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第一章
第51話:千慮一失
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予想していたこととはいえ、最悪の状況になってしまった。
いや、マリアお嬢様が理想通りの貴族令嬢に育ってくださった事は最高だ。
貴族としての誇りと慈愛を持ち、女性であろうと家臣領民のために命懸けで戦う。
俺の知る範囲でそのような心映えを持っておられる貴族は、フェデリコ公王陛下しかおられない。
そのフェデリコ公王陛下も、武人の果断さという点でいえば俺の理想通りとは言えないが、俺の基準が厳し過ぎる事は重々自覚している。
申し訳ないのだが、そんな俺の身勝手な理想を押し付けて、お育てしてしまったのがマリアお嬢様なのだが、なんと、理想通りに育ってくださった。
すくすくと理想の貴族として成長されるマリアお嬢様に恥ずかしくないように、俺も自分を厳しく律して生きてきた。
少々強引な処断を使ってでも、マリアお嬢様を王位につけたいと思ってしまう自分の強引さに、それではマリアお嬢様に顔向けできないと言い聞かせてきた。
ありがたい事に、王太子と王が自分で墓穴を掘ってくれた。
そこまではよかったのだが、俺はとんでもない計算違いをしていた。
あまりにも俺の理想を押し付けて、その理想通りの育ってくださった事で、男性を見る基準と潔癖さが尋常ではなくなってしまったのだ。
弱小貴族家の貴婦人は、時に有力者の愛人を作る事で支援者を得たり情報を得たりして、家を守る事もあるのだ。
マリアお嬢様が王太子の婚約者となったのも、他国に付け入る隙を与えないためや、内乱を防ぐという理由があったが、同じような政略婚約だった。
表面上は理想的な婚約者を演じられていたが、内心はとても嫌がっておられた。
俺が押し付けた理想の貴族が、マリアお嬢様の理想の男性なのに、あのような下劣極まりない屑の婚約者である事を我慢してくださっていた。
もう誰に遠慮する事も、政略を考える必要もない強国になった状態で、同じような下劣極まりない屑を婿に迎えたいと思われないのは、仕方のない事だとは俺も思う。
だが、だからといって、理想の男性として、義兄である俺を選ぶというのだけは、止めて欲しかった。
俺の責任である事も、俺が考えなしであった事も認める。
俺の理想とする男性貴族が、この大陸のどこを探してもいない事は理解している。
だからといって、義兄である俺を選ぶことはないだろう。
俺の基準では、義兄を結婚相手と考えるとは全く思っていなかった。
普通なら、多少劣るところがあろうと、義兄ではない他人から結婚相手を選ぶ。
今更言ってもしかたがない事だとは分かっているが、もう少し粗野で愚かな人間だと思われるように、欲望を抑えなければよかった。
「エドアルド公子殿下、敵が降伏を申し込んできました。
いかがすればよろしいでしょうか」
悩むのは後だ、早く領地を占領して安全を確保しなければいけない。
マリアお嬢様を護る壁となる領地を広く厚くするのだ。
「身代金が取れそうな者は宣誓させて多少の自由を与える。
戦争中に罪を犯した身代金を取れない者は、奴隷に落として鉱山に送る。
民は今日から俺の領民となるから、決して乱暴に扱うな」
いや、マリアお嬢様が理想通りの貴族令嬢に育ってくださった事は最高だ。
貴族としての誇りと慈愛を持ち、女性であろうと家臣領民のために命懸けで戦う。
俺の知る範囲でそのような心映えを持っておられる貴族は、フェデリコ公王陛下しかおられない。
そのフェデリコ公王陛下も、武人の果断さという点でいえば俺の理想通りとは言えないが、俺の基準が厳し過ぎる事は重々自覚している。
申し訳ないのだが、そんな俺の身勝手な理想を押し付けて、お育てしてしまったのがマリアお嬢様なのだが、なんと、理想通りに育ってくださった。
すくすくと理想の貴族として成長されるマリアお嬢様に恥ずかしくないように、俺も自分を厳しく律して生きてきた。
少々強引な処断を使ってでも、マリアお嬢様を王位につけたいと思ってしまう自分の強引さに、それではマリアお嬢様に顔向けできないと言い聞かせてきた。
ありがたい事に、王太子と王が自分で墓穴を掘ってくれた。
そこまではよかったのだが、俺はとんでもない計算違いをしていた。
あまりにも俺の理想を押し付けて、その理想通りの育ってくださった事で、男性を見る基準と潔癖さが尋常ではなくなってしまったのだ。
弱小貴族家の貴婦人は、時に有力者の愛人を作る事で支援者を得たり情報を得たりして、家を守る事もあるのだ。
マリアお嬢様が王太子の婚約者となったのも、他国に付け入る隙を与えないためや、内乱を防ぐという理由があったが、同じような政略婚約だった。
表面上は理想的な婚約者を演じられていたが、内心はとても嫌がっておられた。
俺が押し付けた理想の貴族が、マリアお嬢様の理想の男性なのに、あのような下劣極まりない屑の婚約者である事を我慢してくださっていた。
もう誰に遠慮する事も、政略を考える必要もない強国になった状態で、同じような下劣極まりない屑を婿に迎えたいと思われないのは、仕方のない事だとは俺も思う。
だが、だからといって、理想の男性として、義兄である俺を選ぶというのだけは、止めて欲しかった。
俺の責任である事も、俺が考えなしであった事も認める。
俺の理想とする男性貴族が、この大陸のどこを探してもいない事は理解している。
だからといって、義兄である俺を選ぶことはないだろう。
俺の基準では、義兄を結婚相手と考えるとは全く思っていなかった。
普通なら、多少劣るところがあろうと、義兄ではない他人から結婚相手を選ぶ。
今更言ってもしかたがない事だとは分かっているが、もう少し粗野で愚かな人間だと思われるように、欲望を抑えなければよかった。
「エドアルド公子殿下、敵が降伏を申し込んできました。
いかがすればよろしいでしょうか」
悩むのは後だ、早く領地を占領して安全を確保しなければいけない。
マリアお嬢様を護る壁となる領地を広く厚くするのだ。
「身代金が取れそうな者は宣誓させて多少の自由を与える。
戦争中に罪を犯した身代金を取れない者は、奴隷に落として鉱山に送る。
民は今日から俺の領民となるから、決して乱暴に扱うな」
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