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第一章

第6話:決断

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 もう、駄目だ、これ以上は我慢できない!
 五年間何とか耐えてきたが、皇太子が皇立学園に入学してからは、皇太子のまとわりつきが激し過ぎて、俺の精神が崩壊してしまう。
 今日などは無意識に最上級火炎魔法を放つ寸前までいっていた。
 このままでは、準備不足のまま皇太子を殺しかねない。
 具体的な婚約解消の手順が決まれば、もう少し我慢できるから、今日は何としても家族を説得する!

「大爺様、御爺様、父上、皇太子との婚約を破棄させてください。
 破棄させていただけないのなら、私はこの家を出ます」

 三人とも黙っていますが、言いたい事は分かります、最初に誰が返事するかも。

「カトリーヌがそこまで言うのなら、相当の覚悟と準備をしているのだろう。
 お前に出て行かれたら、プランケット伯爵家は大損だ。
 だから、お前が大丈夫と確信できる、皇室を黙らせる方法を言ってみろ。
 それと、お前が皇妃を座を捨てるに見合うだけの利を示せ」

 やはりジェイコブ曽祖父が質問してきたか。
 もういい歳なのに、未だに妖怪力に磨きがかかっている。
 単に家の安全を確保するだけではなく、皇妃になれない分の利を寄こせとは、相手が曾孫であろうと容赦しないな。
 まあ、それだからこそ、俺もプランケット伯爵家が築いた力を活用して、色々と金儲けに走れたのだがな。
 実家の力が弱かったら、何をやっても権力で他家に奪われてしまうからな。

「皇太子には魔術を使って他の女を好きになってもらいます。
 理不尽な理由で婚約を解消するので、莫大な賠償金が手に入ります。
 なんなら男を好きにさせて、その者と結婚すると言わせましょうか?」

「余計な事はしなくていい、普通に他の女を好きにさせればいい。
 どうやってやるのかとか、皇国の魔導師達にバレないかとかは聞かん。
 お前がやれるというのなら、やれるのだろう。
 だが、婚約解消の賠償金だけでは、皇妃になれなれない損失は補えないぞ」

 やはりそう来たかジェイコブ曽祖父、だが予想取りだ。
 この日の為に、初めて皇太子に会った日から、五年もかけて準備してきたのだ。
 魅了術と傀儡術と死霊術と式神術を会得し、誰もやってこない大魔境の奥深くや、人跡未踏のオアシスや湖にまで足を伸ばし、色々と創り出してきたのだ。
 それを家に納めると約束すれば、皇妃になれなかった分の利益など、軽く超えることができるのは間違いない。

 だが問題は、妖怪曽祖父と魔王祖爺と悪魔親父が、両方の利を手に入れようと欲張った場合だ。
 俺がプランケット伯爵家を愛していて、少しでも残りたいと思っていたら、その心をついて、利益を手に入れた上に皇妃にさせようとするだろう。
 プランケット伯爵家に残らないと俺が生きていけないと思っていても同じだ。
 俺がプランケット伯爵家を出ても一人で生きて入れる事と、家の事などなんとも思っていない事を、思い知らさなければいけない!
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