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第一章
第28話:妥協
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「ありがとうございます、古代氷竜アリステア様。
誠心誠意、お約束させていただいた事を守らせていただきます」
パーカー準男爵ジェイコブ、妻のグレース、跡継ぎで孤児院長の長男キーン、長女で母親と一緒に副孤児院長と務めるカミラが土下座している。
いや、パーカー準男爵一家だけではなく、準男爵領の全村人と我が領地の全村人も一緒に土下座している。
「ネコヤシキ殿の言葉を我の言葉と思って聞くように。
我の望みは異世界の酒と料理である。
それを再現するための協力をするというのであれば、我が狩った肉をその方どもにも分け与えてやる」
「「「「「有難き幸せでございます」」」」」
アリステアがノリノリで演技をしている。
竜魔術を使って竜語を人語に変化させて伝えている。
巨大な古代竜が空中に静止して人々を見下ろしているのだ。
誰だって恐怖と畏怖を感じるし、どのような不思議が起こっても気にしない。
全て古代氷竜様のお力だと思ってくれる。
燃料がないのに24時間暖炉に火が燃え続けようともだ。
それに、これで日本の醬油や味噌が再現できるかもしれない。
醤油や味噌は手に入らなくても、生薬味くらいは手に入る。
十分な量のクジラ肉とサメ肉を村人に配れば、貴重な麦や大豆を味噌や醤油に試作に使って失敗したとしても、胸を痛めなくてすむ。
北方は内陸に位置しているので、日本人には信じられないくらい高価な塩を得るために、貴重な食糧を対価に渡さなくてもいい。
「では肉と塩はパーカー準男爵ジェイコブ殿に渡すからな。
俺に手を煩わすなよ。
俺はアリステア殿との約束を守るのに忙しいからな」
そういう事で、俺の領地の村長、オークリーの文句を封じた。
オークリーから見れば、自分の領主から分け与えられるはずの食料と塩を、わざわざ隣の領主に頼んで分けてもらうのは腹立たしい事だろう。
だが、いくら善良で気が優しくて力持でも、直接嘆願されるのは嫌だった。
いや、善良で気が優しくて力持ちだからこそ、治める村の人々のために、強く嘆願する事が予測されたのだ。
(ネコヤシキ殿、話しだけでなく、本当に異世界の料理が食べてみたいのだが)
アリステア殿がとんでもない事を言いだした。
(いや、そんな事を言われても、アリステア殿が満足できるような巨大な料理など作りたくても作れないよ)
(そんな心配はいらないぞ、ネコヤシキ殿。
単に料理を楽しむだけならば、我が人間に化けて食べればいい。
そうすればネコヤシキ殿が作る料理が丁度いい量になる)
そんな事を言われても困るのだ。
全く料理ができない訳ではないが、醤油や味噌、酒を再現するのは難しい。
まあ、心を病んで味が分からなくなるまでは結構自炊していたから料理はできる。
だが今手元にある材料と調味料で作れる料理は限られている。
少しでも美味しい料理を作るために今必要なモノは……
「オークリー、料理に使う薬草や香草はあるか」
「はっ、はい、それほど沢山ではありませんが、村中を探せばアリステア様に1食くらいは満足していただける量は確保できると思います」
「では急いで大麦を粉末にしてくれ。
それと大麦でパンを焼いてくれ。
大麦がなければライ麦でも構わない。
その代わり、我が村には特別に倍の肉と塩を与える」
「「「「「うぉおおおお」」」」」
「急げ、急いで粉を引きパンを焼くのだ」
クジラ肉を香草とライ麦粉でまぶして竜田揚げにしてみよう。
パン粉が手に入るのなら、クジラカツを揚げてみる。
揚げる脂は鯨脂を使えばいい。
1度で成功しなければ2度3度と試作すればいい。
アリステア殿には満足してもらえなくても、年中腹を空かせている村人なら喜んで美味しく食べてくれるだろう。
誠心誠意、お約束させていただいた事を守らせていただきます」
パーカー準男爵ジェイコブ、妻のグレース、跡継ぎで孤児院長の長男キーン、長女で母親と一緒に副孤児院長と務めるカミラが土下座している。
いや、パーカー準男爵一家だけではなく、準男爵領の全村人と我が領地の全村人も一緒に土下座している。
「ネコヤシキ殿の言葉を我の言葉と思って聞くように。
我の望みは異世界の酒と料理である。
それを再現するための協力をするというのであれば、我が狩った肉をその方どもにも分け与えてやる」
「「「「「有難き幸せでございます」」」」」
アリステアがノリノリで演技をしている。
竜魔術を使って竜語を人語に変化させて伝えている。
巨大な古代竜が空中に静止して人々を見下ろしているのだ。
誰だって恐怖と畏怖を感じるし、どのような不思議が起こっても気にしない。
全て古代氷竜様のお力だと思ってくれる。
燃料がないのに24時間暖炉に火が燃え続けようともだ。
それに、これで日本の醬油や味噌が再現できるかもしれない。
醤油や味噌は手に入らなくても、生薬味くらいは手に入る。
十分な量のクジラ肉とサメ肉を村人に配れば、貴重な麦や大豆を味噌や醤油に試作に使って失敗したとしても、胸を痛めなくてすむ。
北方は内陸に位置しているので、日本人には信じられないくらい高価な塩を得るために、貴重な食糧を対価に渡さなくてもいい。
「では肉と塩はパーカー準男爵ジェイコブ殿に渡すからな。
俺に手を煩わすなよ。
俺はアリステア殿との約束を守るのに忙しいからな」
そういう事で、俺の領地の村長、オークリーの文句を封じた。
オークリーから見れば、自分の領主から分け与えられるはずの食料と塩を、わざわざ隣の領主に頼んで分けてもらうのは腹立たしい事だろう。
だが、いくら善良で気が優しくて力持でも、直接嘆願されるのは嫌だった。
いや、善良で気が優しくて力持ちだからこそ、治める村の人々のために、強く嘆願する事が予測されたのだ。
(ネコヤシキ殿、話しだけでなく、本当に異世界の料理が食べてみたいのだが)
アリステア殿がとんでもない事を言いだした。
(いや、そんな事を言われても、アリステア殿が満足できるような巨大な料理など作りたくても作れないよ)
(そんな心配はいらないぞ、ネコヤシキ殿。
単に料理を楽しむだけならば、我が人間に化けて食べればいい。
そうすればネコヤシキ殿が作る料理が丁度いい量になる)
そんな事を言われても困るのだ。
全く料理ができない訳ではないが、醤油や味噌、酒を再現するのは難しい。
まあ、心を病んで味が分からなくなるまでは結構自炊していたから料理はできる。
だが今手元にある材料と調味料で作れる料理は限られている。
少しでも美味しい料理を作るために今必要なモノは……
「オークリー、料理に使う薬草や香草はあるか」
「はっ、はい、それほど沢山ではありませんが、村中を探せばアリステア様に1食くらいは満足していただける量は確保できると思います」
「では急いで大麦を粉末にしてくれ。
それと大麦でパンを焼いてくれ。
大麦がなければライ麦でも構わない。
その代わり、我が村には特別に倍の肉と塩を与える」
「「「「「うぉおおおお」」」」」
「急げ、急いで粉を引きパンを焼くのだ」
クジラ肉を香草とライ麦粉でまぶして竜田揚げにしてみよう。
パン粉が手に入るのなら、クジラカツを揚げてみる。
揚げる脂は鯨脂を使えばいい。
1度で成功しなければ2度3度と試作すればいい。
アリステア殿には満足してもらえなくても、年中腹を空かせている村人なら喜んで美味しく食べてくれるだろう。
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