ラスボス『終焉の支配者』 はこの国に手を差し伸べます!

栗花落 月

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魔獣の巣窟

第十夜 前編

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俺は今、頭から真っ黒い布を被り、顔には木で作ったマスクを着けている。このマスクは、ねこちゃんが拾ってきてくれた木と、俺が拾ったナイフで作ったものだ。

木をナイフで削って形を整える作業はとても難しかった。特に、ナイフの刃の扱いに慣れるまでが大変だったが、最終的には上手にできたと思う。目の部分には小さく穴を開けたので、俺が黒目だとは分からないはず。ただ、その分、俺の視野は狭くなった。

初めは顔全体を覆うデザインにしていたけど、息がしづらくなってしまったので、目元だけを覆う形に変更した。

布を被り、マスクを着けている。これで俺が黒髪黒目の子供だとバレることはない。

そして今日も俺は、泉の場所から外へ出ている。

ねこちゃんは朝からどこかへ行ってしまった。俺は今日、ねこちゃんがいつも何をしているか、こっそり覗き見しようと思う。

ねこちゃんは狩りの時に怪我して帰ってくることはなかった。なのに、狩りじゃないときにたまに怪我をして帰ってくる。

俺は心配でたまらなかった。俺がベアルである限り、この物語通りに人間に殺されてしまうかもしれないから。

ねこちゃんに聞いても、何も教えてくれないし、ついて行くのもだめだと言われた。残された道は、こっそり覗き見するしかない!

そして今、俺は魔獣くんたちにねこちゃんの居場所を聞きながら歩いている。

ここは以前、怪我をして倒れていたラファエル様と出会ったトカゲくんたちが暮らしている場所だ。

ラファエル様を公爵家に引き渡した後、トカゲくんたちに感謝された。ラファエル様があの場所にいることで、みんなが不穏になっていたそうだ。みんな縄張りを取られるって思ったのかな?

それ以来、週に2、3回みんなと遊ぶようになった。初めて泉の場所以外で寝た所がここだ。

「トカゲくんたち、ねこちゃんって見た?」
「シャー、シャー、シャー」と言いながら皆が首を振った。
「そっか、ありがとう」

俺はトカゲくんたちにお礼を言い、その場を後にした。

どこにいるんだろうな。やっぱりもっと遠いところまで行っているのかな。
俺は次の手がかりを探し行くことにした。

ふと、大きな影ができた。空を見上げると、孔雀に似た魔獣が低空飛行で飛んでいた。 

「おーい、コッコちゃーん」
俺はコッコちゃんに向かって大きく手を振った。
「アーーーーーー」
甲高い声が返ってきた。

コッコちゃんは方向転換をして、俺の前で止まった。俺は頭を撫でた。
コッコちゃん――孔雀に似た魔獣ーーはあの日以来、たまに俺の元へ遊びに来てくれる。

孔雀に似ている。孔雀→鳥類→鶏→コッコッコッコ=コッコちゃん、こんな感じで名前はすぐに決まった。

「せなかの羽、またきれいになってる」

俺はコッコちゃんを撫でながら言った。初めて会ったとき、この羽は黒かったけど、ところどころ赤く光っていた。会うたびに、だんだんと赤い部分が増えてきている。洗っても落ちないって言っていたから、どうして綺麗になっているのかわからないけど、嬉したかった。

「ねこちゃん見なかった?」
「アーーーーーー」
「見たの?」
「アーーーーーー」
「ちかくまでつれていってほしいな」
「アーーーーーー」

コッコちゃんは俺に背を向け、しゃがんでくれた。

「ありがとう!」

俺はコッコちゃんの背中に乗った。

ねこちゃんがいるとされる場所は、魔獣の巣窟の出口の近くだった。出口付近は濃い霧に包まれ、空は灰色というよりも黒に近い。まだ、時間はお昼ぐらいなのに、こんなに薄暗いのは、人間たちを惑わせるためだと最近気づいた。

人間がこの場所に足を踏み入れると、さまざまな場所から魔獣くんたちが咆哮を轟かせて人間を脅す。獣木くんーー木の形をした魔獣ーーたちは壁を作り、道を塞ぐ、こうして自分たちの生活圏を守ろうとしているのだ。

だから、魔獣くんたちの咆哮が出口付近で激しく飛び交っていれば、人間がここに侵入してきた合図になる。今はそれほど咆哮が聞こえないので、人間は侵入してきていないとわかった。

よかった。ねこちゃんは人間たちと戦っていたわけではないのか。そう考えると、少し安心した。

「アーーーーーー」
「コッコちゃんありがとう」

俺はコッコちゃんに、ねこちゃんがいるとされる場所の近くまで送ってもらい、その後を見送った。

よし!ここからは獣木くんたちに聞きながら、探そう。 俺は近くにある木に順番に話しかけに行った。獣木くんたちは本物の木とよく同化していて、区別がつきにくい。だから近寄って、順番に話しかけている。

大きな声で呼んだらきっとみんな答えてくれるだろう。けど、ねこちゃんにまで聞こえてしまう可能性もある。 ねこちゃんをこっそり覗き見するから、ねこちゃんにバレたらいけないよね。

5本目の木でやっと、獣木くんに出会った。
「じゅーぼくん、ねこちゃんを見なかった?」
「クキキキキキキ」
といいながら、木の体と一体化していた枝が1本出てきてねこちゃんがいる方向を示してくれた。

「ありがとう!」
「クキキキキキキ」

そう言うと獣木くんはまた本物の木と同化した。

あっちね。俺はどんどん進んでいった。足を踏み出すたびに、何か違和感を覚えた。

魔獣くんたちの咆哮は聞こえず、獣木くんたちも木の壁を作っていない。それにもかかわらず、カラスたちだけが木々の上で不穏に鳴き交わし、落ち着きなく飛び回っていた。なんでだろう?

そのいつもと違う光景に、胸の中に不安がじわじわと広がっていく。

「ハアアアーーーーーツ!」

突然、人間の力強い叫び声が聞こえ、濃い霧が急に押し寄せてきた。俺は反射的に目を閉じた。

「うっ…」

霧が去り、俺はゆっくりと目を開けた。目の前には、虎バージョンの姿で倒れて血を流しているねこちゃんがいた。

見る間に血の気が引いていく。
どうして...どうして人間がここに?

俺は混乱しつつも、ねこちゃんの元へと全速力で駆け寄った。

倒れているねこちゃんの流れ出る血の量に息を呑んだ。心臓が激しく鼓動している。

大丈夫。大丈夫…
自分に言い聞かせた。
大丈夫、泉の水を早く飲めば・・・

背中に冷たいものが触れた。ゆっくりと振り向くと、そこには人間の足があった。

俺は、恐る恐る視線を上げると、鋭い剣先が俺の喉仏に向けられている。

「おい、貴様。何者だ。」

低く静かな声が響き、俺はその声の主を見た。薄暗い森の中でも、赤い目が鋭く光り、俺を射抜くような視線を放っていた。

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