしゃみだな」

「あまり触れないでください。小さい頃からのコンプレックスなんです」

「ハハッ。僕は別に気にしてないのだけど?」

「ワタクシが気にしてるんです!」


氷の塔に出向いた帰り道、いつも通りヒダカを背負ってヒートヘイズに向かっている。今日も雪女様はとても可愛らしかった。

たぶんあのような雪女様を知っているのは僕だけだ。ユニコーン、気に入って貰えるといいな。


「イグニ様」

「ん?どうした?回復したか?」

「回復はまだです。しかし降ろしてください」

「何故?まだかじかんでるじゃないか」

「あそこを」


突然ヒダカがそう言うものだから驚いてしまうけど、彼が指を差す方向を見ると納得する。ヒートヘイズの紋章が入ったマントを付ける鎧達……我らが騎士団だ。

僕はヒダカを降ろして騎士団に近づいていく。僕達の存在に気付いたのか騎士達は一斉に敬礼をした。


「ご苦労。今は任務の途中かい?」

「イグニ様!お疲れ様です!現在は偵察の任務に当たっております」

「偵察?ここら辺で何か起こったのか?」

「いいえ!特には何もありません。しかし、今回は国王様からのご依頼ということで我々が偵察に来た次第であります!」


父上が直々にご依頼だと?僕が辺りを見る限り特に変わった様子はない。騎士団が嘘を言っているわけではなさそうだ。


「依頼の内容を。具体的には?」

「はい!ヒートヘイズとアイシクルの国境の偵察をとのこと。気温やアイシクルの氷の侵食具合、植物のサンプル採取などです!」

「その理由は?」

「それは……わかりません。でも騎士団長であるフレイヤ様なら知っているはずです」

「そうか。ありがとう。何事もなく無事にヒートヘイズに帰って来るのを待っている」

「ありがとうございます!イグニ様に火のご加護がありますように!」


最後に全体で敬礼をすれば揃った鎧の音が鳴る。僕は頷いてヒダカと共に騎士団から離れた。この場所はもうヒートヘイズの領地だ。

騎士団が居るのが珍しいことではない。でも、その依頼主が父上ということに違和感を持っていた。


「父上は、僕の逢瀬を察しておられる…?」

「可能性が0とは言えません。しかし、騎士達はサンプル採取などを行っていました。依頼というのは本当なのでしょう」

「わざわざ騎士団に依頼したのもわからない。そういうのは学者、もしくは僕に相談するはずだ。何を考えておられるのか」

「フレイヤ様に依頼について聞かれるのはどうでしょうか?少なくとも騎士達よりは有益な情報を持っているかと」

「それはそうかもしれないけど……」

「気が向きませんか?」

「わかってるじゃないか」


婚約者となってからはやはりフレイヤと話辛くなってしまった。しかし気になってしまってはもう耐えられない。


「仕方ない。この後騎士団の根城に行く」

「かしこまりました」


ヒダカは胸に片手を当てて綺麗にお辞儀をする。すると次の瞬間、限界がまた来たのか鼻水を垂らした。


「……これを使ってくれ」

「ズビッ。申し訳ありません」


やはり氷の塔に出向く時はヒメナの方を連れて行った方が良い。でもそれをヒダカは許してくれないのだ。「ワタクシもイグニ様のお付きです」と言って頑なに譲らなかった。


「このままでは体を壊してしまうぞ?」

「ズビッ。ご心配なく」


やはり速攻でヒダカ用の着るものを手配しなければ。


ーーーーーー


「フレイヤ、失礼する」

「イグニ王子…?」


城内の一角にある騎士詰所。そこに騎士団長であるフレイヤの仕事場があった。詰所自体は騎士の数と比べてあまり大きくは無い。

しかし、遠征や支部などに出向いているので城の中はこれくらいで十分だった。早速ヒダカとフレイヤに会いに行くと、驚いたような声が聞こえる。

執務室の扉を開ければ少しだけ目を丸くしたフレイヤがいた。相変わらず無表情に近いけど。


「わざわざこちらに出向かれるなんて。どうなさいましたか?」

「少し聞きたいことがあるんだ。今時間大丈夫だろうか」

「はい」


フレイヤは立ち上がると側にあるソファに手を向ける。僕はそのソファに座って後ろにヒダカが立ち、向かい側にフレイヤが腰を下ろした。


「実は訓練中に任務に出ている騎士達と鉢合わせたんだ。なんでも依頼が国境の偵察だとか。それ自体は別に構わない」

「はい」

「僕が気になっているのはその依頼主が父上ということだ。父上からは何も相談がなかった。その前に僕の耳にも入ってなかったんだ」

「そうでしたか。イグニ王子に情報が回ってなかったのは私達の責任です。申し訳ありませんでした」

「謝って欲しくて言ってるわけじゃない。詳しい依頼内容を知りたくて来たんだ。教えてくれないか?」


僕の話を聞いている間もフレイヤの表情筋は一切動かなかった。

王子と騎士の関係の時はただ単にそういう性格なのだなとしか思わなかったけど、僕の許嫁の立場として見ればもう少し喜怒哀楽を表してほしい。ずっと怒っているようにしか見えないのだ。


「かしこまりました。少々お待ちください」


フレイヤは執務室の棚の前に行き何かを探し始める。そして僕の前に持ってきたのは分厚いノートだった。


「こちらは依頼書が記されたノートになります。そして……このページが国王様からのご依頼です」
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