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鬼胎
蚊人間
灼熱地獄の炎天下。誰もが全身から汗を流して歩くそんな真夏のある日の昼下がり、男の左腕に蚊がとまった。それに気がついた男は、何のためらいも見せずにピシャリ、と蚊を叩き潰した。
その瞬間、男もピシャリ、と潰れて死んだ。
それを見ていた別の男は、怖くなって逃げようとしたが、その時気がついた。自分の二の腕に蚊がとまっていることに。
潰せば自分が死ぬ。そう考えた男は、恐ろしくて潰せない。そうこうするうちに、蚊はどんどん男の血を吸っていく。みるみる間に膨らんでいく蚊。それはカエルくらいになり、子猫くらいになり、その後もどんどん大きくなっていく。それと反比例して、男はどんどん萎れていく。終いには骨と皮だけになって死んでしまった。
その男の血を吸っていた蚊はというと、大体男と同じくらいの背格好なっていた。しかも二足歩行。姿は蚊だが、形は人間とおんなじだ。そしてどこかに飛んでいった。
そのさまを見ていた別の男は、その蚊を追いかけてみた。たらふく血を吸った蚊は、体が重い。それは普通の蚊と変わらないのだろう。たぶんそれが理由で、この蚊はフラフラとしながら地面に下りてきた。
追いついた男は、追いつきざまにこの蚊を殴ってやった。蚊の中には血がパンパンにつまっている。だから水風船が割れた時のように弾けて、辺りは血の海になった。その瞬間、殴った男も弾けて、辺りにはミンチ肉が散乱した。二人分の血がぶちまけられたのだから、それはもう凄惨な光景である。
それを見ていた別の男は、恐る恐る自分の二の腕を見た。思った通りだ。蚊がとまっている。しかも血を吸っているではないか。男は、蚊に去ってもらおうとつつく。だが飛んでいってはくれない。みるみる間に男は萎れていって、骨と皮だけになって死んでしまった。
今までの光景を見ていたのは、人間だけではなかった。この蚊も見ていた。今死んだ男の身の丈ほどの大きさになったこの蚊は、おもむろに男の皮を拾い上げて骨を取り出して捨てると、口から中に入っていった。
蚊人間の誕生である。蚊人間はぴょんぴょん飛び跳ねた。だけれども飛べなかった。それもそうだろう。翅は男の皮の中に納まっているのだから。
それを見ていた別の男がいた。まさかと思い、自分の体をくまなく見やる。蚊はいない。男はホッとしたが、安心もしていられない。急いで家に帰って、ある物をネット注文した。翌々日届いたそれは、スズメバチ対策の白い防護服だった。
事の顛末はこういう話だ。だから二丁目の小林さんは、この暑い中、あの白い防護服を着ているのである。
おわり
その瞬間、男もピシャリ、と潰れて死んだ。
それを見ていた別の男は、怖くなって逃げようとしたが、その時気がついた。自分の二の腕に蚊がとまっていることに。
潰せば自分が死ぬ。そう考えた男は、恐ろしくて潰せない。そうこうするうちに、蚊はどんどん男の血を吸っていく。みるみる間に膨らんでいく蚊。それはカエルくらいになり、子猫くらいになり、その後もどんどん大きくなっていく。それと反比例して、男はどんどん萎れていく。終いには骨と皮だけになって死んでしまった。
その男の血を吸っていた蚊はというと、大体男と同じくらいの背格好なっていた。しかも二足歩行。姿は蚊だが、形は人間とおんなじだ。そしてどこかに飛んでいった。
そのさまを見ていた別の男は、その蚊を追いかけてみた。たらふく血を吸った蚊は、体が重い。それは普通の蚊と変わらないのだろう。たぶんそれが理由で、この蚊はフラフラとしながら地面に下りてきた。
追いついた男は、追いつきざまにこの蚊を殴ってやった。蚊の中には血がパンパンにつまっている。だから水風船が割れた時のように弾けて、辺りは血の海になった。その瞬間、殴った男も弾けて、辺りにはミンチ肉が散乱した。二人分の血がぶちまけられたのだから、それはもう凄惨な光景である。
それを見ていた別の男は、恐る恐る自分の二の腕を見た。思った通りだ。蚊がとまっている。しかも血を吸っているではないか。男は、蚊に去ってもらおうとつつく。だが飛んでいってはくれない。みるみる間に男は萎れていって、骨と皮だけになって死んでしまった。
今までの光景を見ていたのは、人間だけではなかった。この蚊も見ていた。今死んだ男の身の丈ほどの大きさになったこの蚊は、おもむろに男の皮を拾い上げて骨を取り出して捨てると、口から中に入っていった。
蚊人間の誕生である。蚊人間はぴょんぴょん飛び跳ねた。だけれども飛べなかった。それもそうだろう。翅は男の皮の中に納まっているのだから。
それを見ていた別の男がいた。まさかと思い、自分の体をくまなく見やる。蚊はいない。男はホッとしたが、安心もしていられない。急いで家に帰って、ある物をネット注文した。翌々日届いたそれは、スズメバチ対策の白い防護服だった。
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おわり
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