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ルイの苦悩

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 必死で魔族とスライムを狩るルイであったが、魔界から送られてくるスライムは後を絶たず、広く遠く逃げる魔族を追撃する事が不可能になっていた。
 それでも決してあきらめることなく、絶え間なく湧き上がる体内の魔力を無駄にしないように、魔力の塊で使い魔を創り出し、近距離の魔族やスライムを討伐させた。
 手持ちの千の金級・白金級・白銀級の魔晶石を使い魔にして、遠距離に逃げた魔族を追撃させた。
 次いで十万の銅級・鉄級・銀級の魔晶石を複数組み合わせて使い魔にして、発見した三つの魔界門を封鎖する軍勢にした。
 魔界門から溢れるように沸いてくるスライムは、一体でも人間の村に入り込めば、村人全員を喰い殺した上に、村人の人数分に分裂して子孫を増やすやっかいな存在なのだ。
 すでに広がってしまったスライムは、金級以上の使い魔に追撃討伐させるが、これ以上この世界に広がらせるわけにはいかないので、門の前で待ち受けて確実に殲滅させることにした。
 わずかな時間を創り出したルイは、切り札の一つに取っていた玉鋼級の魔晶石とワイバーン・飛竜・水竜などの牙・爪・尻尾・角・鱗を組み合わせ、この世界最強の玉鋼級使い魔を三体創り出した!
 その3体の玉鋼級使い魔を、三つの魔界門を護る守護神として、それぞれ三万以上の銅級・鉄級・銀級使い魔を指揮させた。
 ルイはこれだけの処置をした上で、今も遠くへ広がりながら虐殺を続ける魔族を追撃した。
 三百六十度に広がって逃げる魔族を、一度に全て討伐することはできないが、それでも諦めるわけにはいかないし、自分の失敗を見て見ぬ振りできなかった。
 そう、ルイの心は、自分が知識欲を優先するあまり、直ぐにダイを魔界に送らなかったことで、この最悪の事態を引き起こしたのだと言う、罪の意識で荒れ狂っていた。
 恐らく一生消えることも軽くなることもない罪の意識が、常にルイの心に痛みを発し、判断力を低下させるほど責め苛んでいた。
 その罪の意識と痛みが、普段は責任を背負う事を嫌うルイに、後々大きな責任を背負わせられるだろう目立つ行動を取らせていた。
 魔族とスライムの襲撃から生き残った人々は。
 いや、魔族とスライムの攻撃から使い魔によって救われた人々は、救ってくれた人を忘れるはずがないのだ。
 このような過酷な現実から助けてくれる存在を、弱い人々が手放すはずがなく、この地獄のような現状を創り出した存在への恨みと共に、強く大きく人々の心に残ることになった。
 ルイは一つの方向で魔族に追いつくと、その場に千の銅級・鉄級・銀級の使い魔を創り出して守備に残し、今度は右回りに魔族を討伐し始めた。
 最も遠くまで逃げ広がった魔族を右回りに倒して回り、そこの使い魔を守備兵として置くことで、これ以上魔族が人間界に広がらないようにしたのだ。
 ルイが魔界からやってきた魔族を討伐しているころ、ダイの魔界での死闘は佳境を迎えようとしていた。
 はたしてダイは、魔王の所までたどり着けるのだろうか?
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