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piece5 剛士の部屋で、剛士のベッドで
剛士の家
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午前中で学校が終わった2月のある日のことだった。
3年生で、既に進学先の決まっている剛士は、毎日登校はしていない。
しかし今日は、悠里とタイミングを合わせて登校してくれた。
悠里はウキウキと剛士と待ち合わせ、一緒にランチをしていた。
「俺ん家来る?」
剛士が、柔らかく微笑んだ。
「今日、母親は親戚ん家に泊まりに行ってるから誰もいないんだ」
ふわっと悠里の頬が色づく。
「……はい」
剛士の家にお邪魔するのは、初めてだ。
緊張と期待に高鳴る胸を押さえて、悠里は頷いた。
手を繋いで電車に乗り、2人は彼の最寄駅に降り立つ。
悠里の最寄駅の8駅先になる。
学校のある駅を挟めば、たったの3駅だ。
こうしてみれば近いのだなと、悠里は改めて嬉しくなる。
「家までは、10分ちょいくらい」
優しく手を繋ぎ直し、剛士は微笑んだ。
冬晴れの爽やかな空気の中、2人はのんびりと静かな道を歩いた。
剛士の家は、建ち並ぶ高層マンションのひとつだった。
「こんにちは」
剛士が自然な調子で、エントランスの傍にある管理人室に向かい会釈する。
「こんにちは」
管理人らしき初老の男性が、人当たりのいい笑みを浮かべた。
悠里も小さく会釈をし、挨拶をする。
管理人の男性も、にっこりと微笑み会釈を返してくれた。
オートロックの扉をくぐると、広いロビーが現れる。
「……すごい」
圧倒されたように、悠里はくるりと見回し独りごちた。
ふっと剛士が微笑む。
「ウチは7階だから、行こう?」
エレベーターを指し、剛士は言った。
そこでも住民らしき親子連れに会ったが、剛士はごく自然な調子で挨拶をした。
彼の礼儀正しさや、マンションの感じの良さに、悠里は感心してしまう。
「はい、ようこそ」
少し戯けたように剛士は微笑み、スリッパを出してくれた。
「お邪魔します」
悠里は、一礼して足を踏み入れた。
広いリビングには大きな窓があり、景色を楽しむことができた。
思わず悠里は窓際に立つ。
「きれい……」
一軒家に住む悠里には、とても珍しく、楽しい光景だった。
「お茶でいいか?」
笑いながら剛士がお茶を入れ、ソファを勧めた。
「あ、ありがとうございます」
悠里は微笑んで言った。
「素敵なお家」
「そうか? お前の家も、すごいよな」
彼女の頭を撫で、剛士が言う。
「いつもお邪魔してばっかりだから、いつか呼びたかったんだ」
ウチは専業主婦だからなあ、と剛士が笑った。
「お母様、どんな方?」
「あー、まあ……普通?」
何と表現してよいかわからなかったのか、剛士が笑いながら首を傾げた。
「普通の、いいお母さんって感じだと思う」
「ふふ、いつかご挨拶できるかな」
「お前がいいなら、いつでも会わせるぞ」
剛士は嬉しそうに微笑んだ。
「ウチは男2人兄弟だから、お前に会ったら喜びそう」
「……うん。がんばる!」
「お前を見たら絶対、可愛いって騒ぐな、あの人は」
悠里の長い髪を撫で、剛士は笑った。
「まあ、今日はゆっくり過ごそうな」
「うん!」
頬を染め、悠里は頷いた。
3年生で、既に進学先の決まっている剛士は、毎日登校はしていない。
しかし今日は、悠里とタイミングを合わせて登校してくれた。
悠里はウキウキと剛士と待ち合わせ、一緒にランチをしていた。
「俺ん家来る?」
剛士が、柔らかく微笑んだ。
「今日、母親は親戚ん家に泊まりに行ってるから誰もいないんだ」
ふわっと悠里の頬が色づく。
「……はい」
剛士の家にお邪魔するのは、初めてだ。
緊張と期待に高鳴る胸を押さえて、悠里は頷いた。
手を繋いで電車に乗り、2人は彼の最寄駅に降り立つ。
悠里の最寄駅の8駅先になる。
学校のある駅を挟めば、たったの3駅だ。
こうしてみれば近いのだなと、悠里は改めて嬉しくなる。
「家までは、10分ちょいくらい」
優しく手を繋ぎ直し、剛士は微笑んだ。
冬晴れの爽やかな空気の中、2人はのんびりと静かな道を歩いた。
剛士の家は、建ち並ぶ高層マンションのひとつだった。
「こんにちは」
剛士が自然な調子で、エントランスの傍にある管理人室に向かい会釈する。
「こんにちは」
管理人らしき初老の男性が、人当たりのいい笑みを浮かべた。
悠里も小さく会釈をし、挨拶をする。
管理人の男性も、にっこりと微笑み会釈を返してくれた。
オートロックの扉をくぐると、広いロビーが現れる。
「……すごい」
圧倒されたように、悠里はくるりと見回し独りごちた。
ふっと剛士が微笑む。
「ウチは7階だから、行こう?」
エレベーターを指し、剛士は言った。
そこでも住民らしき親子連れに会ったが、剛士はごく自然な調子で挨拶をした。
彼の礼儀正しさや、マンションの感じの良さに、悠里は感心してしまう。
「はい、ようこそ」
少し戯けたように剛士は微笑み、スリッパを出してくれた。
「お邪魔します」
悠里は、一礼して足を踏み入れた。
広いリビングには大きな窓があり、景色を楽しむことができた。
思わず悠里は窓際に立つ。
「きれい……」
一軒家に住む悠里には、とても珍しく、楽しい光景だった。
「お茶でいいか?」
笑いながら剛士がお茶を入れ、ソファを勧めた。
「あ、ありがとうございます」
悠里は微笑んで言った。
「素敵なお家」
「そうか? お前の家も、すごいよな」
彼女の頭を撫で、剛士が言う。
「いつもお邪魔してばっかりだから、いつか呼びたかったんだ」
ウチは専業主婦だからなあ、と剛士が笑った。
「お母様、どんな方?」
「あー、まあ……普通?」
何と表現してよいかわからなかったのか、剛士が笑いながら首を傾げた。
「普通の、いいお母さんって感じだと思う」
「ふふ、いつかご挨拶できるかな」
「お前がいいなら、いつでも会わせるぞ」
剛士は嬉しそうに微笑んだ。
「ウチは男2人兄弟だから、お前に会ったら喜びそう」
「……うん。がんばる!」
「お前を見たら絶対、可愛いって騒ぐな、あの人は」
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