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【五】殺気
しおりを挟む「リリア、次はこちらの書類を頼む!」
「……はい」
その後、私とセレフィ様は、非常に頻繁に生徒会室に呼び出されるようになった。連絡係だから、というだけでなく、将来の役員候補として、仕事を覚えさせられている。オズワルド先輩はとても楽しそうで、いつも明るい――顔を周囲には見せている。
「私は、少し届け物に行ってまいります」
セレフィ様がそう言って、他の役員の先輩と共に生徒会室から出ていった。偶発的に、私とオズワルド先輩が二人になった。瞬間、オズワルド先輩は無表情になった。
「しかし意外だ。リリア隊長は、敵や魔獣を倒す以外のお仕事も出来たとは」
「……」
「いつも零部隊の書類仕事は、団長が肩代わりなさっておいでだから、てっきり殲滅に専念しておられるのだとばかり」
私は沈黙を貫き、手を動かす。しかしオズワルド先輩は黙らない。
「学内での警備体制は万端だと考えて良いのが有難いが」
「オズワルド先輩」
「ん?」
「三行目なんですが、計算ミスがあります」
「あ、どれ? あああ! 本当だ。助かる!」
皆に見せる声音になったオズワルド先輩は、それから若干気まずそうな顔をして、片手で顔を覆った。
「も、申し訳ございません、リリア隊長。つい後輩だと思うと口が……」
「お気になさらないで下さい」
「いや、気にする。気にします。零部隊においては、リリア隊長が大先輩ですから」
暫くそんなやり取りをしながら、生徒会の仕事をした。
そのようにして、新しい日々は始まり――気づくとあっという間に一年が経過していた。二年生になる頃には、生徒会の仕事の傍らに、業務上の連絡をオズワルド先輩とやりとりする機会が増加していった。当初は仕事の話になると無表情を保とうとしていた先輩だが、最近は随分と笑顔が増えてきた。根が明るいのだろう。
現在は、中等部に連絡に行くという仕事で、私とオズワルド先輩は懐かしき学び舎へと向かい歩いている。同じ敷地にあるのだが、結構距離がある。二階に上がり、私はチラリとオズワルド先輩を見た。
「懐かしいな」
すると先輩がにこやかな笑顔でそう言った。実際同じ気持ちだったので、私は軽く唇の端を持ち上げた。結果、先輩がぎょっとした顔になった。
「リリア」
「何ですか?」
「殺気が……」
「へ?」
「いや、なんかお前が笑った直後くらいに、外から……なんだ? 悪寒がする」
「風邪ですか?」
侵入者の殺気であれば、絶対に私が気づかないはずがない。その程度の自負はある。ただ剣士の先輩と魔術師の私では感じることも違うだろうからと、私は緩慢に振り返って、周囲に視線を彷徨わせた。しかし特に異変は感じなかった。
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