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第十八話
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フェリックスは浮かない顔をしていた。
性検とは性的な身体検査の略で、ミナミは滞りなく済んだはずだ。
「……ぬ、濡れすぎて、ダメでしたか……?」
前世ではそんな言葉口に出したことがないが、ここにいるとどうも感覚が麻痺してくる。
「いや、その逆だ。ミナミの身体はかなり妊孕性に優れているとわかった。本来は男と交わることで懐妊するのが最も孕みやすいと言われているのだが、すっ飛ばしてスポイトで精液を注入すると言っている」
「はぁ!? 」
ミナミは思わず大声を張り上げた。
「要するに、最高の条件が揃った身体なのに、使わないのが勿体ないということだ。お前は基本的に牢から出れないから、俺たちのように交尾するのが難しい。そこで一日に一回の精送と飲精を義務づけると言っている……」
「絶対嫌なんですけど!!」
鉄柵をガシャンと鳴らした。
しかし思い返せばこの国は繁殖主義な訳で、繁殖させていく為にはなんだってやるのだ。
それならば既成事実を作ればいいのでは?
ミナミはフェリックスを見上げた。
並ぶと親子ほどの背丈の差があるフェリックスの顔は、遥か高いところにあって少々首が痛い。
ミナミが言わんとしてることが分かってフェリックスは頬を染めたが、頷くことはなかった。
彼はミナミの頭をなだらかに撫でた。
「ごめんな、俺は補講があって直ぐには溜まらないから出せないんだ。代わりの男に協力してもらうか?」
「代わり……」
「ミナミは子を望んでいないから俺が適任だと思うけど、白ネクタイの男なら何人かいる。二十歳までの八年間で一人や二人だ。俺ほどとはいかないが、子ができる可能性は充分に低い」
「……」
けれどもゼロではないことを、転生者のミナミは知っている。
一人目から何年も経ってから待望のきょうだい、もしくは離婚してパートナーを変えたらすぐ出来た、などという話も、助産師だった前世の母はよく語っていた。
そのパターンにミナミが当てはまらない保証はない。
ミナミは腕を組んで思いを巡らせた。
「……セックスした跡があればいいのよね?」
「まぁ、そうだな」
「今から言うものを持ってきてくれない? ダメ元で試したいことがあるの」
翌週、学園の上層部の使いがやってきたのは就寝前だった。
ミナミの居室へ向かう音が廊下から聞こえてきて、すぐにそれを実行した。
数回ノックされ、牢の前方部のカーテンが開く。
「受胎要請だ。股を開け」
ミナミはベッドから身を起こし黙って指示に従うが、こんなにも簡単に妊娠させられてしまうのかと身の毛がよだつ思いがした。
「……それは誰のですか」
「誰の? ……ふむ。そのようなことを聞く女は初めてだな」
ミナミとしては身元のわからない人間のDNAを取り込んで、何ヵ月も苦しい思いをしたくないだけなのだが、この国の女の子は構わないのだろうか。
男はミナミのワンピースをめくり上げながら口を開いた。
「とある筋の男から直々に要望があってな。我が校の転入生……お前に自分の子を産ませろと。そのような例外は認めていないのだが、毎年多額の寄付金を納めている男で、幾分世話になっていてな。必ず懐妊する保証はないが、一ヶ月ならばと了承してやったんだ」
「……!」
その話には思い当たる節があった。
フェリックスがこの先一人も子を孕ますことができなかったら、彼を買うと宣言している資産家の男、その人だ。
ミナミの容姿をやたら褒めていたが、それほど自分との間に子を設けたかったのか。
男は瓶からスポイトで白い精液を吸い上げ、ミナミへ注入しようと覗き込んだが、ハッと手が止まった。
「……父親の分からない子など産みたくありません。それならクラスメイトの子の方がマシです」
ミナミの太股や股間には白濁液がかけられたような痕跡がしっかり残っていたのだった。
男が指ですくって臭いを嗅ぐと、粘り気があり、下半身で精製される体液独特の臭いを放っていた。
「お前、これは……確かに、精液だな。」
「そうです。フェリックスさんにお友達の男性を一人づつこっちに回してくれるように頼みました。フェリックスさんだけじゃ心許ないですけど、何人かいれば、絶対に妊娠できると思いません? ミナミ、やっぱり一生性奉仕係は嫌だなって……考え直したんです」
男はしばしの間疑いの目を向けてはいたが、まぁいいだろう、とまくり上げていたワンピースの裾を元に戻した。
「これから毎日ここへ来る。来訪した男がいなければその場で精液の補給をするからそのつもりで。なお万が一途中で懐妊したらそれ相応の手続きがあるから申し出るように。いいな」
「あ、は……はい!」
そこまで積極的に精液を注入する気がないのか、男はすんなりと出て行った。
牢舎の入り口の大きい鍵がガシャンと響き、室内は再び静まり返った。
「はぁー……」
ミナミはベッドに倒れ込んだ。
太股についた液体を触ると、伸びのあるぬるっとしたものが手についた。
ミナミは何かを堪えきれないかのように吹き出した。
「ふっ……あはははははははっ」
ミナミは笑いが止まらなかった。
何せこんなに上手くいくと思わなかったから。
「スライム?」
後日会いに来たフェリックスに、ミナミは得意気に説明して見せた。
「そう! ちょっと耳貸してください」
性検とは性的な身体検査の略で、ミナミは滞りなく済んだはずだ。
「……ぬ、濡れすぎて、ダメでしたか……?」
前世ではそんな言葉口に出したことがないが、ここにいるとどうも感覚が麻痺してくる。
「いや、その逆だ。ミナミの身体はかなり妊孕性に優れているとわかった。本来は男と交わることで懐妊するのが最も孕みやすいと言われているのだが、すっ飛ばしてスポイトで精液を注入すると言っている」
「はぁ!? 」
ミナミは思わず大声を張り上げた。
「要するに、最高の条件が揃った身体なのに、使わないのが勿体ないということだ。お前は基本的に牢から出れないから、俺たちのように交尾するのが難しい。そこで一日に一回の精送と飲精を義務づけると言っている……」
「絶対嫌なんですけど!!」
鉄柵をガシャンと鳴らした。
しかし思い返せばこの国は繁殖主義な訳で、繁殖させていく為にはなんだってやるのだ。
それならば既成事実を作ればいいのでは?
ミナミはフェリックスを見上げた。
並ぶと親子ほどの背丈の差があるフェリックスの顔は、遥か高いところにあって少々首が痛い。
ミナミが言わんとしてることが分かってフェリックスは頬を染めたが、頷くことはなかった。
彼はミナミの頭をなだらかに撫でた。
「ごめんな、俺は補講があって直ぐには溜まらないから出せないんだ。代わりの男に協力してもらうか?」
「代わり……」
「ミナミは子を望んでいないから俺が適任だと思うけど、白ネクタイの男なら何人かいる。二十歳までの八年間で一人や二人だ。俺ほどとはいかないが、子ができる可能性は充分に低い」
「……」
けれどもゼロではないことを、転生者のミナミは知っている。
一人目から何年も経ってから待望のきょうだい、もしくは離婚してパートナーを変えたらすぐ出来た、などという話も、助産師だった前世の母はよく語っていた。
そのパターンにミナミが当てはまらない保証はない。
ミナミは腕を組んで思いを巡らせた。
「……セックスした跡があればいいのよね?」
「まぁ、そうだな」
「今から言うものを持ってきてくれない? ダメ元で試したいことがあるの」
翌週、学園の上層部の使いがやってきたのは就寝前だった。
ミナミの居室へ向かう音が廊下から聞こえてきて、すぐにそれを実行した。
数回ノックされ、牢の前方部のカーテンが開く。
「受胎要請だ。股を開け」
ミナミはベッドから身を起こし黙って指示に従うが、こんなにも簡単に妊娠させられてしまうのかと身の毛がよだつ思いがした。
「……それは誰のですか」
「誰の? ……ふむ。そのようなことを聞く女は初めてだな」
ミナミとしては身元のわからない人間のDNAを取り込んで、何ヵ月も苦しい思いをしたくないだけなのだが、この国の女の子は構わないのだろうか。
男はミナミのワンピースをめくり上げながら口を開いた。
「とある筋の男から直々に要望があってな。我が校の転入生……お前に自分の子を産ませろと。そのような例外は認めていないのだが、毎年多額の寄付金を納めている男で、幾分世話になっていてな。必ず懐妊する保証はないが、一ヶ月ならばと了承してやったんだ」
「……!」
その話には思い当たる節があった。
フェリックスがこの先一人も子を孕ますことができなかったら、彼を買うと宣言している資産家の男、その人だ。
ミナミの容姿をやたら褒めていたが、それほど自分との間に子を設けたかったのか。
男は瓶からスポイトで白い精液を吸い上げ、ミナミへ注入しようと覗き込んだが、ハッと手が止まった。
「……父親の分からない子など産みたくありません。それならクラスメイトの子の方がマシです」
ミナミの太股や股間には白濁液がかけられたような痕跡がしっかり残っていたのだった。
男が指ですくって臭いを嗅ぐと、粘り気があり、下半身で精製される体液独特の臭いを放っていた。
「お前、これは……確かに、精液だな。」
「そうです。フェリックスさんにお友達の男性を一人づつこっちに回してくれるように頼みました。フェリックスさんだけじゃ心許ないですけど、何人かいれば、絶対に妊娠できると思いません? ミナミ、やっぱり一生性奉仕係は嫌だなって……考え直したんです」
男はしばしの間疑いの目を向けてはいたが、まぁいいだろう、とまくり上げていたワンピースの裾を元に戻した。
「これから毎日ここへ来る。来訪した男がいなければその場で精液の補給をするからそのつもりで。なお万が一途中で懐妊したらそれ相応の手続きがあるから申し出るように。いいな」
「あ、は……はい!」
そこまで積極的に精液を注入する気がないのか、男はすんなりと出て行った。
牢舎の入り口の大きい鍵がガシャンと響き、室内は再び静まり返った。
「はぁー……」
ミナミはベッドに倒れ込んだ。
太股についた液体を触ると、伸びのあるぬるっとしたものが手についた。
ミナミは何かを堪えきれないかのように吹き出した。
「ふっ……あはははははははっ」
ミナミは笑いが止まらなかった。
何せこんなに上手くいくと思わなかったから。
「スライム?」
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