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第一章
第4話:舞踏会
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王家主催の舞踏会は頻繁に開かれている。
精剛、精腹王と陰口を叩かれる現王が、その日の相手を探すために開いている。
夜伽舞踏会と揶揄される舞踏会なのだが、珍しく今日の主役は現王ではない。
今日の主役は、珍しく舞踏会に現れた二人の麗しき漢。
表面の美貌と内面の勇猛、双竜将軍と称えられるオスカルとフェルディナンド、貴婦人や貴族令嬢から欲望に満ちた目、熱い視線を向けられる二人だった。
「フェルディナンド様、私とダンスを踊っていただけませんか!」
とても不躾な、貴族令嬢とは思えない礼儀を失する行為だった。
まず下位貴族が上位貴族に声をかけてはいけないという大前提に違反していた。
ダンスの申し込みは男性からするものという常識も破っていた。
だが彼女は身を護るために必死だったのだ。
まだ乙女の彼女は、現王から招待状を受けて恐怖していたのだ。
一夜の慰み者にされ、結婚もままならない状態にされてしまう。
貧しい男爵令嬢では、乙女を失えば貴族との結婚を諦めなければいけなくなる。
「いや、申し訳ない、私から誘うと言っていたのに、つい失念していた。
君に恥をかかせる気はなかったのだが、本当に申し訳ない。
今の君からの誘いはなかった事にしてくれ。
お嬢さん、私とダンスを踊っていただけませんか?」
男爵令嬢はハラハラと涙を流しながら、その身をフェルディナンドに預ける。
フェルディナンドの言葉と、現王の見境のない乙女狩りに辟易していた貴族達は、男爵令嬢の無礼を見逃すことにしてくれたのだ。
まだ幼さの残る男爵令嬢では、実家の経済力不足もあって、ダンスの技量も未熟なのだが、まるで名手のように軽やかに踊っている。
全てはフェルディナンドの誘導で、男爵令嬢が疲れないように、全体重を軽々と支え、雲の上を浮遊するような気持ちよさを男爵令嬢に与える。
男爵令嬢は切羽詰まって憧れの君に助けを求めたが、すげなく断られることも覚悟していたのに、まるで夢のような結果になっていた。
ダンスの後でフェルディナンドが誘ったら、男爵令嬢は喜んでついていくだろう。
(やれ、やれ、フェルディナンドらしい国王陛下への意趣返しだが、やりっぱなしでは条件闘争によくない、しかたない、俺が少々助けを入れておくか)
オスカルは内心困ったと思っていたが、フェルディナンドの気持ちも十分理解していたし、自分も同じ立場になっていたら、同じことをやっていたとも思っていた。
だが、国王を怒らるわけにもいかないので、こちらの立場と国王の立場を思い出させるために、流れるように第一王女と第三王女の側に移動した。
別に女を毛嫌いしているわけではないオスカルは、女性あしらいもフェルディナンド同様に上手だった。
第一王女と第三王女がダンスを誘うように仕向け、国王と側近に自分の立場を思い知らせるくらいは朝飯前だった。
精剛、精腹王と陰口を叩かれる現王が、その日の相手を探すために開いている。
夜伽舞踏会と揶揄される舞踏会なのだが、珍しく今日の主役は現王ではない。
今日の主役は、珍しく舞踏会に現れた二人の麗しき漢。
表面の美貌と内面の勇猛、双竜将軍と称えられるオスカルとフェルディナンド、貴婦人や貴族令嬢から欲望に満ちた目、熱い視線を向けられる二人だった。
「フェルディナンド様、私とダンスを踊っていただけませんか!」
とても不躾な、貴族令嬢とは思えない礼儀を失する行為だった。
まず下位貴族が上位貴族に声をかけてはいけないという大前提に違反していた。
ダンスの申し込みは男性からするものという常識も破っていた。
だが彼女は身を護るために必死だったのだ。
まだ乙女の彼女は、現王から招待状を受けて恐怖していたのだ。
一夜の慰み者にされ、結婚もままならない状態にされてしまう。
貧しい男爵令嬢では、乙女を失えば貴族との結婚を諦めなければいけなくなる。
「いや、申し訳ない、私から誘うと言っていたのに、つい失念していた。
君に恥をかかせる気はなかったのだが、本当に申し訳ない。
今の君からの誘いはなかった事にしてくれ。
お嬢さん、私とダンスを踊っていただけませんか?」
男爵令嬢はハラハラと涙を流しながら、その身をフェルディナンドに預ける。
フェルディナンドの言葉と、現王の見境のない乙女狩りに辟易していた貴族達は、男爵令嬢の無礼を見逃すことにしてくれたのだ。
まだ幼さの残る男爵令嬢では、実家の経済力不足もあって、ダンスの技量も未熟なのだが、まるで名手のように軽やかに踊っている。
全てはフェルディナンドの誘導で、男爵令嬢が疲れないように、全体重を軽々と支え、雲の上を浮遊するような気持ちよさを男爵令嬢に与える。
男爵令嬢は切羽詰まって憧れの君に助けを求めたが、すげなく断られることも覚悟していたのに、まるで夢のような結果になっていた。
ダンスの後でフェルディナンドが誘ったら、男爵令嬢は喜んでついていくだろう。
(やれ、やれ、フェルディナンドらしい国王陛下への意趣返しだが、やりっぱなしでは条件闘争によくない、しかたない、俺が少々助けを入れておくか)
オスカルは内心困ったと思っていたが、フェルディナンドの気持ちも十分理解していたし、自分も同じ立場になっていたら、同じことをやっていたとも思っていた。
だが、国王を怒らるわけにもいかないので、こちらの立場と国王の立場を思い出させるために、流れるように第一王女と第三王女の側に移動した。
別に女を毛嫌いしているわけではないオスカルは、女性あしらいもフェルディナンド同様に上手だった。
第一王女と第三王女がダンスを誘うように仕向け、国王と側近に自分の立場を思い知らせるくらいは朝飯前だった。
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