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第一章
第3話残虐非道
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「私には全く身に覚えがありません、身の潔白を証明する場を要求します」
私は思わず大声で反論していました。
会場中の視線が私に集中しましたが、怒りの所為か、全く動揺などありません。
私の中にあるのは、下劣非道な連中への怒りだけです。
このような卑怯卑劣な連中に抵抗もせずに負けるのは、絶対に嫌です。
本来人々を助けるための聖女の力を、このような者たちを罰する攻撃に使うのは嫌ですが、生かしておくわけにはいかない連中です。
「お前には何も聞いていないぞ、淫売の偽聖女!
お前の父親であるエリルスワン公爵の当主ボドワンが、爵位にかけて証言しているのだ、姉のオレリア嬢も同じ証言をしている、それで十分なんだよ」
「殿下、アレを見せてみなに真実を見せつけられてください。
不義の忌まわしい子供共々、王家の公正な罰を実行するのです」
射殺さんばかりの恨みの籠った邪悪な眼で、姉は私を睨みつけてきます。
その粘つくような眼つきに、信じがたい事が思い浮かんでしまいました。
檀上にいる父も残忍で厭らし眼つきをしていますが、どうか私の想像が外れますようにと、天井の神々に祈りました、ですが、その願いはかなえられませんでした。
何の感情も顔に浮かべない侍女が、一歳くらいの子供を連れてきたのです
「これは、偽聖女カリーヌが、ジプシーと不貞を重ねて生んだモノだ。
このような許し難い品性下劣なおこないをする者を、この国の王妃にはできん。
みなもそう思うであろう、まずはこのモノから殺して王家王国の誇りを守る!」
たぶん、いえ、まず間違いなく姉の生んだ子供だろう。
不貞の相手がジプシーというのも、姉が自分の行いを私になすりつけたのだ。
姉は既に何度も堕胎を繰り返して、平気で自分の子供を殺す冷酷非情な女だ。
でも、だからといって、ここまで育った自分の子を殺すのですか?
そもそも、最初から、私を陥れるために生んで殺す事を考えていた?
余りに非情下劣なおこないに、怒りと哀しみが心に渦巻きます。
私は聖女です、私を陥れようとする姉の不貞の子供であろうと、殺されるのを見逃す事などできません、思わず壇上に駆けあがり止めようとしました。
その私の行動を、嫌らしい表情で王太子が見ています。
私の方を見ながら、短剣で子供の胸を突き刺してしまいました。
情けなく哀しい事ですが、私の助けは間に合いませんでした。
ですが、普段全く鍛錬していない王太子は、子供の骨すら貫けませんでした。
「回復!」
私は子供に聖女の奇跡を与えました。
何としてでも助けたい、その一心しかありませんでした。
それ以外の事は、全く思いつきも考えもしませんでした。
私のこんな心を、卑怯下劣な連中は、最初から予測して利用したのです。
「見たか、みなの者、この偽聖女は卑しいジプシーとの子に聖女の奇跡を与えたぞ。
これこそこの子供が偽聖女の子供である動かし難い証拠だ!
淫売女をこの場で嬲り殺しにしろ!」
私は思わず大声で反論していました。
会場中の視線が私に集中しましたが、怒りの所為か、全く動揺などありません。
私の中にあるのは、下劣非道な連中への怒りだけです。
このような卑怯卑劣な連中に抵抗もせずに負けるのは、絶対に嫌です。
本来人々を助けるための聖女の力を、このような者たちを罰する攻撃に使うのは嫌ですが、生かしておくわけにはいかない連中です。
「お前には何も聞いていないぞ、淫売の偽聖女!
お前の父親であるエリルスワン公爵の当主ボドワンが、爵位にかけて証言しているのだ、姉のオレリア嬢も同じ証言をしている、それで十分なんだよ」
「殿下、アレを見せてみなに真実を見せつけられてください。
不義の忌まわしい子供共々、王家の公正な罰を実行するのです」
射殺さんばかりの恨みの籠った邪悪な眼で、姉は私を睨みつけてきます。
その粘つくような眼つきに、信じがたい事が思い浮かんでしまいました。
檀上にいる父も残忍で厭らし眼つきをしていますが、どうか私の想像が外れますようにと、天井の神々に祈りました、ですが、その願いはかなえられませんでした。
何の感情も顔に浮かべない侍女が、一歳くらいの子供を連れてきたのです
「これは、偽聖女カリーヌが、ジプシーと不貞を重ねて生んだモノだ。
このような許し難い品性下劣なおこないをする者を、この国の王妃にはできん。
みなもそう思うであろう、まずはこのモノから殺して王家王国の誇りを守る!」
たぶん、いえ、まず間違いなく姉の生んだ子供だろう。
不貞の相手がジプシーというのも、姉が自分の行いを私になすりつけたのだ。
姉は既に何度も堕胎を繰り返して、平気で自分の子供を殺す冷酷非情な女だ。
でも、だからといって、ここまで育った自分の子を殺すのですか?
そもそも、最初から、私を陥れるために生んで殺す事を考えていた?
余りに非情下劣なおこないに、怒りと哀しみが心に渦巻きます。
私は聖女です、私を陥れようとする姉の不貞の子供であろうと、殺されるのを見逃す事などできません、思わず壇上に駆けあがり止めようとしました。
その私の行動を、嫌らしい表情で王太子が見ています。
私の方を見ながら、短剣で子供の胸を突き刺してしまいました。
情けなく哀しい事ですが、私の助けは間に合いませんでした。
ですが、普段全く鍛錬していない王太子は、子供の骨すら貫けませんでした。
「回復!」
私は子供に聖女の奇跡を与えました。
何としてでも助けたい、その一心しかありませんでした。
それ以外の事は、全く思いつきも考えもしませんでした。
私のこんな心を、卑怯下劣な連中は、最初から予測して利用したのです。
「見たか、みなの者、この偽聖女は卑しいジプシーとの子に聖女の奇跡を与えたぞ。
これこそこの子供が偽聖女の子供である動かし難い証拠だ!
淫売女をこの場で嬲り殺しにしろ!」
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