ミリしらな乙女ゲームに転生しました。

猫宮乾

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「それで、話とは何ですの?」

 二人きりになると、セレフィローズの表情と眼差しが険しくなった。エドワードは顔を背け、困ったように笑っている。遡るのは、セレフィローズとリリアを呼び止める十分ほど前――本当に偶然、エドワードとグレイルは歩いていた。

「殿下、王位継承権の事だが――」
「ああ」

 比較的真面目なやりとりを、それまで二人はしていたのだが、不意にグレイルが沈黙したのである。

「グレイル?」
「……」
「どうかしたのか?」

 硬直しているグレイルの視線を、エドワードは追いかけた。するとその先には、談笑しているセレフィローズとリリアがいた。

「姉上がどうかしたのか?」
「そちらに興味はない。あのご令嬢は誰だ?」
「へ? ……ああ、クリソコーラ侯爵令嬢だな。元、か。先日、クリソコーラ侯爵は亡くなられたと聞いている」
「……」
「彼女がどうかしたのか?」
「……だからあんなに愁いを帯びたように、美しい瞳をしているのか……」
「いや? 彼女は基本的にいつも無表情だな。美人なのは分かる。姉上の隣に並んで負けないってすごいよな、いっそ」
「断然、セレフィローズ王女殿下より美人だ」
「う、うん? そこは人それぞれの好みもあるだろうしな。何々、グレイルってああいうのが好みなのか? 意外と面食い? お堅いように見えて、まさかの女好き?」

 エドワードの声に、グレイルが首を振る。

「これまで政務以外に興味がわいた事はない」
「そう言うやつに限って、豹変すると怖そうだな」
「エド殿下。知っていることをすべて教えてくれ。クリソコーラ侯爵家について。彼女に許婚は?」
「知らん。いないんじゃないか? 大体、許婚は、王族以外は高等部になってからみんな探すし――あー、クリソコーラ侯爵家? なんというか、侯爵家の一つだし歴史があるというのは習ったが、侯爵家の中で最も可もなく不可もない平凡な家柄だから、つかず離れず過ごせと聞かされているが?」
「……」
「もしかして、いいや、もしかしなくても、まさかの一目惚れか?」
「……」
「ふぅん。クリソコーラ侯爵家は、どちらかというとセレフィローズ姉上派だからあまり良い気はしないが、俺も友人の恋を応援しないほど心が狭いわけではない。よし、声をかけてみるか」
「殿下、恩に着る」

 ――こんな流れがあった。
 それを回想しつつ、エドワードは天井を見上げ、それから改めてセレフィローズを見た。

「実は、中等部の話が聞きたくてな。中等部は、月に一度の通学だったな?」
「それは私が友人を見送るという重大な用事を放棄してまで聞くべきことではないわね。見損ないました、貴方が異母弟で非常に嘆かわしいです」
「……うるせぇぞ。行き遅れ」
「なんですって?」
「怖っ」
「繰り返して下さい、もう一度」
「王族なのに婚約者が出来ない姫君がどこかにいるとかなんとかって?」
「はぁ?」

 そのままエドワードは姉弟喧嘩に持ち込んだ。その後、二人のそれぞれの近衛騎士が羽交い絞めにして仲裁するまでの間、この姉弟はお互いに罵詈雑言を発していたのだった。

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