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第一章
離縁されました
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そんなある日、いつものようにキャシーが突撃して来た日のことだった。
(あら…?いつも妖精さんはお相手様の周りにはいないのに、今日は珍しいのね)
キャシーの喚く声を右から左に受け流しながら、マーガレットは不思議そうにキャシーを見ていた。
(お相手様のお腹の周りに集まってるわ!もしかして…?)
何かに思い当たったマーガレットは、キャシーに尋ねたのだった。
「あなた、もしかしたら子を授かったの?」
それを聞いたキャシーはさっとお腹を庇った。
「奥さんには関係ないですから!」
そう言って、キャシーは離れに帰って行った。
マーガレットは走り去るキャシーを見て考えていた。
(おめでたいことね!でも、生まれてくる子はどうするのかしら…?結局旦那様には聞けなかったのよね…)
そしてその日の夜、いつものようにジェラルドが屋敷に来た。
バーーンッ!!
(いつも思うのだけれど、扉は大丈夫なのかしら…?それにしても、旦那様は扉を乱暴に開けないと気が済まないご病気なのかしら?扉が可哀想だわ…)
乱暴に開けられた扉を見ていたマーガレットに、ジェラルドが叫んだ。
「今日という今日は許さない!キャシーに子供を降ろせと言ったそうだな?私達の愛の結晶だぞ!テイラー家の跡取りだ!君がそんな人間だとは思わなかったよ!もう我慢できない!君とは離縁する!明日中に出て行ってくれっ!」
(あらまぁ…色々とお聞きしたいことはあるのだけれど、まずは明確にしなければいけない事があるわね…)
意味のわからない事を叫んだジェラルドに、マーガレットには思う事が多々あった。
「これは家と家との契約ですわ。そんな勝手なことは許されないと思うのですけれど…」
「今までの生活補償をしたことで、義理は果たしたはずだ!」
マーガレットがそう言うも、ジェラルドは聞く耳を持たなかった。
「手続きはどうするのですか?両親にも説明をしなくてはいけませんわ。これは合同事業の為の婚姻ですもの」
マーガレットが言うと、
「手続きはこちらでやっておく!君が気にすることではない!それに、事業も心配しなくて良い。父上に言って解消しないように頼んでおこう」
ジェラルドはそう言い切ったのだった。
(まぁ、どうしましょう…?お父様が怒って取り止めにしなければ良いのだけれど…でも、心配しなくても良いと仰っているもの。任せましょう!)
「承知しましたわ。では明日の朝にでもこの屋敷を出て行こうと思います。もしもテイラー家の使用人が私について行きたいと言ったら、連れて行っても良いのかしら…?」
マーガレットの質問に、ジェラルドは冷たく答えた。
「ふんっ!冷酷な君について行きたい者などいないだろうが、もしいるならば好きにすればいい!なんなら書面にでも書こう」
― 私、ジェラルド・テイラーは、テイラー家から使用人がマーガレット・ケナードに付いて行くことを認める
ジェラルド・テイラー ―
「これでどうだ?」
ジェラルドはさらさらと一枚の用紙に書いて、マーガレットに見せた。
それを受け取ったマーガレットも、下の箇所に記入した。
― 私、マーガレット・ケナード(旧マーガレット・テイラー)は、勧誘などはせず、ついて行きたいと言った使用人のみをケナード家に連れて行くことを誓います
マーガレット・ケナード ―
「では、旦那様…いえ、テイラー次期伯爵、ごきげんよう。手続きなどはお任せしますわ」
「ふんっ!」
紙を受け取ったジェラルドは、踵を返して離れに戻っていったのだった。
「さてと、離縁されてしまいましたわ。明日には出て行かなくてはいけないのね…オリビア達はどうしたいかしら…?」
マーガレットは使用人達に離縁された事を伝えた。
上級使用人は全員マーガレットについて行きたがった。
下級使用人達は言わずもがな、マーガレット達の離縁を喜んでいた。マーガレットについて行きたい者は誰一人いなかった。
流石に上級使用人達全員をケナード家に勝手に連れていけないと悩んだ末に、マーガレットはオリビアとセバスの二人と一緒にケナード領に戻ることに決めた。
残りの使用人は伯爵家当主のビクトールに確認をして、準備が整ってから迎えることにしたのだ。
「必ず迎えに来るから、それまで頑張ってね」
そう約束をして、マーガレットはオリビア達とケナード領に帰って行った。
(離縁されたと言って二人も使用人を連れて帰ったら、お父様は驚いてしまうかしら?)
マーガレットは驚くビクトールの姿を想像して、馬車に揺られながらワクワクとしていたのだった。
(あら…?いつも妖精さんはお相手様の周りにはいないのに、今日は珍しいのね)
キャシーの喚く声を右から左に受け流しながら、マーガレットは不思議そうにキャシーを見ていた。
(お相手様のお腹の周りに集まってるわ!もしかして…?)
何かに思い当たったマーガレットは、キャシーに尋ねたのだった。
「あなた、もしかしたら子を授かったの?」
それを聞いたキャシーはさっとお腹を庇った。
「奥さんには関係ないですから!」
そう言って、キャシーは離れに帰って行った。
マーガレットは走り去るキャシーを見て考えていた。
(おめでたいことね!でも、生まれてくる子はどうするのかしら…?結局旦那様には聞けなかったのよね…)
そしてその日の夜、いつものようにジェラルドが屋敷に来た。
バーーンッ!!
(いつも思うのだけれど、扉は大丈夫なのかしら…?それにしても、旦那様は扉を乱暴に開けないと気が済まないご病気なのかしら?扉が可哀想だわ…)
乱暴に開けられた扉を見ていたマーガレットに、ジェラルドが叫んだ。
「今日という今日は許さない!キャシーに子供を降ろせと言ったそうだな?私達の愛の結晶だぞ!テイラー家の跡取りだ!君がそんな人間だとは思わなかったよ!もう我慢できない!君とは離縁する!明日中に出て行ってくれっ!」
(あらまぁ…色々とお聞きしたいことはあるのだけれど、まずは明確にしなければいけない事があるわね…)
意味のわからない事を叫んだジェラルドに、マーガレットには思う事が多々あった。
「これは家と家との契約ですわ。そんな勝手なことは許されないと思うのですけれど…」
「今までの生活補償をしたことで、義理は果たしたはずだ!」
マーガレットがそう言うも、ジェラルドは聞く耳を持たなかった。
「手続きはどうするのですか?両親にも説明をしなくてはいけませんわ。これは合同事業の為の婚姻ですもの」
マーガレットが言うと、
「手続きはこちらでやっておく!君が気にすることではない!それに、事業も心配しなくて良い。父上に言って解消しないように頼んでおこう」
ジェラルドはそう言い切ったのだった。
(まぁ、どうしましょう…?お父様が怒って取り止めにしなければ良いのだけれど…でも、心配しなくても良いと仰っているもの。任せましょう!)
「承知しましたわ。では明日の朝にでもこの屋敷を出て行こうと思います。もしもテイラー家の使用人が私について行きたいと言ったら、連れて行っても良いのかしら…?」
マーガレットの質問に、ジェラルドは冷たく答えた。
「ふんっ!冷酷な君について行きたい者などいないだろうが、もしいるならば好きにすればいい!なんなら書面にでも書こう」
― 私、ジェラルド・テイラーは、テイラー家から使用人がマーガレット・ケナードに付いて行くことを認める
ジェラルド・テイラー ―
「これでどうだ?」
ジェラルドはさらさらと一枚の用紙に書いて、マーガレットに見せた。
それを受け取ったマーガレットも、下の箇所に記入した。
― 私、マーガレット・ケナード(旧マーガレット・テイラー)は、勧誘などはせず、ついて行きたいと言った使用人のみをケナード家に連れて行くことを誓います
マーガレット・ケナード ―
「では、旦那様…いえ、テイラー次期伯爵、ごきげんよう。手続きなどはお任せしますわ」
「ふんっ!」
紙を受け取ったジェラルドは、踵を返して離れに戻っていったのだった。
「さてと、離縁されてしまいましたわ。明日には出て行かなくてはいけないのね…オリビア達はどうしたいかしら…?」
マーガレットは使用人達に離縁された事を伝えた。
上級使用人は全員マーガレットについて行きたがった。
下級使用人達は言わずもがな、マーガレット達の離縁を喜んでいた。マーガレットについて行きたい者は誰一人いなかった。
流石に上級使用人達全員をケナード家に勝手に連れていけないと悩んだ末に、マーガレットはオリビアとセバスの二人と一緒にケナード領に戻ることに決めた。
残りの使用人は伯爵家当主のビクトールに確認をして、準備が整ってから迎えることにしたのだ。
「必ず迎えに来るから、それまで頑張ってね」
そう約束をして、マーガレットはオリビア達とケナード領に帰って行った。
(離縁されたと言って二人も使用人を連れて帰ったら、お父様は驚いてしまうかしら?)
マーガレットは驚くビクトールの姿を想像して、馬車に揺られながらワクワクとしていたのだった。
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