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第一章

第7話:独立

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「まず最初に、私にはいつでもこの家を出て独りで生きていく覚悟があります。
 その証拠に、今から私の私兵をご覧にれましょう」

 俺はそういうなり、式神兵一万を、広大な屋敷の庭一杯に発現させた。
 庭にいるのは式神兵ばかりだが、自分達がいる部屋には、別格の強さを誇る竜牙兵を発現させ、戦慣れしている父の度肝を抜いてやった。
 戦場の悪魔と呼ばれる父でも、百の竜牙兵には勝てない。

「分かった、お前が何時でも出ていく覚悟なのは分かった。
 それで、どんな利を家に与えてくれるのだ」

「これです、婚約を解消する見返りに、この真珠を毎年一万個用意しましょう」

 今日二度目の驚愕でだろう、いや、三度目なのか?
 この世界この時代では、真珠は恐ろしく高価で、金貨三百枚で取引されている。
 俺には養殖真珠の知識があったから、以前から式神やスケルトンやゴーレムに作らせていたのだ。

「分かった、今年から毎年一万個を家に入れてくれるのなら、好きにしていい」

 本当に妖怪曽祖父は強かだな、この期に及んで今年からという。
 普通なら眼の前にいる、抜き身を持った竜牙兵に気圧されて、来年からというだろうに、手に入れられるモノは死の瀬戸際であろうと手に取るのだな。
 まあ、いい、約束さえしてくれるのなら、百万個のうちの一万個など、大した数ではない。

「では、明日のでも婚約解消の笑い話を演じさせてもらいます」

★★★★★★

「プランケット伯爵令嬢カトリーヌ、君には本当にすまない事をしたと思っている。
 だが、私は本当の愛を見つけてしまったのだ、もう他の誰も愛せないのだ。
 だから、君との婚約は解消してもらいたい。
 その代わり、私の領地は全て賠償金として君に渡す。
 これで傷ついた君の気持ちを慰められるなどとは思っていない。
 しかし、これくらいしか、君詫びる方法が私にはないのだ……」

 王太子が私の教えたセリフを延々と話している。
 昨日まで俺に夢中だったのを知っている旧友たちは、口をポカンと開けて放心状態になっているが、それも仕方がない事だろう。
 王太子に腕に抱きついて勝ち誇った笑みを浮かべているのは、バトラー宮中伯家のレクシー嬢だ。

 誰もがこの状態を不審に思うだろうが、被害者のプランケット伯爵家が文句を言わなければ、調べようとする者はまずいない。
 いたとしても、これを好機に、プランケット伯爵家を追い落とそうとする、バトラー宮中伯が邪魔してくれるだろう。
 プランケット伯爵家の派閥が動かず、プランケット伯爵家の派閥が跳ねっかえりの調査を邪魔すれば、今回の魅了と傀儡がバレる事はない。
 さあ、後はこの世界を自由に楽しんで、最後は神に復讐するだけだ!
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