ミリしらな乙女ゲームに転生しました。

猫宮乾

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【三】図書館に関して

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「はぁ……」

 私は十五歳になった。葬儀後、なんだかんだで気が付いたら、あっという間に月日が経過していた。月に一度は王立学園中等部に、セレフィローズ様が通学なさるので、私もその日だけは、学園に通学している。

 基本的に貴族の子女は、家庭教師に色々習うので、簡単な社交を学ぶ場と言える。あとは、人脈造りだったりするのだろう。私はつかず離れずを徹底されてきていて、それは父が亡き今も、近衛騎士団零部隊の隊長により命じられているので、表向きは別段、第一王女殿下派という素振りではない。

 だが、この通学開始に伴い、これまで地方領地で暮らしていたご令嬢達も王都の邸宅で暮らし始めたため、顔を知らない同年代がちょっと増えた。つまり、悪く言うと監視しなければならない対象が増えた。その分派閥も増えた。セレフィ様派は、現在最大派閥である。対抗しているわけではないが、二番目に大きな派閥は、今年の春入学なさった第一王子殿下の、エドワード様の許婚である、レレフィス公爵令嬢ユイレ様の派閥だ。

 現王族と未来の王妃様の派閥が、互いをけん制しあいつつ、勢いを増している状況である。大抵のご令嬢は、このどちらかに属している。なお他にも大小さまざまな派閥はあるが、どちらかの流れを汲んでいる事が多い。全く無関係の第三派閥は、まだ息をあんまりしていないが、来年ご入学される第三王子殿下の許婚の伯爵令嬢を擁立する派閥のようだが、中等部は三年制なので、私は卒業するから、直接ぶつかるようなことはない。

 ちなみに表向きの私は、独立派と呼ばれている……。
 簡単に言うと、これはぼっちの集まりだ。ぼっちをまとめて、独立派と人々は呼んでいる。私はなぜなのか、その筆頭だと思われている。着かず離れずって難しすぎないかな?

 侯爵令嬢であるし、中々私より高い爵位の人はいない……。
 だからぼっちでも黙認されているし、イジメに遭う事もない。ただこれは、独立派と呼ばれているにもかかわらず、定期的にセレフィ様が私をお茶会に呼んでくれると皆が知っている事も手伝っているのかもしれない。

 セレフィ様は、少なくとも三か月に一度は、私をプライベートの場にお招きになる。そして私は、近衛としての職務で半年に五度は、同じ空間にある茶会等に行くため、かなり頻繁に顔を合わせている方だと思う。

 本日もそんなこんなで、私は午後三時からのお茶会にお招きいただいている。

「リリア姉上」

 私が成長したように、マルスもまた八歳になった。だいぶ背が伸びてきた。アーモンド型の形の良い瞳を見て、私は思わず弟を抱きしめた。分かる、今ならば同期の気持ちがわかる。マルスは可愛い。

「苦しいです」
「一緒に王宮へ行くのでしたね」
「ええ。第三王子殿下のご学友として、共に楽器を学びます」

 マルスが頬を持ち上げた。えくぼが可愛い。私にはショタ属性は無かったはずだが、今となってはたった二人の肉親である。可愛くないわけがない。

 なお第三王子殿下は、唯一の第一王妃様のご子息である。お血筋としては、最も由緒正しい。ただ、第一王妃様は、第一王子殿下を立てている。ただそれでも、『どうしてもクリソコーラ侯爵家の護衛が欲しい』と、国王陛下にお願いなさったのだという。

 私の場合は、初誕生に併せて、クリソコーラ侯爵家で両親が子作りをしたそうだ。そして弟の場合は、第一王妃様の頼みで、子作りがなされたそうだ。クリソコーラ侯爵家の血縁者は、王族と同じ学年になることまで踏まえて作られてきたらしい。

「姉上が頑張りますので、マルスは命を賭してはだめですよ」
「姉上……姉上も命を賭さないで下さい。僕は、王家よりも姉上が大切です……」
「それはなりません」
「……分かっておりますが、姉上……無論僕の命は第三王子殿下をはじめ、王家に差し出しますが……どうか、僕が頑張るので、僕が大人になるまで、生き急がず待ってください」

 マルスの言葉に、私は目を丸くした。

「何処でそんな言葉を覚えたのですか? 私がマルスを残して逝くわけが……!」
「約束ですからね」
「……」
「姉上」
「……」
「――はぁ。ほら、馬車にのりましょう」

 私はマルスには出来ない約束はしたくないため、何も言えなかった。小さな手で、マルスが私をエスコートしてくれる。そうして乗り込んだのち、馬車が走り出した。暫く無言で進んだ時、マルスが私の体にもたれかかってきた。

「所で姉上」
「何?」
「グレイル卿の事ですが」
「どなた?」

 私は咄嗟に聞き返し、それからハタと思い出した。そうだ、そうだった。ここは乙女ゲームの世界で、攻略対象の一人だったはずだ! 宰相補佐官予定のご令息の名前だ。過去に一回だけお会いしたではないか。

「……姉上って、本当に人の話はあんまり聞いてませんし、他者を視界に入れませんよね」
「え?」
「僕の配下の話によると、姉上は、毎週金曜日には学園図書館に行かれるとか」
「ええ。図書委員をしていて……配下?」
「配下は配下です。その際、ご自分でも文献の渉猟をなさっておいでだとか?」
「図書館は本を読む場所だけれど……?」
「いつも正面に座る殿方がおられるとか?」
「そうなのですか?」

 図書館の席順などには、これまで気を配ってこなかった。誰か敵対勢力の人間でも座っていたのだろうか。それにしても――なんだその、耳●まみたいなポジショニングは。好きな相手の前に座って気づかれないって、本当哀れだけど萌えるよね!

「姉上は、婚約者を持とうとは思われないのですか?」
「マルスが一人前になって、きちんとこのクリソコーラ侯爵家を背負いたつまでは、見届けるつもりです。私よりも、マルスの許婚探しが急務です」
「……僕は、自分の事は自分で出来ます。姉上、あの……それは、暗に拒否しているのではなく、本当に気づいておられない?」
「何にですか?」
「わー不憫だぁ……! 僕の未来の兄上になるかもしれない方は、不憫だぁ!」
「? マルス?」

 そんなやりとりをしていると、馬車が王宮に到着した。
 そこから私とマルスは別々に案内されたので、離れて歩く事となった。


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