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第三章
それから
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あれから六年の月日が流れた。
「おかあさま!」
マーガレット達は子宝に恵まれ、五歳になるお転婆な姫がいた。ギルバートの髪の色を受け継ぎ、マーガレットの目の色を受け継いだ可愛い姫だった。
「アンネマリー、お母様にいきなり抱きついては危ないよ」
ギルバートが優しく注意をした。
「ごめんなさい…」
シュンと落ち込んだアンネマリーを、マーガレットが手招きした。
「大丈夫よ。ここに手を当ててみて?」
「わぁ!ボコってうごいた!」
お腹に手を当てたアンネマリーが、目を輝かせてマーガレットを見た。
「アンはもうすぐお姉さんになるのよ?」
「おねえさん…?」
「そう。この子のお姉さんよ。生まれてきたら、優しくしてあげるのよ?」
「うん!わかった!」
アンネマリーはそう言ってマーガレット達の周りを走り始めた。
(オリビア達が苦労しそうね)
マーガレットは微笑んでアンネマリーを見ていた。
「幼い頃のメグはあんな感じだったんだろうね?」
ギルバートが笑いながら言った。
「まぁ、あそこまでお転婆ではなかったわ」
「ビクトール殿はそっくりだと言っていたよ?」
二人は笑い合っていた。
産まれて間もないアンネマリーを見たビクトールは、孫をとても可愛がっていた。
「アン!なんて可愛いんだ!まるで天使のようだね!この髪色でさえなければ良かったものの…」
大きくなってくると、
「メグに似てお転婆だね!メグに似て!」
いつまで経ってもビクトールはビクトールのままだった。
「あなたはだあれ?」
何もない場所に向かってアンネマリーが喋りだした。
(まぁ!もしかして…)
マーガレットが目を輝かせてアンネマリーを見ていた。
マーガレットにはもう妖精が見えなかった。
シルベスタ帝国には妖精がいなかったので気が付かなかったのだが、アンネマリーが生まれた頃にケナード領に訪れると、妖精は何処にもいなかったのだ。
「おかあさま!ようせいさんがいるよ!」
「妖精…?」
首を傾げたギルバートに、マーガレットは説明をした。
「言い伝えの精霊様のように羽を持った小さな人達のことなの。アンネマリーには見えるのね」
「小人の精霊か…メグにも見えるのかい?」
「今はもう見えないけれど、以前は見えていたわ。嘘だと思うかしら…?」
「まさか!信じるに決まっているだろう?」
マーガレットは信じてくれたギルバートに驚いたが、同時に嬉しくも思った。
「きっとメグとアンが精霊をシルベスタに連れて来てくれたのだろう。再び見放されないように、いい国を築いていかないといけないね」
「そうね…欲を張らず、当たり前だと思わずに、色んな事に感謝をしましょうね」
その年、マーガレットは元気な双子の皇子達を産んだ。
黒い髪に茶色い目をしたギルバートそっくりの皇子はアレキサンダーと。茶色い髪に青い目をしたマーガレットにそっくりの皇子はジェイコブと名付けられた。
シルベスタ帝国の王城では、三匹の動物達と遊ぶ三人の笑い声が絶えなかった。
三人は時折何処かに向かって話しかけていた。だが、誰も気味悪がったりはしなかった。皆、妖精達に話し掛ける皇子達を優しく見守っていた。
何十年、何百年も前にいなくなった精霊達。
シルベスタ帝国に再び戻ってきたのだった。
そして、シルベスタ帝国でも民達に人気のあったマーガレット。
ある記者が取材をした際に、皆が一番知りたがっているギルバートとの馴れ初めを聞いた。
マーガレットは自分達の話だけではなく、キャシーとジェラルド、オリビアとハリーの幸せを祈って、今までの話を記者に聞かせた。
そして、記者は一冊の伝記を書き上げた。
『真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください』
人々を幸せにし、シルベスタ帝国に精霊達を呼び戻したマーガレット。その伝記は、本に書かれているマーガレットの最後の言葉から取って、そう呼ばれるようになっていった。
― おわり ―
「おかあさま!」
マーガレット達は子宝に恵まれ、五歳になるお転婆な姫がいた。ギルバートの髪の色を受け継ぎ、マーガレットの目の色を受け継いだ可愛い姫だった。
「アンネマリー、お母様にいきなり抱きついては危ないよ」
ギルバートが優しく注意をした。
「ごめんなさい…」
シュンと落ち込んだアンネマリーを、マーガレットが手招きした。
「大丈夫よ。ここに手を当ててみて?」
「わぁ!ボコってうごいた!」
お腹に手を当てたアンネマリーが、目を輝かせてマーガレットを見た。
「アンはもうすぐお姉さんになるのよ?」
「おねえさん…?」
「そう。この子のお姉さんよ。生まれてきたら、優しくしてあげるのよ?」
「うん!わかった!」
アンネマリーはそう言ってマーガレット達の周りを走り始めた。
(オリビア達が苦労しそうね)
マーガレットは微笑んでアンネマリーを見ていた。
「幼い頃のメグはあんな感じだったんだろうね?」
ギルバートが笑いながら言った。
「まぁ、あそこまでお転婆ではなかったわ」
「ビクトール殿はそっくりだと言っていたよ?」
二人は笑い合っていた。
産まれて間もないアンネマリーを見たビクトールは、孫をとても可愛がっていた。
「アン!なんて可愛いんだ!まるで天使のようだね!この髪色でさえなければ良かったものの…」
大きくなってくると、
「メグに似てお転婆だね!メグに似て!」
いつまで経ってもビクトールはビクトールのままだった。
「あなたはだあれ?」
何もない場所に向かってアンネマリーが喋りだした。
(まぁ!もしかして…)
マーガレットが目を輝かせてアンネマリーを見ていた。
マーガレットにはもう妖精が見えなかった。
シルベスタ帝国には妖精がいなかったので気が付かなかったのだが、アンネマリーが生まれた頃にケナード領に訪れると、妖精は何処にもいなかったのだ。
「おかあさま!ようせいさんがいるよ!」
「妖精…?」
首を傾げたギルバートに、マーガレットは説明をした。
「言い伝えの精霊様のように羽を持った小さな人達のことなの。アンネマリーには見えるのね」
「小人の精霊か…メグにも見えるのかい?」
「今はもう見えないけれど、以前は見えていたわ。嘘だと思うかしら…?」
「まさか!信じるに決まっているだろう?」
マーガレットは信じてくれたギルバートに驚いたが、同時に嬉しくも思った。
「きっとメグとアンが精霊をシルベスタに連れて来てくれたのだろう。再び見放されないように、いい国を築いていかないといけないね」
「そうね…欲を張らず、当たり前だと思わずに、色んな事に感謝をしましょうね」
その年、マーガレットは元気な双子の皇子達を産んだ。
黒い髪に茶色い目をしたギルバートそっくりの皇子はアレキサンダーと。茶色い髪に青い目をしたマーガレットにそっくりの皇子はジェイコブと名付けられた。
シルベスタ帝国の王城では、三匹の動物達と遊ぶ三人の笑い声が絶えなかった。
三人は時折何処かに向かって話しかけていた。だが、誰も気味悪がったりはしなかった。皆、妖精達に話し掛ける皇子達を優しく見守っていた。
何十年、何百年も前にいなくなった精霊達。
シルベスタ帝国に再び戻ってきたのだった。
そして、シルベスタ帝国でも民達に人気のあったマーガレット。
ある記者が取材をした際に、皆が一番知りたがっているギルバートとの馴れ初めを聞いた。
マーガレットは自分達の話だけではなく、キャシーとジェラルド、オリビアとハリーの幸せを祈って、今までの話を記者に聞かせた。
そして、記者は一冊の伝記を書き上げた。
『真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください』
人々を幸せにし、シルベスタ帝国に精霊達を呼び戻したマーガレット。その伝記は、本に書かれているマーガレットの最後の言葉から取って、そう呼ばれるようになっていった。
― おわり ―
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