転生先は繁殖主義国家だけど、普通に幸せになりたいです!

吉野葉月

文字の大きさ
18 / 30

第十八話

しおりを挟む
 フェリックスは浮かない顔をしていた。
 性検とは性的な身体検査の略で、ミナミは滞りなく済んだはずだ。
 
「……ぬ、濡れすぎて、ダメでしたか……?」
 
 前世ではそんな言葉口に出したことがないが、ここにいるとどうも感覚が麻痺してくる。
 
「いや、その逆だ。ミナミの身体はかなり妊孕性に優れているとわかった。本来は男と交わることで懐妊するのが最も孕みやすいと言われているのだが、すっ飛ばしてスポイトで精液を注入すると言っている」
 
「はぁ!? 」
 
 ミナミは思わず大声を張り上げた。
 
「要するに、最高の条件が揃った身体なのに、使わないのが勿体ないということだ。お前は基本的に牢から出れないから、俺たちのように交尾するのが難しい。そこで一日に一回の精送と飲精を義務づけると言っている……」
 
「絶対嫌なんですけど!!」
 
 鉄柵をガシャンと鳴らした。
 しかし思い返せばこの国は繁殖主義な訳で、繁殖させていく為にはなんだってやるのだ。
 それならば既成事実を作ればいいのでは?
 ミナミはフェリックスを見上げた。
 並ぶと親子ほどの背丈の差があるフェリックスの顔は、遥か高いところにあって少々首が痛い。
 ミナミが言わんとしてることが分かってフェリックスは頬を染めたが、頷くことはなかった。
 彼はミナミの頭をなだらかに撫でた。
 
「ごめんな、俺は補講があって直ぐには溜まらないから出せないんだ。代わりの男に協力してもらうか?」
 
「代わり……」
 
「ミナミは子を望んでいないから俺が適任だと思うけど、白ネクタイの男なら何人かいる。二十歳までの八年間で一人や二人だ。俺ほどとはいかないが、子ができる可能性は充分に低い」
 
「……」
 
 けれどもゼロではないことを、転生者のミナミは知っている。
 一人目から何年も経ってから待望のきょうだい、もしくは離婚してパートナーを変えたらすぐ出来た、などという話も、助産師だった前世の母はよく語っていた。
 そのパターンにミナミが当てはまらない保証はない。
 ミナミは腕を組んで思いを巡らせた。
 
「……セックスした跡があればいいのよね?」
 
「まぁ、そうだな」
 
「今から言うものを持ってきてくれない? ダメ元で試したいことがあるの」
 
 
 
 
 翌週、学園の上層部の使いがやってきたのは就寝前だった。
 ミナミの居室へ向かう音が廊下から聞こえてきて、すぐにそれを実行した。
 数回ノックされ、牢の前方部のカーテンが開く。
 
「受胎要請だ。股を開け」
 
 ミナミはベッドから身を起こし黙って指示に従うが、こんなにも簡単に妊娠させられてしまうのかと身の毛がよだつ思いがした。
 
「……それは誰のですか」
 
「誰の? ……ふむ。そのようなことを聞く女は初めてだな」
 
 ミナミとしては身元のわからない人間のDNAを取り込んで、何ヵ月も苦しい思いをしたくないだけなのだが、この国の女の子は構わないのだろうか。
 男はミナミのワンピースをめくり上げながら口を開いた。
 
「とある筋の男から直々に要望があってな。我が校の転入生……お前に自分の子を産ませろと。そのような例外は認めていないのだが、毎年多額の寄付金を納めている男で、幾分世話になっていてな。必ず懐妊する保証はないが、一ヶ月ならばと了承してやったんだ」
 
「……!」
 
 その話には思い当たる節があった。
 フェリックスがこの先一人も子を孕ますことができなかったら、彼を買うと宣言している資産家の男、その人だ。
 ミナミの容姿をやたら褒めていたが、それほど自分との間に子を設けたかったのか。
 
 男は瓶からスポイトで白い精液を吸い上げ、ミナミへ注入しようと覗き込んだが、ハッと手が止まった。
 
「……父親の分からない子など産みたくありません。それならクラスメイトの子の方がマシです」
 
 ミナミの太股や股間には白濁液がかけられたような痕跡がしっかり残っていたのだった。
 男が指ですくって臭いを嗅ぐと、粘り気があり、下半身で精製される体液独特の臭いを放っていた。
 
「お前、これは……確かに、精液だな。」
 
「そうです。フェリックスさんにお友達の男性を一人づつこっちに回してくれるように頼みました。フェリックスさんだけじゃ心許ないですけど、何人かいれば、絶対に妊娠できると思いません? ミナミ、やっぱり一生性奉仕係は嫌だなって……考え直したんです」
 
 男はしばしの間疑いの目を向けてはいたが、まぁいいだろう、とまくり上げていたワンピースの裾を元に戻した。
 
「これから毎日ここへ来る。来訪した男がいなければその場で精液の補給をするからそのつもりで。なお万が一途中で懐妊したらそれ相応の手続きがあるから申し出るように。いいな」
 
「あ、は……はい!」
 
 そこまで積極的に精液を注入する気がないのか、男はすんなりと出て行った。
 牢舎の入り口の大きい鍵がガシャンと響き、室内は再び静まり返った。
 
「はぁー……」
 
 ミナミはベッドに倒れ込んだ。
 太股についた液体を触ると、伸びのあるぬるっとしたものが手についた。
 ミナミは何かを堪えきれないかのように吹き出した。
 
「ふっ……あはははははははっ」
 
 ミナミは笑いが止まらなかった。
 何せこんなに上手くいくと思わなかったから。
 
 
 
 
 
「スライム?」
 
 後日会いに来たフェリックスに、ミナミは得意気に説明して見せた。
 
「そう! ちょっと耳貸してください」
 
 
 
 
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界召喚 (聖女)じゃない方でしたがなぜか溺愛されてます

七夜かなた
恋愛
仕事中に突然異世界に転移された、向先唯奈 29歳 どうやら聖女召喚に巻き込まれたらしい。 一緒に召喚されたのはお金持ち女子校の美少女、財前麗。当然誰もが彼女を聖女と認定する。 聖女じゃない方だと認定されたが、国として責任は取ると言われ、取り敢えず王族の家に居候して面倒見てもらうことになった。 居候先はアドルファス・レインズフォードの邸宅。 左顔面に大きな傷跡を持ち、片脚を少し引きずっている。 かつて優秀な騎士だった彼は魔獣討伐の折にその傷を負ったということだった。 今は現役を退き王立学園の教授を勤めているという。 彼の元で帰れる日が来ることを願い日々を過ごすことになった。 怪我のせいで今は女性から嫌厭されているが、元は女性との付き合いも派手な伊達男だったらしいアドルファスから恋人にならないかと迫られて ムーライトノベルでも先行掲載しています。 前半はあまりイチャイチャはありません。 イラストは青ちょびれさんに依頼しました 118話完結です。 ムーライトノベル、ベリーズカフェでも掲載しています。

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

美醜逆転の世界で騎士団長の娘はウサギ公爵様に恋をする

ゆな
恋愛
糸のような目、小さな鼻と口をした、なんとも地味な顔が美しいとされる美醜逆転の世界。ベルリナ・クラレンスはこの世界では絶世の美少女だが、美の感覚が他の人とズレていた。 結婚適齢期にも関わらず、どの令嬢からも忌避される容姿の公爵様が美形にしか見えず、歳の差を乗り越え、二人が幸せになるまでのお話。 🔳男女両視点でかいています。 場面が重複する場合があります。 🔳"美醜逆転の世界で純情騎士団長を愛でる"のスピンオフとなります。本作を読んでいなくてもお楽しみいただける内容となっています。 🔳R18は後半 ※を付けますので、苦手な方はご注意ください

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

女嫌いの騎士は呪われた伯爵令嬢を手放さない

魚谷
恋愛
実母を亡くし、父と再婚した義母とその連れ子の義妹に虐げられていた伯爵令嬢アリッサ・テュール・ヴェラは、許嫁であるリンカルネ王国の国王ヨアヒム・グラントロ・リンカルネの結婚式の最中、その身に突如として謎の刻印をきざまれてしまう。 人々はそれを悪魔とつがった証と糾弾し、アリッサは火あぶりにされることに。 しかしそんなアリッサを救ったのは、魔術師で構成される銀竜騎士団の副団長、シュヴァルツだった。 アリッサの体に刻まれた刻印は、色欲の呪紋と呼ばれるもので、これを解呪するには、その刻印を刻んだ魔術師よりも強い魔力を持つ人物の体液が必要だと言われる。 そしてアリッサの解呪に協力してくれるのは、命の恩人であるシュヴァルツなのだが、彼は女嫌いと言われていて―― ※R18シーンには★をつけます ※ムーンライトノベルズで連載中です

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

処理中です...